とにかく紫原が無事で良かった……が。
新たな問題が浮上した。
今回のパペットマスター、どうやら原作と全く同じ訳ではないようだ。原作では分身するようなことは決してなかったのだが、今回はなんと子供(?)らしきものがいる。
しかも今回倒した三体は俺が以前倒したものよりもかなり大きく成長していた。
まさか……産んでいるのか? 子供を……ただでさえ、人を操り蝋人形化する恐ろしい幻魔なのに、同じ性質のやつがどんどんと増えていったら収拾がつかなくなるぞ……!!
ひとまず俺達三人は統制局へと連れて行かれた。
俺にとってはほとんどブーメランのような出戻りである。
今回の戦闘について個別にアレコレ聞かれ、捕らえた幻魔も引き渡した。
あの幻魔は調べてくれるらしいが……あいつら仕事が遅いんだよなぁ……。
ともあれ俺達は統制局にしばらく泊まることに。
なんせ今回は明確に紫原を狙ってきたからな。事件を解決するまで日常にすら戻れない状態だ。
幸いにもビジネスホテルの一部屋を貸してもらえたが。
「本体の場所がわからないと、攻めるにも攻められませんねぇ」
俺と紫原、そして希沙良が一部屋に集まって会話していた。
借りている部屋とは言え、女の子と狭い部屋に集まるのはなんだか緊張する。
座る場所もろくにないからベッドの上に座っているし……。
ふぅむ、しかし本体の場所か。
原作だと確か調査パートはなんか生徒たちが調べた~~でスキップされるんだよな……。
そのまま逃げているところを抑えて討伐、という流れだったはずだ。
「人を大勢さらってもバレないところっしょ?」
「でもそんな廃墟はこの街にはごまんとありますよ、天羽さん」
「アンタの索敵で調べられないの?」
「あまり長距離には向いてないんですよねぇ……」
俺が悩んでいる間に話を進める二人。
男がいるというのにゴロゴロとベッドに寝っ転がっているのはいただけない。
二人ともシャツでちょっとはだけてるから、なんかエロいし……!
「ふ~~む、なんか統制局に調べられる異能者はいないのかねぇ」
「あいつらあんまり役に立たないし、難しそう」
「ですよね! 仕事回してくるだけですもんね!」
やはり統制局は当てにしないほうが良さそうだ。
思い出せ……なにか原作にヒントとなる描写は……。
そういえば原作だとなぜか背景が駅だったんだよな。
もしかして駅の内部に隠れているのか?
いや、内部は人通りが多いはずだ。とても隠れられるような場所じゃない。
目撃者を片っ端から操るという手もあるだろうが、休息地点としてはどうにも非効率だし。
しかし駅の近くなのは間違いないかもな。餌を簡単に補給できるし……。
「ああ、地下鉄に隠れてるんじゃないのか?」
「はい? なぜそう思うんですか?」
「駅の近くなら簡単に人を補充できる。俺が倒した個体はわざわざ地上に出てきたけど、独り立ちした子供ならそういうこともあるだろうし」
ふ~~む、と二人が唸る。
けっこういい線をいっていると思うが、俺の推理は原作ありきだ。
突然言われた二人としては少々突拍子もない意見だろう。
「ああ、それなら操られてた人たちがいつ意識を失ったのか、聞けば良いんじゃない?」
「そうですね。駅で意識を失った人たちが多ければ、地下鉄に隠れているという推理も信憑性が出てきます……!! さっそく統制局の人たちに話してみましょう!!」
と言って、内線電話で連絡する紫原。
しかしそれもそこそこ時間がかかりそうだ。
結局、今の俺達に出来ることはここでダラダラすることしかないわけで……。
それに気づいた希沙良は家から持ってきたらしいゲーム機をプレイし始めた。
なんだか意味のわからない高い音が聞こえる。ゲームの起動音だ。
「おっ、それ最新のハード?」
「んーん、似てるけど一つ前のやつ。バイト代で買っても良いんだけどね」
電話の終わった紫原がそれに気づき、勢いよく希沙良にダイブする。
ぐみゅっ、とふにゃけた声を漏らすも抵抗はしない。
「おお、いいですね。マブスラしましょーマブスラ!!」
「アンタ、メテオで落としてくるからやだ」
「落とされる方が悪いんですよ!!」
「ていうかウチ、一人で気楽にピクミーする予定だったの」
「ええ~~じゃあ私、先輩とカードゲームしてます~~」
…………という紫原の言動が気に入らなかったのか、ゲームをテレビにつなげてマブスラを起動し始めた。あの数人で対戦できるなんでもありの格闘ゲームだ。
