ゼロバンゲート 〜Hong Kong nightー 作:茶坊主(ぽんぽん)
https://syosetu.org/novel/400558/
2作目 ゼロバンゲート〜Re:スタートライン〜
https://syosetu.org/novel/404292/
の続編になります。
過去作のオリキャラ、関係性を引き継いでいますが、
初見の方を置き去りにしないように、後書きに解説を置いていきます。
シリーズ既読の方はもちろん、初見の方でも安心して読み進められる構成になっています。
フェアレディの豪奢な部屋。
赤い絨毯の上に、ゼロバンゲートたちが一列に並ぶ。
タイニィはビクビクしながら、ゼロの袖を指でつまんでいた。フェアレディは脚を組み、
まるで舞台の開幕を見届ける観客のように微笑む。
フェアレディ
「色々と言いたいことはあるけど……
まず、あなた? ゴールドシップよね。
どうしてゼロと一緒にいるの?」
ゴールドシップは鼻先を指でなぞり、
得意げに胸を張った。
ゴールドシップ
「舎弟がショボくれてるんだから、喝を入れに来てやったんだ。なんか文句あんのか?」
タイニィが「舎弟……?」と小さく震える。
フェアレディはその様子にくすりと笑い、
脚を組み替えた。
フェアレディ
「随分と仲がいいのね……。
まぁ、いいわ。」
視線がゼロへ向く。
その瞳は興行師のもの──
“本気の勝負”を見極める者の目。
フェアレディ
「それで、ゼロ。
自分が何をしたか分かってるの?
もう、あなたの存在は公になった。ラヴズオンリーユーとの対決が成立しようとしまいと、
あなたはずっと好奇の目に晒され続ける……それでもいいの?」
タイニィはゼロの袖をぎゅっと掴む。
怖さと心配が混じった震え。
だが──
ゼロは微動だにしなかった。
まるで答えを用意していたかのように、
静かに口を開く。
ゼロバンゲート
「知っています。
全部、俺が望んだことです。」
その声は揺れない。
影の王の仮面ではなく、
ウマ娘としての覚悟が宿っていた。
ゼロバンゲート
「もう隠れる必要はない。
戦える舞台も、実力も手に入れた。」
フェアレディの唇がわずかに吊り上がる。
興行師としての“確信”の笑み。
フェアレディ
「……そう。
なら、祭りは本物になるわね。」
ゴールドシップはニヤリと笑い、
タイニィはゼロを見上げて息を呑む。
フェアレディはゆっくりと立ち上がり、
いつもの興行師の顔ではなく──
誰にも見せない“フェアレディという一人の女性”の顔になった。
フェアレディ
「一つだけ聞かせて……」
その声は、
興行の計算でも、勝負の読みでもない。
ただ、ゼロという存在に向けられた“本音”だった。
フェアレディ
「どこから気づいてた?
ううん……どうして……。
どうして、あなたが今の気持ちになったのか知りたいの。ラヴズオンリーユーに負ければ、この街にはもういられない。
勝っても、“異端”として後ろ指を指されるだけ……。それなのに……どうして?」
その問いは、
興行師としての合理性では説明できない“感情”の問いだった。
タイニィはいてもたってもいられず、
ゼロの前に出ようとする。
タイニィ
「ゼロさんは──!」
だがゼロは、
優しく腕を伸ばしてタイニィを制した。
ゼロバンゲート
「確証はなかったですけど……
ラヴズオンリーユーが招待状を持っていたあたりから。」
フェアレディの瞳がわずかに揺れる。
それは、ゼロが“見抜いていた”ことへの驚きではなく──
ゼロが“気づいた上で動いた”ことへの驚きだった。
ゼロバンゲート
「でも、そんなことはどうでも良くて……。」
ゼロはまっすぐフェアレディを見た。
その瞳は、影の王のものではなく──
ウマ娘としての光を宿していた。
ゼロバンゲート
「俺は観客が熱狂する勝負がしたい。
例え悪役でもいいんです。
相手と全力で勝負している間、
俺は“ウマ娘”なんですから……。」
その言葉は、
フェアレディの胸に静かに落ちた。
興行師としての計算ではなく、
一人の女性として──
ゼロの覚悟を受け止めるしかなかった。
タイニィ
「悪者でもいいなんて……
それって自分を追い詰めてるだけじゃないんですか?
