東方幻想鉄   作:AmanatuTaruTaru

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ファイナルファンタジー

世界の中心にある大国、ジュノ。

クォン大陸とミンダルシア大陸を繋げる海上都市。

その国は冒険者が集う、冒険者の国であり、夜になっても明かりが消えずに賑やかになっている。

 

「よっと、こんなもんかな?モーグリ、これは処分してくれ」

 

「分かったクポー」

 

「あ、霊夢ー。これっているのー?」

 

「それもういらないわよ。それより服纏めるの手伝って、アリス」

 

「妖夢、これ食べれる?」

 

「え?もうこれ腐ってるよ…」

 

「うわ、やばー。書いたもの全部入るかなぁ…」

 

冒険者が住むモグハウスの中では少女達が姦しく騒いでいた。

ある者は物を処分し、ある者は鞄に物を詰め込んでいる。そしてまたある物は鞄に入りきれるかどうかで頭を悩ます者もいた。

 

「もう倉庫にあるもの全部処分していいわよ」

 

「くぽぽ?いいのクポ?」

 

「使わないだろうしね」

 

くぽーと言いながら白い珍獣は移送空間の中に入っていく。

モーグリ秘伝の魔法で冒険者の倉庫を管理しており、先程魔法で倉庫に入ったモーグリは博麗霊夢から言われたとおりに、倉庫にあるアイテムの類の処分にかかった。

処分と言っても、ほとんどがゴミか何かのようなものだ。

いらない装備は売ってあるし、金になるアイテムや素材も競売所で売却済みだ。

そしてその金で装備や魔法、更に薬品を買えるだけ買うとすでに雀の涙ほどしか残らなくなった。

 

だが、それは問題ではない。

これから依頼をこなすために氷河へと向かい、それをこなせば少女達はヴァナ・ディールではなく、元いる世界である幻想郷に帰れるはずだ。

幻想郷ではギル通貨が使えないため、あんまりあっても意味がないのだ。

その事に残念がる霊夢だが、それと同時に博麗神社の居候兼大黒柱となってるブロントも、世界も通貨も違う世界で金策を苦労している事にようやく気付いたのだった。

 

「そういや、妖夢。鎧の修理は終わったのか?」

 

「ええ。もう新品同然ですよ」

 

氷河の地図を手に入れるために、ベヒーモスの縄張りにある石碑を粘土で写す依頼でイビルウェポンと戦った。

その時に敵の猛攻から魂魄妖夢の鎧は傷つき、肩当てに至っては壊されてしまう。

修理するために防具屋に持っていったが、修理代に割と高く金を取られてしまった。

こうした事を避けるために、冒険者は合成の腕を上げて自力で修理するのも多いらしい。

 

すでに準備の大半を終えた。

ボスディン氷河はクォン大陸で屈指の危険を誇る土地だ。

そこに住む魔物の強さはもちろん、吹雪が荒れ狂う環境から人外の地と言われる。

装備、魔法、アイテム。

揃えられるものは出来る限り揃えた。

あとは、明日の朝に旅立つのみ。

これがヴァナ・ディール最後の冒険になる事になると思いながら、夜は更けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東方幻想鉄

最終話「ファイナルファンタジー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時期で言えば二月前で、まだまだ肌寒い。

幻想郷に帰ればヴァナ・ディールに行く前と同じ時間帯に飛ばされるため、冬真っ盛りの季節を二度味わう事になるだろう。

冒険者としての姿になっている霊夢達だが、妖夢と射命丸文以外は特に変化はない。

 

文の着ているのはジャリダ装束という近東の国、アトルガンから製法が伝われた防具だ。

袖の無いチュニックとゆったりとしたズボンがセットになっている。シーフらしく動きやすそうで頑丈なつくり、けれどどこか華やかな印象があるのは装飾品の類のせいだろうか。

ゆったりとしたパンツの脇には編み上げの部分があり、幅の広いカラーにもコルセットにも細かい革の紋様が細工されている。

特に目を引いたのが肩まで届くカラーや腰周りに、ビーズや紐飾り、銀のコンチョや羽などで織り成された華やかな装飾だった。

首の後ろに腕を入れて髪を跳ね除けた。ちゃら、と飾りが音を立てる。ためしに背中の羽も引っ張り出し、広げてみる。貝や石のビーズが触れ合い、小さく気持ちの良い音を立てた。腰の後ろでも複雑編み込みのベルト飾りが揺れる。

文はアクセサリーが付いた動きやすい服装が好きだ。

民族装束を意識しながらも現代に合わせたデザインは他の冒険者からにも人気が高く、軽装を好む冒険者以外にも御洒落装備として一式を揃えるのも少なくない。

 

妖夢も、全身鎧なのは変わりないが頭部にある甲冑だけは外され、代わりに顎と鼻先と額を守るマスクに変えてある。

視界が見えづらい甲冑から、重要な部分を守るマスクに買い替えたのだ。

ショックマスクは地味ながらも魔法の加護がかけられ、戦士に必要な力を引き上げてくれる。

 

「じゃ、ルーミア。お願いね」

 

「うん」

 

向かう先は北の地。クォン大陸の最北にある氷河だ。

最短で向かうなら飛空艇からサンドリアに行く事だが、当然だが彼女達は飛空艇パスは持っていない。

パスを手に入れるのには50万という大金で買うか、ジュノからのミッションを受けて国家に貢献するしかない。

ではどうやって行くかと言うと、白魔道士であるルーミアの移送魔法でラテーヌ高原まで跳ぶのだ。

ジュノからチョコボで飛ばしても一日かかるが、"テレポホラ"なら一瞬だ。

そこからチョコガールからチョコボを借りて飛ばせば、数時間で氷河に繋がる峠まで行ける。

飛ぶ先の門であるホラの岩。そこに飛ぶのに必要な情報はサンドリアからジュノに行く旅の途中で手に入れてある。

だから"テレポホラ"で行くのだ。

 

「翼よ、翼よ、大いなる翼よ。彼方の地に眠るホラの門を我らを神の翼の如く、刹那で彼方へと到らせよ!」

 

移送の魔法であるテレポの詠唱は長い。

アリス・マーガトロイドと魔理沙が使いやすいように考えた呪文を唱えてゆく。

紫色の光の粒がくるくると回り始める。テレポの魔法につきものの光だ。

日が翳ったかのように暗くなる。世界が闇に包まれたかのような感覚。

そうして次の瞬間に飛びこんできたのは青空だ。

風が大地の匂いを運びながら頬を撫でていく。

目の前には高く聳える白い巨岩。霊夢達は一瞬でジュノから高原の中心まで跳んだのだ。

 

移送の魔法で飛ばされると少しばかり耳鳴りがするが、すぐに収まる。

拠点ホームポイントに移送する"デジョンⅡ"を何度も受けた事があるため、耐性ができているのだ。

巨岩に寄り添うように二階ほどの高さに設置されている魔法陣から、階段を使って高原の大地に降り立つ。

近くにある出張厩舎にいるエルヴァーンのチョコガールからチョコボを借りる。

背に乗り、六人は一斉に走らせた。

 

黄色の巨大鳥が走る走る走る。

背後でホラの岩がどんどん小さくなってゆく。

日差しを浴びて香る若草の香りが鼻先をくすぐりながら、北へ北へと街道を駆ける。

数時間もすれば見知った森が見えてくる。

地図を確認しながら東へと向かって走り、森の東の端に辿りつくと次は北へ。

広い森を更に数時間走り続け、峠の入り口が見えてくる。

だが、峠の入り口は洞窟になっており、チョコボをどんなになだめても暗い洞窟に入ってくれない。

 

峠を前にして立ち往生してしまった。

 

 

 

東と西から山が迫っている。

霊夢達がいるのは左右が崖になってせりあがっている谷の底だ。

おかげで、まだ太陽が空高く顔を覗かせているはずなのに、あたりは暗く、隣の人の顔でさえぼやけるぐらいしか見えない。

 

「こうしていても仕方ありませんよ。チョコボじゃ無理ですし、歩き、ですね」

 

「【むむむ。】」

 

事前の情報では峠と言われてやってきたのに、洞窟であったのは予想外であった。

峠は尾根の鞍部と言う。山道を登りつめたところを指すものだ。

 

切り立つ崖を眺める。暗いので目を向けても道が見えないのだが。

黒い壁が聳えているぐらいしかわからない。

もしかしたら、傾斜のゆるやかなをころを選んで進めば、踏破できるかもしれない。

 

「とりあえずこの峠をそのまま行くのは無理ですね。ここから見ても高い山だって分かりますよ、これは。

なので頂上は冬と変わらない寒さでしょうし、雪も積もってるでしょう。

夏ならともかく、まだ冬の時期で行くのは自殺行為ですよ。私達妖怪ならともかく、人間の霊夢さんと魔理沙さんじゃ耐えられません」

 

「となるとこのまま洞窟から超えるしかないか…」

 

「ねーねー、文」

 

ルーミアが文と霊夢の会話に介入してきた。

 

「ここって洞窟だよね?なんで峠なの?」

 

「それは私も気になるな。なんでだぜ?」

 

「最初は北の峠と言われてたみたいですね。それが名として残っているとか」

 

数ヶ月という月日をかけてヴァナ・ディールの知識を蓄えた文がすらすらと解説していく。

峠の名前であるラングモントは実在した修道士の名前だ。北の地に楽園に至る噂を聞き、信じ込んだ。

女神アルタナの敬虔な信徒である彼は、その楽園の扉へ辿りつくために、己の拳一つで南から北まで洞窟を掘り抜いたのだ。

 

「すげぇな。その修道士って実は鬼とかじゃないのか」

 

「どうでしょうねぇ。鬼であっても、山を拳で掘るのは難しいと思いますよ?そりゃ山の四天王ぐらいならやれそうですけど」

 

しかしヴァナ・ディールには鬼はいない。

いや、見つかっていないだけでこの広い世界にはいるかもしれないが、少なくともラングモントは人間だ。

ただの人間が拳で山を掘るのだから恐ろべき信仰者か。

緑巫女も、神のためなら拳一つで山を掘るぐらいはやってのけるのだろうか。

 

とはいえ、今は峠の名前はどうでもいい。重要な事ではない。

問題なのはどんな獣よりも早く走れるチョコボが使えない事にある。

チョコボは割と臆病で、洞窟の中を走りたがらない。

チョコボが使えなければ歩みが遅くなってしまうだろう。

 

「チョコボが使えないとなると歩きか…」

 

チョコボを諦めた。

引き綱を外し、背を叩くと、一声鳴いてから喜々として自らの厩舎へと帰っていった。

土の蹴る音が遠ざかっていく。

 

洞窟を行くと決めたならば、入っていく時刻は関係ない。

どうせ明かりが無いと歩けないのだから、鞄から角灯を取り出し、明かりを灯す。

 

戦闘に妖夢が立ち、その後アリスは片手に角灯を掲げて少女達が進んでいく。

岩肌は暗い緑色をしており、あまり見た事のない岩肌だ。

触れてみるとひんやりとしながら、ぬるりとする感触がある。

 

先頭の妖夢が水溜りを踏んだ。

ぴちゃりと、と音があがる。水も跳ねる。岩肌を滴る水適が集まって、薄い水溜りを作っているようだ。

しばらく進めば二又に道が分かれていた。

どちらに進むのかを、地図で確認し、右へ。

 

いきなり石畳になった。カツカツと硬い足音になる。

天然の洞窟から人工の洞窟へと変わった。壁も切り出した岩で覆われている。

そのまま歩き続けると、四角切られた入り口が見えた。先で、部屋になっているようだ。

 

「人がいますね」

 

妖夢が言った。

入り口の先は予想通りに部屋になっていた。

広い部屋だ。真正面にある赤い門が目に止まる。

 

「冒険者か」

 

声を顔に向ければ、王都から派遣された騎士が二人いる。

冒険者の証である《シグネット》を見せると彼らの厳しい顔が少しばかり緩んだ。

 

「この先はフォルガンディに繋がっていますから恐ろしい魔物がたくさんいます。気を付けてください」

 

ミフォールと名乗る女性騎士が扉を指差しながら言う。

赤い扉に、目を吸い寄せられる。

扉の前に歩み寄った文が表面を撫でて調べている。

 

「これは何かの岩でしょうか?かなり頑丈でかつ厚いですよ」

 

「取っ手がないわね。どうやって開けるのかしら」

 

とアリス。

一方で霊夢は別の事を考えていた。その疑問を口に出す。

 

「まさかこの扉一つで魔物を防いでるわけ?」

 

「ええ。でも心配なく。この扉が向こうから開くのはありませんから」

 

文とアリスがミフォールの言葉に振り返る。

 

「この部屋の中からしか開かない、という意味で?」

 

文が尋ねる。

 

「はい。洞窟を封じる扉は二つあって、どちらも片側からしか開かない仕組みになっているんです。この部屋の扉はこちら側しか開けません」

 

左右に分かれた二又の道で左に行けば、もう片方の扉へと到ったのだという。

元々は、"北壁"を越える唯一の道とされ、王立騎士団によって厳重に護られてきた。

しかし、二百年ほど前、北にある帝国のオークが山越えする別のルートを開拓し、続々と軍勢を送り込んできたため、サンドリア王国はそれまでの南下政策を中断し、北辺の護りにも兵力を割かねばならなくなった。

その結果、少数でも護られるようにと、この扉が作られたのだ。

 

「扉は魔法仕掛けになっています」

 

赤い扉の前には、扉と同じぐらいの幅の、石で作られた台座があった。

台座の上の盤面には、魔法で描かれた魔文字がびっしりと書き込まれていて、魔法陣のように紋様をなしている。

更に盤面には取っ手が四つ飛び出ていた。

魔法技術が弱いとされるサンドリアだが、目の前にある台座の紋様の複雑さは移送の魔法陣にも匹敵しそうだ。

サンドリア教会の高位聖職者の手によるものかもしれない。彼らの魔法技術はウィンダスにも遅れを取らないとされる。

 

「操作方法は自分達で覚えになってください。向こうから開けるのは、同じ手順を行えば問題ありません。さすがに洞窟側には兵士は常駐していませんからね、自分達で開ける事になります」

 

霊夢達は傾く。

 

「魔物達の多くは単純な頭しか持っていないので、冒険者達が現れた扉から外に出ようとするのです」

 

「なーるほど、奴らはもう片方から開くって考えはないわけだ」

 

「そのようです」

 

魔理沙の問いに、ミフォールは答えた。

 

「峠からわざわざ帰っていく冒険者が少ないってのもあるんでしょうな。移送の魔法を使えばすぐですから」

 

文が言った。

冒険者の帰りは移送の魔法に頼る事が多い。魔法の使えない戦士であっても呪符デジョンを使えばいつでも帰還する事が可能だ。

そのためもあって、もう片方の扉はますます魔物からの関心を引きつけないのだろう。

 

「では、扉を開けます」

 

ミフォールが四つの取っ手を引き抜いた。

取っ手のように見えたのは、握りのついた差し込み棒だったのだ。丸い握りの杖にも似てる。

ただし、棒の長さは、親指と小指をいっぱいに広げたぐらいでしかない。

四本の棒を全て引き抜くと、ミフォールは、一つ一つを定められた順番に従って穴を差し込んでいく。

覚えなけれないけないのは、その順番だった。一つ押し込むと、穴の周囲に描かれた魔文字が赤く光り、さぁっと盤面に描かれた紋様の上に赤い光が走り抜ける。

順番を間違えると開かないとミフォールが言った。呪文の必要がないようだ。

四つの棒が盤に差し込み終わった。

 

「扉が!」

 

顔を上げた妖夢が叫んだ。

赤い扉がゆっくりと"上に"もちあがっていく。

 

「ハハァ…よく考えられたもんです。確かにこれは破られにくいですよ」

 

文はしきりに傾く。

普通の扉のような仕掛けでは、どうしても蝶番のところが脆くなってしまう。大きな怪物が体当たりしただけで弾け飛んで壊れる可能性だってある。

持ちあがってゆく扉を見ると、硬い岩石の板は厚さも普通の扉の倍以上はあった。

これはかなりの防壁だと見て分かる。

 

「幸運を」

 

ミフォールが短く言った。

軽く頭を下げ、扉をくぐった。

扉は再び下りてくる。背中で重い音を立てて閉まった。

これでもう引き返せなくなった。

帰るには、もう一つの扉まで回り込むか、移送の魔法で飛ぶかのどれかだ。

ある程度は夜目の効くルーミアが辺りを見回すと、この先が天然の洞窟なのが分かる。

 

「戦いはできるだけ避けるべき、かな」

 

「だな」

 

