ゼロバンゲート 〜Hong Kong nightー   作:茶坊主(ぽんぽん)

20 / 23
1作目 ゼロバンゲート〜枠外からの挑戦者〜

https://syosetu.org/novel/400558/

2作目 ゼロバンゲート〜Re:スタートライン〜

https://syosetu.org/novel/404292/

の続編になります。
過去作のオリキャラ、関係性を引き継いでいますが、
初見の方を置き去りにしないように、後書きに解説を置いていきます。

シリーズ既読の方はもちろん、初見の方でも安心して読み進められる構成になっています。


第20話 大勝負へ

フェアレディの豪奢な部屋。

赤い絨毯の上に、ゼロバンゲートたちが一列に並ぶ。

タイニィはビクビクしながら、ゼロの袖を指でつまんでいた。フェアレディは脚を組み、

まるで舞台の開幕を見届ける観客のように微笑む。

 

フェアレディ

「色々と言いたいことはあるけど……

まず、あなた? ゴールドシップよね。

どうしてゼロと一緒にいるの?」

 

ゴールドシップは鼻先を指でなぞり、

得意げに胸を張った。

 

ゴールドシップ

「舎弟がショボくれてるんだから、喝を入れに来てやったんだ。なんか文句あんのか?」

 

タイニィが「舎弟……?」と小さく震える。

フェアレディはその様子にくすりと笑い、

脚を組み替えた。

 

フェアレディ

「随分と仲がいいのね……。

まぁ、いいわ。」

 

視線がゼロへ向く。

その瞳は興行師のもの──

“本気の勝負”を見極める者の目。

 

フェアレディ

「それで、ゼロ。

自分が何をしたか分かってるの?

もう、あなたの存在は公になった。ラヴズオンリーユーとの対決が成立しようとしまいと、

あなたはずっと好奇の目に晒され続ける……それでもいいの?」

 

タイニィはゼロの袖をぎゅっと掴む。

怖さと心配が混じった震え。

だが──

ゼロは微動だにしなかった。

まるで答えを用意していたかのように、

静かに口を開く。

 

ゼロバンゲート

「知っています。

全部、俺が望んだことです。」

 

その声は揺れない。

影の王の仮面ではなく、

ウマ娘としての覚悟が宿っていた。

 

ゼロバンゲート

「もう隠れる必要はない。

戦える舞台も、実力も手に入れた。」

 

フェアレディの唇がわずかに吊り上がる。

興行師としての“確信”の笑み。

 

フェアレディ

「……そう。

なら、祭りは本物になるわね。」

 

ゴールドシップはニヤリと笑い、

タイニィはゼロを見上げて息を呑む。

 

フェアレディはゆっくりと立ち上がり、

いつもの興行師の顔ではなく──

誰にも見せない“フェアレディという一人の女性”の顔になった。

 

フェアレディ

「一つだけ聞かせて……」

 

その声は、

興行の計算でも、勝負の読みでもない。

ただ、ゼロという存在に向けられた“本音”だった。

 

フェアレディ

「どこから気づいてた?

ううん……どうして……。

どうして、あなたが今の気持ちになったのか知りたいの。ラヴズオンリーユーに負ければ、この街にはもういられない。

勝っても、“異端”として後ろ指を指されるだけ……。それなのに……どうして?」

 

その問いは、

興行師としての合理性では説明できない“感情”の問いだった。

 

タイニィはいてもたってもいられず、

ゼロの前に出ようとする。

 

タイニィ

「ゼロさんは──!」

 

だがゼロは、

優しく腕を伸ばしてタイニィを制した。

 

ゼロバンゲート

「確証はなかったですけど……

ラヴズオンリーユーが招待状を持っていたあたりから。」

 

フェアレディの瞳がわずかに揺れる。

それは、ゼロが“見抜いていた”ことへの驚きではなく──

ゼロが“気づいた上で動いた”ことへの驚きだった。

 

ゼロバンゲート

「でも、そんなことはどうでも良くて……。」

 

ゼロはまっすぐフェアレディを見た。

その瞳は、影の王のものではなく──

ウマ娘としての光を宿していた。

 

ゼロバンゲート

「俺は観客が熱狂する勝負がしたい。

例え悪役でもいいんです。

相手と全力で勝負している間、

俺は“ウマ娘”なんですから……。」

 

その言葉は、

フェアレディの胸に静かに落ちた。

 

興行師としての計算ではなく、

一人の女性として──

ゼロの覚悟を受け止めるしかなかった。

 

タイニィ

「悪者でもいいなんて……

それって自分を追い詰めてるだけじゃないんですか?