ゼロさんは今までのゼロさんでもいいじゃないですか。
なんで…どうして…」
タイニィは強くゼロの袖を握った。
その手は震えていて、
必死にゼロを引き留めようとしていた。
ゼロはその手を、
そっと、優しく解いた。
ゼロバンゲート
「勘違いしないで。俺はもう自分を見失ったりしない。」
その声は静かで、
しかし揺るぎなかった。
ゼロバンゲート
「俺は強敵と走るのが好きだ。
観客の熱狂的な視線を浴びるのが好きだ。
追いかけて来る相手から必死に逃げるのも好きだ。」
タイニィは息を呑む。
ゼロが“好き”という言葉をこんなに連発するのは珍しい。
そして──
ゼロバンゲート
「俺が一番好きなのは、タイニィの淹れてくれるお茶だ。」
タイニィ
「……っ!!!」
その瞬間、タイニィの顔が真っ赤になった。
ゼロバンゲート
「家でタイニィが待っててくれたら、
レース場でどれだけ悪役を演じても、
どれだけ嫌われても、また戻ってこれる。」
タイニィの肩が震えた。
目が潤む。
タイニィ
「~~~~っ!!」
部屋から走り出ていった。
フェアレディは目を丸くし、
次の瞬間、ため息をついた。
フェアレディ
「ゼロ。あなた……今、何を言ったか分かってるの?
それもう告白よ。」
ゴールドシップは椅子を蹴って立ち上がり、
ゼロを指さした。
ゴールドシップ
「この女ったらし!!」
なぜかゴールドシップの平手がゼロの頬を打った。
パァンッ!!
ゼロバンゲート
「なんでだ!!」
ゴールドシップ
「女の子泣かせんな!!
そういうところ、ホンッッット! 感じ悪いぞ!!」
フェアレディは口元を押さえて笑った。
ーー
影の街に、熱が走った。
ゼロバンゲートの宣戦布告は、
路地裏から繁華街まで、一瞬で広がっていく。
「ゼロ様がラヴズオンリーユーに挑むらしいぞ!」
「国際GIの女王が影の王とやるって本当か!?」
「フェアレディが動いたってよ!」
下馬評を語るもの達が慌てて黒板に新しいオッズを書き始める。
ラヴズオンリーユー:1.8倍
ゼロバンゲート:2.1倍
客たちは黒板の前で殴り合いを始める。
影の街の日常だ。
客
「いやゼロ様の方が強いだろ!」
「ラヴズは国際GIだぞ!」
拳が飛び、怒号が飛び、
それでも誰も止めない。
影の街は、勝負の熱で生きている。
男の子
「ゼロ様は男の子だけど、速いんだぞ!
どんなウマ娘にだって勝つんだからな!」
女の子
「でも、ラヴズオンリーユーだって負けないもん!」
繁華街の路地を、
小さな足音がぱたぱたと響く。
影の街のネオンが、
子どもたちの影を伸ばして揺らす。
その熱は、
大人の興行とは違う──
純粋な勝負のワクワクだった。
ゴールドシップ
「まぁ、ゼロバンゲートより速いのは、このゴルシ様だけどな!」
突然の乱入に、子どもたちが振り向く。
男の子
「お姉ちゃん誰?」
女の子
「ウマ娘…?速いの?」
ゴールドシップは鼻で笑った。
ゴールドシップ
「あぁ?お前ら…ゴルシ様を知らねぇのかよ!?
その昔、ゼロバンゲートを正義の蹴りで打ち負かしたのはアタシだよ。
アイツが泣いて謝るから、舎弟にしてやったんだけどな!」
男の子
「へぇ…」
女の子
「じゃ、お姉ちゃんはどっちが勝つと思う?」
ゴールドシップは一瞬だけ口を開きかけて──
ふっと笑って肩をすくめた。
ゴールドシップ
「そりゃ…まあ…
今、喋ったら面白くねぇじゃねぇか…」
その言葉は、
子どもたちの胸に火をつけた。
男の子
「じゃあ見に行く!」
女の子
「うん!絶対見に行く!」
路地裏を、子どもたちが再び駆けていく。
影の街の祭りは、もう完全に始まっていた。?
ゼロの物語もいよいよ大詰めです。
原稿は完成していますので、お付き合いお願いいたします