これから行くのは氷河の遺跡だ。練習相手にもならないとはいえ、無駄に戦って時間を浪費するのは好ましくない

となれば隠蔽の魔法をかけて進もうと、アリスは角灯を置き、ルーミアと共に魔法を唱えようとするが、魔理沙が遮った。

 

「ちょっと待った。隠蔽の魔法をかける前にこれを渡しとくぜ」

 

鞄から取り出したのはそれを手渡されたのは小さな真珠だった。

薄い黄色、星のような色をした、魔理沙の色を表しているような真珠。

 

『何これ?真珠?』

 

頭の中で声が聞こえた。声の出したのはルーミアだ。妖夢の心臓がドキリとする。

 

「今のルーミア?」

 

「え?何か聞こえたの?」

 

『ああ、これがリンクパールなのね』

 

次はアリスの声が頭の中で響いた。

同じ真珠を持っていれば心の中で会話が可能になるリンクパール。

魔理沙が渡してきた真珠はそれなのだ。

 

「スニークとかしてるとか会話する事が出来ないだろ?これから長くなるだろうし、買っておいたんだ」

 

『ふぅん、変な物もあるのね』

 

『思考がダダ漏れよ、霊夢』

 

リンクパールが不便と言えるのは、考えた事がそのまま伝わっている事だろう。

ある意味、心を読む覚妖怪と同じになれるようなアイテムだ。

 

リンクパールを行き渡った後、"スニーク"をかけられると仲間の立てる音が消え、続けて"インビジ"がかけられる。

一人づつ姿が見えなくなり、自分の身に"インビジ"をかけられると姿が見えない仲間の姿が露わになる。

"インビジ"の魔法は詠唱した者が同じの場合、同じ魔法の影響下にある者同士は見えるのだ。魔法の研究でそう調整されている。

 

そしてこうした魔法は非常に精細だ。激しく動いたり、喋ったりすれば効果が切れてしまう。

そうならないために、魔理沙は事前にリンクパールの元となるリンクシェルを買っておいたのだ。高い買い物だったが、余った"戦績"で装備を貰い、それを売り払う事で金を手に入れた。

 

これで少女達の姿は魔物から見えなくなっているはずだ。

姿を消しても見抜く力を持つ魔物でもない限り、襲われる事はない。

魔法を唱え終え、先に進もうとすると、獣人…ゴブリンがいた。

背中に丸めた荷物を背負った立ち上がった犬のような見た目をしている。

数は二匹。それぞれ杖と短剣を持っていた。

 

どうやらゴブリンは気付いていないようだ。魔法が効果を発揮している証である。

文が洞窟を指差した。

 

『先に行きましょう』

 

皆が傾いた。隠蔽の魔法が消えないように、ゆっくりとその場を立ち去る。

先頭には再び妖夢が立つ。

 

『シャクラミ…とは違うな。なんでだろ』

 

魔理沙の伝心が心に響いてくる。

シャクラミとは以前に冒険した事のある天然洞窟の事だ。

自然で出来た洞窟のため、化石が豊富に取れる。

シャクラミの地下迷宮とラングモント峠、幅が十歩以上もあり、天井も高い洞窟だ。

湿り気もあるのだが、何処か違う気がする。

しばらく進むと、その違いに気づいた。

冷気がするのだ。肌にひんやりとするような感覚。

 

『確かに結構冷えてくるわね…』

 

魔理沙の思考が漏れたのか、霊夢が同意してきた。

淡い緑色に染まった音の無い洞窟を進んでいく。

静寂が支配する世界だった。

壁により、手が壁に触れる。入り口のあたりではぬるついていたが、今は違う。冷たいだけだ。湿っていた岩肌が凍っている。

そのまま撫でるように滑らすと、薄い氷が剥がれる。

氷が支配する北。

向かっているのだと魔理沙は実感した。

 

 

 

二日経った。と思う。

左右に曲がりくねった道を上り下りを繰り返しながら進んでいき、果てがないのではないかと思ってしまう程だった。

昼夜の無い洞窟にい続けると、時間の流れが分かりづらい。

そのため、二日経っているのも、魔理沙の中にある体内時計の目安に過ぎないのだ。

 

歩きに歩き続けて峠の終わりがようやく見えてきた。

淡い光を発していた洞窟の岩肌がいつのまにか灰色になっている。

明かり代わりのに岩が無くなるが、入れ替わるように洞窟の向こうからぽっかりと白い穴が見えてきた。

ほんのりと明るいので角灯を点けずに済むし、まわりも辛うじてだが見える。

最後の二又を超えてから、一つ目の怪物であるアーリマンなどに気をつければよかった。

"インビジ"と"スニーク"は充分に役に立ってくれた。

 

「う、わ、さっみぃ!」

 

周りに魔物がいないのを確認してから魔理沙は声を出して言った。

その途端に隠蔽の魔法が消えうせる。

 

「雪だ…」

 

ルーミアが言った。洞窟の先が白く明るいのは、雪なのだ。

気づけば、足元にもうっすらと白いものが積もっている。

腰を屈めて指先で触れると冷たく、さらさらとしている。ここまでさらさらとした手触りは初めてかもしれない。

 

長い時間で洞窟にいたため、闇に慣れた目には前方の光は見つめすぎるとまぶしかった。

時刻で言うと、朝と昼の中間ぐらいだろうか。

頭上で覆っていた岩が消える。

目の前が開けると、闇の代わりに白いカーテンが立ち塞がった。

 

「すげぇ!」

 

これには魔理沙も思わず声をあげる。

外は猛吹雪なのだ。

ひゅぉぉぉぉぉぉぉ、と風が鳴っている。

洞窟の外は谷の底に繋がっていた。足元には真っ白い雪、両側には岩の壁、十歩先は吹雪いていて先が見えない。

頬に当たる風は雪混じりで冷たい。雪それ自体はさらっとしていて、吹きつけは後ろを飛んでいく。

風の強さに帽子が飛ばされないように手で押さえている。

 

「風はさほど強くないですね」

 

「これでか!?」

 

文の言葉に目をむいてしまう。

さすがに異変だらけの幻想郷でもここまでの吹雪を魔理沙は見た事ない。

文は風を感じ取る能力を持っているため、嘘ではないだろうが、風が強くないのに前が見えない程の吹雪なのだ。

 

「い、いくらなんでも寒すぎよ…マント、マントと」

 

さすがの霊夢も、この寒さに耐えきれないのか、鞄からマントを取り出した。

表面は雨などを弾く革製で、裏側は羊毛で作られた防寒用のマントだ。

氷河用に買っておいたものだが、さっそく役に立つようだ。

 

先に進むために、"インビジ"をかけて姿を消す。

"スニーク"はかけなかった。この吹雪の中だと、音が強い風に消えて意味がないからだ。

 

『ついでにバブリサラも』

 

「あ、うん」

 

文のリンクパールからの言葉にルーミアは別の魔法を唱えた。

炎の元素を薄い膜のようなもので張り巡らせる事で冷気の力を弱める強化魔法。

"バブリサラ"といえども、寒さが完全に無くなるわけではないが、それでもいくらかマシになる。

 

吹きつける雪に対抗して、やや前のめりになりながら白い大地を踏み始める。

さくり、と積もったばかりの雪を踏む。思ったよりも深く足が沈んだ。誰も踏み固めていない雪だからだ。

足を引き抜くのに苦労する。こういう時は前にある足跡を踏みつけるようにすればいいのだが、先頭にいる妖夢はそれが無く…よたよたとして、すっ転んだ。

顔面から雪にダイヴし、その衝撃で"インビジ"が解ける。

 

「ちょっと、大丈夫なの?」

 

「ふぁ、ふあぃ…」

 

顔から突っ込んだからか、顔中が雪まみれになっている。

アリスが雪から引き上げ、雪を払っていく。

べたつかない雪だからか、叩けばすぐに落ちた。

 

"インビジ"が掛け直されると再び雪の中を歩き続ける。

耳は風が再び鳴っているのが聞こえる。

吹きすさぶ風の音は、まるで誰かが嘆き続ける声のも、歌声のようにも聞こえた。

 

妖夢は転ばないように歩幅を小さくして歩き始めた。

これなら後から続く者が足跡を踏みやすくなる。

姿を消す"インビジ"と言えども足跡は残る。

あくまで自分達の姿を見せなくなる魔法であって、本当に実体を消しているわけではない。

自分達を幽霊にする魔法ではないのだ。

足を踏む。雪が凹む。

足を引き上げ、つま先から地面が離れた瞬間に魔法の効果範囲から外れ、足跡が姿を現す。

点々と、少女達の足跡が雪の大地の上に残っていく。

横殴りの風が吹きつけて、降り積もった雪の上辺をさらって舞い上げる。

残した足跡の穴が風にあおられて吹き飛ぶ雪によって埋められていく。

 

三十分ほど歩き続けると全身の身体がすっかり冷えてしまい、厚い手袋をしている魔理沙ですら指先がじんと痛むほどだった。

"バブリザラ"も無しに歩いていたらどれだけ冷えていたか。

 

白い風景を歩き続け、先頭にいる妖夢は何かに気づいた。

吹雪が吹き荒れる中で、巨大な何かが戦っている。

 

緑色をした肌に、腰布だけで氷河で戦っている何か。

それは巨人だった。獣人の一種であり、ガルカを軽く超える体格とそれを裏付ける超プゥワーを持つ者。

寒い中、なぜ半裸でいるのかが疑問だが、二人の巨人が盛大に殴り合っていた。

 

『なんであいつら殴り合ってるんだ?』

 

『さぁ?縄張り争いでもしてるんですかね』

 

魔理沙の疑問に文が答えるが、それが合っているかは分からない。

 

『でもこんな所でやらなくてもなぁ』

 

妖夢はうっとしそうだった。

二人の巨人が道の真ん中で戦っていて、そこを横切りたかった。大きく迂回するのも手だが、問題なのは巨人も同じ場所に留まっていない事にある。

 

巨人の殴り合いは段々とヒートアップしていき、拳で肉を殴る音が離れた場所にいる少女達にも聞こえるほどだった。

それを黙って見つめている霊夢達だが、突然戦いをやめる巨人を不審に思った。

 

『なんだ?』

 

巨人が雪の中に手を突っ込み、何か探しだすように手探りをしている。

勘の鋭い霊夢が叫んだ。

 

『逃げて!』

 

距離にして四十歩以上は離れたはずだ。

鳥肌が立ちそうなのを押さえながら横に飛ぶ。

ごう、と空気を裂く音。

それはとっさに座り込んだ魔理沙の頭上を超えて、重い音と共に地面が震える。

何かが、後ろにある壁にぶち当たったのだ。

目を向ければ、崖の岩壁が少しばかり抉られている。

それは巨人の投げた巨大な岩だったのだ。

 

『こわ…こっわ…ギリギリだったぞ…』

 

少しばかり涙目になりながらも、こそこそと動き出す魔理沙。

後少しでもズレていたら岩が頭に当たってザクロのような状態になっていただろう。

 

「ってちょっと待て!なんで私らが見つかってんだよ!」

 

"インビジ"をかけていた以上、相手からは見えていないはずだ。

しかし、彼女達は気付いていなかったのだ。

巨人の死闘に夢中になっていたために、魔法の効果がとっくに切れていた事に。

 

「どうする?戦う!?」

 

「無茶言わないでください!こんな環境じゃ戦えませんよ!」

 

腰にある武器を手にかけるが、文は無理だと言う。

風が強まり、吹雪は更に吹き荒れているのだ。

いくら冒険者とも言えども、こんな状況では碌に戦う事ができない。

しかしその過酷な環境で生き延びる巨人はそんな事情など知った事ではない。

視界に入った敵を排除し、己の力を誇示するために霊夢達に襲い掛かる。

 

「だったら眠らせてやる!」

 

碌に戦えないのならば逃げるだけ。

しかし、雪が降り積もる氷河を走って逃げるのは難しい。

ならば敵が追いかけないように足止めするために、魔理沙は魔法を唱える。

眠らす対象は二体。単体の"スリプル"は一体しか眠らせる事しかできない。

 

離れている巨人は再び岩を持ちあげ、投げる構えに入っている。

魔法を唱えている状態は無防備になってしまう。

そうはさせないと霊夢は、身体をひねり、右手を前に突きだした。

"気"の流れは突きだした手に集まり、一気に解き放つ!

練られた"気"は掌から白い光となって巨人に向かっていく。

モンクの技能アビリティである"気孔弾"は文字通り、練り上げた"気"を弾にしてぶつける技だ。

幻想郷で言う弾幕に似た"気"の塊が巨人の持つ岩にぶつかり、砕いた。

これで詠唱の邪魔が入らない。

 

「スリプガ!」

 

魔法の成功率を高めるために、"精霊の印"が付加された範囲睡眠魔法が巨人に降り注ぐ。

魔法が巨人の意識を奪い、だんだんと思考力が低下している。

ぶつん、と意識が闇に消える頃にはゆっくりと巨人は雪の上に倒れ込んだ。

 

「インビジ、行くよ!」

 

ルーミアの声と共に"インビジ"が順番にかけられ、アリスも続いて唱え始めた。

皆の姿が"インビジ"で透明になった後、急いで巨人を通り過ぎて、先に進む。

雪に点々と残していく足跡が気になったが、"インビジ"では足跡は消えない。

とはいえ、巨人が眠りから覚める頃には雪に埋まって見えなくなっているだろう。

 

 

 

長く歩き続け、すでに日は沈んでいる。

途中途中で見つかる遺跡の中で小休憩を繰り返しては変わり映えのない雪景色を歩いていく。

明かりのない氷河では、さすがに日が落ちたら角灯を灯すしか無かった。

半日以上を雪山で歩き続けたために、足がガクガクだ。

吹雪も強くはなっていないが、弱くもなっていない。

 

「遺跡…ね。今回はここで一夜を明けるわよ」

 

霊夢の言葉に皆が同意する。

文と妖夢はまだ平気そうだが、それ以外の面子の疲労が濃い。

氷河のど真ん中で倒れたらsYれにならない事しかない。

 

遺跡の中は石組みになっており、少し狭い、円のような仕組みになっている。

先には地下へと通じる階段通路があり、ソ・ジヤという古代遺跡へと繋がっている。

 

遺跡の入り口を外に降り積もった雪で出口を塞ぎ、空気を取り入れるだけの穴を開ける。

吹きつける風が無ければ、体から発する熱だけで、小さな空間はかなり暖まるものなのだ。

元素の結晶である炎のクリスタルを砕き、欠片が地に落ちると燃え始める。これで暖を取るのだ。

火が付けづらい環境でも、クリスタルを使えば簡単に暖を取る事は可能だ。

 

鞄から食料を取り出し、夜食の準備を始める。

簡単なスープを準備し、体を温める紅茶も用意した。

魔理沙は炎のクリスタルを取り出し、それ以外にも様々な食材を取り出していく。

合成をする気なのだ。

クリスタルを使えば特別な器具を使わなくてもその場で調理をする事が可能になる。

完成品を思い浮かべる強いイメージが必要になるため、誰でも簡単に作れる事はないが。

 

クリスタルに"魔力"を流し込む事で元素の力を解放する。

その後、火の塊が空中に現れ、食材を次々と入れていく。

ボン、と軽く爆発するような音と共に、火の元素でこんがり焼かれた食材が姿を現した。

それを肉・タマネギ・にんにく・肉・タマネギ・にんにく…と串に差していく。

 

これでミスラ風山の幸串焼の完成となる。

全体的に濃い焼き色が付いてて、焼けたにんにくが香ばしく、食欲がそそる。匂いをかいでるだけでお腹が減ってきた。

 

「いただきます、と」

 

食事の準備ができたので食べる事にする。

串焼は、人数分で何本もある。一回の合成で出来る量が多い事が幸いだった。

 

カザム産のスパイスをまぶしてある串焼はかなり辛い。食べてると、寒いはずの氷河でどんどん汗が出てしまう。

それなのに食べる事をやめられない止まらない。

腹の中からかっと熱くなるような感覚がして、力が溢れ出てきそうだった。

 

「おいしいねーこれ」

 

「ベヒんもスの喫茶店でも似たようなものが食べた事あるわね」

 

「おお、辛い辛い。酒がほしいところですね」

 

美味で知られるコカトリスの肉で作られた串焼の味は絶賛のようだ。

そして霊夢は、ブロントの奢りで幻想郷にある喫茶店で似たようなものを食べた事があるが、幻想郷にはスパイスが少ないためか魔理沙の作った串焼は濃く感じた。

暖かい紅茶を飲み干すと生き返った気分になる。

ここまで来るまでの食事は、簡単な食事で済ませていたため、ゆっくりと休めるここで一気に腹を満たして休むのだ。

 

