ジュノ港。
ジュノ大公国の一番下にある橋であり、その名の通り港である事に特化された橋だ。
冒険者が物の取引をする競売所があるとはいえ、この港にやってくる冒険者が利用するのはもっぱら港にある船だろう。
それは海を渡る船ではない。
空を飛ぶ船だ。
右手には海が広がっていた。
橋から身の丈三つぶんほどの下に、青というより黒に近い色の海がうねっている。
潮の香りが鼻を突く。風が頬を打った。横殴りに吹きつける冬の風に霧雨魔理沙の目から涙が零れそうにある。
目をパチパチとしばたたせた。
右手の壁。その先の向こうに目を向ければ波止場がある。
桟橋が、海に向かって突き出ている。
ただそれは桟橋であるが、形としては妙であった。海に向かって開いた「U」の字の形に見える。
普通の船であれば二隻ぐらいはとめられるだろうか?それでも開いた口の間に一隻だけしか停泊できないだろう。
その波止場に続くであろう建物の入り口には衛兵が立ち、衛兵の先に階段がちらりと見えた。
空気を切り裂くような音が聞こえた。
空の向こうからだ。
何度も見ているはずなのに、それの迫ってくるような圧迫感は感じられずにいられない。
それは船だ。
世界を行き来する空を飛ぶ船。
形は大海原を渡る機船と変わりない。大きな風車のようなプロペラを、前後に六つを付け、それで空を飛んでいる。
音の正体は、このプロペラなのだ。
音は船が波止場に近付くと、回転が落ちて低い音になっていくが、音そのものが大きくなるばかり。
船の全体像がはっきりと見えるようになった。
大きい。ひたすら大きい。
近くで見れば、この船の上に家を二つぐらいは建てられそうだと分かってしまう。
プロペラの回転が終わらないうちに船は海に落ちた、
大きく沈み込み、周りに白い波を立てる。
プロペラの回転が止まり、ゆっくりと向きを変え、桟橋に近付いていく。
「相変わらず、すっげぇ船だよなぁ」
魔理沙は、「はぁ」と感嘆の息しかでない。
空を飛ぶ事自体は珍しくない。なぜなら幻想卿の住民である彼女は、日常のように愛用の箒で空を飛んでいた。
だが、飛空艇のようにここまで巨大な船を魔法の力を使わず(動力はクリスタルだが)に空を飛ばしているのが驚きなのだ。
しかも速度も充分早い。
徒歩で行けばジュノから三国に行けば五日から一週間はかかる距離を、飛空艇はわずか五時間もかけずに辿りつく。
「確かに凄いよねー。一度でいいから乗ってみたいかも」
ルーミアは木製の箱を足場にし、低い身長のせいで見にくい波止場の先を見ていた。
「飛空艇に乗るにはパスが必要だとか。ま、私達には乗れませんね」
メモ長のようなものにさらさらと何かを書いていく射命丸文。
書いている内容は分からないが、もしかしたら飛空艇の事を書いてるのかもしれない。
「パスねぇ。どうすりゃ取れるんだ?」
「えー。確か三国のパスが50万。辺境のが15万で発行できるみたいですよ?しかも一人分で50万なので六人分だと300万かかりますね」
「げぇ…」
とんでもない額だった。
ただでさえ装備や魔法諸々で金欠だと言うのにその馬鹿げた金額。
300万もあればいったいどれだけの博麗一家の命綱である豆腐を買えるか…さっと計算するだけでも軽く30年分になる。
ボロ神社である博麗神社を立て直しても、お釣りがくる程だ。
「今の私達じゃ途方もないぜ…」
「冒険者ってのは金がかかりますからねぇ。でも意外ですね。そんなに飛空艇に乗りたかったので?」
「やっぱ一度ぐらいは乗ってみたいだろ」
飛空艇はヴァナを主張する代表的な存在だ。
水晶大戦終結後、ジュノ大公カムラナートの肝いりで軍事兵器であった飛空艇の民間使用と運営研究組織として飛空旅行社が設立された。
その後、貧弱一般人には手が届きにくいとはいえ、冒険者の間には比較的に利用されている交通手段となっている。
冒険者であればジュノから依頼されるミッションで著しい功績を上げた場合、発行される時もある。
「でも飛ぶぐらいなら幻想郷でもやってるよね?」
「ばっかだなぁ。自分で飛ぶのと何かに乗って飛ぶのじゃ全然違うぜ。知らないけどきっとそうだぜ」
確かに飛ぶのは幻想卿では普通であった。
ルーミアの言いたい事が分かる魔理沙であるが、同じ"飛ぶ"でも違いがあると考えていた。
「あーあー。幻想郷にも飛空艇がこねぇかなー。そんでタダで乗れてよー」
「あれが幻想入りしたらそれはそれで大騒ぎになりそうですけどね…」
魔理沙の目には飛空艇が再び飛んで行こうとするのが見えた。
船の行先はバストゥーク共和国だ。
技術大国であり、飛空艇の船体設計に携わった天才技師シドの住まう国。
幻想郷とヴァナ・ディールが融合して一年近くは経つが、それでもあれほど巨大な船は流れ着いていない。
もし来れば幻想郷は大騒ぎになるだろう、と文は考えていた。
そして魔理沙は知らない。
幻想郷に帰った時、異変の解決に空を飛ぶ船を追いかける事を。
それは飛空艇とは違う、聖輦船と呼ばれる古い船と、その乗り手達の出会い。
今はただ、世界を飛び続ける飛空艇を見つめていた。
ジュノ居住区は城のような造りになっている。
あるいは塔か。海の底から建てられ、螺旋階段を巻きつけた塔だ。
ジュノの住民と冒険者のほとんどはそこで暮らしている。
塔は上下の何階層にもなり、あちこちが階段で繋がっている。
複雑な構造をしているため、道の全てを知っている者は地元の住民であっても少ない。
冒険者の住まう宿であるモグハウスの部屋には、六人の少女がいた。
博麗霊夢は机に肘を置き、手を組んでいる。
「重大な事を言わなくてはならないわ…」
重苦しいふいんきが部屋を包み込む。
「単刀直入に言うとね…
金がない。恐ろしいぐらいに金がない。
具体的に言うと一番安い腕の部分の防具を買えないぐらいに金がない」
霊夢達がジュノに滞在してすでに一カ月近くが経とうとしていた。
冒険者として依頼からミッションまでこなし、更に力量も上げている。
だが、順調に力量を上げていき、問題が生じた。
装備を整えるための資金が足りないのだ。
依頼をこなせば報酬金を渡されるとはいえ、六人分の装備代と三人分の魔法代にかかる金額はsYれにならない。
彼女達の装備している物も力量的に見れば一回り、二回りも下の代物だ。
雑魚ならともかく、とてもつよそうに見える魔物相手だと力不足と言わざる得なかった。
霊夢の着る拳法着も、一カ月前からの着ている大地の衣から変わっていない。
魔理沙とルーミアは、黒を基調とした胴衣であるシアーチェニックを着ているが、これだけでアーティファクトまで持つと言われる防具といえども防御力に関しては不足気味だ。
一応、白魔道士のルーミアだけはフード付きのクロークを着ているが、これでもまだ不安が残る。
メイン盾の妖夢も例外ではなく、プレート製の鎧も胴体と両脚しか買えず、残りの部分はスケイルアーマーの一種である百人隊長制式鎖帷子だ。
文のほうは、鎧というよりおしゃれ装備として取引されるガンビスンを装備している。
ジュノにある大使館の受付係が着るのと同じ代物であった。
最後にアリスだが、妖夢が装備していた百人隊長制式鎖帷子の胴体部分と両脚部分を身に付け、残りの部分を買い揃えている。
「あー。だいたいどのぐらい足りないんだ?」
「六人分の防具を新調するとなると…だいたい10万。武器を入れて15万。
