「や、お疲れ様」
「……昇か。何をしている」
「いや、皇の鍵を調べているって噂を小耳にしたからね」
第四埠頭の倉庫、天城カイトのアジト。そこに赴いた来訪者二人を見たカイトは、にこやかに笑顔を向ける彼らを見て一人眉を潜めた。
「さて、解析はどうなっているのかな?」
『ドウモコウモナイデアリマス! ドウヤラコノセカイノブッシツデハハンノウヲシメサナイヨウデシテ』
「なら、この世界の物ではない物を使えばいい、違うかい?」
昇の言葉で気づいたのか、カイトはオービタルの動力源であるバリアライトを使うように指示を出す。文句を言いながらもそれに従った結果、見事に皇の鍵の中の世界へと繋がる扉が開いた。
「僕達も一緒に行っていいかな? 大丈夫、君の邪魔はしないよ」
「ヒントを貰った礼だ、好きにしろ」
カイトから許可を得た昇と輪廻はこれ幸いとカイトの後に続いてワープホールを潜り抜ける。皇の鍵の中に広がる空間は無限に広がる砂漠とその中心に浮かぶ飛行船で構成されている。そこにアストラルがいると判断したカイトの後を追う二人だったが、彼らの決闘が見えるギリギリの場所にて立ち止まった。
「「決闘!」」
ナンバーズを追う二人。目的が同じ二人が敵対している以上、決着をつけるのは闘争をもって他にない。
「先攻は私が貰う! 私のターン、ドロー! 私は魔法カードオノマト連携を発動! 手札のゴゴゴゴーレムを墓地に送り、デッキからガガガマジシャンとゴゴゴジャイアントを召喚! ゴゴゴジャイアントの効果発動! このモンスターが召喚に成功した時、墓地のゴゴゴと名の付くモンスター一体を特殊召喚出来る! 私は、墓地のゴゴゴゴーレムを特殊召喚する!』
一瞬にしてアストラルの場に赤銅の泥人形が座して並ぶ。双方のレベルは共に4、この時点で決闘者であれば誰しも一つの可能性に行き着くであろう。
「来るか、ナンバーズ。貴様のエース、希望皇ホープ」
エクシーズ召喚。レベルの同じモンスターが二体以上場に存在する時エクストラデッキから召喚条件が揃ったモンスター一体を呼び出す、シンクロ、ペンデュラムと並ぶ最も重要な召喚方法の一つ。特にアストラルのエースである希望皇ホープの召喚条件はレベル4のモンスター二体、カイトが警戒するのも当然と言える。
しかしアストラルが悩んだ果てに取った行動は、カイトが予想した物とは違っていた。
「……私は、永続魔法ゴゴゴ護符を発動! 私の場に「ゴゴゴ」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合、私が受ける効果ダメージは0になる。私の場にはゴゴゴゴーレムとゴゴゴジャイアントが存在している、効果ダメージは無効だ。さらに1ターンに1度、私の場のゴゴゴと名のついたモンスターは戦闘では破壊されない! 私はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
エクシーズ召喚をせず、守りを固め、防御に徹した布陣を揃えたアストラルの判断は間違いではない。ホープの効果は二回までしか使用出来ず。
しかしその判断から、ある種の怯えが垣間見えるのもまた事実。
「俺のターン、ドロー!」
そして獲物が恐怖していることを見逃すほど、百戦錬磨の狩人の目は甘くはない。
「俺は魔法カードフォトン・ハリケーンを発動! 自分の手札の枚数分相手の場の魔法、罠カードを手札に戻す! 俺の手札は五枚、よって全ての伏せカードを手札に戻す!」
「何だと!?」
竜巻が伏せカードを巻き上げ、アストラルの手札へと戻していく。これでアストラルは守りの要を失い、残るのは二体の土塊のみ。
弱った獲物に痛手を負わせるべく、カイトは追撃の一手を打つ。
「俺は手札の
「銀河眼を自ら墓地に送るだと!?」
アストラルの驚愕をよそに現れたのは、白銀の鎧に身を包んだ一体の戦士。
銀河戦士。攻撃力2000、守備力0、レベルは5。手札の光属性モンスター一体を墓地に送り特殊召喚出来る効果を持つ。アストラルは知らないのだろうが銀河眼は墓地にいた方が色々と都合がいい。銀河眼の特殊召喚条件は攻撃力2000以上のモンスター二体のリリース、つまりそれだけを考えればボード・アドバンテージにおいて二枚損をしてしまうことになる。それよりかは遥かに墓地に置いておいて適宜蘇生カードで出していった方が効率がいいからだ。
そして、銀河戦士のもう一つの効果は。
