ゼロバンゲート 〜Hong Kong nightー   作:茶坊主(ぽんぽん)

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1作目 ゼロバンゲート〜枠外からの挑戦者〜

https://syosetu.org/novel/400558/

2作目 ゼロバンゲート〜Re:スタートライン〜

https://syosetu.org/novel/404292/

の続編になります。
過去作のオリキャラ、関係性を引き継いでいますが、
初見の方を置き去りにしないように、後書きに解説を置いていきます。

シリーズ既読の方はもちろん、初見の方でも安心して読み進められる構成になっています。


第21話 決戦前夜

影の街が騒ぎ始めても──

ラヴズオンリーユーは焦らなかった。

むしろ、

いつも通りのテンションで配信を始めた。

それが彼女なりの 覚悟の表れだった。

 

ラヴズオンリーユー

「ラヴミー? ラヴユー!

ご機嫌よう。ラヴズオンリーユーです!」

 

明るい声。

いつもの挨拶。

だが、その奥にある緊張は隠しきれない。

画面越しでも、彼女の胸の鼓動が伝わるようだった。

 

ラヴズオンリーユー

「コミュメンのみんな。

まずはごめんなさい。

今日はコメントを真っ先に返さないといけない人がいるの。」

 

コメント欄がざわつく。

「誰?」

「まさか……」

「ゼロバンゲート?」

 

ラヴズオンリーユーは、

画面の向こうの“影の王”に向けて言葉を放った。

 

ラヴズオンリーユー

「ゼロバンゲートくん……見てるよね?

私、今、腹立ててるよ。人の事追い返しておいて、

今更、ご指名なんて、虫が良過ぎない?」

 

コメント欄が爆発する。

「宣戦布告見た!」

「恥知らず!」

「やっぱり最低の悪役じゃん!」

 

ラヴズオンリーユーは、

その荒れたコメント欄を見て──

優しく微笑んだ。

 

ラヴズオンリーユー

「でも、ちょっとだけ嬉しかった気持ちもある。

だから、言うね。」

 

彼女は目を閉じ、

心臓を落ち着かせるように深く息を吸った。

 

ラヴズオンリーユー

「私はあなたの走りは凄いと思っている。

魂を削りながら、研ぎ澄まされた牙、

そして、生き様を見せつけるような走り……

この目で見てわかった。」

 

コメント欄が静まり返る。

誰もが息を呑んだ。

 

ラヴズオンリーユー

「私はあなたのような走り方はできない……。

これからも真似するつもりもない。」

 

彼女は胸に手を当てた。

 

ラヴズオンリーユー

「私は……コミュメンのみんな、

応援してくれるみんなに愛を届けるために走る。

そうやって強くなってきた。

それは誰にも否定させない……!」

 

そして──

画面の向こうのゼロへ向けて、

はっきりと言い切った。

 

ラヴズオンリーユー

「決着をつけましょう。

“勝負を挑まれたら断れないのが、ウマ娘”だから!」

 

彼女はコミュメンに向けてウィンクし、

明るく手を振った。

配信を切り、

決戦のターフへと歩き出す。

 

そこにはもう、

ゼロの剣幕に怯えていた彼女の姿はなかった。

 

ーー

ラヴズオンリーユーが決意を固めた。

だが、その裏で。

まったく別の“影”が動いていた。

 

影の街の入口。

ネオンの光が届かない、薄暗い路地。

 

そこへ──

黒い車が複数台、無音で止まった。

ドアが開く。

無線機を付けた男たちが、

次々と車から降りてくる。

 

???

「ラヴズオンリーユー、移動開始しました。」

 

???

「追うぞ。

違法賭博の現場を抑えてやる。」

 

 路地裏の賭場で殴り合っていた客たちが、

黒い車列を見て一瞬だけ動きを止める。

 客A

「……なんだ、あれ。」

 客B

「やべぇの来たぞ……!」

 

影の街の住人たちは、

本能的に理解していた。

“祭り”とは別の、もっと冷たい力が動いている。

 

黒服の男たちは、

影の街の入口を迷いなく進んでいく。

まるで、

この街の構造をすべて把握しているかのように。

 

???

「組織的な動きも確認済み。

影の街の上層部は、すでに興行を開始している。」

 

???

「なら、なおさらだ。

今夜で全部終わらせる。」

 

その声は、

影の街の熱狂とは正反対の“冷徹な使命感”に満ちていた。

 

フェアレディは窓の外の黒い車列を見て、

ゆっくりと笑った。

 

フェアレディ

「来たわね……URA。」

 

部下

「どうしますか!?