更に指輪やネックレス、覚え切れてない魔法を入れたら20万は超えるかも」
アリス・マーガトロイドの言葉に魔理沙は吹いた。
もし茶を飲んでれば向かい合わせになっているルーミアの顔に直撃していただろう。
飛空艇のパスで50万なのだ。装備を新調するのにその半分ぐらいの金額が必要になる。
指輪などの補助の装備は別に無くても問題はないだろう。
魔法の力で作られたそれは、装備した者に魔法の加護を与えるが効果としては微々たるものではある。
それでも15万。高い金額である。
「私はもうすぐ楼観剣が使えるから特に武器はいらないんですけどね」
力量が上がっている魂魄妖夢の実力は、あと少しで二本の刀を使えるようになりつつある。
まだ実践では使えないが、両手刀の武技の練習に入っている。
現在装備している両刃の片手剣であるハンティングソードもいい武器であるが、すでに妖夢の力量を考えるともう少しいい武器が欲しいといった所である。
「普通に依頼をこなしてもこの金額は貯まらないわ…こうなったら三カ月は湯豆腐生活を…」
「さすがにヴァナまで来て三カ月の湯豆腐はやめてくだしぁ;;」
これからの食事は湯豆腐で過ごそうとする霊夢に、ルーミアは涙ながらも止めようとする。
「こうなったら、あいつにいい稼ぎがあるかどうか調べてもらうしかねぇな」
「あいつ?」
魔理沙の言う「あいつ」。
ルーミアは気付かないようだが、文は誰であるか気づいたようだ。
「ああ、なるほど。彼なら知っているでしょうね」
「だろ?じゃあ、行こうぜ」
少女達が立ちあがり、扉を開ける。
向かう先はジュノ下層にある宿屋である海神楼。
豪華な内装とサービスに定評がある高級旅館であるが、泊まる事が目的ではない。
宿の奥にある裏ギルド。天晶堂のボスに会いに行くのだ。
ジュノ下層にあるマーケット・ブリッジ。
右手側には何もなく、木枯らしの吹き渡る蒼い海しかない。
仰げば、空はどこまでも澄み切った青空をしている。
少女達は、橋の左手へと歩いていく。
左手は上下三層にもなる商店街だ。
広い橋の片側に店が立ち並ぶというジュノならではの眺めが広がっている。
すでに滞在して一カ月。
それでも見ていて飽きないのがジュノという国だ。
通りには多くの人だかりができている。居住区に住む人達は、寒さに身を震えながらも買い物に余念がない。
通りに賑わいから離れたところにある店まで歩く。
看板には宿屋を意味する灯火の絵。海神楼だ。
扉を開き、中に入れば、広々とした石の床に隙間なく敷かれた絨毯に足が沈み、音がしない。
色鮮やかに赤く染められた、毛足の長い絨毯。
「これ、売ったらどのぐらいするのかしら?」
思わず霊夢はそう零してしまう。
海神楼に使われる一つ一つの品が腕のある職人の手によって作られた高級品だ。
それこそ今は貧乏の霊夢達に縁がないぐらいに。
そのままフロントに歩いていくと、ミスラの受付嬢がいる。
「いらっしゃいませ」
微笑みながら受付嬢は、お品書きを差し出しくれる。
板に、品目を羊皮紙がピン止めされている。
左には部屋の料金表が、右には軽めの食べ物の名が並んでる。
"おにぎり" "にんにくせんべえ" "ウナギの串焼き"
この店の名物料理であろうか。それにしても庶民的なものである。
が、ここに来たのはそれを買うためではない。
霊夢は細い指でお品書きの一番下、何も書かれていない部分を叩いた。
受付嬢は表情を変えずに言った。
「特別メニューですね?」
唇は笑みをうかべたまま。だが、瞳に笑みは消えた。
「では、天晶堂会員証を」
「これでいい?」
霊夢はカードのようなものを取り出し、受付嬢はそれを見ると、テーブルに置かれた小さな鐘を鳴らす。
音と応じて、突きあたりの扉が開いた。
扉を通る時に、立ち入り禁止の札が掛かっているのが見えた。
細い廊下を抜け、階段を下りて階下へ。
この先に世界の貿易を一手に受けるブラックマーケットの本部が存在する。
最後の扉を開ける。
部屋の中は思ったより広い。モグハウスよりも広々としていた。
ここも橋の一部だからか、天井は低かった。低い天井には梁が渡り、中央で交差している。
そこから角灯が吊り下がっている。
薄暗い部屋の右側の棚には数多の刀剣が置かれ、普通の市場では出回らない東方の剣であるカタナが売られている。
高価であるが、競売所で買うか、クリスタル合成で作るか、それとも天晶堂で買うしかの三択しかカタナを入手する方法はない。
そのため、天晶堂のカウンターでは侍らしき冒険者が、店員らしき人と値段の交渉をしている。
売り物が置かれた部屋の奥へと進み、扉を開けると、そこには目当ての人物がいた。
「というわけで何か手っ取り早く稼げる儲け話をくれ」
「いきなり何を言っているんだ」
魔理沙の言葉に理解不能状態になるアルド。
若いながらも天晶堂の頭領である彼は、今日も闇系の仕事に精を尽くすばかりである。
「天晶堂会員証を渡したのは確かに俺だが、それは天晶堂の物を買ってもらうために過ぎん。
なぜ一介の冒険者に過ぎんお前らにそんな話をしなくてはならないだ?」
「ケチケチすんなよ、アルド。私とお前の仲じゃないか。細かい事に気に過ぎるとハゲるぜ」
「意味がわからん」
突然の訪問者に溜息を吐くアルド。
最近、気苦労が増えた気がする。更に言うならばこれから先も苦労が増えそうだと予感してしまった。
天晶堂に入るには天晶堂会員証が必要となる。
一か月前、雄羊の悪名高い魔物の角を取りに行くアルドから依頼後に渡され、自由に天晶堂に入れるのはそのためだ。
「儲け話はないわけではないが…」
「本当か?!早く教えるんだぜ!はやくwはやくwはやくw」
「ええい!急かすな!」
机に置かれた大量の羊皮紙。
紙には様々な情勢や、物資の供給、それによって起きるであろう金の動きが書かれている。
その紙を丁寧に脇に置き、一枚一枚、手に取っては目を動かし頭の中で読み上げていく。
「そういえば…プリッシュはどこにいったの?」
霊夢は辺りを見回すと、一人だけ誰かが居ない事に気づく。
アルドが雇った冒険者であるプリッシュがいないのだ。
いつもなら天晶堂でだらだらとしてたり、依頼で外に出ていたりする。
「プリッシュか…あいつならもうここにはいない」
「え?依頼とかじゃなくてですか?」
「ああ。五日前に近東のアトルガンに行くと言って、それっきりだな」
妖夢の問いにアルドは答える。
一級廃人の腕前に加え、豪快な性格をした少女。
こうしていなくなると寂しいものではあった。
「私に技を教えるって言った割には自分からいなくなるなんて無責任ね…せっかく形ができたのに」
霊夢はいなくなったプリッシュに不機嫌そうな顔をした。
プリッシュは、筋があるという理由で霊夢にモンクの技を教えていたのだ。
めんどくさがり屋の霊夢であるが、プリッシュから教えられた技をようやく形になってきたというのに教えた当人が消えているのである。
「今頃何をしているか…面倒な事を引き起こさなければいいんだが…」
プリッシュは一種のトラブルメーカーを抱えている。
行く先で面倒事を起こすプリッシュの姿を思い浮かべ、アルドは本日二回目の溜息を吐いた。
東方幻想鉄
第七話「ギルを稼ぎたくて稼ぐんじゃない稼いでしまうのが冒険者」
ミンダルシア大陸の東、エラジア大陸を版図とする国家。
西端はググリュー洋を望み、東端は極東諸国と境を接する広大な領土を有する大国で、宗教的権威と世俗的権威を兼ね備えた絶対君主「聖皇」によって統治されている。