寝転がっていたのに、しっかりと座ってコントローラーを投げ渡してきた。
自分だけしっかりプロコントローラーだ。
「来な、ボコボコにしてやる」
「アイテムなし終点エリアでいいですか?」
「平らなところでしか戦えないの?」
そんな二人の会話に内心苦笑しながらも、俺もゲームをやらされることになった。
ちょうど暇だったから助かるんだけどな……。
結局、俺達は寝落ちするまで紫原の配管工にボコボコにされることになったのだった。
────さて、翌日のこと。
統制局の人間が迎えに来て、奴らのビルまで案内されることになった。
送られたのは映画館のような黒い壁紙の司令室。
そこには前会った眼鏡の男が座っていた。
銀髪で黒縁メガネを掛けた、オールバックでスーツの男。
なんていうか鬼畜眼鏡って風評が似合いそうな男だ。
「操られていた人間に聞き込みしたところ、近隣の駅から記憶を失っている物が多かった」
「へぇ、ということはやはり……?」
「うむ、本体は地下鉄に潜んでいる可能性が高いだろう。それも駅からかなり近い」
おお、となれば、地下鉄の線路から入り込んで調べれば……本体にたどり着く可能性が高いか。
手で座ることを促してきたので、俺達も正面のパイプ椅子に座る。
「まずは先遣隊を送って調べたいところだが、相手は他者を操る異能を持っている。そこでまずは戦闘経験がある貴様らを送り込み、様子をうかがいたい」
「捨て駒ってことかよ」
「貴様らの異能ならば万が一操られても、そう危険はないからな」
まぁ俺達はそこまで強くないからな……。
希沙良は原作だと星3だがサポートキャラだし、紫原は星2。
俺に至っては星1だ。
やつらとの戦闘経験もある上、相性もいい。
妥当な人選ではあるのだが……。
「相手の戦力が把握できれば、有している異能者をありったけ送り込める。頼んだぞ」
「つまり倒さなくてもいいってことですか?」
紫原が口を挟む。
それに対して、鬼畜眼鏡はクイッと眼鏡を上げた。
「相手の戦力が把握できればな。もっとも可能ならば倒してしまえ」
「了解でーす」
「まぁいいじゃん。パパっと倒しちゃおうよ」
希沙良がそう言うと、眼鏡は長机の下からなにやらウエストポーチを取り出してきた。
無線やら何やらがくっついている。
「コレを装備していけ。発振器にもなっている。一応非常食も入っているぞ」
「おお、ありがてぇ」
「それから捕らえた個体を調べたところ……単体生殖している可能性が高い」
「へぇ?」
鬼畜眼鏡が両手を合わせる。
「どうやら内部の糸が本体のようだ。例えるならば貝のようなものでデク人形は外に甲殻を作り出し、内部から操作するという形になっている。一方、たまにいた蝋人形は外郭に甲殻を付与した人間に過ぎず、外部から操る必要がある。蝋人形は上の糸を切り捨てるんだな」
おお……主人公がぱっと解析した情報が出てきた……。
いやデク人形に関しては原作にいなかったから、初めて聞いた情報だな。
糸に関しても、そこまで調べる必要なかったからな、原作だと……。
統制局って実は結構有能なんじゃないか?
俺達を重宝してくれないけど。
「話は以上だ。質問はあるか?」
「いや……思いついたら無線で連絡する」
「結構。では下がりなさい」
話が終わったようで、俺達はそのまま会議室を出た。
ウエストポーチを装備して……っと。
「さて、それじゃあ……行ってみるか」
「けっこう理不尽な話ですけどね~~」
「まぁ、いつものことじゃん。あ、ウチ、装備貰ってこないと」
ああ、クロウボウガンを預けたままか。
どこに置いてるんだろうか。職員に聞けばわかるか……?
「ごめん、眼鏡くん、装備ってどこに置いてある?」
「エスカレーターのある箇所の受付に聞け!!」
希沙良が扉を開けて、眼鏡に聞く。
そういえば鬼畜眼鏡はあの薄暗い部屋でいつも仕事をしてるんだろうか……。
いや流石に俺達を呼んで話すための部屋だよな? 他に人いなかったし。
「だってさ、とっとと聞きに行こ」
「了解です。私たちにもいい武器ありますかね~~」
「俺は素手のほうが良いけどな」
ともあれそうして俺達は出発した。
鬼畜眼鏡
割と鬼畜。統制局の司令官的な立場。
本来主人公がやるのだが、こいつはサブキャラ。
一休み回でした。
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