ゼロさんは今までのゼロさんでもいいじゃないですか。

なんで…どうして…」

 

タイニィは強くゼロの袖を握った。

その手は震えていて、

必死にゼロを引き留めようとしていた。

 

ゼロはその手を、

そっと、優しく解いた。

 

ゼロバンゲート

「勘違いしないで。俺はもう自分を見失ったりしない。」

 

その声は静かで、

しかし揺るぎなかった。

 

ゼロバンゲート

「俺は強敵と走るのが好きだ。

観客の熱狂的な視線を浴びるのが好きだ。

追いかけて来る相手から必死に逃げるのも好きだ。」

 

タイニィは息を呑む。

ゼロが“好き”という言葉をこんなに連発するのは珍しい。

 

そして──

 

ゼロバンゲート

「俺が一番好きなのは、タイニィの淹れてくれるお茶だ。」

 

タイニィ

「……っ!!!」

 

その瞬間、タイニィの顔が真っ赤になった。

 

ゼロバンゲート

「家でタイニィが待っててくれたら、

レース場でどれだけ悪役を演じても、

どれだけ嫌われても、また戻ってこれる。」

 

タイニィの肩が震えた。

目が潤む。

 

タイニィ

「~~~~っ!!」

部屋から走り出ていった。

 

フェアレディは目を丸くし、

次の瞬間、ため息をついた。

 

フェアレディ

「ゼロ。あなた……今、何を言ったか分かってるの?

それもう告白よ。」

 

ゴールドシップは椅子を蹴って立ち上がり、

ゼロを指さした。

 

ゴールドシップ

「この女ったらし!!」

 

なぜかゴールドシップの平手がゼロの頬を打った。

 

パァンッ!!

 

ゼロバンゲート

「なんでだ!!」

 

ゴールドシップ

「女の子泣かせんな!!

そういうところ、ホンッッット! 感じ悪いぞ!!」

 

フェアレディは口元を押さえて笑った。

 

ーー

 

影の街に、熱が走った。

ゼロバンゲートの宣戦布告は、

路地裏から繁華街まで、一瞬で広がっていく。

 

「ゼロ様がラヴズオンリーユーに挑むらしいぞ!」

「国際GIの女王が影の王とやるって本当か!?」

「フェアレディが動いたってよ!」

 

下馬評を語るもの達が慌てて黒板に新しいオッズを書き始める。

 ラヴズオンリーユー:1.8倍

 ゼロバンゲート:2.1倍

 

客たちは黒板の前で殴り合いを始める。

影の街の日常だ。

 

客

「いやゼロ様の方が強いだろ!」

「ラヴズは国際GIだぞ!」

 

拳が飛び、怒号が飛び、

それでも誰も止めない。

影の街は、勝負の熱で生きている。

 

男の子

「ゼロ様は男の子だけど、速いんだぞ!

どんなウマ娘にだって勝つんだからな!」

 

女の子

「でも、ラヴズオンリーユーだって負けないもん!」

 

繁華街の路地を、

小さな足音がぱたぱたと響く。

影の街のネオンが、

子どもたちの影を伸ばして揺らす。

その熱は、

大人の興行とは違う──

純粋な勝負のワクワクだった。

 

ゴールドシップ

「まぁ、ゼロバンゲートより速いのは、このゴルシ様だけどな!」

 

突然の乱入に、子どもたちが振り向く。

 

男の子

「お姉ちゃん誰?」

女の子

「ウマ娘…?速いの?」

 

ゴールドシップは鼻で笑った。

 

ゴールドシップ

「あぁ?お前ら…ゴルシ様を知らねぇのかよ!?

その昔、ゼロバンゲートを正義の蹴りで打ち負かしたのはアタシだよ。

アイツが泣いて謝るから、舎弟にしてやったんだけどな!」

 

男の子

「へぇ…」

女の子

「じゃ、お姉ちゃんはどっちが勝つと思う?」

 

ゴールドシップは一瞬だけ口を開きかけて──

ふっと笑って肩をすくめた。

 

ゴールドシップ

「そりゃ…まあ…

今、喋ったら面白くねぇじゃねぇか…」

 

その言葉は、

子どもたちの胸に火をつけた。

 

男の子

「じゃあ見に行く!」

女の子

「うん!絶対見に行く!」

 

路地裏を、子どもたちが再び駆けていく。

影の街の祭りは、もう完全に始まっていた。?




ゼロの物語もいよいよ大詰めです。
原稿は完成していますので、お付き合いお願いいたします
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