その国の名はアトルガン皇国。
水晶大戦の折、アルタナ連合諸国、中でも最大の通商相手だったタブナジア侯国は、アトルガン軍の参戦を切望した。
再三の援軍要請にも関わらず、同国は孤立主義を貫き、ついに派兵しなかった過去がある。
近東とも呼ばれ、近年になってマウラとの交通が敷かれるようになると、こぞって冒険者がやってくるようになった。
腕のある冒険者はジュノからアトルガンへと拠点を移し、常に何百もの冒険者が皇国の首都を賑やかにしている。
市内は人民街区、辺民街区、皇民街区の3つの街区に大別される。
人民街区。アルザビ。
広大なアトルガン皇国領の西半分を司る首都で、高い塁壁で幾重にも護られた堅固な城塞都市。
石造家屋の屋根を連ねて通路とする多層構造の街並は、さながら迷宮のようである。
まだ市民権を付与されていない住民や市民権を剥奪された元皇民が暮らす、比較的新しい街区。都市の外周に位置しているため、常に蛮族の脅威にさらされている。
辺民街区。アトルガン白門。
貿易商や傭兵、冒険者など、主に国外から皇都に流入した者や、彼ら相手の商人や職人が住んでいる雑多な雰囲気の街区。
北に内海、南に外海に面した港があり、皇国の西の玄関として機能している。
アトルガン貨幣の両替や、アトルガン名物の茶や菓子が食べられる茶屋シャララト。
更にアトルガンを代表するからくり、オートマトンの工房がある事で知られている。
皇民街区。
ひときわ高くそびえる白壁の内側にある街区。豪奢な皇宮や軍施設、そして皇民の邸宅が建ち並ぶが、
皇宮白門の先は市民権ある者と聖皇の許しある者しか、立ち入ることすら許されない。
三つの街区で構成された国であるが、この街では一つだけ、大きな危険がある。
それは、常に三つの蛮族の脅威を受けている事だ。
全身が鱗で覆われたトカゲ人間。
皇都アルザビの南西にマムージャ蕃国と呼ばれる国家を構成する獣人。
マムージャと呼ばれる蛮族であり、彼らの言葉でマムージャとは「麒麟の眷族」という意味を持つ。
死者の軍団を率いるは妖艶な姿をした獣人。
上半身はヒュームの女性、下半身は毒蛇の身体のように見えるラミア。
近東に割拠する他の獣人に比べて数こそ少ないものの、人間の兵士の骸を操って死者の軍団を編制し、暗礁域を拠点に一大勢力を誇っている。
そして最後にゼオルム火山一帯に割拠し、アトルガン皇国に敵対している大柄な獣人。
巨人と同じぐらいの体格ながらも、その肉体は堅固にして強靭。
トロールは自らの肉体を改造をしながら過酷な環境を生き延びているのだ。
その蛮族がアトルガンが攻める理由は、アトルガンの秘宝である「魔笛」だ。
アルザビにある封魔堂と呼ばれる施設に安置された魔笛は、不可聴の音を奏でる。
初めて魔笛がアルザビに持ち込まれたのは、同国において鎖死病が大流行した時であり、当時の聖皇は病に苦しむ民、そして内憂外患の皇国を救わんとしてこれをどこからか持ち込んだとされている。
皇国と蛮族勢力、その各々が犠牲を生み出し、踏み越えてまで魔笛を死守せん、また奪わんとしている理由。それはこれがもたらす数多くの不思議な効果に因るものだからだ。
──《サンクション》をつけているものは、第一級の戒厳令が発令している間は、すべからく皇都防衛の任に就くべし。
皇都に警報の音が鳴り響く。
どうやって響かせてるのか分からないが、甲高い女性のような音がアルザビに響いた。
冒険者はそれを聞くとアルザビに向かい、民間人は家の中に入り、扉の鍵をがっちりと閉める。これから起こる戦いに巻き込まれないために。
防衛線が始まるのだ。
攻めてくる蛮族からアトルガンを守り通す戦いが。
叩きつける鋼の音。
その門はわずかな力で支えられている。
皇都の外周に位置するアルザビには外に面して二つの門がある。
ワジャーム樹林へと開いた門とバフラウ段丘へと開いた門だ。
門を執拗に叩きつけるのは全身に鎧を着込むトロール達だ。
今回の防衛線の相手はトロール傭兵団のようである。
彼らは自分の身体よりも遥かに大きい槌で何度も門に叩きつける。
塚の上から、矢を射抜かれ、魔法で仲間を倒されても、門を壊すまで槌を打ち続ける。
鋼の門がたわんでいく。
勢いに押され、歪む。
叩きつける鋼の音。
どれぐらい叩きつけただろうか?
扉に亀裂が走った。
それは皇都の門を支えていた閂が砕け散る瞬間でもあった。
トロールの中でも一際大きな肉体を持ち、白い髭を生やした団長らしきトロールが腕を振り下ろす。
蛮族達は、一切の動きが乱れることなく、アルザビへと進軍を開始した。
アルザビでは戒厳令が発令されるとその様相を一変させる。
普通の人々は最初の警報が鳴り響いたと段階で、全員が手近な建物に隠れ、扉を閉めると窓も閉め、内側からも鍵をかける。
運悪く外に取り残されたものは、より安全なアトルガン白門に逃げる事は叶わない。
警報が鳴る前に大通りの中門が閉ざされてしまうからだ。
冒険者達は防衛線の始まる前からアルザビで待機している。
彼らはリンクパールを用いて都市の外を行軍中の軍団を誰かが見つけ、リンクパールを通じて知らせているのである。
このやり方には皇国軍も舌をまくほどであり、街の人々も冒険者達の姿が増えるのが防衛線が近い目印になるとありがたがられている。
まだ太陽が高く大地を照りつかせる時刻。
そこに第一級の警報が鳴り響いている。
市井の人々には戦いのときにはなすすべなどなく、窓を閉め切り、部屋の奥で体を丸めるしかない。
戦いは皇国軍兵士と《シグネット》とは別の傭兵の証である《サンクション》を身に付けた冒険者の役目であった。
五蛇将と呼ばれる将軍を筆頭にした皇国軍と、《サンクション》を受けた傭兵達が、乗り込んでくる蛮族を迎え撃つ事になる。
しかし、いくらリンクパールがあるとはいえ、正確に防衛線が始まるのを予測するのは難しい。
ゆえに冒険者の常識である"任務に合わせたパーティを組む"というのができない。どんな敵が攻めてくるか分からない上に、いつ攻めてくるのかもバラバラだ。
初めてアトルガンで傭兵が起用された時、この事に戸惑いを覚える冒険者は後が立たなかった。
だが、それもわずかの事。
高い順応性を持つ冒険者は、目に入った他の冒険者を捕まえてはどんどんと小さな隊。つまりパーティを組む事を覚えた。
自ら得意とする技や魔法を叫び、冒険者として培った経験を生かし、あっというまに六人から十八人の小隊を作り上げてしまった。
時が経つと、傭兵の中には皇国軍を進んで補佐をする者も現れた。
特に五蛇将は、防衛線で最も優先するべき物である「魔笛」が安置された封魔堂の封印を受け持っている。
更に実力も一級廃人と同等かそれ以上の実力者であり、皇国にとって失えば痛手となる。
それを理解するやいなや、彼らを守る事に本務する傭兵が現れたのだ。
ともわれ、防衛線はこうして始まる。
五蛇将とそれを補佐する皇国軍兵士。そして500人を超える冒険者達。
門が砕かれ、皇都に蛮族が到着する。
それらと戦い、「魔笛」を奪うために攻めてきたトロール傭兵団の到着だった。
それに合わせ、五蛇将達は兵の士気向上のために宣言を高らかに上げる。
五蛇将を束ねるはエルヴァーンの総大将。手に持つは聖皇を守り、敵を切り裂く霊剣。天蛇将ルガジーン。
「諸君!
