ゼロバンゲート 〜Hong Kong nightー   作:茶坊主(ぽんぽん)

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1作目 ゼロバンゲート〜枠外からの挑戦者〜

https://syosetu.org/novel/400558/

2作目 ゼロバンゲート〜Re:スタートライン〜

https://syosetu.org/novel/404292/

の続編になります。
過去作のオリキャラ、関係性を引き継いでいますが、
初見の方を置き去りにしないように、後書きに解説を置いていきます。

シリーズ既読の方はもちろん、初見の方でも安心して読み進められる構成になっています。


第19話 喧嘩を売る

ダイワスカーレットの端末が突然震えた。

画面には、見慣れた名前。

 

ダイワスカーレット

「ゴールドシップから……?

はぁ、あいつ、突然居なくなったと思ったら……なんなのよ……」

 

ため息をつきながらメッセージを開く。

 

ゴールドシップのメッセージ

『面白ぇもん見つけたから見ろ

絶対見ろよ!

見ないとお土産やらないからな!』

 

ダイワスカーレットは眉をひそめながら、

動画リンクをタップした。

 

つぎの瞬間──

彼女のツインテールが逆立った。

 

ダイワスカーレット

「は、はぁぁぁぁぁ!?

なんなのこれ!?」

 

ウオッカが横目で覗き込む。

 

ウオッカ

「うるさいぞ。

……て、おい!こいつは!?」

 

画面の中では、ゴールドシップが

ピースサインを決めながら登場していた。

 

ゴールドシップ

「ピスピース!

早速だけど、ゴルシちゃん

ヘマやって捕まった……。たすけてー」

 

真剣なのか悪ふざけなのか分からない、

間延びした口調でカメラの前に現れる。

 

その後ろで、何かが動いた。

 

画面に映ったのは、

ゼロバンゲートだった。

派手な衣装。

仮面。

 

調度品に囲まれた部屋で静かに座っている

 

ウオッカ

「……マジかよ。

こいつ、まさか、あの時の……!」

 

ダイワスカーレット

「なんであいつがゴルシと一緒にいるのよ!?

ていうか、これどこ!?

何してんのよあいつら!!」

 

スカーレットの声は裏返り、

ウオッカは口を半開きにしたまま固まっている。

 

ゴールドシップ(動画)

「いや〜、なんかさ。こいつ。

また面白ぇこと始めようとしてんだよ!

と・に・か・く!

学園のヴィラン、復活だぜ!!」

 

ダイワスカーレット

「復活させなくていいからぁぁぁぁ!!」

 

ウオッカ

「おい……これ、絶対ヤバいだろ……

大騒ぎになるぞ……」

 

二人の顔が同時に青ざめた。

 

ーー

 

ゼロバンゲートは、カメラの前でゆっくりと仮面を外した。

煌びやかな衣装とは対照的に、その素顔は乾いていて、どこか疲れていた。

 

視聴者が一気に騒ぎ出す。

 

ウマ娘たち

「え、やっぱり男の子?」

「こんな顔してたっけ?」

「なんか怖くない?」

 

ざわつきは止まらない。

だがゼロは、呼吸を整え、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

 

ゼロバンゲート

「俺はゼロバンゲート。

かつて学園のヴィランとして騒動の中心にいた。」

 

その声は震えていない。

ただ、静かだった。

 

ゼロバンゲート

「色々と噂が立っているようだが……」

 

短い沈黙。

ゼロは息を長く吸い込む。

 

ゼロバンゲート

「聖蹄祭に乱入したのも、

 追走祭の開催も全て俺が望んだことだ。

俺は”ウマ娘”だ。

俺には耳もしっぽもある。

他にどこも壊れていない。

ただ走りたかった。それだけだ。」

 

視聴者が注目する。

 

ゼロバンゲート

「ウマ娘と同じように走って、競い合う。

ただ、そうしたかった。」

 

その言葉は、誰のためでもない。

自分自身のための告白だった。

 

ゼロバンゲート

「俺に関わった人も、トレーナーも、

みんな俺の願いを叶えてくれようとした。

俺はそれを利用したんだ。」

 

その声は、

“影の王”のものではなく──

一人のウマ娘の声だった。

 

 ウマ娘たち

「ただのワガママ……?」

「俺は”ウマ娘”だって?」

「でも……なんか分かる気がする」

「走りたいだけって……普通じゃん」

 

ざわつきはある。

だが、先ほどのような嘲笑はない。

ゼロの言葉が、

画面越しに届いていた。

 

ゼロバンゲート

「俺はまだ走っている。

 そして、堂々と戦える場所に辿り着いたんだ。」

 

射抜くような目でカメラを見つめ直す。

 

ゼロバンゲート

「我こそはと思うやつは名乗りを上げるといい。

 俺は逃げない。いつでも、誰の相手でもする。

 笑いたければ笑うがいい。」

 

コメント欄を一瞥する

驚きに混じって、いくつか賞賛の声

しかし、誰も勝負を仕掛けてくるものはいなかった。

 

ゼロバンゲート

「名乗らないなら……こちらから指名する。」

 

視聴者の心臓が跳ねる。

誰を指名するのか──

その答えは、誰もが予想していた。

 

ゼロバンゲート

「ラヴズオンリーユー……君だ。

まだこの街にいるんだろ?

正々堂々と勝負してやる。」

 

コメント欄が爆発する。

 

ウマ娘たち

「ラヴズ!?マジで!?」

「学園のヴィランvs 愛の女王じゃん!」

「これどこの企業案件……?