食事によって体が暖まったとはいえ、手足を凍えないようにこすって暖めた。

冷えたままにすると凍傷になってしまう。しもやけ程度ならいいが、最悪の場合は壊死して腐ってしまう。

魔道士の"魔力"も限られている。やたらと治癒の魔法を使うわけにもいかない。

その後、六人交代制で変わる変わる仮眠を取る。

厳しい環境では、中々寝付けない。うつらうつらとしか眠れない。

それでも暫くすると眠りについていった。

 

頬の流れを感じて霊夢は瞼を開く。天井の石作りを見ながら、ああ、寝ていたのかと思う。意識がはっきりとしてきた。

 

「霊夢!ほら、晴れてるよ!」

 

ルーミアの声にはっきりと目が覚める。

頭を振るい、視線を向ける。まぶしさに目を細めた。

ルーミアが閉ざした出口を棍で崩して、外の光を入れている。逆光になってルーミアの姿が見えない。

どんどん雪を崩して出口を広げていった。

 

雪がやんでいた。

遺跡から出るとあれだけの雪を振らした空は雲一つない青空だった。

 

 

一面が真っ白い雪原を黙々と歩き続ける。

雪が降らず、風もない氷河は珍しい事だ。一週間に一度あるかないかと言った確立だろう。

吹雪のない氷河を歩くのは、昨日に比べてかなり楽に感じた。

さくりさくりと積もった雪に足を埋め、引き抜いては進んでいく。

 

遠くにかすかに見えている山間の谷を超えれば、目的地であるフェ・インの名で呼ばれる遺跡がある。

あと半日もあれば辿りつける距離だ。

吐く息は白く、底冷えする北の地は立っているだけで手足でかじかむほどである。

しかし吹雪いていないだけでも、進むスピードと体力の消費は違うため、止まらずに済んだ。

 

夕方になる頃には遺跡が見えてきた。

空からはちらちらと雪が降り始めたが、気になるほどではない。

古人が住んでいたとされる伝説の都市。それは冒険者を招き入れるように、大きな入り口は開いたままであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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北の地の果て遺跡は、壁が白い骨で出来ているように見えた。

触るとひんやりと冷たく、すべすべとしていてどこにも継ぎ目が見つからない。

まるで巨大な生き物が死んで骨がそのまま野にさらされているかのように。

 

遺跡の中に入った後、探索する前に少しばかり休むとする。

ついでに軽く食事をする事にした。

 

「私は少し先を見てきます」

 

「インビジとスニークは?」

 

「お願いします」

 

アリスから隠蔽の魔法を貰い、先に偵察してくる文。

安心して休憩できるかどうか、どんな敵がいるかを調べに行くのだ。

 

「ここってあの塔みたいだよな。クフィムにあった奴」

 

ぺたぺたと白い壁を触る魔理沙。

ジュノから地下洞窟から行けるクフィム島。その北にある巨大な塔。

中に直接入った事はないが、作りとしてはよく似ているのだ。

 

タロンギ大峡谷にあるメアの岩

ラテーヌ高原にあるホラの岩

クフィム島にある巨大な塔

そして、氷河の果てにある遺跡

 

この四つは果たして無関係なのだろうか?

冒険者の話を聞く限りでは、コンシュタット高地にデムの岩、氷河とは別の方角にあるザルカバードにはヴァズのクリスタル。

似たようなものが何個があるらしい。

偶然似たようなものがぽこじゃかと作られるものだろうか?しかもクフィム島の塔と、ここの遺跡に至っては人工物である事は間違いない。

 

と考え、所詮は推測に域は出ない事。

暖まった紅茶を飲み、冷えた体を暖かくしていく。

 

「はいはい、と戻りましたよ、と」

 

「随分早いわね」

 

「ま、あくまで近くを見に行っただけですから」

 

偵察からすぐに戻ってきた文。時間にして数分もかかっていない。

足の早いシーフならその程度でも、ある程度は先まで進めるのだろう。

 

「敵を見た感じではインビジの必要はありませんね。ゴースト、蝙蝠と音に反応する魔物が多かったので」

 

「スニークだけで行けるのか。楽っちゃ楽だな」

 

「いえ、やっかいなのがいくつかいます。この遺跡の前に何体か巨大人形がいましたよね?」

 

「ん?ああ、あのロボットみたいなやつか」

 

フェ・インの入り口を通る時に、大きな樽を何個か人型のように繋げたドールと呼ばれる人形がいた。

古代遺跡を守るために作られたガーディアンである説が濃く、ウィンダスのカカシのようなカーディアンも、これを元に作られていると世界で噂になっている。

 

「ここにも数は少ないみたいですが、います。魔法の使い方には気を付けたほうがいいでしょうね」

 

魔法によって作られた人工生命体は、魔法を放つ時に生じる"魔力"に感知して襲い掛かる。

それはドール以外にも、ガス生命体であるボム、巨大な壺のようなマジックポット、宝箱に化けたミミックなどがいる。

離れた場所からでも魔法を感知するため、隠蔽の魔法で探索しようとしたら大量の敵に襲われていました、という事態も珍しくないのだ。

そしてそれによって全滅する冒険者も…。

 

暫しの休憩を終え、遺跡の探索に入る。

氷河では妖夢が先頭であったが、ここからは文が先頭に変わっている。

シーフである彼女はこういった古代遺跡などに仕掛けられた罠を見抜いたり、隠れているかもしれない敵の感知をしなくてはならない。

"スニーク"だけかけられ、少女達から音が消失する。

床を歩けばカツンカツンと音がしたのが、まるで忍び足をしているように聞こえなくなった。

 

『まず何処に行けばいいんだ?』

 

『八雲紫の依頼を覚えてますよね?』

 

『古代の遺跡に眠る龍の爪だったか?紫ももう少し分かりやすく言ってほしいぜ』

 

『龍の爪と言うならドラゴンか何かがいるんでしょう。まずは広い地下広場に行ってみましょう』

 

もしかしたら宝箱に入ってるお宝かもしれないし、そのままドラゴンの魔物が落とす爪かもしれない。

しかし、本当にただの龍の爪を八雲紫が欲しがるだろうか?

競売所にはワイバーンなど龍に属する爪は高価であるが売ってある。

それを買えばわざわざ紫も霊夢達に依頼をする必要はない。

何せ、金策すれば冒険しなくても霊夢達が競売所で買えばそれで終了になってしまうからだ。

 

『地底の…なんだっけ?あのでかい龍』

 

『ファブニルの事?』

 

『そうそう、さすがアリス、それだ。あれぐらい強い龍だとどうするよ?』

 

魔理沙の言葉に皆が黙ってしまう。ルーミアだけは分かっていないようだが。

グラットン異変で魔剣の力を得た地獄鴉をかなぐる捨てるために元地獄である地底に行った博麗パーティ。

そこで出会ったのはウィルムという種族の龍であり、その強さは正に最強。

ファンタジーの世界ではドラゴンが強いという印象を持つが、ファブニルはそれを体現したかのような化け物であった。

 

当然だ。本来は一級廃人が何十人も集まって何時間と死闘を繰り広げて戦う怪物中の怪物。

技の一つでも食らえば一級廃人であっても骨になって消える恐ろしい強さを持つ。

 

ブロントを初め、一級廃人にも後れを取らぬ幻想郷でも名を馳せる少女達。

合計12名が戦い、結果は壊滅状態。

ボロボロになりながらも死神渾身の一撃が決まり、何とか勝利出来たが、被害も大きかった。

長期戦になれば負けていた事もあり得ただろう。

 

『そんときは文を自爆させましょ。あんときは小町が止めさしちゃったし』

 

『ちょ、何を』

 

霊夢のsYれにならない発言に文は慌てる。

幻想郷には忍者という扱いで、自爆技も持っていたが、今はシーフだ。

まさか爆弾でも持たせて特攻させる気かこの腋モンクは、と思った。

 

『この腋モンクは…』

 

『お前乱撃でぼこるわ…』

 

文の誤算はリンクパールを持っていた事で、考えが霊夢に届いた事だ。

拳を構え、文に狙いを定めようとするのを、アリスと妖夢が慌てて止める。

魔物が蠢く遺跡でも、彼女達はいつも通りであった。

 

 

 

フェ・インでは明かりは必要無かった。遺跡の内部はうっすらとした光に満ちているのだ。

どうやら壁そのものがほのかに発光しているようである。

進む道にはドールや破れた黒いシーツが浮かんでいるようなゴーストだった。

ドールはまだこの遺跡の守護である事は分かるが、なぜ悪霊であるゴーストまで彷徨っているかは分からない。

もしかしたらこの古代遺跡の元住民であるかもしれない。

 

地図から見て中央からやや下辺りに地下へと下る階段がある。

初めは巨大な骨のようなフェ・インも探索するにつれてだんだんと面白いと思う。

人工物には見えないのに、人が作ったと思える扉と通路。

これを作ったのはいったいどんな者なのか?さぞかしこの遺跡が栄えた頃には技術も栄えていたに違いない。

 

階段を下り、暫く通路を音も無く進んでいく。

蝙蝠が群れを作りながら飛んでいる。こうした遺跡には必ずと言っていいほど生息している巨大吸血蝙蝠だ。

通路を道なりに進んでいき、小さな広場、また通路と探索をしていく。

気をつけているのはそこら中に跳び回っている蝙蝠ではなく、浮いている巨大な壺。マジックポット。

"スニーク"を掛け直しに反応されると非常にやっかいだ。

倒せない事はないが、マジックポットは極めて強力な魔法を使うため、用心したほうがいい。

 

通路を進み続けると広い広場に出た。

幻想郷なら弾幕ごっこはできるぐらいの広さだ。古代人はここで何をしてたのだろうか。

辺りを見回すと、通路にあれだけいた魔物の姿が見えない。

少しばかり進むと、魔理沙は"スニーク"が切れるのを構わず、声をあげた。

 

「なんだ、こいつ。でっけぇ……」

 

広場の奥にいたのは巨大な魔物の死骸であった。

見た事のある魔物だ。

数多の触手を生やし、植物の癖に口があって、そこから鼻が曲がりそうな臭い息を吐く怪物。

モルボルである。しかも、ジャグナー森林で見たのと比べると数段でかい。

 

「ここの悪名高い魔物ノートリアスモンスターですかね」

 

「あ、だからここの魔物がいないのか」

 

これが悪名高い魔物ノートリアスモンスターであれば、広場に魔物がいないのも納得できる。

悪名高い魔物ノートリアスモンスターは同じ場所に住む魔物よりも何倍も強い。

それを戦いながら蝙蝠、ゴースト、ドールにマジックポットと同時に戦えるわけがないのだ。

だから、この巨大なモルボルと戦う前に、広場の魔物を排除していたのだろう。

 

「倒されて一週間ぐらいかしら…結構最近ね」

 

モルボルに近寄り、調べているアリスは、倒された時間を計算しているようだ。

 

「どうせなら遺跡中の魔物を全部倒してくれるとありがたいのにねー」

 

「はは、確かにな」

 

ルーミアの言葉に、魔理沙は小さく笑う。

それなら遺跡探索は危険も無く行えるし、楽になるだろう。

だが、楽なだけの冒険は冒険ではない。

多少、きついほうが冒険らしいと魔理沙は考える。

 

「ちょい待ち。何かこっちを見ている…」

 

モルボルの死骸を後にして先を進もうとするが、文が止めた。

隠蔽の魔法をかけていないため、魔物に見つかったのか?武器を手にかけながら何処から来るかを見回す。

 

「あそこからね…」

 

通路の先からカツンと足音と共に聞こえる。

人だった。高い身長を持ち、長い首と耳が特徴的なアルタナの種族。

それはエルヴァーンだったのだ。白い髪を後ろで纏め、青と茶の軽装鎧をしている。

しかしそれは生きている人ではなかったのだ。

全身の肌が闇に堕ちたかのように漆黒になっており、目は爛々と輝かせながらも殺気しか感じられない。

エルヴァーン特有の美貌は、見ている者の心を凍りつかせるような禍々しさに満ちていた。

 

「シャドウ…ですか。やっかいなのが残っていますね」

 

文の呟きが音の無い静寂の遺跡に響く。

シャドウとはアンデッドの部類であるが、シャドウというアンデッドが現れるのは現在で三つある。

一つは普通のアンデッドと同じ、生前に未練の残した亡霊。

二つは異界の術で人間の道から外れた外道。

そして三つ目は、神隠しにあった子供や、拉致されたアルタナの民のなれの果てである。

遺跡の奥深くにいるシャドウは大抵三つ目のシャドウであり、今霊夢達に拳を向けるシャドウは元は善良なアルタナの民なのだ。

 

しかし、手加減なんてしていられない。

アンデッドに墜ちてしまった彼らは生者を自分と同じ死者に墜とす事しか考えられない。彼らを救うには倒して塵に還す以外にないのだ。

 

敵が動く。腰にある三つの刃が付けられた籠手を身に付ける。

格闘家の拳が霊夢の腹に向かって打ち込まれてきた。

右の足を引いて、ひねってかわそうとするが、シャドウの無駄のない動きと効率的に狙われた一撃が避けきれない。

当たる直前に相手の腕の横をパシリと押し当て、軸にしながら攻撃を受け流す。

 

そのまま急接近する事で渾身の右ボディを食らわせる。

霊夢の格闘武器として装備した鉤爪が肉を抉り、拳の衝撃が肋骨を折る感触が手に取るように分かる。

さすがの霊夢もアンデッドとはいえ、人間に似たシャドウを壊すのはいい顔をしない。

普通の人間であれば致命的な致命傷。内臓も傷付いて動けなくなるはずだが、シャドウはアンデッド。

己の損傷を気にせず、霊夢の顎を狙うべく、左拳を振り上げた。

 

鼻先が風を撫でていった。

拳を抜き、背をそらせてなんとか相手の攻撃を回避するが、前髪の何本かがふわりと拳の風圧だけで持っていかれた。

 

腹から血をぽたぽたと流れだしているが、いささかも戦意が落ちていない。

相手の実力は霊夢と互角か、やや上程度…。倒せない事はないだろうが、強い事は確かだ。

それでもあまり長い時間を構っていられない。

フェ・インには音に敏感な魔物やアンデッドが多いため、素早く倒さなくてはならない。

 

ルーミアが守護の魔法をかけている中、妖夢がシャドウに"挑発"をすると霊夢に構えを取っていたシャドウは妖夢に狙いを定め、体を揺らしながらずり足で近付いてくる。

完全に近付く前に弱体魔法がシャドウを狙う。

元から死んで視覚に頼らないアンデッドだけあってか、相手の目を暗闇にする"ブライン"こそ効かなかった。

しかし"パライズ"、"スロウ"、"ポイズンⅡ"と決められ、妖夢に近付いてる頃には動きが鈍くなっていた。

 

妖夢の持つ刀、桜観剣は幽霊十匹分の殺傷力を持つがために、アンデッドに対して優位に立てる武器である。

動きの鈍ったシャドウを素早く切りつけると、一瞬だけ怯むように動きを止めた。

それを見逃さず、"ダブルアタック"するかのようにもう一度攻撃をする。

首を狙った一撃は切れ味の鋭い刀によって切り落とされるはずだった。

 

だが、右手にある刃のついたナックルがその刀を受け止め、蹴撃によって反撃する。

長い、しなやかな足は妖夢の顎をマスクごと狙い撃ち、脳を揺すった。

 

「あっ…」

 

足が崩れる。まずい、"カウンター"として貰った一撃は最悪だった。

首から下の自由が効かない。動かない妖夢を見て、シャドウの顔はニヤリと笑う。

シャドウのモンクが腰を落とした。

ぐっと左の拳を腰のあたりまで引き、それがぐんぐんと丸い弧を描くようにしてせりあがっていく。

見た事の無い技だ。モンクの技に似ている。

拳が空気を切り裂き、その切り裂いた拳の軌道を風が吹き抜けてゆく。

ごう、と風の鳴る音が聞こえた事には、もう拳は見えない。

妖夢の無防備となった顎を狙ったシャドウ一族特有の技"次元殺"が衝撃波と共に襲い掛かる。

 

「フラッシュ!!」

 

叫び声にも等しいルーミアが高速で唱え、光の閃光がシャドウの目を狂わせた。

例え視界がアンデッドとして機能しなくても、光の元素によって感覚そのものを狂わせる魔法であれば例外として通じる。

拳そのものは当たらなかったとはいえ、衝撃波は妖夢の胴体を当てながら吹き飛ばしていく。

ダメージそのものはそこまで高くない。だが、顎に食らった一撃で"ケアル"をもらっても立ち上がるのが難しかった。

そして"次元殺"を外したシャドウであるが、それを気にせずに妖夢を止めを刺すべくゆっくりと歩いていく。

 

「やれやれ、そんなに隙を晒して平気なので?」

 

文がすぐ後ろにいた。"気"を込められた短剣を構え、素早く二度、背後を切り裂いた。

革の鎧にも劣るシャドウの鎧を切り裂き、短剣の切っ先が肉を抉る。

そして傷口から"バイパーバイト"によって"気"が対象者を蝕む毒に変化してシャドウを苦しめる。

背後に回ればすでに文の姿はいない。

リンクパールを持つ仲間達の頭には『おお、遅い遅い』と声が聞こえた。

 

「はああああああああ!」

 

雄叫びウォークライをあげながら刀を前に突き出し、突進する妖夢。

ある程度の脳の揺さぶりが回復した。こればかりは半分人外である自分に感謝した。

敵から背後を向き、隙だらけな背中に桜観剣で串刺しにする。

 

―─ギャアアアアアアアアアア!!