皇国の未来は、諸君の双肩にかかっている!
勝利の栄光を聖皇さまに捧げん!!」
その魔法はヒュームでありながら強力無比。羅刹の名で恐れられる実力に偽り無し。炎蛇将ガダラル。
「皇国の興廃……この一戦で決するッ!
屍は俺が拾ってやる。
ものども、安心して死ねッ!」
数多の戦場を知る歴戦の勇士。"戦う事の真の意味"を知るガルカの拳は重い。土蛇将ザザーグ。
「ガハハハハハハッ!
敵さん、 もう勝ったつもりでいやがる。
ひとつ、教育してやるか!」
東国の英雄ヨイチと並び称される弓の天才。ヒュームの娘が射抜く矢は風の如し。風蛇将ナジュリス。
「みなさんの勇気を私にください。
この戦い……みなの心をひとつにすれば、必ず勝てます……」
聖皇より送られし故郷の武器で戦うはミスラの少女。想いが込められた棍棒に砕けぬ物無し。水蛇将ミリ・アリアポー。
「フンッ、たかが蛮族じゃないッ。
みんな!
一気に蹴散らすよッ!!」
宣言と共に、蛮族は「魔笛」を求めて襲い掛かり、傭兵はそれを阻止するために遮った。
短いようで…長い戦いの始まりだった。
「やべぇ!ガダラルのとこにいったぞ!止めろー!!」
冒険者の一人が叫ぶ。
トロール傭兵団は、トロールだけで構成されていない。
ゲル状の肉体をもつ軟体動物であるにも関わらず、目敏く獲物を探すぎょろりとした大きな眼とずらりと牙の並んだ伸縮自在の口を備えたフラン。
人間と同じぐらいのサイズに大きくしたダンゴ虫のような魔物ワモーラ。
しかしそれは幼虫の姿でしかない。羽化すれば巨大な蛾となり、触れれば灰になってしまう程の炎の鎧を身に纏う。
赤い芋虫の姿をしたエルカ。毒のブレスではなく、炎のブレスを吐くその姿は、ミンダルシア大陸のクロウラーとは別物だと分かるだろう。
それ以外にも、ガス生命体であり、浮かぶ爆弾とも異名を持つボムやクラスターなどがいる。
その魔物達が向かう先は炎蛇将ガダラル。
五蛇将の中で最も脆い彼を狙っているのだろうが…そのやり方は浅はかにも愚かしい。
「塵共が!」
愛用の鎌を振り、ヒュームの身ではあり得ぬ、馬鹿げたまでの"魔力"を引き上げ、魔法を唱える。
その質は、魔道士ではない者ですら"魔力"がガダラルから見えてしまうほど。
「ファ・イ・ガ~!!」
全身から"魔力"を放出するように魔法は完成する。
火の元素が極限まで高められ、それは一種のビッグバンにも等しい爆発を引き起こす。
その熱量はトロールの鎧ごと溶かし、あるゆるものを消滅させる勢いであった。
炎に耐性のあるはずのエルカの体が燃え、ワモーラは全身を炎の鎧を超える熱量の炎に包まれながら灰になっていく。
フランはゲル状の体を震わせ、苦悶の表情を浮かべながら蒸発していった。
「フハハハハハハ!!ウジ虫に過ぎん貴様らがこの俺に敵うものかぁ!」
高笑いを上げながらも敵を文字通り殲滅する姿は、正に羅刹の名に相応しい。
「ばっかやろうー!ハイになってんじゃねーぞ!!」
先ほどの冒険者が叫んだ。
確かにガダラルに迫ってきた魔物を、たった一発の魔法で殲滅せしめた。
だが、彼の膨大な"魔力"でも倒し切れなかったのがいた。
「エアリアル・トーピトゥだ!!下がれぇぇぇぇぇ!!!」
ボムが、巨大化していた。
子供の頭ほどの、燃え盛る炎の塊だったそれは、ガルカぐらいの大きさになっていた。
膨らんだり、縮んだりすると脈動を繰り返すそれは、ダメージを受ければ受ける程、巨大化するボムであった。
宙に浮かんだまま、動きが止まる。
ぶるっと震わせる様はまるで生き物のようで…爆発する合図でもあった。
「バファ…!」
白魔法の使える皇国軍兵士や傭兵が、炎の加護でもって、火に対する耐性を得ようとするが、その前にボムは更に大きく膨れ上がり、弾けた!
目の前が真っ赤に染まり、全身に熱風が襲い掛かる。
息を吸うと胸が焼けそうになるぐらいに苦しい。
弾けたボムの体は、大小の炎のつぶてとなって一帯に飛び散る。
まるで流星のように辺り一面を炎の雨を振らせる。
中には生きながらに全身を炎に焼かれる者もいた。
「め…がみ、よ……いやす、の…はかぜ……そは、めがみ、のとい…き……」
白魔道士のアーティファクトに身に包む女性が、傷を回復するための魔法を詠唱している。
空気が熱く、肺が焼けるような状態になっても、辛抱をしながら魔法を唱える。
「めがみの、ちから、よ…いま、ここにあれ!」
倒れながらも杖を振るい、魔法を唱えた女性を中心に癒しの風が吹き込む。
ボムの自爆によって引き起こした熱い風を鎮め、皮膚が焼け爛れ、一歩の動けなかった体に力が入る。
癒しの術として最高峰の"ケアルガⅣ"は、傭兵、皇国兵を問わず回復させていった。
「熱い熱い熱い…!」
「落ち着け!もう炎は消えている!」
「誰か来てくれ!精神が今のでやられた奴が何人かいる!」
「ガダラルさん、もうスパイク体操だけでお願いします^^;いやマジで」
「・えちょ がだらーの活躍で味方に被害でるとか何だよksgwwwwwwwwミスwwwwww同じくスパイク体操お願いしまーすwwwww」
「もうらせつwいらないんじゃないかな」
「ええい!黙らんか、貴様ら!」
傭兵達からの散々な言われように切れるガダラル。
スパイク体操とは、ガダラルが敵が来るまで延々とブレイズ、アイス、ショックの三種類のスパイクを唱え続ける行動を現した言葉である。
敵対心も、先ほどのボムも関係ないと言わんばかりに範囲の魔法を連射する彼は当然のように敵に狙われやすく、更に倒されやすかった。
そのため、場合によっては役立たずにしか映らない彼は、黒魔道士ではなく墨魔道士っぷりを披露するため、傭兵達の間ではスパイク体操だけしてろよ脳筋がっ!と総意見であった。
「やべぇ!次来るぞ!ガダラルを脇に押し込め!またやられちゃ敵わん!」
「おい!貴様ら!何を!離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ボムが三匹一組になったクラスターや先ほど自爆したのと同じボム、更にトロールの大群が押し掛けてきた。
空気を読んだ皇国軍兵士は、また範囲魔法を放とうとするガダラルを脇の脇へと押し込んでいった。
「うぉぉぉし!」
巨大な拳がトロールの顔面をぶち抜き、派手な音が響く。トロールはゆっくりと倒れて行く。
土蛇将ザザーグの武器は、鍛えに鍛え抜かれたその肉体。
リアルではモンクタイプのその拳は下手な刀剣よりも凶器であり、ザザーグの拳が魔物に叩きこまれるたびに、頑健な肉体を持つ魔物は悲鳴をあげる。
「ザザーグ隊長!ナジュリス様にトロール兵が集中しており、苦戦との事!」
「なにぃ?しかし、今の状況で戦力は分けられんぞ」
トロール傭兵団の戦力は軽く見積もっても100体を超える大御所となっている。
いくら数が傭兵のほうが勝っているとはいえ、それでも一体一体の魔物と蛮族の強さは、個々の人間の強さを超えている。
ザザーグのいるエリアではそれなりに敵の数が多い。トロールこそ少ないが、その代わりにサソリやフラン、ワモーラなどのやっかいな魔物が多かった。
「兄貴ー!俺達傭兵に任せろって!」
「そうそう!さっさとナジュリスさんを助けに行けってーの!」
冒険者は剣を振るいながらも、ザザーグ達にナジュリスの救援に向かえと言ってきた。
ザザーグが傭兵達から「兄貴」と慕われてるのは、その漢らしさと豪快な性格、面倒見の良さを兼ね備えたかっこいい漢だからだろう。
皇国軍兵士のみならず、冒険者からも高い人気を持っていた。
その傭兵達から言葉に、ザザーグは豪快に笑う。
「ガハハハハッ!さすがお前達だ!良し!ここは任せるぞ!」
ザザーグは自らが担当する持ち場を傭兵に託し、ナジュリスのいるエリアに急ぐ。
邪魔になる魔物は傭兵が相手をし、進んでいく。
魔物の手によって砕かれた扉を潜り、トロールと鉢合わせとなった。
「邪魔だ!三途の川に渡してやる!」
ザザーグの体が、爆発したかのように"気"が膨れた。
膨大すぎるまでの"気"は余す事なく拳に注がれ、大気がまるで拳に引きつかれるように集まっていた。
"気"の輝きを受けて光の渦をまとい、ザザーグの拳は小さな風の竜巻をまとわりつかせたまま、まっすぐと突き出された!