「銀河戦士の効果発動! このモンスターが特殊召喚に成功した時、デッキから銀河と名のつくモンスターを手札に加える! 俺は墓地から銀河眼の雲竜を手札に加える! さらに俺はフォトン・レオを召喚! フォトン・レオの効果発動! ハウリング・ブロー!」
光子の獅子が吠えた瞬間白銀の竜巻がアストラルの手札を巻き込み、デッキへと戻していく。驚愕を露わにした相手を前に、カイトは傲慢とも取れる余裕さを見せつけていく。
「フォトン・レオの効果は召喚に成功した時、相手の手札を全て強制的にデッキに戻させ新たに元の手札の枚数分だけドローさせる。フッフッフ、さあ、カードをドローしろ」
「くっ……」
「これでお前の戦略は全てふりだしに戻った。しかし少々ガッカリしたよ。お前の戦術は守り一辺倒、貴様は怯えすぎている!」
アストラルが目を見開いたのは自覚があったからか、はたまた無意識下でのことだったのか。真実は本人にさえ分からないが、残ったのは立てていた戦術が全て崩れ去ったという事実のみ。
「いけ、フォトン・レオ! ゴゴゴジャイアントを攻撃! シルバー・フォング!」
フォトン・レオの一撃は守備力0のゴゴゴジャイアントに耐え切れる物ではなく、あっけなく泥人形は元の姿である土塊へと変わっていく。
「くっ……俺はカードを一枚伏せてターンエンド」
「私のターン、ドロー!」
手札は全て引き直させられたとはいえ六枚。十分すぎる数がある以上、戦略はいくらでも立て直せる。
問題は、カイトの場に伏せられた一枚のカード。今アストラル自身の手札に伏せカードを除去できる手がない以上、あのカードを避けては通れない。
今彼の手札にフォトン・レオを倒せるモンスターはいない。しかし倒す手がないわけではない。手札のガガガマジシャンと場のゴゴゴゴーレムでホープをエクシーズ召喚すれば、2500の攻撃力で殴り倒せる。しかしそれを考える前にどうしてもあの伏せカードが頭をよぎってしまう。
もしもあれが、攻撃反応や召喚反応の罠だとしたら。
「……私は、カードを一枚伏せ、モンスターをセット。ターンエンドだ」
動けない。相手がカイトである以上、ここは安全策を打つべきだ。
そんなアストラルの胸中を打った対応で見破ったカイトは、弱った獲物を見定めた狩人の如く獰猛に笑う。
「守りに徹する、か。いいだろう、だがその程度の守りでは俺を阻むことなど出来ん! 俺のターン、ドロー! 伏せてあった魔法カード、ギャラクシー・サイクロンを発動! このカードは相手の場にセットされた魔法、罠カード一枚を破壊する!」
「何だと!?」
破壊されたカードはバトル・ブレイク。相手の攻撃モンスター一体を破壊し、バトルフェイズを終了させる極めて強力な伏せカードの一枚。このままで出せばミラーフォースを除く攻撃反応罠全ての上位互換となってしまう為、OCG化される際相手はモンスターカード一枚を見せることで無効に出来るというデメリットを背負ってしまった不遇のカードでもある。
しかしアストラルの驚愕はバトル・ブレイクを破壊されたことによるものではない。彼の驚きはただ一つ、自らが警戒していた伏せカードが罠ではなく単なるブラフであったこと。
「貴様が罠だと思って警戒していた物はただの魔法カードだ。言ったろ、お前は怯えすぎていると。お前が伏せカードを無視して攻撃していれば、今の展開にはならなかった」
「くっ……」
「今のお前には銀河眼を拝ませる価値もない。俺はフォトン・クラッシャーを召喚! バトル! フォトン・クラッシャーとフォトン・レオでゴゴゴゴーレムに攻撃!」
ゴゴゴゴーレムには守備表示の時戦闘での破壊を無効にする効果が備わっている。しかしそれは一ターンに一度、二体のモンスターの攻撃を耐えきれる物ではない。
「くっ……」
「フォトン・クラッシャーは戦闘終了後守備表示となる。俺はカードを一枚伏せてターンエンド。どうした、もう手詰まりではあるまいな?」
まだアストラルの場にはセットされたガガガマジシャンが残っている。しかしガガガマジシャンの攻撃力は僅か1500、2000のフォトン・レオの前では手も足も出ない。
たとえこの場でフォトン・クラッシャーを破壊した所で、返しのターンで間違いなく倒されるであろう。カイトは隙を見逃すほど甘くはない。ならば、この状況を乗り越える為にどうするか。
答えは、既に出ていたはずだ。
「私のターン、ドロー!」
恐怖に怯えていては、先には進めない。
「私は魔法カード死者蘇生を発動! このカードで私は、墓地のゴゴゴゴーレムを特殊召喚する!」
「ほう、来るか」
「私はガガガマジシャンとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