 

シャドウの声が響く。

普通の武器であればまだ耐えられる。痛みも無く、戦い続けられる。

シャドウは感じ取ったのだ。この武器は危ないと。この刀は自分の存在を消滅させる武器であると。

元々死んでいる幽霊に殺傷力とは可笑しな話である。

桜観剣。それは死んでいるアンデッドにとって、天敵とも言える武器なのだ。

 

身をよじらせ、刀から逃れようとするが、妖夢は決して離さない。

その間に魔理沙、アリス、ルーミアは魔法を唱える。

 

「ファイアⅡ!」

 

「ファイアⅡ!」

 

「ホーリー!」

 

すぐ近くに妖夢がいる以上、範囲魔法は使えない。

そのため、単体の魔法であり、アンデッドの弱点である火の魔法"ファイアⅡ"と神聖魔法"ホーリー"がシャドウを燃やし、光の元素が包み込むと爆発した。

シャドウの悲鳴が遺跡内で響く。

光が消えると、あとは崩れ落ちたシャドウが残っているだけだった。

 

倒されたシャドウはスケルトンなどのアンデッドと同じように塵となり、地面に還っていく。

通常、アンデッドの武器や防具も、一緒に塵になるのだがモンクタイプのシャドウが装備していた武器がぽつんと残っていた。

よく見ると刃の部分が無くなり、黒いナックルとなっている。

 

「これだけ残ったわね…」

 

「どうせだから使っちまえば?結構質も良さそうだぜ」

 

霊夢は露骨に嫌そうな顔した。

当然だろう。何ゆえ死したアンデッドの武器を使わなくてはならないのだ。

確かにこのナックルから感じる込められた力は相当なものだ。

今使っている武器よりも少なくとも二回りは上の代物だと分かる。

それだと使いこなせないのではないか?と思うかもしれないが、手に取れば割と馴染んだ。使おうとすれば霊夢の実力ならすぐに使用する事は可能だろう。

カチャリ、と腕にはめ込む。

ピタリと吸い付くかのように馴染む。まるで武器自らが霊夢に合わせたかのように錯覚してしまうほどに。

 

「ふーん…」

 

手をぶらぶらさせ、感触を確かめる。

最初はアンデッドの物を使う事に難色を出したが、これはいい拾い物をしたかもしれない。

 

「ふっ!」

 

まずは肩慣らしにジャブを数発、更にフック、テンプル、肘当てに裏拳。眼にも止まらぬ早さで拳を繰り出していく。

 

「はぁぁ!」

 

出すのは拳だけには留まらない。真空回し蹴りから最初は左足を軸に連続で回転しながら蹴りを放っていく。

 

「おい!霊夢、後ろ!」

 

仮想技をしながら拾った武器を確かめる霊夢を狙う突如沸き出た別のシャドウ。

まだ他の敵がいたのかと魔理沙は魔法を唱えようとするが、霊夢の拳が早かった。

 

「せい!」

 

まるで舞を躍るかのように技を繰り出す霊夢の舞踏。

シャドウが自分を狙っているのは分かっている。振り向き様に大きな両手剣を振り下ろすシャドウに拳を顔面に叩きこむ。

鼻が折れる音がした。鼻血を出しながら怯むシャドウに大きくアッパーカットで顎を粉砕しながら空中を上げる。

 

「でいや!」

 

止めに回し蹴りの応用で踵をシャドウの腹に力強くぶち当てた。

地面に叩きつけられるシャドウは何度かバウンドをしながら動かなくなり、塵へと還っていく。

 

「「「「「おお~~」」」」」

 

一同は思わず拍手をした。

流れるような霊夢のスタイリッシュな動きに感嘆の声がでる。

 

「ふふん、中々使えるじゃない」

 

新しく手に入れた武器の使いやすさに頬を浮かべる霊夢。

その黒鉄製の格闘武器の名はリタリエーター。

「報復者」の意味を持つ武器は、新たな使い手となる霊夢を受け入れるかのように、黒い輝きを放っていた。

 

 

 

地下を探索し続けるが、龍の姿は何処にも無かった。

一階に戻り、地図を広げる。

 

「残っているのはここの…丸い部分ですね。ク・ビアの闘技場ってところです」

 

「丸いケーキの焼き型みたいだね」

 

文の指差す部分、それは一番右にある部屋だった。

本来は書かれていなかったのか、マーキングされているようである。

『ここに闘技場がアリ』と。ご丁寧に形まで書かれている。

 

「じゃ、そこに行ってみるか…さすがに何もないのは止してくれよ…」

 

いつも通りに"スニーク"をかける。

地下には敵が少なかったが、一階ではうようよといるため、一斉に襲いかかれるとさすがに危ないので安全第一だ。

通路から広場、広場から通路と進んでいき、ゴースト、シャドウが死んだにも関わらず、大地に還れずにさまよっていた。

いったいどんな理由があれば、今にも戦う理由が出来るのか。

 

そうしている内に最奥の扉に辿りついた。

ドールが番人のようにいるが、ここのドールは魔法を感知する以外に襲ってこないので、他の敵がいなければ安心と言える。

扉に手が触れると自動的に上へと上がり、道が出来る。

 

「便利なもんだぜ。自動扉か…うちの家にも付けてみるか?」

 

力を込めたり、鍵をかけなくても魔法で人物を識別し、触れるだけで扉が自動的に開く魔法扉。

新しいネタが浮かんだぜと心の中に次の研究テーマを刻みながら、先に進んでいく。

 

部屋の中は小さな広場であった。

違いは見た事のある魔法陣が書かれている事。

移送の魔法陣である"バーニングサークル"。恐らくこれが闘技場に繋がっているのだろう。

 

「これ、闘技場に繋がってるのは確実よね?」

 

「…恐らく。地図に書かれている事が本当であれば、ですが」

 

霊夢が確認するように問うと、文は答える。

どうせ龍のいそうな所は探索し終えてる。ここでいなければその時はその時だ。

 

魔法陣の上に立つと、六人の少女が光に包まれ、別の場所に移送される。

気づいて時はまた小さな部屋だった。すぐ前には通路がある。あの通路の先が闘技場なのだろう。

 

「ビリビリと来るぜ…こりゃ、どでかいのが先にいる」

 

「魔法、掛け直すね」

 

幻想郷を異変を解決してきた事があるからこそ分かる先にいる"何か"。

恐らく、強さで言えばかなりの強敵である事は間違いない。

ルーミアは、先に行けば戦いになる事を予期し"プロテアⅢ"と"シェルラⅡ"、"ヘイスト"を妖夢と霊夢に唱える。

文はアリスの"ヘイスト"でかけられた。これで前衛陣に強化魔法がかけられる。

続けてアリスは自分、ルーミア、魔理沙の順に大気中の"魔力"を吸収する"リフレシュ"をかけられた。

クリスタル合成されたジュースの類と同じで、少しずつだが戦闘をしながら"魔力"を回復する事が可能だ。

 

魔法陣から飛ばされた先にある小さな通路を通る。

抜けた先は広場であった。

ク・ビアの闘技場という名の通り、全体的に平低な大きな皿ともいうべき造りになっている。

とはいえ、それは上から見下ろせば、という話であって、霊夢達のいる所からは、見通しのきかない大きな屋内施設としか把握ができない。

 

闘技場の奥に、何かがいた。

薄暗くてよく見えないが、それなりに巨大なものだと分かる。

 

「ゆ、幽霊?」

 

「幽霊なんていくらでも見たでしょうが」

 

妖夢は内心ほんのちょっとだけビビりながらも注意深くよく見る。

それは巨大な怪物であった。大きさで言えば地下のモルボルと引けを取らない。いや、下手すればそれ以上の体格だ。

背中に蝙蝠型の翼を生やした四脚の怪物。あんな小さな翼では空を飛ぶ事は難しいだろう。

引き締まった四足歩行の体はトカゲに似ているが大きさの桁が違う。

 

「ドラゴン…でしょうか」

 

「あれがか?想像してたのと違うぜ…」

 

ヴァナ・ディールでドラゴン種族を見るのは目の前のが初めてだ。

ファブニルのようなドラゴンっぽいドラゴンを想像していたため、巨大トカゲに見える龍は静かに闘技場の奥で眠っているように見えた。

だが、眠っているはずなのに圧倒的な威圧感を感じる。

見た目は貧相で、勇壮さとはかけ離れているのにだ。

いったいなぜ、こんな遺跡にいるのか。

 

「色からして邪龍ですかねぇ」

 

「分かるの?」

 

「まぁ、推測ですけどね」

 

霊夢の疑問に力無く答える文。

トカゲ型のドラゴンは、色や小さな形の違いによってその名前が違う。

邪悪な龍であったり、呪われた龍であったりと様々だ。

焦げ茶色をした鱗から、これは邪龍ではないか、と推測していたのだ。

 

(なんだろ…薄く、見える?)

 

ルーミアの目には邪龍の体が透明に見えた。

向こうの風景。つまり壁が透けて見えるのだ。それはまるで、この世に存在してはいないはずの亡霊のように。

 

──誰ぞ……。

 

声が聞こえた。

頭から直接響くような声が聞こえる。

リンクパールに似た言葉を送ったのは…。

 

──人間等め…我らの裁きを受けずに、何ゆえに大地に蔓延るか。

 

邪龍の瞼がゆっくりと開けられ、目を開いた。

圧迫感が増した。上手く呼吸ができない。

邪龍には純粋な殺意しか無かった。ここまでの、本気で憎まれ、殺意を向けられるのは初めてだ。

 

──我らが王が倒れ、もはや数十年。力の蓄えもまだ充分ではない。だが…

 

光が舞っている。きらきらと。きらきらと。

それは邪龍の中心を回りながら輝いている。

透けて見えた体がだんだんとはっきりしてくる。

体を支える足に力が入り、ゆっくりと起き上がった。

 

──ここまで来た貴様ら人間を逃すわけにも行かぬ!!貴様らの血と叫び!心の闇を晒け出し、我が力の糧となるがいいい!!!

 

邪龍の咆哮が闘技場に響く。

 

「へ、ラスボスらしくなってきたじゃねぇか」

 

後ろに背負った闇の宝玉が埋められたダークスタッフを持ち、不敵な笑みを浮かべる魔理沙。

どうやら撤退する気はないらしい。

それは皆も同様だ。

 

「じゃ、さっさと倒しに行くわよ!」

 

新たな武器を構え、霊夢の掛け声と共に、ヴァナ・ディールのラストバトルが始まった。

 

 

 

仲間達が武器を構え、各々が邪龍に戦闘を開始する一方で、ルーミアの取った選択は後ろへと撤退する事であった。

とととと、と向きを変え、全力で走っていく。

白魔道士とは、女神の加護を得て他者を癒す者だ。

魔物の攻撃で傷ついた者、毒や麻痺で身体を内部から壊された者。

そうした者を癒す魔道士であるが、どんな魔物がどのような技を使い、どうやって苦しめてくるかを熟知しないと緊急時に何もできない。

コカトリスは石化の魔眼を、屍犬は病気の吐息を、クロウラーの動きが鈍くなる粘糸を。

そうしたやっかいとなる魔物の攻撃を、ルーミアはヴァナ・ディールに来てから学んでいる。

 

そして邪龍のやっかいな攻撃も冒険者の情報が世界に廻り、ルーミアの耳にも届いている。

くるりと向いて、杖を構える。距離で言えばギリギリ魔法が届く範囲だ。

邪龍が大きく身体を起こすと、圧し掛かるように己の身体を地面に叩きつけた。

ぐらぐらと地面が揺れ、ルーミアは耐える。

 

邪龍の圧し掛かりには、呪術的な"魔力"が込められている。

それは振動にも載せられ、圧し掛かりに当たらなくても近くにいる者を纏めて麻痺させてしまう。

しかし衝撃は遠くに行けば行くほど力が和らぎ、魔法としての効果が薄れていく。

それは大気だとか、様々な要因があってこそなのだが、ルーミアは麻痺に耐える事が出来た。

食らわないよー、と心の中で舌をべーと出し、魔法を唱え始める。

 

近くにいた霊夢と妖夢の内、妖夢だけが麻痺にかかっている。霊夢は能力の御蔭で状態を狂わせる効果には無縁だ。

文は事前に知っていたので、ある程度距離を取っていたから免れたようだ。

魔理沙とアリスも元が後衛のため、麻痺の範囲から離れたので耐えられている。

なら魔法の矛先は妖夢以外しかない。

 

「パラナ!」

 

痺れが解かれる妖夢は、そのまま走り、手に持つ刀で邪龍の鼻先を切り裂いた。

戦いに最適の手順はない。あればその瞬間に対策が取られ、どんな強い技でも攻略されてしまうのだ。

冒険者はそうした情報を手にし、ただの人間の身でありながらどれだけ困難な敵でも立ち向かい、打ち勝つ事ができる。

ルーミアはそのまま弱体を唱え、邪龍の動きを鈍らせる。

確かに強そうだ。巨体からの凶眼は眼を合わせるだけで身を震わせそうになる。

だが、負けない。

なぜだか知らない。負ける気がしないのだ。目の前にいるのは勝てるか分からないはずの強敵だと言うのに。

 

それは霊夢達が謙虚な騎士と共に、様々な敵と戦ってきた同じ想いである事を、ルーミアは理解した。

 

 

 

「なんて大きさ!」

 

前に立てば分かる邪龍のその大きさ。

ヴァナ・ディールに来てから様々な魔物と戦ってきたが、邪龍はその中でもかなりの大きさだ。

鞘から抜刀した桜観剣をしっかりと握りしめ、刃先を顔面の脇に立てて構えを取る。

 

圧し掛かりの衝撃で一度は身体が痺れて動かなくなったものの、すぐにルーミアからの"パラナ"で回復する。

相手に近くに行けば、更にその大きさが分かってしまう。

巨大な龍の足に叩かれるたびに、大地が揺れる力強さがある。

先手必勝、"挑発"をする前にまず刀で斬りかかる事で様子を見る。

 

幽霊十匹分の殺傷力を持つ桜観剣は邪龍の突き出た頭部を切り裂き、傷口から血がたらりと流れ出る。

様子見とは言え、斬るなら相応の力を込めたはずなのだが、傷は浅かった。

妖夢に狙いを定めた邪龍の前足が煩い虫を潰すように襲い掛かる。

振り下ろされる足に、妖夢は踏み込んで刀をぶつけ、当たった瞬間に力を緩め、刀は流れるように受け流されていく。

 

そのまま隙を晒した巨大な足を一刀両断する勢いで斬りかかるが、やはり傷が浅い。

 

「伊達に龍じゃないという事ですか…!」

 

見た目は巨大なトカゲだと言うのに、かなりの硬い肉体を持っている。

妖夢はまだ傷つけるだけマシなほうだ。

霊夢の拳や、文の短剣も効いている様子がない。

幸い、魔道士の弱体は通っているため、勝てない事はないはずなのだが、これは苦戦しそうだと思ってしまう。

 

邪龍の腕が一瞬だけ、膨れたようにも見えた。

前足を高速で振り切り、妖夢は盾を構える前にそれが当たってしまう。

だが、痛みがない。邪龍の突然の行動に理解不能状態に陥りながらも、すぐに自分を取り戻し、刀を構えようとするが、異変に気付いた。

 

(何…!?体が重い……!)