突き出されたと同時に地面が割れ、派手に転ばすと拳は綺麗に無防備となったトロールの肉体を貫いた。
技の型としては格闘の"空鳴拳"に似ているが、その威力は桁が違う。
武技である"陰流砕巌衝"を放ったザザーグは、倒したトロールに目を暮れずナジュリスのいるエリアに向かい、走っていった。
美しき指が矢を手に取り、弓の弦にかけ、引いていく。
しなやかに弓が曲がっていく。
的に中てる一連の所作は、優れた狩人であるならば必要はない。
ただ、己の狙いたい時に狙えばいい。
風蛇将ナジュリスは、その点では天賦の才を持っていた。
如何なる構えからも矢を放てば必ず当たる。
理屈ではない。矢を射てば、必ず的に命中するのがナジュリスの弓なのだ。
矢を放つ。
しなやかに曲がった弓は、弾力によって矢を飛ばす。
風を切り裂くように矢は真っ直ぐと飛んで行き、全身を鋼鉄の鎧で身を包むトロールの兜の隙間にある頭部に刺さった。
続けて矢を再び手に取り、弓を構える。
休む暇もなく、ただ矢を射て続けるのみ。
相手が生きている者であれば、確実に急所を狙うその腕前は本物だ。
それだけではない。
防衛線という乱戦した中でも彼女は決して冷静さを見失わず、それをやってのけるのだから大したものである。
「まだ、なのですか?救援は!」
どれだけ数を減らしても減らないような大群に、ナジュリスの精神が徐々にだが限界は近付いている。
トロールやサソリならまだいい。成虫となったワモーラも、炎の鎧を貫通する勢いで矢を放てば問題もないだろう。
だが、普通の生物とはかけ離れた魔物であるフラン、ボムが相手になると、ナジュリスの矢でもさすがに一撃では倒せない。
そうなると傭兵頼りになるのだが、その傭兵でも捌ききれないほどの数がいるのだ。
「あとすこしでザザーグのおっさんが来るんだってー!きゃあーー!きゃあー!」
東方の刀である片手刀を両手に持った忍者の娘は、数多の魔物におっかけられながらも、敵を引き付けている。
仮にもアトルガン皇国に置いて、将軍の座に就くザザーグをおっさん呼ばわりとは不敬罪として捕らえられてもおかしくない。
とはいえ、ガダラルを筆頭に、冒険者から好き放題に言われ放題になっている五蛇将は半ば諦めていた。
「そのまま引き付けて…!」
忍者娘を追いかけるのは大半がトロールだ。
いちいち一体ずつ倒しても時間の無駄だ。
矢を纏めてトロールぶんの数まで引き抜き、同時に弦を引き分け、構えた。
"気"を込められ、何十本の矢に等しく注がれていく。
「ナジュリス、行きますッ!」
宙に放たれ、風の元素に働きかけた矢は竜巻を纏った一閃となって、トロール達に降り注いだ。
全ての矢は等しく急所を狙い、外れる事なく命中していく。
追いかけていたトロールはナジュリスの奥義である"タイフォニックアロー"によって等しく倒れ、忍者娘は一息ついた。
「たすかったよ。もうだめかと思った」
人型の紙を手に持ち、術を唱えていく。
単体攻撃に対して万能を誇る"空蝉の術"だが、多対一では向かない術であるし、走りながら唱えられるものでもない。
「油断しないで!後ろに!」
「うぇ?」
後ろから無防備となった忍者娘を狙おうとしているサソリに、ナジュリスは即座に弓を構え、矢を射ぬこうとする。
あらゆる過程を無視し、ただ矢を撃つ事だけ考えた狩人の奥義、"イーグルアイ"。
だが、それよりも早くサソリは吹き飛ばされるように壁際に叩きつけられた。
「うぉぉぉい!ナジュリス!まだ生きてるか!」
「ザザーグ!助かりました!」
ザザーグの救援が間に合ったのだ。
先ほどサソリを殴り飛ばしたのは彼の拳なのだ。
呆れた程の剛腕である。
「こっわ…サソリもだけど、おっさんの拳がすれすれだったんだけど…」
「おっと、怖がらせしまったか?ガハハハハハハハッ!」
二人の将軍が協力し、次々と敵を倒していく。
元々は一騎当千に相応しい彼らに互いの弱点を補完し合えば敵などいなかった。
水蛇将ミリ・アリアポーの実力は五蛇将では新参ながらも随一を誇る。
元々、短剣をメイン武器に、ミスラの身軽な動きを兼ね備えた戦い方は天蛇将の剣と頭を踏み台にするほどだった。
多大な戦績を上げ、水蛇将に昇格した際に聖皇からの贈り物である武器と盾を使い始めた。それから短剣は使用していない。
送られた武器は故郷ツァヤのツァヤンローズウッドとツァヤンエボニーウッドで作られた棍と盾。
哲学の徒である彼女に刃は似合わぬ。聖皇からの言葉からミリが元ワラーラ寺院生徒である事を考慮しての事であった。
武器を変えても彼女の実力は変わらない。
白魔道士の道を進み、自ら強化魔法をかけると敵陣へと我自ら進んでは、手に持つ棍で殴りかかっていく。
「フンッ、なにさっ!」
トロールが身の丈程もある剣を振り回し、ミリはそれをギリギリまで引き付けてから回避する。
突き出された剣を上空に飛ぶ事で回避し、刃の上に着地した。
「隙だらけだよ、ばいばい」
棍が無防備になった頭を横から思いっきり殴り飛ばし、倒れるトロール。
身軽な動きを利用した戦いは白魔道士ではなく、シーフのようにも見える。
無論、白魔道士としての働きはしている。
傷ついた皇国軍兵士に"ケアル"を優先しているように、どこぞの脳筋とは違うのだ。
「ミリターーーーンあぶなーーーい!!」
「え?きゃあ!」
幼虫ワモーラがボールのように丸まりながら、ミリに向かって高速で転がり始めた。
ミリを手で飛ばし、盾でかばうのはナイトの傭兵だ。
高速で叩きつけれるワモーラの一撃に、ガンッと鈍い音があがる。
さすがにパーティのメイン盾と言われるだけあって、男は後ずさりしただけで、倒れずに耐えて見えた。
その直後にワモーラは、精霊魔法の連続直撃を受ける。
「てめー!【我】【我】のミリタソに何してんだー!」
「お前が!消滅するまで!魔法を撃つのを!やめない!!」
「ミリちゃーん!大丈夫?!怪我はない?!むしろそっちのナイトに汚されなかった?!!」
凄まじいまでのとばっちりを受けまくるワモーラ。あまりに魔法を連射するためか、ワモーラ以外の魔物も被害がでていた。
そのあまりの光景に、ミリは引いた。
「ふ、ふん!礼は言わないんだからねっ!」
だが、それはミリを護衛する傭兵には御褒美でしかなかった。
「ツンデレキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
「【ありがとう。】【ありがとう。】これで後十年は戦えます!」
「うぉぉぉぉぉぉ!ミリ様に敵対する蛮族を焼き払えー!!」
「【猫】【将軍】【くれませんか?】」
「やるわけねぇだろう、すっとこどっこい!」
「ミリタソは俺の嫁!」
「俺の嫁だろう、糞野郎。ぶち殺すぞ、ヒューマン!」
「やるか、ガルカの分際でぇ!!」
蛮族の戦いではなく、傭兵同士の戦いが起きかけていた。
ミリは泣きそうになる。
防衛線で傭兵が起用されてから、ミリを護衛する傭兵が後を絶たないのだ。