白き翼に黄金の身体、腰には己が獲物である剣を携える剣士。遊馬とアストラルの希望の象徴である、攻撃を無力化する能力を秘めた眩き戦士、その名は。
「現れろNo.39、希望皇ホープ!」
漸くの召喚に待ちくたびれたのかいつも以上に元気な姿を見せるホープを見た瞬間、カイトの目の輝きが明らかに変わった。
「現れたか、希望皇ホープ!」
「バトルだ! 私はホープでフォトン・レオに攻撃! ホープ剣スラッシュ!」
希望の剣が光の獅子を一刀の元に両断し、発生した超過ダメージがカイトを襲う。
「くっ……」
カイト
LP4000→3500
「私はカードを二枚伏せ、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!」
フォトン・レオは失った。しかし不利になったはずのカイトの目からはこの状況に対する恐怖は皆無と言っていいほど感じ取れない。
怯えた獲物を一方的に狩るなど二流のやること。全力で抵抗する獲物の意思を砕く、それこそが一流の狩人たる所以だ。
「俺は
故に、まずはその希望から潰させて貰おう。
「銀河眼の雲竜の効果発動! このモンスターを墓地に送ることで、手札または墓地の銀河眼の光子竜一体を特殊召喚出来る! 闇に輝く銀河よ、希望の光となりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨!」
小さな子竜が雲となって消え、その中より巨大な竜が現れる。アストラルの前に再び立ち塞がる、カイトの希望にして魂のモンスター。攻撃力3000を誇る、対エクシーズ用の決戦兵器。
「現れろ、銀河眼の光子竜!」
場に現れた銀河眼の光子竜は、己が存在を知らしめんが如く高らかに咆哮する。
エクシーズ、ナンバーズを狩るモンスター。前回の対戦でその力を知っているアストラルは、いつの間にか身構えていた自分に気づく。
「さらに俺はフォトン・クラッシャーを攻撃表示に変更! バトル、銀河眼の光子竜で希望皇ホープに攻撃! この瞬間、銀河眼の光子竜の効果発動! 銀河眼とホープを共にゲームから除外する!」
銀河眼と共にホープは消え、アストラルを守る壁はいなくなった。
そしてカイトの場にはまだ、一体のモンスターが残っている。
「いけ、フォトン・クラッシャー! アストラルにダイレクトアタック!」
「くっ……ぐああああああ!」
アストラル
LP4000→2000
「まだだ! 速攻魔法
「くっ……」
アストラル
LP2000→1000
「バトルフェイズ終了と共に銀河眼とホープは互いの場に戻る。この時銀河眼はホープのオーバーレイ・ユニットを吸収し、吸収したオーバーレイ・ユニット一つにつき攻撃力を500ポイントアップする! 吸収したオーバーレイ・ユニットの数は二つ、よってホープの攻撃力は1000ポイントアップする! さらに俺は魔法カードギャラクシー・ストームを発動! オーバーレイ・ユニットを持たないモンスター・エクシーズ一体を破壊する! 消えろ、ホープ!」
「罠カードエクシーズ・リフレクト発動! モンスター・エクシーズが相手のモンスター効果、魔法、罠の対象となった時、その効果を無効にし、相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える!」
「何だと!?」
竜巻が跳ね返され、800ポイントのバーンダメージとなってカイトを襲う。
だがそのダメージは大勢を覆せるような物ではないことは、アストラルも十分承知の上だ。
カイト
LP4000→3200
「躱したか。だが……俺はこれでターンエンド」
アストラルのライフは僅かに1000。しかし逆に言えば1000ポイントになったということでもある。
これで、もしもアストラルのエクストラデッキにあのカードがあるならば。
「私のターン、ドロー!」
二人の観戦者がかたずを飲んで見守る中、アストラルは右手を上に掲げた。
「見せてやろう、真のホープの姿を! 私のライフが1000以下の時、希望皇ホープ一体を素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!」
白銀と黄金の身体が混沌に染まることで、新たに漆黒と黒銀をその身に刻む。
背には巨大な大剣、体には二本の隠し腕。元の姿とは似ても似つかない、しかしこれこそが混沌を力に変えた新たな二人の希望の形。
「現れろCNo.39、希望皇ホープレイ!」