 

傷は負っていない。自分の身体だからよくわかる。

だが、身体が自由に動いてくれない。刀が重く感じる。

体力が低下している事が妖夢の身に起きていた。

攻撃を食らったと思われたのか、ルーミアの"ケアル"を貰うが、体調が回復しない。

 

「がふぅ!」

 

そのまま邪龍の攻撃を食らい、崩れる。

謎の攻撃で体力が低下している時に、邪龍の攻撃は相当な痛手だ。

倒れそうになるのを辛うじて耐え、武器を構え直す。

 

「文!私に!」

 

「ふっ!」

 

霊夢が言いきる前に文はすでに行動していた。霊夢の影に隠れながら不意打ちをし、甲虫の顎から作られたビートルナイフが邪龍の尻尾の接合部分を切り裂いた。

さすがに大きさの違いで切断する事は出来ないが、それでも血が噴き出る程度の傷が文に付けられた。

 

そしてその傷を付けたと邪龍は霊夢にターゲットを変える。

本来なら文に向かうはずの敵対心ヘイトは、シーフの技能アビリティによってなすりつけられているのだ。

妖夢の体調が回復するまで、盾を一時的でも変更させなくてはならない。

メイン盾である妖夢が倒れると凄まじい痛手になる。

 

敵対心ヘイトが向かえば、霊夢に体を向かわせるはずである。

ところが邪龍は敵対心が霊夢に向きながらも、顔を向けずに後ろ足でそのまま攻撃してきたのだ。

 

「うわ!?」

 

これには霊夢も反応し切れずに両腕で下段ガードを固めながら防いだ。

軽い霊夢は邪龍の攻撃に後ずさり、ヒリヒリと震える両腕に"チャクラ"を回しながら拳を構えた。

 

「はっ、私に向くまでもないって?なめんじゃないわよ!」

 

突っ込む霊夢に合わせて、邪龍も後ろ足を振り上げ、霊夢を狙い、攻撃する。

前衛で一番脆い霊夢では、一撃でもまともに当たれば裏世界でひっそり幕を閉じる事になる。

しかし当たらない。邪龍の攻撃の全てを"カウンター"で迎撃しているのだ。

相手の猛攻に真っ向から打ち合う姿は、血涙の異名を持つ雄羊と真っ向から殴り合った少女の姿に似ている。

だが、決定的に違うのは彼女は、相手に行動をさせないまでの連続攻撃に対し、霊夢は相手の攻撃に合わせる必要があるリスクの高い"カウンター"で攻撃している点だ。

 

防御を捨て、相手の攻撃に合わせやすくする"かまえる"。更に霊夢の装備している「報復者」の力が、この光景を生みだしていた。

リタリエーターに込められた魔法の加護は、"カウンター"を確実に決められるように特殊な作りになっている。

その御蔭で次から次へと攻撃を迎撃していく。

 

(硬すぎる!何なの、こいつは!)

 

しかしいくら"カウンター"で攻撃してもまるで効いた感触がしない。

ドラゴンの名に恥じない強靭な鱗と肉体の持ち主なのだ。

 

一方で"ケアル"を貰いながらも、未だに体調を回復しない妖夢。

刀を持ちあげる事すら困難であるが、ルーミアはようやく妖夢の身に何が起こっているかが分かった。

唱える魔法は呪いを解除する魔法。女神に祈り、杖を振るう。

 

「カーズナ!」

 

まばゆい光が降り注ぎ、妖夢の身で巣食っていた悪しき思念の力が消失していく。

体力は減ったままだが、刀に握る力が戻る。

アリスからの"ケアル"が来ると、足に力を込め、眼前にいる邪龍に"挑発"した。

 

「妖夢!魔理沙!一気に決めるわよ!」

 

「はい!」

 

「分かったぜ!タイミングは任せる!」

 

呪いの治療が終わり、体調を回復させるのを見た霊夢は"連携"をするための合図を叫ぶ。

邪龍の強靭な肉体は生半可な攻撃では致命的な致命傷を与えるのは難しい。

ならば、冒険者が協力する事で引き起こす戦闘術によって、一気に畳みかけるのだ。

 

一番手は霊夢だ。"気"を腹の奥から溜め、武技ウェポンスキルの威力を高めるようにする。

邪龍の左足に目掛けて身体をぶつけるように"タックル"した。

が、渾身の力を込めた一撃だと言うのに、邪龍はビクともしない。

舌打ちをする霊夢であるが、次は妖夢の番だ。

 

獲物である妖夢を執拗に狙う邪龍。

前足を振り下ろし、小さな妖夢を潰そうとするが、刀で受け流し、受け流しきれないものは盾で防ぐ。

とはいえ、邪龍の攻撃は何度も盾で受け切れるものではないため、極力受け流す方向で行かなくてはならない。

何せ一撃を防ぐたびに腕が麻痺したように感覚が無くなるのだ。

 

邪龍が息を吸い込む動作を始める。あれは何らかのブレスを放つ合図だ。

ならば"連携"を行うと同時にブレスを止めるため、刀を滑らすように一撃を食らわせる。

 

「弐之太刀・鋒縛!」

 

"気"が込められたその刃は邪龍の肩を裂き、刀を通じて邪龍の体に"気"が流れていく。

その技の真価は足止めにある。

鋒縛の名の通り、この技を食らえば邪龍と言えどもほんの少しだけ、身体が止まってしまう。

ブレスを放とうとしたが、不発に終わってしまったのだ。

 

そして二つの武技ウェポンスキルが邪龍に叩きこまれ、異なる"気"が邪龍の内部で溶け合い、内部の体液が"硬化"するように固まっていく。

それはやがて、内部だけにも留まらず、外部の表面も動きが鈍く見える程に硬くなるが、それは時間にしてわずか数秒。

長い首を振り、すぐさま元の動きを取り戻す。

 

霊夢の妖夢が叩きこんだ技と"連携"は大したダメージにはならなかったのだ。

並みの魔物であれば"連携"をこなせば、致命的な致命傷になりえるはずなのに。

だが、"連携"はここからである。

"気"によって発生する"連携"は、一定時間の間だけ魔法に対する抵抗レジストが低下されている。

"硬化"に適応する元素は氷。

ならば魔理沙の唱える魔法は氷なのだが、今までの魔法とは少しばかり違う、特別性だ。

普通の魔法であれば、"連携"は発生した直後で詠唱を始めれば十分に魔法の連携マジックバーストが間に合う。

しかし、魔理沙の唱えている魔法は霊夢が"タックル"を放った直後に唱え始めているのだ。

 

ヴァナ・ディールの魔法がアルタナの民で初めて使われるようになったのは、天晶暦219年"ウィンダス連邦"の初代指導者である星の神子リミララがウィンダス周辺に点在する魔法塔に迷い込み、そこで天啓を受け「魔法」を会得したのが始まりといわれている。

その後ウィンダスの異端児サマリリによってその知識がエルヴァーンにもたらされ、ヴァナ・ディール全土に広まったとされている。

 

だが、500年近い歴史の中で、様々な魔法が発見され、数多くの魔法は禁呪となって歴史から消える事となった。

その理由の多くは「危険」であるからだ。

唱え終われば、"死"に対する耐性を持つ者、最初から死んでいるアンデッド以外は等しく終焉に導く"デス"。

数多の隕石を地上に落とし、大陸すらも変貌させる"メテオ"。

太陽の如き閃光と熱量で相手を焼き尽くす"メルトン"。

問答無用に、元素の一欠片も残さずに 完 全 消 滅 させる"アルテマ"。

 

禁呪は大規模破壊・殺戮魔法が大半を占め、魔法国家であるウィンダスですら研究すらもタブーとされているあるさまである。

また、召喚士が冒険者の職業ジョブとして出回る前は、召喚魔法すら禁呪扱いであった。

もっとも、そんな常識なんて知るか!と言わんばかりの魔道士は、勝手に研究して、勝手に禁呪を会得した者がいるのだが。

 

その中で、禁呪とならなかった古代から続く魔法が存在する。

威力こそは飛び抜けているものの、詠唱の長さ、桁違いに消費する"魔力"、更に周囲にも危険をまき散らす傍迷惑な魔法。

 

古代魔法。

 

それが今、魔理沙が唱えようとする魔法である。

唱え終われば"魔力"はごっそり減る。普通の黒魔道士であっても、覚えたてが使えばたった一発で半分近くの"魔力"を持っていかれるからだ。

"魔力"の少ない魔理沙であるなら全体の七割近くは減ってしまう。どれだけ節約コンサーブができるかが課題になる。

 

「吹き荒れるは氷河の嵐、閉じ込めるは氷の棺。

夢見ぬ眠りにつくがよい、久遠の夢に閉ざされろ。

汝らの肌を焼くは氷の息吹と知れ!」

 

"魔力"が魔理沙の中で暴走するように荒れ狂う。

極限までに凝縮された膨大な"魔力"を術式によって制御し、最後に魔法の名を唱える。

 

「フリーズ!!」

 

魔理沙がひときわ大きな声で言い放つと、詠唱が終わって魔法が発言した。

闘技場全体が凍えるように寒くなる。

古代魔法によってフェ・インに存在する大半の氷の元素が集まっているのだ。

そして寒気の中心である邪龍は"硬化"からすぐに動いたにも関わらず、"フリーズ"によって一歩も動けない程に身体が氷雪によって固められていく。

無理矢理身体を動かそうとする邪龍であるが、ビクともしない。

やがてちらちらと舞うダイヤモンドダストは円筒になりながら邪龍を包んでいく。

一瞬だ。

邪龍が球体の氷によって、完全に閉じ込められたのだ。

 

こうなっては中にある邪龍を取りだすのも一苦労するだろう。

古代魔法と呼ばれるのも頷ける代物である。

 

「精霊魔法はパワーだぜ!」

 

いつも通りの決め台詞で両手杖を掲げた。

 

「うわー。すっごいねー」

 

「だろ?もっと褒めてもいいんだぜ」

 

邪龍は完全に凍り付けになっている。

"連携"が碌に効かなかったのに、古代魔法はドラゴンのオブジュを作ってしまうほどの威力なのだ。

 

「でも、これからどうするのかしら?」

 

「龍の爪らしきものといえば…やっぱりこれですよねぇ」

 

邪龍を倒した事には倒したが、特に変化があるわけでもない。

八雲紫が現れるわけでもなく、闘技場は静まり返っている。

 

「げ、もしかしてこれを割って取りだすとか?」

 

「それしかないでしょうね。魔理沙、ファイアの魔法で氷は溶かすわよ」

 

邪龍の爪が必要であるなら、"フリーズ"によって凍結状態になっている氷を解かさなくてはならないだろう。

アリスから"リフレシュ"を貰い、古代魔法を放ったぶんの"魔力"がだんだんとだが回復している。

気合を入れて溶かす作業に入る、そんな時に声が響いた。

 

──まだ…終わってはならぬ……。まだ…!

 

「なんだ!?」

 

あり得ない光景であった。

ピシリピシリと球体状の氷に罅が入る。

甲高い音と共に、氷が割れ、邪龍は再び身体を動かし、霊夢達の前に出た。

 

「嘘だろ…?フリーズ食らっておいてまだ生きてんのかよ!」

 

古代魔法を抵抗レジスト無しで食らっても、邪龍は生き延びていた。

とはいえ、よく観察すれば無傷ではないようだ。

巨大な身体を支える足はプルプルと震え、吐息が荒い。

再び武器を構え、邪龍を迎え撃つ。今なら倒せない事はないはずだ。

 

──まだ、我らの力は、こんなものではない!こんなものではないのだ!!

 

まただ。

亡霊のようなぼやけて見えた邪龍を実体化させた光の粒が邪龍の身の廻りを舞い続ける。

それは何処かで見た事のある光景であった。

いったい何処で見た?霊夢は、魔理沙は、アリスは、文は、妖夢は。

ルーミア以外はこれに似た光景を何処か見た事があるはずだ。

光の粒はやがて邪龍を繭のように包み込み、まるで何か呼び寄せるような嘆願の声が響く。

 

──王よ!我らが闇の王よ!!我が嘆願を!我ら闇の一族が積年の怨念を晴らすために!!!■の神の力を我に!我に!我に!!!

 

思い出した。

暴食の魔剣が引き起こした異変。

魔剣の破片が名のある実力者に力を与え、魔剣の欠片はヴァナ・ディールの存在を呼び寄せた。

 

永遠に幼い吸血鬼は、ヴァナ・ディール全土を恐怖のどん底までに叩き落とした魔王を。

天衣無縫の亡霊姫は、完全なる死を企み、全ての人間を一つに纏めてようとした男神を。

蓬莱の賢者は、真世界に行くために、神の扉を開こうとした古代人の兄弟を。

神の力を宿した地獄鴉は、神獣と崇められ、全ての龍を束ねし真龍を。

 

繭が割れ、中から巨大な人型が現れ出た。

まるで悪魔のように節くれたごつごつとした黒い手。

腕が見えた。肘のあたりが逆さに棘を生やした奇怪な腕。

変貌した邪龍の姿。

それは龍とはかけ離れた姿だった。

人間を二倍以上大きくしたような巨体。人間との違いは龍の面影を残す頭部と尻尾だ。

 

それは悪夢であった。

ヴァナ・ディールに生きる者であるなら、これを知らないはずがない。

人間も、獣人も、全てがよく知る魔物の王。

白夜の騎士も、太陽の騎士も、孤高の竜騎士も、幻日の騎士も。幻想郷にやってきた冒険者でも誰もが知っている存在。

 

かつて、戦争があった。

二十年前に起きた大きな大戦争が。

人が死に、獣人が死に、街は焼け焦げ、自然は枯れ果て、それでも全てを破壊すると言わんばかりの魔王がいた。

 

邪龍の変貌したその姿。

それは「闇の王」とあまりにも酷似していたのだ。

 

「確かレミリアの時に…」

 

霊夢は頭の中から記憶を引っ張り出し、目の前の敵を見つめる。

以前、これに似たのと戦った事がある。

あの時はブロントと仲間と共に戦ったのだが、魔剣の欠片によってレミリア・スカーレットと融合した闇の王は凄まじい力でもって猛威を振るった。

ブロントが言うには、あれで全盛期とは程遠いものだと言っていた。

水晶大戦クリスタルウォーで猛威を振るっていた時の力は、暴食の力を持ったブロントではあっても即死で瞬殺する程の超プゥワーを秘めているのだと言う。

 

──フ、フハハハハ…これが、王の力か…。

 

右手に複雑な魔法陣が浮かび上がり、そこから岩石のような外形をした巨大な剣が空間を超えて呼び出される

身体が震えていた。

強さで言えば、レミリアの時と勝るとも劣らない力を感じる。

 

──来い。

 

邪龍とは十歩以上は離れてたはずだ。

だが、気づけば邪龍の目の前に引き寄せられていた。

 

「こい、つ!」

 

ラテーヌ高原で戦った悪名高い魔物ノートリアスモンスターであるブラッドディアーバルドルフが持っていた能力。

距離を無視して相手を自分の近くに引き寄せる力を、邪龍も持っていたのだ。

巨剣を横薙ぎを振るおうとしている。無防備な状態に切られれば一撃で全滅だ。

 

「させない!」

 

より前に出たのは妖夢だ。

引き寄せを一回だけでも体験していたのが幸いだった。もしもこれが初めてだったら、突然の空間移動に訳も分からずやられていたかもしれない。

盾を構え、邪龍からの一撃から己を盾にして仲間を守るためである。

巨剣と盾がぶつかりあい、妖夢はその一撃で遠くへ遠くへと吹き飛ばされた。

 

ドガン、と背中から闘技場の壁にぶつかり、そのまま地面に落ちる。

刀が手から零れ、動かない。頭から血を流しているように見えた。

 

「妖夢!」

 

ルーミアが駆ける。

回復をするにしても、もし瀕死であるなら通常の回復は効かないし、賦活の魔法を唱えるなら近くでしなければやりづらい。

そもそも邪龍の近くにいる事が危険なのだから、妖夢の回復ついでに離れなければならないのだ。

 

邪龍もそれを見逃す程馬鹿ではない。

闇の王の力を得た邪龍は、森羅万象を魔の力で持って制御する事ができるようになったのだ。

 

──バインド。

 

詠唱破棄に等しい速度で唱えられた魔法はルーミアに降りかかり、動く事ができなくなってしまう。

効果時間はさほど高くないとはいえ、それでも近づいてくるのに大きな時間を与えてしまう。

邪龍が動き出した。霊夢と文が攻撃をし続け、何とか敵対心ヘイトを稼ごうとするが、見向きもしていない。

まずやっかいな回復の要であるルーミアを先に潰す気なのだ。

 

 

 

アリスは考える。

今の状況を打破するやり方を。

赤魔道士は、白魔法と黒魔法、更に剣技まで習熟する魔道士だ。

だが、どれもができるが故に器用貧乏で終わってしまう。

剣で言えば戦士に劣る。

白魔法で言えば白魔道士に劣る。

黒魔法で言えば黒魔道士に劣る。

盾をするにしてもナイトや忍者にも劣ってしまう。

 

だが、逆に言えば何でもできるからこそ、今の状況で打破するやり方も可能だ。

アリスは基本的に理詰めで行くタイプだ。

弾幕はブレインと言うように、倫理的に考え戦うアリスにとって、選択肢の幅が広い赤魔道士は天職であり、そして本当の意味で極める事はできない職業ジョブでもあった。

 

赤魔道士とは、こうすれば勝てる、勝てたかもしれないという甘い考えでは強くなれない。

ここはまずいから一旦引く、体力が危ないから休んでいこうと安全に戦おうとする者も強くなれない。

あれが来たらこうしよう、これが駄目ならあれをしよう、と状況に応じて戦法を変える者もそれこそ強さの果てに辿りつけない。

 

赤魔道士に最も重要な事は「勝利のベクトル」が絶対にぶれない事にある。

 

自分の限界と枠を勝手に作れば、その時点で何処にでもいる凡庸な赤魔道士しか生まれない。

いや、それは赤魔道士だけではない、全ての冒険者に言える事だろう。

 

自己を発狂寸前に追い込むほどに鍛えに鍛え上げ、「絶対に勝てない」という理不尽を、ぶれる事のない「勝利のベクトル」で真っ向から潰せる者。

そうした者が真の一級廃人となり、たった一人で何十人もの一級廃人が集まらなければ倒せない怪物を打ち倒す化け物が生まれるのだ。

常識ではない。あり得ない存在。人として狂っている。いったいどっちが化け物だ。

 

アリスは思う。

私には無理だと。そんな極限の極地に立つ事はできないと。

それは、ある意味でブロントにも不可能な偉業と言えるだろう。なぜならそれをこなせば人の身で異形になり果てるのだから。

 

だが、今はそんな事はどうでもいい。重要な事ではない。

確かにアリスは赤魔道士を極めるのなら向いていないかもしれないが、それがどうした?

