ゼロバンゲート 〜Hong Kong nightー 作:茶坊主(ぽんぽん)
1作目 ゼロバンゲート〜枠外からの挑戦者〜
https://syosetu.org/novel/400558/
2作目 ゼロバンゲート〜Re:スタートライン〜
https://syosetu.org/novel/404292/
の続編になります。
過去作のオリキャラ、関係性を引き継いでいますが、
初見の方を置き去りにしないように、後書きに解説を置いていきます。
シリーズ既読の方はもちろん、初見の方でも安心して読み進められる構成になっています。
ラヴズオンリーユー
「ラブミー? ラブユー!
ラヴズオンリーユーです!」繁華街の真ん中。
夕暮れの空が沈み、街は昼よりも明るくなる。
ネオンが瞬き、屋台の提灯がぽつぽつと灯り始め、
街は“夜の顔”へと変わっていく。ラヴズオンリーユー
「今日は繁華街の真ん中からお送りします!
もう日が暮れそうなのに、街は昼間よりも明るくなってますね!」
彼女の声はいつも通り明るい。
だが、その奥にある熱は──いつもと違う。
ラヴズオンリーユー
「前回のコメント、返すのが遅れてゴメンね!
ゼロバンゲートさんのこと調べてたら止まらなくなっちゃった 」
笑顔を作る
「この街にもしいるんだったら会ってみたいなって……
せっかく機会だから、コラボしてみたくない?
みんなはどう思う?」
コメント
「見たい!」
「ラヴちゃんのコラボなんて裏山案件」
「レース?対談?」
「皇帝杯ダービーの真実とか聞きたい!」
「胸熱すぎる!」
視聴者は気づいていない。
ラヴズオンリーユーがゼロの走りに“何か”を感じ取ったことを。
ただ珍しいものが見れるという期待だけが、コメント欄を埋め尽くしていた。
そこへ──
フィガロ
「いたいた〜♪」
ラヴズのカメラに、突然フィガロが割り込んだ。
胸には “ラブミー?ラブユー!” とプリントされたTシャツ。
手にはラヴズオンリーユーのマスコット。
完全に“ガチ勢”の装いだった。
コメント欄が騒ぎ出す。
「現地のウマ娘?」
「凸来た!」
「ラヴちゃん人気すげぇ!」
フィガロは満面の笑みで手を振る。
フィガロ
「あなた、ラヴズオンリーユーよね?
やったぁ、本人に会えるなんて凄い偶然!」
その声は軽やかで、
まるで本当に偶然出会ったかのように振る舞っている。
フィガロ
「ヤッホー!コミュメンのみんな、乱入してゴメンね!
私、ラヴちゃんのファンなの♪
あ、顔出しとか全然OKだから!
このまま配信続けて!」
コメント欄がさらに沸騰する。
「ノリ良すぎて草」
「ラヴちゃんのファンってこんな濃いの?」
「この子絶対ただ者じゃない」
「ラヴちゃん、逃げてw」
ラヴズオンリーユーは一瞬驚いたように目を丸くし──
すぐに笑顔を取り戻した。
ラヴズオンリーユー
「わぁ……すごい元気な子だね!
えっと……初めまして?」
フィガロはスマホをラヴズに向けて、
「イェーイ!」とツーショット写真を撮った。
フィガロ
「ねぇねぇ!これから予定あるの?
実はさー、この街にも凄い速いウマ娘がいるの!
これからソイツが走るんだけど……
ラヴちゃんの目から見て、どのくらいの、どのくらいのやつか知りたいんだ♪」
ラヴズオンリーユーは目を瞬かせた。
配信のテンションはそのままなのに、
胸の奥が少しだけ熱くなる。
ラヴズオンリーユー
「今から……?レース?
ナイターの予定なんて無かったと思うけど……」
フィガロは肩をすくめて笑った。
その笑いは軽いのに、どこか危険な匂いがする。
フィガロ
「んー、そうなの?
ま、公式じゃなくて個人開催のレースだから、知らなくて当然か。
でも、色んな奴が出てきて面白いのよ。」
耳元に顔を近づける。
そして──わざとらしく、しかし自然に、ひとつの言葉を落とした。
フィガロ
「例えば……」
カメラに向けてニヤリと笑を浮かべる
「日本から逃げてきたやつとか♥」
コメント欄がさらに熱を帯びる。
「え、日本から逃げてきた奴って言った?」
「皇帝杯ダービーのあの子?」
「ゼロバンゲートのことじゃね?」
「胸熱すぎるだろ」
ラヴズオンリーユーの心臓が、ほんの少しだけ跳ねた。
ゼロバンゲート──あの黒い影。
記憶に残る走りをした怪物。
フィガロはラヴズオンリーユーの耳がピンと立ったのを見逃さなかった。
ほんの一瞬の反応。
だが、勝負師なら分かる。
──心が動いた時、耳は立つ。
フィガロ
「ごめんごめん、配信中に出しゃばっちゃった♪
私、もう行くね! ア・リ・ガ・ト♥」
カメラ越しにウィンク。
その仕草はどこか隠しきれない裏の世界の匂いがする。
フィガロはそのまま人混みに紛れ、
影のように姿を消した。
ラヴズオンリーユー
「うん、こちらこそ声掛けて来てくれてありがとう!
みんな、この街にも私の愛が届いてるって分かったの。
すごく良かった〜♪」
彼女は本当に嬉しそうに笑った。
フィガロの乱入を“ただのファン”だと思っている。
視聴者に向けて、屋台の点心を頬張りながら天使のように笑う。
影の世界の匂いなど、まだ知らない。
配信を切り、スマホをポケットにしまおうとして──気づいた。
懐に、白い封筒が入っている。
差出人の名前はない。
ただ、金色の文字でこう書かれている。
——
Invitation
Tonight’s Race
——
ラヴズオンリーユー
「……え?」
彼女は一瞬だけ息を呑んだ。
フィガロが去った時──ほんの一瞬、距離が近かった。
封筒の中には、
ゼロバンゲートが走る“個人開催レース”の招待状。
光の世界の女王は、
知らぬ間に影の舞台へ招かれていた。
フィガロが持っていたラヴズオンリーユーのマスコット。
ウマ娘には、推し活用のちびキャラ風グッズを持ち歩く文化があるので、
「ラヴちゃんの熱心なファン」を表現する小道具として登場させてみました。
元ネタは「めにしゅき♡ラッシュっしゅ!」のMVに出てくる、あの感じです。
ところで、フィガロはどこでそれを手に入れたんでしょうね?