ボクッ娘、ツンデレ、強がり、猫耳…ミリにはよく分からないが、冒険者の国では、それが人気らしい。
そして見事に当てはまるミリは五蛇将の中でもっとも人気が高かった。
具体的に言うならば、現在、防衛線で参戦している傭兵は500人前後。
ガダラルに50人、ザザーグに80人、ナジュリスに90人、ルガジ-ンに100人の傭兵がついている。
そしてミリには残りの200人近い傭兵がいるのだ。
戦力も糞もない、ただ己の欲望に忠実な傭兵は、今日もミリを守り通すために戦うのみ。
「なんでボクのまわりはこんなのしかいないのさ~~!!」
彼女は傭兵が嫌いである。それは自由に動ける冒険者に羨ましさから出る嫉妬なのか分からない。
どちかと言えば、弱みを握られないため、というのが正しいだろう。
だが、それ以上に苦手なのが現れた事に、ミリの悲嘆の声がアルザビに響き渡った
五蛇将の頭目ルガジーンは、守備位置のウルタラム大通りを陣にしている。
封魔堂へ至る経路に位置することもあって、彼が率いる傭兵軍団と蛮族軍の隊長クラスの間で血で血を洗う決戦が繰り広げられる激戦地となる。
手に持つのはアルゴル。
アトルガン中興の祖にして、最大の英雄と称えられている人物、勇者バルラーンが帯びていたと伝えられるアトルガン皇国国宝の霊剣である。
敵を切り裂けば、傷口から火の粉を発し、もがき苦しむルガジーンの愛剣だ。
「でやあぁぁぁぁぁ!!!」
如何に膂力のあるエルヴァーンとて、両手剣を振り回すのは容易ではない。
しかしルガジーンは、アルゴルを軽やかに動かし、次々のトロールと魔物を一刀両断していく。
「天さんの相変わらずの強さに惚れる」
「でも俺ら完全にいらない子じゃね?」
「ミリタソのとこに行きたかった…」
傭兵達も負けじと敵を倒していくが、ルガジーンの無双っぷりには敵わなかった。
もう少し手数があれば、勝てるかもしれないが大半がミリのほうに向かっているのに加え、激戦区であるここからは動けない状況でもあった。
「数ばかりいようとも!」
体ごと回転し、両手剣を横薙ぎに振りはらった。
"スピンクラッシュ"を食らうトロールは、上半身と下半身が両断され、泣き別れになる。
そのまま"ホーリー"を高速で唱え、後ろから武技を放ち、隙を晒したルガジーンを狙おうとするトロールの頭に光の元素が集い、爆発した。
が、トロールは少しばかり頭を飛ばされても死なない。
肉体強化手術によって施されたトロールは、多少の致命的な致命傷を負っても、何の支障も無く動き続けるのだ。
トロールのハンマーが、ルガジーンを狙い撃ち、胴体にまともに直撃する。
トロールは充分な手応えを感じ、頬をにやける。だが、その後にルガジーンが吹き飛ばされずに耐えている事に驚愕する。
「我、護国の楯とならん!」
ハンマーの一撃は通用していなかった。
女神を信じ、女神に祈りし騎士は、如何なる攻撃をも無効化する加護を得られる。
「くじけるな、諸君ッ!
勝利の女神は我らと共にあるッ!!」
まだ敵が多くいる中で、ルガジーンの声が強く響く。
両手剣を構え、彼は勝利の道しるべとなるべく、必殺の剣技を放った。
「正義の刃、受けてみよ!」
右斜め上から斬り下ろし、そのまま左上に斬り上げる!
綺麗に「V」の字を描くルガジーンの"ビクトリービーコン"が、ハンマーを持つトロールとその背後にいる魔物達を纏めて消し去った。
五蛇将の総大将は伊達ではない。
その実力、勇者の称号を受け継ぐに相応しいもの。
アトルガン皇国の平和は彼の双肩にかかっている。
命を投げ出す勇気と覚悟、そして蛮族を打ち破り生き残る自信がある者は、彼の剣となり、盾となり、癒し手となることを決めた皇国軍兵士と傭兵の姿があった。
着実に蛮族の数を減らしていき、戦況はアトルガンが優位になっていく。
だが、それをただ見ているだけで終わらないのが蛮族であり、彼らの大将であった。
トロール傭兵団の長が傭兵達の目の前に現れる。
白い髭を生やし、褐色の肌を持つのは"脅威"の称号を持つトロール。
グーフールー・ザ・メナシング。
「関羽がでたぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
グーフールーの姿を見た冒険者が、アルザビ全土に広がれと言わんばかりの大声で叫んだ。
関羽とは冒険者の間で広まっているグーフールーの通称である。
東方の国、大昔の武将である関羽は、その見事な髭と一騎当千の強さを持っていたという。
グーフールーの情報がまだ出回ってない頃、700人近い傭兵をたった一人で千里行の如くなぎ倒す呆れた強さから、この通称が付けられたのだ。
その理由はグーフールーの強さ自身もさることながら、己の肉体に施された強化手術にある。
魔法を受けても彼には通用しない。元素の力が帯びていれば、それを片っ端から吸収し、傷を回復させるのだ。
だからといって、ただ殴りかかるだけの攻撃では傷一つ付かない強固なまでの耐久性を持っているため、普通に戦っては勝つ事ができない。
そのため、"挑発"などをして敵対心を稼ぎ、盾は攻撃が当たらない範囲までに逃げ切り、地道に攻撃を加えていくしかないのだが、
基本的に防衛戦での蛮族の長は最優先に五蛇将と「魔笛」を狙うため、そういった戦法が使えないのだ。
傭兵達にできることは五蛇将に辿りつく前に攻撃し続け、倒すしかない。
暗黒騎士が両手で扱う鎌でグーフールーの腹を両断する勢いで斬りつけるが、ガキイとまるで鋼と鋼をぶつけたような音に効果がまるでない。
モンクも拳でもって殴りかかるが、石の壁を叩きつけるような感覚に顔をしかめる。
むらがる傭兵をうっとうしく感じたグーフールーは、腕を一薙ぎした。
それだけで、何人もの傭兵が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
一級廃人相当の実力であるなら立ち上がっているが、三級廃人未満であればたった一撃で倒される威力であった。
前衛達がグーフールーにむらがる一方で、魔道士達は何もできない。
回復ならともかく、グーフールーに攻撃魔法を撃てば即座に回復するからだ。
前衛で殴りかかれば、脆い魔道士は一発でひっそりと裏世界で幕を閉じる事になるだろう。
傭兵の攻撃を無視しながらまっすぐと進んでいく。
グーフールーのまず向かう先は、大通りにいる天蛇将だ。
まだ閉められた大扉を拳で一撃で粉砕し、無理矢理だが道を作る。
扉の先にいる少女がそれを見て駆け抜けた。
藤色の長い髪を揺らしながら、グーフールーに目掛けて全力疾走である。
「こっから先に行きたきゃ…!!」
飛んだ。
よくぞ、ここまで、と言わんばかりに飛び、そのままドロップキックの構えでグーフールーの胸部に直撃した。
突然の一撃に後ずさり、蹴られた胸部を手にやる。
傭兵渾身の一撃を食らってもビクともしない鋼の肉体が、少女の一撃で崩されたのだ。
少女は、ドロップキックの状態から地面に落ち、片腕を使って、立ち上がると態勢を整える。