 配信あるの?」

 

ゼロは最後に、短く息を吸った。

 

ゼロバンゲート

「深夜のターフに来い。

以上だ。」

 

配信は静かに切れた。

だが視聴者の熱狂は止まらない。

 

ーー

 

トレセン学園の一角。

静かな廊下に、端末の通知音が響いた。

 

シリウスシンボリは画面を開き、

そこに映る“影の王”の姿を見た瞬間、

口元がゆっくりと吊り上がった。

 

シリウスシンボリ

「ハハハ……!

やっぱりコイツ、とんでもないバカだな……。」

 

その笑いは嘲りではない。

呆れでもない。

賞賛だった。

 

ゼロバンゲートが再び動き出す 

その事実が、彼女の胸を熱くした。

 

シリウスシンボリ

「……待ってたんだよ。

お前みたいなバカが、もう一度走り出すのをな。」

 

彼女もまた、

熱狂を待ち望む者だった。

 

シリウスシンボリ

「だが……面白いじゃねぇか。

次は“一番”になってみろよ。

ゼロバンゲート……」

 

その声は届くはずもない。

ゼロは今、影の街の王。

学園の誰の声も届かない場所にいる。

 

それでも──

かつて認めた相手には、

賞賛を送らずにはいられなかった。

 

ーー

 

ゼロが深夜のターフにラヴズオンリーユーを呼び出す──

あの静かで重たい宣言の直後。

 

店の奥で、ゴールドシップは一瞬だけ沈黙した。

そして──

 

ゴールドシップ

「ぷっ……」

肩が震えた。

「ぶはははははっ!!!」

 

椅子を蹴りそうな勢いで笑い出した。

銀髪が揺れ、テーブルが揺れ、

タイニィがびくっと肩を跳ねさせる。

 

ゴールドシップ

「ひ、ヒヒヒッ……ひぃ……腹が痛い……!

お前なに神妙な顔つきで喧嘩売ってんの!?

あんな真面目な顔で“深夜のターフに来い”とか言うやついるかよ!!」

 

ゼロは眉をひそめる。

だが、怒っているわけではない。

むしろ──照れていた。

 

ゼロバンゲート

「……真剣なんだよ。」

 

ゴールドシップ

「それが余計に面白ぇんだよ!!

お前、ほんっとに変わんねぇなぁ!!」

 

タイニィは慌てて二人の間に視線を泳がせる。

 

ゴールドシップ

「てか、完全に悪役が板についてるじゃん!?

俺はゼロバンゲート……だってよ!!

こりゃ、歴史に残るぞ……!!」

 

テーブルを叩きながら、

涙が出るほど笑っている。

その笑いは嘲りではない。

むしろ──最高の褒め言葉だった。

 

ゼロは眉をひそめる。

 

ゼロバンゲート

「……悪役って言うな。」

 

ゴールドシップ

「いやいやいや!!

あの言い方、完全にヴィランのそれだろ!!

“名乗らないなら指名する”って……

どこのラスボスだよ!!」

 

タイニィはオロオロしながら二人を見つめる。

「えっと、ゼロさんは真面目に……」

 

ゴールドシップ

「だから面白ぇんだよ!!

本気で喧嘩売るウマ娘ほど、歴史に残るんだよ!!」

 

ゴールドシップはゼロの肩を指で突く。

 

ゴールドシップ

「でもよ。お前、今の顔……

完全に“走りたい”って顔してたぜ。」

 

ゼロは言葉を失った。

その一言は、誰よりも重かった。

 

ーー

 

ゼロの宣戦布告配信は、

影の街だけでなく──

フェアレディの元にも、しっかり届いていた。

 

ソファに優雅に腰掛けていた彼女は、

画面を見た瞬間、肩を震わせた。

 

フェアレディ

「ふ、ふふふ……あははは!

ほんっとに、ゼロ……あの子は最高ね!」

 

ソファの上で転がり回るほどの笑い。

興行師としての“喜び”が爆発していた。

 

だが──

その笑いはすぐに止まる。

フェアレディはゆっくりと体を起こし、

脚を組み直し、

表情をすっと引き締めた。

興行師としての顔だ。

 

フェアレディ

「さて、忙しくなるわね。」

 

指を鳴らすと、部下がすぐに駆け寄る。

 

フェアレディ

「人を集めなさい。

影の街の上層、下層、全部よ。

“祭り”の準備を始めるわ。」

 

部下

「は、はい……!」

 

フェアレディは机の引き出しから

深紅の封筒を取り出す。

中には、

彼女が“ある人物”にだけ送る特別な手紙。

蝋を垂らし、

紋章の刻まれた印章で封を固める。

 

フェアレディ

「それと──これを“あの人”に。

 秘書を通さなくていいわ。

すぐに来てもらわないとね……。」

 

部下は緊張した面持ちで封筒を受け取る。

 

 部下

「……了解しました。」

 

フェアレディは微笑む。

その笑みは、興行師としての“確信”に満ちていた。

 

フェアレディ

「ゼロが動いた。

なら、街も──世界も動くわ。」




ゼロは相変わらずヴィランになりきれていません。
深夜のターフへの呼び出しも、実のところ第一章で榊原トレーナーが配った挑戦ビラの焼き直しに過ぎません。
悪役らしく振る舞おうとはしていますが、肝心なところで本音や誠実さが漏れてしまいます。
それでも、ひとつだけ確かな成長があります。
かつて仮面の裏に隠れていた彼は、今では仮面を外して自分の言葉を語れるようになったことです。
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