レースが止められるかもしれません!」

 

フェアレディは脚を組み替え、

興行師ではなく”支配者”の顔になる。

 

フェアレディ

「止められないわ。

ゼロが本気で走るんだから。」

 

そして、部下たちに命じた。

 

フェアレディ

「情報を流し続けなさい。

URAの動きをかき乱すの。

デマでもなんでもいいわ。

“記憶”には残しても、

“記録”には残さないようにね。

話題も収益も……私達で独占よ!」

 

部下たちは一斉に動き出す。

影の街の“戦い”が始まった。

 

ーー

 

黒服の男たちが、影の街の路地を一斉に駆け出す。

その動きは軍隊のように統率され、

祭りの喧騒の中でも異様な存在感を放っていた。

だが──

影の街は、彼らを歓迎しない。

 

黒服が細い路地へ入った瞬間、

そこにいたのは屋台のおばあちゃんだった。

 

屋台のおばあちゃん

「おっと……すまないね。

ままならない身体なもんで……」

 

よろけた拍子に、

通路いっぱいに木箱が散乱する。

 

 ガラガラガラッ!

 

URA職員

「く……!

別の道を使うぞ!」

 

黒服たちは舌打ちし、方向転換しようとする。

 

屋台のおばあちゃん

「悪いねぇ、ちょっと拾うの手伝って……」

 

その声は柔らかいのに、

“絶対に通す気はない”という強い意志が滲んでいた。

 

黒服たちは一瞬だけ動きを止める。

この街の住人は、ただの一般人ではない。

 

URA職員たちが別の路地へ向かうと──

そこでは子どもたちが走り回っていた。

 

男の子

「ゼロ様の応援に行くんだー!」

女の子

「ラヴズちゃんも応援するー!」

 

黒服の男

「どけ!危ない!」

 

だが子どもたちは、

まるで黒服の進路を塞ぐように

路地いっぱいに広がって遊び続ける。

 

別の路地では、屋台の兄ちゃんが鉄板を持ち上げていた。

 

屋台の兄ちゃん

「すまん!通路塞いじまっててな!

こっち片付けるまで待ってくれ!」

 

黒服の男

「……っ!」

 

影の街は、大人も子どもも老人も、

全員が“興行を守るための妨害網”になっていた。

 

URAの黒服たちは、影の街の路地を走り回る。

だが、どの道を選んでも──

必ず“誰か”が立ち塞がる。

誰も直接妨害しない。

 

ただ、絶妙なタイミングで“道を塞ぐ”。

それだけで、URA職員の動きは完全に封じられた。

 

黒服の男

「A班、目標ロスト……応援要請します。」

 

短い無線が、黒服たちの間に緊張を走らせる。

 

黒服の男

「B班も同じく……

何だこの街は……

住民が結託してるとでもいうのか?」

 

ラヴズオンリーユーの背中はすぐそこに見えているのに、“追えない”。

 

影の街は、URAの想定を完全に超えていた。

 

黒服の男

「……この街、地図と違う。

路地が増えている……?」

 

URA本部

「そんなはずはない。

影の街は登録済みだ。」

 

黒服の男

「いえ……住民が勝手に屋台を出して、

通路が変わっているんです……!」

 

影の街は、

**“興行のために形を変える街”**だった。

 

黒服の男

「住民が……こちらの進路を読んでいるとしか思えません。

曲がるたびに誰かが道を塞ぐ……!」

 

URA本部

「妨害しているのか?」

 

黒服の男

「いえ……“偶然を装って”塞いでいます。

証拠が取れません……!」

 

屋台のおばあちゃんが、

散らばった木箱を拾いながら微笑む。

 

屋台のおばあちゃん

「黒服さん達……

ウマ娘の走りを邪魔するような連中は、

誰も歓迎しないんだよ。」

 

その言葉は、

影の街の総意だった。

 

屋台のおばあちゃん

「さて……、フェアレディちゃん。

 あとは上手くやりな…。

 この街に正解は無いさね。

 熱狂を覚ますんじゃないよ……。」

 

たじろぐ黒服の男たちを尻目に、おばあちゃんは路地裏へと歩いて消えていくのだった。




走りたい、でも、自分が走ることで誰かを傷つけるのではないか
ずっとゼロの心に引っかかっていた迷い
それが消えた訳じゃないんですよね。

ただ、自分の走りを肯定してくれる人がいる
待ちわびている人がいる
そのことに気づいた時、ゼロの走りたい気持ちはより純化したわけです。
いよいよ最終章ですね
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