やれる事をやる。確実にこなしていく。

元来、アリスはそれしかできない。ならば、やり通すだけだけだ。

 

状況を立て直すならまず邪龍の足止めをしなくはならない。

アリスの人形では力不足だ。上海人形では非力すぎるし、大江戸人形を自爆させても傷にもならないだろう。

だからといって剣で挑んでも一蹴されるのがオチだ。龍の時点で碌に攻撃が通じていなかった言うのに、アリスの攻撃が通るとは思えない。

なら、自分自身に魔法の加護をかけ、妖夢の代わりに盾になる。

しかしただ精霊魔法を唱えて敵対心ヘイトを稼ごうにも抵抗レジストされてしまうのがオチだ。"魔力"を無駄には消費できない。

 

「ふー…」

 

頭の中で高速で考え、手順を確認する。

今からする事は赤魔道士だから出来る緊急時の盾だ。長く持たないが、時間稼ぎにはなるはず。

魔法の加護を唱える。少しばかり長い詠唱だが、魔法詠唱短縮ファストキャストによって次々と唱えて行く。

 

「ストンスキン、ブリンク、ファランクス、リジェネ」

 

黙々と唱えられた魔法は四つ。

石のような頑丈さで攻撃を防ぐ"ストンスキン"、風の幻影を作り出して惑わす"ブリンク"、光の元素の出来た小さな盾を何百何千と集め、壊れ続ける・・・・・事で衝撃を流す"ファランクス"、最後に保険として死ななければ肉体が回復し続ける"リジェネ"を掛け終える。

"魔力"の残りは少ない。このまま適当な魔法を唱えても邪龍はこちらには向かわないだろう。

なら、有り余る体力と残り少ない"魔力"を交換し、わざと瀕死になる事で回復魔法を唱え、無理矢理向いて貰う。

 

赤魔道士の奥義であるこの技は危険の隣合わせだ。

今のアリスの力量ならは"気"と"魔力"の流れを感じ取り、逆転させる事のできる。

まだ武技ウェポンスキルを使えるほど"気"は洗礼されていないが、それでもこの技能アビリティを使うならば問題ない。

"魔力"の流れを"気"へと繋ぎ、"気"の流れを"魔力"へと繋げ、逆転させる!

 

「コンバート!」

 

失った"魔力"は充足感を得るように戻ってくるが、逆に体力は少し殴られれば瀕死になってしまう程に減ってしまう。

それでいい。回復の魔法は奇妙な事に、回復した量によって稼げる敵対心ヘイトが変わってしまう。

 

「ケアルⅣ!」

 

赤魔道士が扱える最高レベルの癒しを自分自身にかける。

今ので体力が三割は回復した。

 

「ケアルⅣ!」

 

二回目の癒し。邪龍の視線が殺気と共に飛んでくる。

女神の癒しは、魔物の注意を強く引き付ける。

 

「ケアルⅣ!!」

 

三回目の癒しで自分自身の肉体は完全に回復する。

そして、ルーミアに向かって歩いていた邪龍は完全にアリスに目標を変えている。

 

――アルタナ!アルタナ!!アルタナァァァァァァァァ!!!

 

声をあげながら巨剣でアリスを大きく切りつける。

その剣圧は離れたルーミアまで届き、背筋が凍る。

渾身の一撃であったが、アリスには当たっていない。

自分の空気の周りを揺らし、通る光を曲げてしまう呪文。

見えている位置とはほんの少し異なる位置に実像がある。だが、魔法の膜は非常の脆く、二度の衝撃で消えてしまう。

 

更に一撃が加えられ、風の幻影は消滅する。

後に残るのはアリス本体。狙いを定めた邪龍の巨剣による振り下ろしが襲い掛かる。

それを盾を構え、防ごうとする。

普通であれば防げずに叩き伏せられてアリスは裏世界でひっそり幕を閉じる事になる。

しかし、"ストンスキン"によって耐久性が跳ね上がり、"ファランクス"の補助もあって一撃だけ耐える事ができた。

盾を装備した左腕が痺れるが、それだけだ。

しかし、たった一撃で"ファランクス"が壊され、"ストンスキン"の効果が切れてしまった。

これではもう一撃食らえばただでは済まない。

だからこそ、盾で防ぐ少し前に魔法を詠唱をしていた。

 

「ブリンク!」

 

再びアリスに風の幻影が纏われる。

一撃を食らわせれば倒せるのに、その一撃を決められない獲物に邪龍は歯軋りをする。

巨大な足による蹴りが幻影を一枚消し、更に巨剣でもう一枚消滅していく。

 

(もう限界か…)

 

魔法の再詠唱には時間がかかる。それがなくても詠唱そのものにも時間がかかる。

その二つを無視した赤魔道士の奥の手を使うかと思い、鋼と鋼の鳴る音がした。

 

「こっちに来なさい!私はここです!」

 

妖夢が刀と盾をぶつけ、"挑発"している。

ルーミアの回復は間に合い、戦線を復帰した。幸い瀕死では無かったので、"ケアル"を受ければすぐに立ち上がり、メイン盾に戻ったのだ。

 

邪龍は妖夢に狙いを定め、狙いから外れたアリスは静かに息を吐く。

助かった。仕事はやり遂げた。

だが、まだ戦いは終わっていない。

ここからが本番だと、アリスは気を引き締めた。

 

 

 

邪龍と霊夢達の戦いは熾烈を極めた。

ダメージそのものは与えられない事はない。しかし、相手からの攻撃をまともに食らえば大ダメージになってしまう。

そんなギリギリの戦いを繰り広げて行く。

 

拳を刀で受け止めるが、体重を乗せた重い一撃に膝が崩れて倒れそうになる妖夢。

 

「この、ぐらいで!」

 

――ほう?

 

拳を払いのけ、下から上へと切り上げる。

鋭い切れ味をもった桜観剣が悪魔のような身体を切り裂いていく。

 

「妖夢ばかりに気を取られすぎよ!」

 

"気"を溜めこんだ一撃が足の裏側に叩きこまれた。

態勢を崩された所に魔理沙とアリスの精霊魔法が邪龍を狙い撃たれる。

雷撃が鎧のような肌を焦がしていく。

 

着実にだが、確実に邪龍を追い詰めていく。

 

――貴様らアルタナの民に絶望を教えてやろう。

 

それを許さない邪龍は次の手に出た。

邪龍の体内で"魔力"が集い、それは闇が弾けるように放出した。

 

範囲が広く、後衛を含めた全員にその攻撃に当たってしまう。

幸い、ダメージそのものは大きくない。充分に耐える事が可能だった。

 

「ちゃっちな真似を!」

 

モンクタイプである霊夢ができるのは殴り続けるのみ。

体格の違いで、足にしか届かないが、それでも数多の妖怪と魔物を殺してきた拳が叩きこまれる。

 

だが、手応えが無かった。

力を込めて殴りかかったはずなのに、拳に感じるはずの衝撃が伝わらない。

 

「はぁ!?」

 

まるで、あるはずなのにない感覚に、驚く霊夢。

文と妖夢も武器で斬りかかっているが、今まで通っていたはずの攻撃が通用しなくなっている。

 

「攻撃が効かなくなるとかアリ!?紫じゃあるまいし!」

 

今の邪龍は障壁か何かで身を守っている。

博麗の巫女はそういった障壁の類に詳しいために見抜いたが、張られている障壁はかなりの代物だ。単純な力任せでは壊せない。

 

「なら魔法はどうだよ!サンダーⅡ!」

 

詠唱を始めると同時に、邪龍も闇を放出する攻撃をする。

幸い、物理の攻撃ではなく、魔法的な攻撃であるために詠唱が止まる事はない。

雷の元素が雷撃となって邪龍を切り裂こうとするも、やはり邪龍に当たる寸前で消滅してしまう。

 

邪龍が使っている障壁は闇の王も使っていた"魔力"の壁だ。

水晶大戦に置いてもサンドリア騎士団とウィンダス魔法部隊の猛攻撃を 完 全 無 効 を実績を持った強固な鎧である。

当然、霊夢たちの攻撃も実力以前に通じていない。このままではジリ貧確定だ。

 

「紫並みにチート障壁とかふざけんなよ!」

 

「あの時は結界壊しの術があったけど、今は…」

 

幻想郷とヴァナ・ディール。

二つの世界を繋げるか否かの戦いとして、妖怪の賢者と本気で戦った。

その時は障壁破壊が可能な霊夢と鈴仙・優曇華院・イナバ、直前に使われた技をそのままコピーする小野塚小町がいたからこそ、攻撃が全く通らないチート染みた紫の障壁を破壊できた。

だが障壁を破壊できたのは霊夢が博麗の巫女としての能力を持っていたからであり、今の霊夢には結界を扱う力を持っていない。

 

「だったら、これを決める!」

 

バックステッポをし、距離を離す霊夢。とはいえ精々五歩程度、そこまで離れていない。

助走をする距離で言えばそれで十分だ。"気"を高め、本来は拳に集めるのを、足に集中させていく。

走る。少しの距離で弾丸のように助走を付け、矢のように敵に突っ込むと跳び上がり、邪龍に足蹴りを食らわせた。

 

「崑崙八象脚!」

 

足蹴りは邪龍の腹を当て、くの字になりながら後ずさる。

そして、霊夢の目には邪龍に張られていた障壁が破壊されたのが見えた。

 

「感謝するわよ、プリッシュ…中々使える技じゃない」

 

ジュノで出会った冒険者の少女、モンクタイプのプリッシュが同じモンクタイプである霊夢に教えた技の名は"崑崙八象脚"。

外側のくるぶしの下の窪み、この辺りにも崑崙というツボがある。

八象とは易学で八卦に対応する自然現象のことであり天・地・水・火・山・沢・風・雷を意味する

即ち「崑崙というツボから"気"によって引き起こす属性元素を帯びたドロップキック」であり、全属性の力を込められたその力は障壁の類を破壊する性質を持つ。

 

とはいえ、技の負担は小さくない。

この技はプリッシュの並外れた実力と肉体で繰り出す必殺技だ。

如何に霊夢が常識を超えた天賦の才を持ち、技の習得が早くても、技の負担に身体がついてこないのだ。

全属性を放出したために、足のツボがピリピリと痛い。戦いに支障はないが、そう何度も打てないだろう。

 

――おのれ、おのれ!しつこい!脆弱な存在が!我ら闇の一族に敵うはずがないと言うのに!

 

邪龍は憤怒の表情でいまだに抵抗する小さき者を蹴散らすために魔法を連続で唱える。

 

――ウォタガ!ファイガ!エアロガ!ブリザガ!サンダガ!

 

水の嵐が、火の嵐が、風の嵐が、氷の嵐が、雷の嵐を少女達を襲う。

水の弾丸が身体を撃ち、業火が肌を焼き、風の刃が切り裂き、氷が氷雪させ、雷の雨が降り注ぐ。

上下を揺さぶられるような激しい衝撃が全身を襲う。皮膚が一瞬で裂け、燃えたかと思えば腕が悴む程冷えてくる。

少女達は全身から血を噴き出し、痛みで気を失いそうになりながらも歯を食いしばって耐えようとするが、邪龍が追い打ちをかけた。

 

――塵も残らず消え去るがいい!!

 

闇が破裂した。

まるで星は爆発したかのように、邪龍を中心にして闇が広がると、霊夢達全員の身体を壁際までふっとばしたのだ。

目の前が暗くなる。気づけば身体が倒れ込んでいた。まったく力が入らない。

 

――脆弱なるアルタナの民よ、もはや貴様達は我らによって裁かれるしかないのだ!闇の神の加護は我らにある!

 

邪龍の笑っていた。

哄笑は次第に狂気に塗れ、もはや誇りあるはずの龍ではなく、悪魔と変わらない声となっていく。

それは、かつての闇の王と何も変わらない魔王の姿。

節くれた身体が余計にいびつな形に変化し、肘の逆さまになった棘の数が増え、鎧のような胸板も幾本の棘が生えている。

原因が未だに分からないが、邪龍の力は際限無く膨れ上がっていく。

危険だ。今ここで奴を倒さなくては間違いなく大変な事になる。

そして、何よりも…。

 

(気に入らない…)

 

あの声が気に入らない。実に不愉快だ。霊夢の心でそう思ってしまう。

何が闇の神だ。何が裁かれるべきだ。

一体、何の権利でもってそんな権限を持っているというのだ。

そもそも自分達はアルタナの民ではなく、幻想郷の住民だ。そんな事すら分からないのか。

 

『へへ、霊夢もか?』

 

朦朧する意識の中、魔理沙の声が聞こえた。心の中から伝わるこれはリンクシェルだ。

 

『どうする?このままコンティニューせずに終わるか?』

 

『冗談抜かさないでよ。まだまだ行けるわよ。でしょ?みんな』

 

声は聞こえない。だが、思いは伝わってくる。

こんな所で諦めたら今まで冒険してきたのが水の泡。そして、ブロントに笑われてしまうだろう。

最後まで諦めずに足掻き続ける者。少女達は、真の意味で冒険者になれたのだ。

 

ルーミアは、祈るように瞳を閉じた。

女神にこの想いが届くようにと。

 

暖かな奇跡が舞い降りる。ともに生きんと願う風が傷を癒していく。

慈しみながら包んで、冒険者を照らす女神の祝福は、立ち上がる力を取り戻させてくれる。

 

―─…まだ抗うか。

 

「何度だって戦って貰うわよ。私達が勝つまでね!」

 

拳を構え、邪龍に飛び掛かった。

終わりとも知れぬ戦いの果て。それでも冒険者は諦めずに戦い続ける。

だが、どんな戦いでも、いずれ終わる。

 

霊夢の拳が"カウンター"となって決まる。

文の短剣が隙間を狙う事で傷を増やしていく。

妖夢の刀が巨剣と鍔迫り合いとなり、受け流す。

魔理沙の魔法が頭部を燃やしていく。

アリスの支援が仲間と助けとなる。

ルーミアの癒しは仲間の戦う力を与えてくれる。

 

冒険者が築き上げる絆の力が一人二人の力を合計ではなく、倍々にも引き上げていくれる。

もはや、負ける通りなど見当たらなかった。

 

"気"を高める。高め、より高め、更に高めていく。

濃密なまでの"気"は小柄な妖夢を大きく見せる。それは半分死んで半分生きている妖夢にとって、破格とも言うべき量であった。

その"気"を余さず手に持つ両手刀である桜観剣に余す事無く注ぎ込んでいく。

今から撃つ技はヴァナ・ディールの技ではない。

魂魄家に伝わる技の一つ。

 

その威力、魂をも断ち切る斬撃也。

 

ただ撃つだけではない、戦士としての技能をフルに使い、一撃で決める勢いで叩きこむ。

 

「天に還る時が来たようだなッ!はあああああああ!!バーサク!」

 

剣を上段に構え、そのまま相手の弱点を本能的に狙う"マイティストライク"と攻撃に特化する"バーサク"の構えを取る。

"気"を極限まで高められた桜観剣はまるで断てぬ物など何もない斬艦刀の如く刀身が長くなっていく。

駆けた。眼にも映らぬ速度で邪龍に走る。

それに合わせて魔理沙も魔法を唱えている。妖夢のやろうとしている事に合わせるつもりなのだ。

邪龍とはあと数歩の所で跳び上がる。重い鎧を着込んで尚、邪龍よりも高く飛んだ。

それに合わせて上段から構えた"気"によって長い刀となった桜観剣を力強く振り下ろした!