プリッシュは、指を指しながら吠えた。
「俺を倒してからにしな!!!」
拳を構え、グーフールーはそれを見て笑った。
「アロ、グーフールー、テサッタニラアザケキ?」
難解なトロール語が分からないプリッシュにはグーフールーの言っている事は理解不能状態だ。
もし翻訳係のモブリンが居れば解読してくれるだろう。
「人間様の言葉で喋りやがれ!こねぇならこっちから行くぜ!!」
そんなの関係ないと言わんばかりにプリッシュの拳がグーフールーに叩きこまれる。
鍛えて鍛えて鍛え抜いたプリッシュの拳は、強固であるはずのグーフールーの肉体を響かせていく。
傭兵の攻撃を無視し続け、先に進もうとしたグーフールーの足が止まる。
眼前の少女を「敵」として認めた証であった。
大きな手を拳に硬め、プリッシュに殴りかかる。
巨体に見合わぬ素早い一撃に、片腕でガードし、攻撃を逸らした。
少しばかりカスっただけで腕が痺れる。
まともに当たればいくらプリッシュでも致命的な致命傷は避けられない。
しかし彼女はそんな事を気にせず、殴って殴って殴り続ける。
グーフールーも、一撃を加えるために殴って殴って殴り続ける。
「何だありゃ?!女の子がグーフールー公と真正面で殴り合ってるぞ?!!」
「ありえん(笑)」
「もしかしてレベル99ぐらいあるんじゃね?」
「ふつくしい…」
それを見た冒険者は驚きが隠せなかった。
何せ、見た目が身麗しい少女が、怪物と真っ向から戦っているのだから。
ジュノからアトルガンに単身渡ったプリッシュ。
元タブナシア自警団のリーダーは、蛮族の長と激戦を繰り広げていた。
★
「これは天晶堂から依頼と見ていい。受けてくれるか?」
アルドから紙を渡され、その紙には絹糸の価格が書かれている。
一ダースで約12000Gとかなり高値だ。
「最近、冒険者がクロウラーの巣でクロウラーを狩る者が少なくなってな。絹糸の供給が途絶え、ロランベリーの畑に被害がでている。
絹糸を一ダースで12000で我々が買い取ろう。そしてクロウラーの駆除をこなせば政府から奨励され、少しばかりだが賞金も与えられている」
ジュノ下層の橋から進めるロランベリー耕地は、ヒュームやエルヴァーンが好む果実、ロランベリーを栽培している広大な果樹園だ。
段々畑にして、日当たりや通風に微妙な差をつけることで、年中収穫できる工夫が施されている。
爽やかな甘みとぴりりとした刺激的な酸味が舌に残る独特の味がするロランベリーだが、食後の清涼感もあって、多くの人々に愛されている。
その魅力たるや、肉食中心の獣人ですら惹きつけ、ゴブリンの夜盗やヤグードの窃盗団と戦うため、どの畑も果実衛兵が雇われ、巡回警備している有様だ。
そしてその果実を食い潰す害虫がいる。
黄色の巨大芋虫であるクロウラーだ。
クロウラーはロランベリーの畑近くに巣を作り、女王を筆頭に膨大な数になるまで繁殖している。
ジュノ政府は冒険者に何度か駆除依頼を出すが、何故かジュノ軍による本格的な殲滅作戦が行われたことはかつて一度もない。
これは、彼らの一種が吐く絹糸が高級織物の材料であり、ロランベリー以上にジュノに莫大な富をもたらしているからではないか、と実しやかに噂されている。
何はともわれ、アルドからの金儲けはクロウラーを駆除すると同時に絹糸を取ってくる事のようだ。
断る理由もない。依頼を受け、さっそくクロウラーの巣に向かおうとする。
すると文だけが戻ってきた。
「どうした?」
「あやややや、いえ、アルドさんに聞きたい事がありましてね」
文は、言葉を続ける。
「氷河とその先にある遺跡の地図…これを探してほしいんですよ」
「氷河と遺跡…ボスディンとソ・ジヤ…いや、その先というとフェ・インか?
どちらにせよ、その地図は基本的に冒険者であっても非売品だな」
「ええ、まだ先になるでしょうが、依頼で行かなくてはならない場所ですからね。どうです?」
文の言う依頼とは、幻想郷からヴァナ・ディールを送った原因である八雲紫からの事である。
「氷河に住まう龍の爪を取りに行け」。内容はまだはっきりとしないが、それでも氷河に向かうのは確定的な事であり、
ボスディン氷河は、広く、道が複雑で地図が無ければ簡単に迷ってしまう程だと言う。
そのため、非売品で何処にも売っていない地図を、非売品を売る天晶堂のボスであるアルドに探して貰おうと、文は考えたのだ。
「わかった。お前達の依頼が完了次第、探してやろう」
「感謝しますよ。では」
扉を開け、文は出て行く。
一人になったアルドはまだ溜まっている闇系の仕事に取りかかるのであった。
★
丸い頭と細長い身体。
節を伸ばした全身は、一般的な男性の身長よりも巨大な芋虫だ。
クロウラーは、霊夢に襲い掛かろうとする。
だが、
「今氏ね!」
モンクタイプの右拳が鈍い音と共に貫く。
「すぐ氏ね!」
続けて左拳が頭に叩きこまれ、
「骨まで!」
拳に"気"を込め、くるりと回転しながら裏拳をお見舞いする。
「砕けなさい!!」
胴体に"バックハンドブロー"を食らい、キィと虫の鳴き声を発しながら動かなくなるクロウラー。
倒されたクロウラーに近付くのは魔理沙だ。
小さな短剣で口許の部分を切っている。
「駄目だ。こいつ、持ってないぜ」
「しけてるわけねぇ…」
「次、来ますよ!」
クロウラーに絹糸を持っていない事に落胆し、妖夢が次のクロウラーがやってくる事を知らせる。
ジュノからクロウラーの巣まで遠く、チョコボでも数時間は飛ばさないといけない。
ロランベリーが栽培された広大な耕地を超え、巣に辿りつくと入り口近くからいるクロウラーを片っ端から殲滅していった。
絹糸はクロウラーの吐く粘液や、繭から取れる。
倒したら魔理沙が調べ、その間に文がクロウラーを釣ってくるのだ。
入り口近くのクロウラーならこの一カ月で力量を上げた霊夢達なら楽な相手だ。
クロウラーの巣に入ってすでに一時間とちょっと経っている。
入り口から先に進んだ通路、先にある広場までクロウラーの多くの死骸が転がっていた。
「この辺りにはもういませんね。狩り尽くしたみたいです」
「あら?随分早いわね」
釣りから戻った文は、クロウラーを引きつれていない。
どうやら広場を中心に、クロウラーを狩り尽くしたようだ。
「魔理沙ー、絹糸どのぐらいまで集まったー?」
「ちょっと待ってくれ」
鞄の中に無造作に入れられた絹糸の山。
魔理沙とルーミア、アリスはそれを整理しているようだ。
一つ一つ、丁寧に分けて行く。
「2ダースぐらい集まってるな。これで24000Gか?」
「まだ全然ね…。クロウラーはもうこの辺りにいない事だし…奥に行く前にちょっと休憩しますか」
狩り続けて一時間、休まずにやり続けたので、疲労がたまっている。
奥に行く前に少しばかり休憩する事に決めた。
洞窟の壁を見れば、緑の苔で覆われ、洞窟の壁は淡く光っている。
ちょうど満月の光を浴びているような明るさだ。