 

「迷津慈航斬!!!」

 

危機感を感じ取った邪龍は巨剣を盾にするが妖夢の一撃では無意味の一言。

一刀両断をするかのように放った一撃は巨剣ごと断ち切り、左肩から右腰まで大きく切り裂いた。

 

―グオォォォォォォォォォ!!?

 

邪龍の声が闘技場に響く。

だが、これで終わりではない。

 

「妖夢!」

 

「はい!」

 

文が鞄を開き、何かを取り出すと地面に着地した妖夢に投げ渡した。

パシッと受け取るそれは蜜蝋で出来た白い小さな翼だ。

それを肩に付け、ほんの僅かな"気"を流し込むと、それはキラキラと分解しながら粒となり、妖夢の中に溶け込んでくる。

すると、武技(ウェポンスキル)を放ったはずの妖夢の"気"が復活する。

 

文の投げた翼はイカロスウィングだ。

失った"気"を瞬時に上昇させるアイテムであり、武技ウェポンスキルを連続して放つ事ができる。

その代わり、使うと肩の筋肉を酷使するので連続で使用できない、割と高価である事が欠点であるが…。

"気"を回復させた妖夢が次にやる事とは?

 

「迷津!」

 

決まっている。己の使用できる最高の技を相手に叩きこむ事。

盾を捨て、刀を両手で構える。元々、この技は両手で用いる事で本来の威力を発揮する。

幻想郷と違い、ヴァナ・ディールで放つこの技は"連携"を引き起こす事が可能だ。

だから魔理沙はそれに合わせて魔法を唱えているのだ。しかもわざわざ一撃目から唱える長い魔法を。

 

「慈航斬!!!!!」

 

連続して放たれる魂をも断ち切る一撃が邪龍に更に大きな傷を与えた。

次は右肩から左腰にかけて深い切り傷を作り、先程の傷跡と合わせてX字を描く傷となる。

そして二つの技の"気"は邪龍の内部で混ざり合い、身体中にある小さな棘が"切断"されたかのように次々とボロボロになっていく。

 

残り少ない"魔力"ではもはやこの魔法を使う事はできない。

ならば黒魔道士の奥義である"魔力の泉"で足りない"魔力"を無理矢理補うのだ。

 

「大地よ目覚めよ!我が声を聞き、悠久の眠りから目覚めよ!

遥かなる過去、灼熱の時代、いまだ冷めざるその怒りに満ちた猛々しい姿よ!

その胸に怒りあるなら、地に眠る者達、大地の激震となれ!!」

 

地面に向かい、片手を叩きつけるように振り下ろし、叫ぶ。

 

「クエイク!!!」

 

地面が吠えた。

轟音と共に、立っている地面が揺れる。

またたくまに広がる蜘蛛の巣のように邪龍の足元に無数の罅割れが走る。

赤い地割れだ。妖夢はそれが何であるかを知識として知っている。

だからこそすぐに離れる。

裂け目から"クエイク"によって作られた溶岩が見えているのだ。

 

揺れが大きくなり、まともに立っていられない。

地割れから一斉に溶岩が吹きだした!

邪龍は足場の悪い上に、吹きだす溶岩をまともに食らってしまい、足がドロドロに溶け出していた。

急いでその場から逃げ出そうとするが、頭上から雨あられと岩が飛んでくる。

 

アリスだ。

"連続魔"によって詠唱速度と再詠唱速度を廃止し、ストーンⅡを連続して唱え続ける事で逃げ出そうとする邪龍を足止めしているのだ。

 

土の魔法でありながら溶岩をも引き出す古代魔法によって足が立っているのが不思議なほどに焼け焦げている。

邪龍の息は荒く、もはや押せば倒せるほどに弱まっている。

勝機と見た霊夢は踏み込んだ。

 

「文!私の後に!」

 

「了解しましたぁ!」

 

例え瀕死であっても好きに攻撃される邪龍ではない。

巨剣を無くした手を拳に硬め、殴りかかろうとするが、眼が突然の閃光で見えなくなる。

 

「フラッシュ!」

 

「ナイスよ、ルーミア!」

 

眼にも映らぬ高速の五連撃である"乱撃"を片足に叩きこみ、骨の砕ける音と感触が霊夢の拳に伝わる。

片膝をつき、閃光から開いた邪龍の眼に映ったのは翼を生やした小さな人影。

 

「風よ、巻き上がれ」

 

短剣を片膝をついた邪龍の胴体にねじり込み、その瞬間、込められた"気"を解放した。

竜巻とも言うべき短剣に込められた"気"が邪龍をズタズタに引き裂いているのだ。

内部から風の刃でズタズタにされ、"気"と"気"が混ざり合う事で再び"連携"が発生する。

 

"炸裂"するかのように邪龍の肉体が響いた。

魔理沙は"魔力の泉"が切れる前に、アリスは"連続魔"と"魔力"が尽きる前に。

最後の魔法を詠唱し、唱えた。

膨大なまでの"魔力"は周りにまき散らすかのように、その魔法の力の大きさ具合が見て取れる。

 

「行方知らぬ風たちよ、我が声を聞け!

世界に満ちる風は世界と共に、我らと共に有り続ける!

生々流転なす生命の源流に天空への門を開かん!!

トルネド!!!」

 

「エアロⅡ!エアロⅡ!エアロⅡ!エアロⅡ!」

 

風の刃である竜巻と豪風が邪龍の身体をすっぽりを包み込んだ。

容赦無く刃は邪龍を切り裂き、そのたびに鮮血が舞った。

鮮血の混じった竜巻は収まる事を知らず、"魔力"が続く限りに風の刃が邪龍を切り裂き続けていく。

 

度重なる攻撃と"連携"、更に魔法を食らい続けた邪龍の身体はズタズタに引き裂かれていた。

片腕が千切れ飛び、傷付いていないところを探すのが難しいほどに。

悪魔のような皮膚は剥がれ落ち、地に落ちるたびにそれは消滅していく。

それでも、それでも。

 

―─お、おお、おおおお…まだ…まだ、我は…我らは終わって……。

 

千切れ掛け、すでに力がでないような右腕を天に掲げる。

それは天に抗い、天に憧れる罪人のような姿であり、魔王の姿とはかけ離れた光景にも見えた。

身体の端から砂のように崩れている。もう、邪龍は限界なのだ。

 

―─世界を……闇に、闇に…。

 

「さっさと…」

 

霊夢は跳んでいた。

自分の何倍はあるであろう邪龍の頭部まで跳び上がり、右足を頭に付くぐらいまで引き上げ―

 

「消えなさい!!」

 

それを断頭台の如く振り下ろした。

踵落としは邪龍の頭部を砂のように粉砕し、その瞬間に邪龍の身体は粉々に砕け、光が闘技場を覆った。

突然の眩しい閃光に目を閉じ、光に眼がだんだんと慣れてくる。

 

瞼を開けば邪龍の姿はない。

シンと静まる闘技場。

戦いが終わり、全員が疲れ果ててへたりこむ中、霊夢だけはそれを見つめていた。

邪龍の代わりにある、細長い爪のようなものを。

 

「これが…龍の爪?」

 

霊夢は呟いた。

慈しむように、壊れやすいガラス細工を丁寧に触るように、龍の爪に触れる。

紫からの依頼である龍の爪。

だが、それは爪というにはあまりにも美しかった。

光輝く水晶のように見えて。それはまるで………。

 

闘技場の地面に隙間が開いた。

巨大な、全てを飲みこむような隙間が。

隙間にはいくつの瞳が一斉に少女達を見つめ、飲み込まんとしていた。

 

「な、これは!」「おいおい、マジかよ?!」「またこのパターンか…」「今度は気絶しないようにしましょう…」「あややや…もっと丁寧に送ってくださると嬉しいんですけどねぇ」「そーなのかー」

 

この隙間の使い手はよく知る人物の能力だ。

これを超えた先に、少女達の帰る場所に着いているだろう。

隙間が出現して一分もかかっていない。

ヴァナ・ディールから六人の冒険者は消失したのだった。

 

 

 

伝説は、こうはじまる。

すべての起こりは「石」だったのだ、と。

 

遠い遠いむかし、おおきな美しき生ける石は

七色の輝きにて闇をはらい、

世界を生命でみたし、偉大なる神々を生んだ。

 

光に包まれた幸福な時代がつづき、

やがて神々は眠りについた。

 

世界の名は、ヴァナ・ディール……。

 

 

しかしいつしか、

祝福されしヴァナ・ディールの地に、

おおいなる災いが満ちる。

 

何万年の長きにわたり

暗黒を退けていた古の封印がやぶれ、

終わりなき悪夢が目覚めようとしている。

 

罪なきものの血が大地を流れ、

世界は恐怖と哀しみ、

絶望におおわれるであろう。

 

 

だが、希望がないわけではない……。

どんな嵐の夜をもつらぬき、輝くひとつの星がある。

どんな獣の叫びにも消されず、流れるひとつの唄がある。

 

 

そうだ。

 

知恵と勇気と信念をたずさえた、誇り高き者たち……。

 

さあ、深き眠りよりさめ、

いまこそ立て、伝説の勇者たち、

 

クリスタルの戦士よ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいィ…」

 

騎士は狩りから戻り、久々の御馳走を持ち帰ったら、誰もいない神社の居間で途方に暮れていた。

まだ時刻にすればもすぐで夕方と言ったところか。

何処かに出かけているのか?とブロントは思い、肉の入った鞄を置こうとする。

 

「いやぁあああああああ!」

 

「うわああああああああああ!」

 

「きゃあああああああああああ!」

 

「おおおおおお?!」

 

「うわーなのかー」

 

「ム牛ン…」

 

「おいィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」

 

突然、ブロントの頭上から少女達が落ちてきた。

押し潰され、更に鎧や武器を装備し、色々な物を詰め込んだ鞄の重量は計り知れなかった。

さすがのブロントも、その重さに耐えきれず、プリケツ状態になってしまう。

 

「え?ここって…博麗神社?!戻ってきたの?!」

 

霊夢は気が付くとそこはよく知る神社の居間だと分かる。

まだ机にはまだ暖かさのある茶が入った湯飲みがある。

 

「いつつつ……まさかいきなりスキマからなんて聞いてないぜ……」

 

「まったくよ…」

 

「あれ、下にいるのって…」

 

妖夢は気付いた。今下にいる人物が。

 

「お、おいィ…早く、どいてくれませんかねぇ…このままでは俺の命が重量でマッハなわけだが…」

 

「わーわー!ブロントさん!しっかりしろって!」

 

「わわわわ、ケアル!ケアル!」

 

死にかけていたブロントに、ルーミアは慌てて"ケアル"をかけようとする。

異世界の魔法だが、幻想郷に帰れてからもちゃんと使えるようだった。

 

「ふぅ…死ぬかと思った感。【ありがとう。】リューミあ」

 

「それほどでもないのかー」

 

「回復したのにそれほどでもないと謙虚に…!んん?なぜrういーミアがケアルを使えるのか理解不能状態なんだが…」

 

「ああ、それはですね…」

 

文は、ブロントに、これまでの事を語る。

紫の手によってヴァナ・ディールに渡った事。

そこの地で冒険者として活動した事。

そして、今、ようやく戻れた事を手早く簡潔に説明していく。

しかしシェイハシェイハと説明されても、ブロントはいまいち理解しているようではなかった。

 

一方で霊夢は手に入れた龍の爪がない事に気づく。

鞄を探るなどしてみたが、見当たらない。

 

「あれ?おかしいわねぇ…」

 

「うふふふ…お探しの品はこれかしら?霊夢」

 

空間に一本の線が作られ、それは隙間となって、一人の美女が現れる。

八雲紫だ。霊夢達をヴァナ・ディールに送った大妖怪。

紫の手には龍の爪を持っている。爪は水晶のように七色に輝いていた。

 

「紫……」

 

「まずは御苦労様と言わせてもらうわ。まさか半年もかけずにこれを取り返してくれるなんてね…感謝致しますわ」

 

「それはいいわよ。今、私はあんたに聞きたい事があるの」

 

「何かしら?」

 

霊夢の目は険しく龍の爪を睨んでいる。

 

「なんで龍神様の気配がそれからするわけ…?もしかして…」

 

「あら?気づいたの?

ええ、あなたの予想通り、これは龍神様の一部よ。爪というけど、形が爪に似ているだけで本当は違うものだけどね」

 

霊夢は絶句した。

龍神といえば幻想郷の最高神。

人間、妖怪共に、生きとし生ける物全てが崇拝する神である。

普段は、海か天か雨の中に棲み、大結界も関係なく外の世界、冥界、天界、地獄など自由に体を移動できる。

聲は天を割り、地上に雷雨をもたらす。体をうねらすと山が崩れ地震が起きる。

破壊と同時に幻想郷の創造神であり、雨も河も豊かな緑も全て龍神のおかげである。

 

「なんでそんなものが…」

 

「ヴァナにあるのか…かしら?まぁ、簡単に言ってしまえばね。

ヴァナから幻想郷に冒険者がやってくるように、幻想郷からこれがヴァナに流れ着いてしまったのよ。

それだけなら問題は無かったわ。世界の本則の前には龍神様と言えども影響は出る。

でも、これは違った」

 

手に持つ龍の爪は世界が変わっても輝きを失わずに有り続ける。

 

「あなたは見たはずよ。ヴァナ・ディールの地で。

最初のクリスタルという名を持つ水晶を」

 

「最初のクリスタルってのはよく分からないけど…もしかして」

 

「ええ。これは、ヴァナ・ディールではクリスタルに属する物みたいなの。

それもとても強力で、ダークパワーを凌駕するほどの。

だから邪龍に力を与え続けたのよ」

 

龍とは自然に生きる自然の王である。

龍が生きる場所には自然が恵み、龍のいない場所は枯れ果てる。

そしてその一部は、自然の力が凝縮した欠片…つまり、世界を構成する元素を固めたクリスタルと似たようなものなのだ。

龍の爪はその中で最も強力な欠片であり、その力は亡霊に過ぎなかった邪龍を実体化させ、ついには闇の王にまで至らせるほどであった。

 

「もしも一年以内に取り戻せなかった時、亡霊であった邪龍は完全に復活するだけに留まらず、魔物の王となって世界を混乱させたところでしょう。

それはヴァナのみならず、龍神様の力を得た邪龍は幻想郷も侵略する可能性もあるわ」

 

「ちょとそれsYれになってないわよ…もし私達が取り戻せなかったらどうするのよ?」

 

「その時はブロントさんなり、幻日の騎士なり…DOGEZAをしてでも依頼をして貰うわよ。

でも…あなた達は勝った。私の依頼を果たした」

 

紫は言葉を続ける。

 

「世界には無限の可能性がありますわ。

私が人間として生きる世界。霊夢が妖怪として生きる世界。幻想郷が存在しない世界。存在していなくても妖怪と人間が共に生きる世界。

ヴァナ・ディールは冒険者が生きる世界。

霊夢。もしあなただけがヴァナ・ディールに行き、強さもそのままでも、一人で戦えば邪龍には勝てなかったでしょう。

でもあなた達は勝った。仲間と共に協力しあい、ヴァナ・ディールで築き上げた絆の力によって。

クリスタルによって導かれた戦士のように、あなた達は打ち勝ったのです」

 

 

 

それはヴァナ・ディールとは違う、あり得たかもしれない世界。

違う歴史を辿りながらも、そこには光放つ水晶があった。

 

 

 

全ての始まりである導かれし四人の光の戦士。世界を救うための探求の旅が始まった。

 

数多の犠牲を払いながらも、若者は"のばら"を咲かす平和な世界のために支配者に抗った。

 

ちょっとした探検が四人の少年少女を成長させ、世界を救う物語に発展していく。

 

尽きない人の夢と欲望。それに疑問を抱いた若き暗黒騎士は、幼き少女を守るために自国を裏切る。

 

相棒と共に世界を旅する若者。それは世界の真実へと繋がっていく。

 

気の弱い少女は抗う術を持たなかった。だが、彼女に集う仲間達が己の弱さを向き合わせてくれる。

 

元兵士は過去を否定し、心に傷を持ちながらも、仲間と共に過去の因縁に決着を付けた。

 

他人を拒絶する兵士は、変わりゆく世界を見て、何を思うのか。

 

誰かを助けるのに理由はいらない。女の笑顔を見たいがために、盗賊は陽気に世界を駆け抜ける。

 

少年は時を超えて少女と出会い、自分だけの物語へと出発した。

 

自由という言葉に憧れ、大空を羽ばたく空賊を目指す少年。冒険者となった彼は、様々な運命に流されていく。

 

たった一人の肉親を守りたいがゆえに、名前を封じ、大人になろうとした女。未来に打ち勝つために神のごとき存在に反逆する。

 

一言で言うなら「お人好し」。様々な冒険を重ねて増えた肩書が数あれど、彼の歩む道は冒険者と呼ばれるものに相応しいものである。

 

国を、民を、友を。王子として守らねばならない強がりな心は果たして本心か否か。

 

守るべき家族を、全てを奪われた少年は一度は復讐者と化す。しかし真実を、世界を見据えてた彼の歩みは人が人として生きられる世界を求める始まりであった。

 

 

 

世界は分かれ、無限に等しい可能性が眠っている。

そして、その世界に共通していたのは、皆が"クリスタル"に導かれ、世界を救った事。

それは言うならば人が作り上げた、究極の幻想ファイナルファンタジー。

人の可能性、世界の可能性を現したかのようだった。

 

 

 

「…ま、言いたい事は分かったわ…でもね、私はやらなくちゃいけない事があるの…」

 

霊夢の体から"気"ではなく、膨大な"霊力"が沸き上がる。

久しぶりにやるから少しばかり心配であったが、問題無く力が扱えるようだ。

 

「れ、霊夢…?」

 

「それはね、私はあんたの顔を思いっきり殴らなくちゃいけないって事よーー!!」

 

"気"ではなく"霊力"によって構成された"気孔弾"を放ち、それは紫の顔面スレスレを飛んで行った。

 

「ちょ、ちょっとー!?せっかく私かっこよく話を綺麗に纏めたのに、何なのこの展開はー!?」

 

「うっさい!大人しく私に殴られなさい!」

 

「なんで?!」

 

「第一話のラストで言ってるじゃない!『ついでに紫を殴りにも』って!」

 

「それって伏線でしたの?!いらないわよ、そんな伏線!!」

 

ギャーギャーと醜い争いを続ける二人の少女。

それは幻想郷のいつも通りの風景である。

 

「きょ、境界障壁!」

 

「効くかぁ!!崑崙八象脚!!!」

 

「ゲェー!!私の障壁が一撃で?!ぶへらぁ!」

 

あらゆる攻撃を無効化した紫自慢の障壁は、霊夢がヴァナ・ディールで修得した飛び蹴りにあっさりと破られ、端正な顔に足蹴りを食らってしまう。

 

「まったく何をしてるんだが…」

 

「んー、とりあえず私に言える事は」

 

リアルバリスタを始めた霊夢と紫を呆れた様子で見つめるアリス。

魔理沙は頭を掻きながら、楽しそうに笑った。

 

「いつも通りの世界に帰ったってことさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女達は冒険者の格好から、鞄に入れてあるいつも通りの服装に着替える。

これに着替えるのも久しぶりだ。ジュノを拠点にしてから、冒険者の姿でいる事が多かった。

 

時刻は夜を回り、晩飯の時間だ。

ブロントの取ってきた牛肉で、みんなで鍋をやる事になった。

 

「~~~~~んん!おいしい!なんておいしさなの!!」

 

机に置かれた、ぐつぐつと煮えた鍋。

中には糸こんにゃく、春菊、鳥の卵、木綿豆腐、長ネギ、うどん、そして牛肉が入っている。

つゆは、昆布から取っただし汁をベースに、醤油や日本酒、砂糖、みりん、みそなどを加えて仕立てた、割下だ。

ヴァナ・ディールの世界では牛鍋。外の世界ではすき焼きと呼ばれる鍋料理である。

 

霊夢は薄く切られた肉を、至福の顔をしながら口の中で頬張っていく。

 

「確かに…これはおいしいですね」

 

「お肉おいし~」

 

自分のお椀に野菜から肉まで、バランス良く入れていく。

だしの取れたつゆと食材が両方備わり最強に見える味に、妖夢の箸がいつもより進んでいる。

ルーミアのほうは、胡坐をかくブロントの上にちょこんと座り、掻き混ぜた卵の入ったお椀に肉を浸し、食べていく。

 

「おっとと、肉ばかりじゃなくて野菜も食べなければならない系の話があるらしいぞ?

そうしなkれば大きくなれにぃ」

 

「はーい」

 

何も知らない者が見れば親子としか思えないブロントとルーミア。

ここぞとばかりに甘えられるのは子供の特権なのだろう。

 

「ヴァナの酒も美味しかったですけど、やっぱり慣れしたんだものですねぇ…うん、美味い」

 

一方で文は、博麗神社の蔵にある酒を飲んでいた。

宴会の時に振るわれる代物だが、霊夢が太っ腹にも「今日は御馳走だからこれで飲むわよ!」と言ったのだ。

熱い液体が喉に通るたびに、慣れた酒の味が口の中に広がる。

 

「む…結構掴みづらいわね…」

 

アリスは、うどんを取ろうとしているのだが、うどんが滑って中々取れないようだった。

鍋物で麺類は慣れていないと掴みづらいので、当然と言えば当然だ。

それを見ていた妖夢が代わりによそってくれた。

 

「牛肉はまだまだあるから全力で食べていいぞ(寛大)」

 

「さすがナイトは格が違った!」

 

「凄いぜー憧れちゃうぜー」

 

「ありがとう!ブロントさん!」

 

ブロントの持ってきた牛の肉はまだまだ大量にある。

元々が巨大なバッファローなため、何10kg分の肉を持ち帰る事にしたのだ。それでもバッファロー全体からすればまだまだ肉に余裕があり、残りは人里が引き取る事にした。

まだ肉に余裕がある事を知って更に食うスピードが上がる。

 

「れ、霊夢~。そろそろこれを外してほしいな~なんて…」

 

部屋の隅には芋虫が転がっていた。

全身に縄を巻かれ、ご丁寧に札を貼られている。能力が使えなくなる札。

いくら全身に縄で縛られても、紫の能力を使えば容易に脱出できるためだ。

 

「駄目よ。仮にも龍神様の一部を事故とはいえ流れだしたのよ?

しかも取り返すだけならブロントさんを送れば済む事を、私達にやらせて…。

しばらく反省してなさい」

 

「霊夢~~」

 

マジ泣き一歩手前の紫。

お前本当に賢者かと視線が集まる中、ブロントが口を開いた。

 

「俺が思うにもう由香利をゆるすいえtもいいのではないにぃか?」

 

「え?でも…」

 

「あyの話を聞く限りにはゆかkrんも冒険を楽しんでもらいたかったのは確定的に明らかなんですわ?お?

いつまでもネガネガしるより、許す事が強さの証明っていう名台詞を知らないのかよ」

 

紫が霊夢達にヴァナ・ディールに送ったのは、霊夢達に世界を感じて貰うためだ。

苦労する彼女たちを楽しく見る意図もあったとはいえ、それは変わりのない事。

ブロントの言葉に、霊夢はしかめっ面をしながら念を込め、札を送る。

 

「むぅ…まぁ、ブロントさんがそこまで言うなら…」

 

すると札が外れ、縄もするすると紫から滑り落ちて行った。

紫は嬉しい事が見れば分かるような顔をし、霊夢に抱きついた。

 

「ありがとう、霊夢~!さすが私の霊夢ね!」

 

「だーー!うっとしい!!その無駄に育った胸を頭に押し付けるな!!」

 

その様子に皆が笑った。

いつも通りの優しい風景に戻れた事が分かる。

 

「おーっす、霊夢。遊びに来たよーって良い物食べてるじゃん!」

 

「妖夢~。早く帰ってきテー;;お腹空いたわ~」

 

襖が開き、外から角が頭から二本生えた幼子に見える鬼 伊吹萃香と、白のフリルの付いた水色の着物を着る亡霊姫 西行寺幽々子が入ってきた。

それぞれ博麗神社に来た目的は違う。

萃香のほうは遊びに来たのに対し、幽々子は帰ってこない妖夢を迎えに来たのだ。

 

「あ!す、すみません!今すぐ帰りの仕度をしますので!」

 

「ほう、見事な奉仕精神だと感心するがどこもおかしくないな。しかし、今すぐ帰っても晩飯には間に合わんく手ゆっゆの空腹がマッハだと思うんだが?

全力でここで食べていっていいぞ」

 

「許しが出たのね!さすがナイトは格が違ったわ!」

 

「それほどでもない」

 

「ブロントさん、ブロントさん。私も食べていっていいかい?」

 

「いいぞ。全力で食うべき」

 

小さな宴会になり始め、鍋は更に続いていく。

そしてふと魔理沙は気付いたように自分の鞄に向かった。

鞄には使わなかった薬品や、装備品、クリスタルに、少しだけギルが入ってくる。

奥には結婚式のロットインで手に入れたコサージュが大事に紙で包まれている。

それを見ていると、魔理沙は今まで冒険した日々が頭の中で蘇ってくるようだった。

 

その中でクリスタルを取り出す。

それはただのクリスタルではない。

 

「じゃじゃーん!ブロントさん!せっかくだからお土産を持って来たぜ!こんなもんで悪いけどな!」

 

魔理沙がブロントに渡したのは花が水晶の中に埋まったものだった。

モーグリは、栽培した花を半永久的に枯らさず観賞用の調度品に加工できる。

それのやり方を教えて貰った魔理沙は、クリスタルを使う事で、サンドリア王国に住まう貴族の娘から買ったカーネーションを保存するようにしたのだ。

真っ赤な花は枯れる事なく、クリスタルの中で咲き続けるのだ。

 

「ほう、カーネーションか。懐かしいな」

 

「知っているのか?ブロントさん」

 

「ほむ…これは俺の姉の話なんだが…」

 

ブロントは家族の話が始まる。

それを聞いた霊夢達は噴き出しそうになったのだ。もしブロントの話が事実であれば、ブロントの家族と知らずに会っているのだから。

宴会は続いていく。

魔理沙はヴァナ・ディールで冒険した事を、楽しそうにブロントに語った。

苦しかった事も、感動した事も、そして、ヴァナ・ディールが何処までも広がる世界である事を。

 

「また…行ってみたいな!ヴァナによ!」

 

人々の愛する幻想の世界。

憧れが現実となり、少女は再びまだ見ぬ世界に夢を膨らます。

夢は実現しても、冷める事は無い。

 

そう、始まった物語はやめようとするその日まで、終わらないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★アナザーエピローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"きみ"が世界に降り立ち、冒険者となってどのぐらいの時間が流れただろうか。

初めは荒野の獣に苦戦した。ただ毛皮を取るだけの事で獣は"きみ"にとって手強い相手だった。

そして腕を上げる事に、遠くへ遠くへ冒険し、"きみ"はその度に感動していた。

 

だが、最初は一人だけで続けていた冒険も、じきに一人ではどうにもならなくなる。

砂丘を抜ける洞窟で蝙蝠に苦しめられるように。ラテーヌの丘で崖から滑り落ち、魔物の群れに襲われるように。

あるいはタロンギの谷で迷い、どうしても北に抜けられずに、誰かに案内してもらってようやく辿りついた。そんな経験を"きみ"はした。

 

そして"きみ"は、冒険の過程で幾多の人と出会い、幾多の絆を紡ぎあげ、幾多の仲間を手に入れた。

 

ほら、後ろで"きみ"のことを呼んでいる。

後ろに振り返れば、仲間がいる。

国籍も種族も性格も…全てが同じではないのに、共に協力し合い、共に生きる仲間達。

 

幼さの抜けないヒュームの少年は、一人前の戦士らしく鎧を着込み、元気よく"きみ"を呼んでいる。

偉そうなエルヴァーンの女性は、騎士の国の生まれの癖に白魔道士だ。少ない"魔力"をやりくりする努力は一日も欠かさない。

臆病者と言われるが、共に冒険したから分かる勇気あるタルタルの少年は、黒魔道士としての勉強は今日も忘れない。

鍵を弄ってるのはミスラのシーフだ。まだ若いながらも盗賊の腕は優れ、それを言ったら彼女は不機嫌になる。

最後に優しげな瞳で見つめるのはガルカのモンク。卓越した格闘術は"きみ"を驚かせた。

 

"きみ"は、ふっと頬を浮かべた。

これから大きな冒険が待っている。苦しみも喜びも共に分かち合う仲間と共に。

 

世界では一種の混乱が起きていた。

冒険者の行方不明者が後を絶たないのだ。

先日、ウィンダスにも六名の行方不明が現れ、事の重大さを理解した各国は本格的に探すように冒険者に依頼している。

行方不明になっているだけでまだ生きている。《シグネット》の輝きが途切れない事から分かるらしい。

 

"きみ"はふと思う。

行方不明になった者たちはいったいどうなって、何をしているのだろう?冒険をしているのだろうか?

 

そして小さく笑う。

愚問な事だ。

同じ冒険者だから分かる。

どんな場所に行っても、彼らは変わらない。

 

"きみ"は知っている。

冒険の旅に終わりはない事を。

 

 

 

新たな夢と冒険が彼らにもあるにちがいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

END                                                                                        




Hakurei Reimu モンク/- Lv58/-
個別特性:主に空を飛ぶ程度の能力
状態異常を受け付けない。通常より成長は早い。

メイン:リタリエーター   サブ:―         レンジウェポン:―     矢弾:―
頭:忍鉢金       首:ファングネックレス  左耳:―          右耳:―
胴:忍上衣    両手:忍手甲      左手の指:―        右手の指:―
背:―          腰:紫帯         両脚:忍袴    両足:忍脚絆


Rumia 白魔道士/- Lv54/-
個別特性:闇を操る程度の能力
一瞬だけ相手を暗闇にする事が可能。耐性無視だが、近付かなければならない。通常より回復(HP)が早い。

メイン:チェスナットワンド サブ:ホプロン     レンジウェポン:―     矢弾:―
頭:エレクトラム髪飾り   首:正義バッジ      左耳:―          右耳:―
胴:ホーリーブレスト 両手:連邦魔戦士制式手袋 左手の指:―        右手の指:―
背:―          腰:モブワサッシュ    両脚:連邦魔戦士制式下衣 両足:連邦魔戦士制式革靴


Kirisame Marisa 黒魔道士/- Lv55/-
個別特性:主に魔法を使う程度の能力
八卦炉サポートによる魔法詠唱を短縮化(ファストキャスト)&魔法攻撃力増加。魔力(MP)が平均より少ない。

メイン:ダークスタッフ  サブ:―         レンジウェポン:―      矢弾:八卦炉
頭:ウィッチハット    首:―          左耳:―           右耳:―
胴:連邦魔戦士制式手袋  両手:連邦魔戦士制式手袋 左手の指:クリアリング    右手の指:クリアリング
背:―          腰:モブワサッシュ    両脚:連邦魔戦士制式下衣  両足:連邦魔戦士制式革靴


Konpaku Youmu 戦士/- Lv56/-
個別特性:剣術を扱う程度の能力
戦士には装備できない武器(刀)を装備可能。武器技術(スキル)の成長が早い。武器技術の限界(スキルキャップ)が普通より高め。

メイン:楼観剣 サブ:銃士隊長制式盾   レンジウェポン:―      矢弾:―
頭:ショックマスク    首:―          左耳:―           右耳:―
胴:鋼鉄銃士隊制式胴鎧  両手:鋼鉄銃士隊制式篭手 左手の指:アンバーリング   右手の指:アンバーリング
背:―           腰:シルバーベルト    両脚:鋼鉄銃士隊制式股当 両足:鋼鉄銃士隊制式鉄靴


Syameimaru Aya シーフ/- Lv56/-
個別特性:風を操る程度の能力
DEX(器用さ)とAGI(敏捷性)に補正。技能(アビリティ)を通常より早く覚える。通常より回復(HP)が早い。

メイン:ビートルナイフ サブ:ホプロン  レンジウェポン:アルバレスト  矢弾:アシッドボルト
頭:ジャリダクード    首:―          左耳:―            右耳:―
胴:ジャリダペティ    両手:ジャリダバズバンド 左手の指:―          右手の指:―
背:―          腰:傭兵隊長のベルト   両脚:ジャリダシャルバル   両足:ジャリダネール


Alice Margatroid 赤魔道士/からくり士 Lv53/Lv26
個別特性:人形を操る程度の能力
オートマトンの人形を操る。からくり士の職業(ジョブ)を取っていなくても使用可能。通常より回復(MP)が早い。

メイン:ホーリーデーゲン サブ:ホプロン   レンジウェポン:―     矢弾:―
頭:エレクトラム髪飾り  首:―          左耳:―          右耳:―
胴:カラパスハーネス   両手:カラパスミトン   左手の指:―        右手の指:―
背:―          腰:モブワサッシュ    両脚:カラパスサブリガ   両足:カラパスレギンス
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