洞窟内だと言うのに、角灯いらずなのはこの苔の御蔭なのだ。
「ここにいると思い出すなぁ…」
ぺたんと座りながら休むルーミアは、広々とした空間の天井を見つめている。
宙には大きな白い繭のようなものが天井から吊るされている。
何かを包み込んでぶらさげているかのような白い繭。
捉えた獲物を包んだ罠か、あるいは小さなクロウラー達を包むゆりかごなのか。
「思い出すって何がだぜ?」
「うん、私とブロントさんが初めて会ったのって芋虫がいる洞窟だって話したよね?」
「あー、あの時ね。確かにここと似てるかも」
霊夢は昔を懐かしむように唸っている。
ブロントが博麗神社に落ちて数日後、霊夢は畑に被害を出すクロウラーの駆除依頼を人里の村長から受けた。
その時、数多くのクロウラーに襲われ、ブロントに助けられた後、先に進むとそこにはルーミアがいた。
クロウラーを食う事で腹を満たし、食物連鎖の頂点に立っていたためにクロウラーは人里を襲う事になったのだ。
そしてそれがルーミアとブロントの初めての出会いとなる。
「その洞窟ってここと似てるなぁ、て思い出したんだ」
「まさかこいつの落とす絹糸がこんなに高く売れるなんてね…幻想郷に帰ったらさっそく狩りに行かないと」
ルーミアは洞窟でクロウラーを食べていたのを思い出し、霊夢は絹糸の価値が分かるや否や、帰ったらさっそく乱獲しようと考えていた。
休憩を済まし、一行は巣の奥へと歩を進めた。
いくら苔で光があるとはいえ、薄暗い洞窟である事に変わりない。
基本的にゆっくりとしか進めない。探索者達の行く手を遮るのが事欠かさないからだ。
それは、岩壁から剥がれ落ちる岩であったり、物陰から不意に襲い掛かる魔物であったりする。
硬い岩肌を突き破って、上から下から両脇の壁から太い根が飛び出ている個所もあった。
洞窟の上に伸びているおこかの巨木へと繋がっているのだ。
その頑丈さは、剣も刺さらないほどである。
薄暗い洞窟を進む過程でぼんやりとした青く光る球体が目につく。
よく見れば球体の下に地面から真っ直ぐと伸びた細い茎が付いている事が分かる。
それは花なのだ。それも光る花。
花はぼうっと青い光を四方に放ち、初めは明るさの差があって、茎の部分が見えづらい状態になっていたのだ。
薄暗い洞窟の中、かすかな風に揺れる。ゆらゆらと、青く光る花は踊っているようにも見えた。
高さもまちまち、茎のしなる幅もそれそれ違う。
互いの違いに揺れる青白い光球は先の予測ができない群舞を踊っている。
幽玄、とはこの事を言うのか。
幻想的な光景に思わず足を止め、見取れてしまう。
小さな崖をよじ登り、下に進む坂を下っていく。
途中途中で壁や地面に、ねばつく白い網が掛け渡されていた。
クロウラーの吐き出した糸で作られたものであり、まるでハンモックのようだった。
このようなものは絹糸として品質がよろしくないため、取っても売り物にならない。
そのため、クロウラーから直接取れる糸でないと意味がないのだ。
それらを乗り越え、更に広い空間に出る。
空を見上げれば巨大な繭がいくつも吊るされている。
魔物も、クロウラー以外に巨大なキノコにバッタのような足が生えたファンガーや巨大トンボのフライがいる。
通称、ドーナッツ広場と呼ばれるクロウラーの巣の地下だ。
「よし!狩って狩って狩りまくるわよ!」
「ああ、あのキノコは結構強いらしいので、あまり手は出さない方向で」
「え?せっかくだからやっちまおうぜ。ヴァナのキノコにも興味あるしな」
「あのね…私達は絹糸を取りに来たんだから無駄を省くべきでしょう?」
少女達は金策のために、クロウラーを狩っていく。
装備代を稼ぐのは大変だと、改めて実感したのだった。
……To Be Continued?
Hakurei Reimu モンク/- Lv47/-
個別特性:主に空を飛ぶ程度の能力
状態異常を受け付けない。通常より成長は早い。
メイン:インパクトナックル サブ:― レンジウェポン:― 矢弾:―
頭:大地の鉢巻 首:ファングネックレス 左耳:― 右耳:―
胴:大地の衣 両手:大地の手甲 左手の指:― 右手の指:―
背:― 腰:紫帯 両脚:大地の下ばき 両足:大地の脚絆
Rumia 白魔道士/- Lv43/-
個別特性:闇を操る程度の能力
一瞬だけ相手を暗闇にする事が可能。耐性無視だが、近付かなければならない。通常より回復(HP)が早い。
メイン:チェスナットワンド サブ:オークシールド レンジウェポン:― 矢弾:―
頭:― 首:正義バッジ 左耳:― 右耳:―
胴:クローク 両手:シアーミトン 左手の指:― 右手の指:―
背:― 腰:― 両脚:シアーズボン 両足:シアーパンプス
Kirisame Marisa 黒魔道士/- Lv45/-
個別特性:主に魔法を使う程度の能力
八卦炉サポートによる魔法詠唱を短縮化(ファストキャスト)&魔法攻撃力増加。魔力(MP)が平均より少ない。
メイン:ミリタリーポール サブ:― レンジウェポン:― 矢弾:八卦炉
頭:ウィッチハット 首:― 左耳:― 右耳:―
胴:シアーチュニック 両手:シアーミトン 左手の指:クリアリング 右手の指:クリアリング
背:― 腰:― 両脚:シアーズボン 両足:シアーパンプス
Konpaku Youmu 戦士/- Lv46/-
個別特性:剣術を扱う程度の能力
戦士には装備できない武器(刀)を装備可能。武器技術(スキル)の成長が早い。武器技術の限界(スキルキャップ)が普通より高め。
メイン:ハンティングソード サブ:王国従士制式盾 レンジウェポン:― 矢弾:―
頭:アイアンマスク 首:― 左耳:― 右耳:―
胴:ブレストプレート 両手:傭兵隊長の軍手 左手の指:アンバーリング 右手の指:アンバーリング
背:― 腰:シルバーベルト 両脚:クウィス 両足:傭兵隊長の脚絆
Syameimaru Aya シーフ/- Lv44/-
個別特性:風を操る程度の能力
DEX(器用さ)とAGI(敏捷性)に補正。技能(アビリティ)を通常より早く覚える。通常より回復(HP)が早い。
メイン:ミスリルナイフ サブ:オークシールド レンジウェポン:パワークロスボウ 矢弾:アシッドボルト
頭:レッドキャップ 首:― 左耳:― 右耳:―
胴:ガンビスン 両手:ブレーサー 左手の指:― 右手の指:―
背:― 腰:傭兵隊長のベルト 両脚:ホーズ 両足:ソックス
Alice Margatroid 赤魔道士/からくり士 Lv42/Lv21
個別特性:人形を操る程度の能力
オートマトンの人形を操る。からくり士の職業(ジョブ)を取っていなくても使用可能。通常より回復(MP)が早い。
メイン:百人隊長制式剣 サブ:オークシールド レンジウェポン:― 矢弾:―
頭:角の髪飾り 首:― 左耳:― 右耳:―
胴:傭兵隊長の綿鎧 両手:傭兵隊長の軍手 左手の指:― 右手の指:―
背:― 腰:― 両脚:傭兵隊長の下衣 両足:傭兵隊長の脚絆