現れた新しい希望皇にカイトは圧倒され、二人は安堵の息を吐く。
「これで、一安心かな」
「……ホープレイも見れたし、後は――」
カイトについてきた二人の目的は二つ。一つは、原作通りに物語が進んでいるかどうかを確認すること。
そして、もう一つは。
「ホープレイの効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使い、ホープレイの攻撃力を500ポイントアップし、相手モンスター一体の攻撃力を1000ポイントダウンする! 私は、銀河眼の攻撃力を1000ポイントダウンさせる!」
「だが銀河眼の攻撃力を下げた所で、また除外されるだけだ! フォトン・クラッシャーは守備表示、俺に戦闘ダメージを与えることは出来ない!」
「それはどうかな? 魔法カードH―ヒート・ハートを発動! このターン私のモンスター一体の攻撃力を500ポイントアップし、このターン、攻撃力が守備力を超えていればその数値分ダメージを与える!」
「何だと!?」
これでホープレイの攻撃力は3500、それに対してフォトン・クラッシャーの守備力hは0。
3500の貫通ダメージは、この決闘を終わらせるに余りある物だ。
「バトルだ! 行け、希望皇ホープレイ! フォトン・クラッシャーに攻撃! ホープ剣カオススラッシュ!」
二本の剣が身体を切り裂き、一本の大剣が止めとばかりに身体を両断する。ホープレイの攻撃は妨害されることなく通った。ならばこれで、勝負は決し――
カイト
LP3200→1600
――てはいない。カイトのライフこそ半分になってはいるが、銀河眼は未だ場に残っている。
「馬鹿な……何故」
「俺は罠カードミラーシェードを発動していた。この罠はライフを半分支払うことでこのターンの戦闘ダメージを0にする。ホープレイの攻撃は、俺にダメージを与えるものではなかったということだ」
「くっ……私はこれでターンエンド」
「俺のターン、ドロー! 行け、銀河眼! ホープレイに攻撃! 破滅のフォトン・ストリーム!」
「ナンバーズはナンバーズでしか破壊出来ない。よってホープレイは破壊されない!」
「……だが、ダメージは受けて貰う」
「くっ……」
アストラル
LP1000→500
「俺はカードを一枚伏せてターンエンド」
カイトの場には銀河眼と伏せカード、アストラルの場にはホープレイのみ。ここまでは原作通り。
これでもし、原作通りにことが進むのならば。
「私は、私自身と遊馬でオーバーレイ!」
水色の精霊は水色の弾丸へと姿を変え、赤い閃光と交わりその姿を変える。
「……ここまでは予想通り、と」
「……問題は、ここから」
二人が小声で会話を交わす中、鎧を身に纏った新たな人物がカイトと相対する。
「『エクシーズ・チェンジ、ZEXAL!』」
その姿は九十九遊馬と酷似していたが、何かが根本的に異なっていた。
それも当然。それがアストラルの真の姿にして遊馬の本来の姿。遠い昔分かたれた魂が一体となった証明。
ZEXAL。原作にて無敗を貫いた、この世界最強の決闘者だ。
「どういう……ことだ……」
「え、なんだこれ!? これが、俺!?」
『そして、私の力。ZEXAL!』
「その声、九十九遊馬……! 貴様たちは合体したというのか……!」
常人であれば理解不能である所だがそこは流石に決闘者、超人的な理解力を使ってこの状況を説明する。
最も、一部始終を影で見ていた昇と輪廻は腹を抱えて笑い転げていたが。
「駄目だ、これ、反則にもほどが……」
「……おかしくっておなか痛い……変身する遊馬も遊馬、この超展開を理解するカイトもカイト……こんなの、分かってたって笑わないわけない……」
「いくぞ遊馬!」
「おう!」
「『全ての光よ、力よ! 我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ! シャイニング・ドロー!』」
カードが光輝き、それを引いた遊馬の右腕もまた神々しい光を帯びる。
その光は創造の輝き。危機的状況を勝利への希望と変える、絶対的な希望の象徴。
「俺はZW-
「攻撃力4400だと……!」
『一角獣皇槍を装備したホープレイは、相手モンスターが場から離れる効果を無効にする! これで銀河眼は逃げられない!』
「だがまだホープレイの攻撃力は4400! 俺のライフを削りきるには200ポイント足らないはずだ!」
「まだだ! 手札から魔法カード破天荒な風を発動! この効果でホープレイの攻撃力を1000ポイントアップする!」
「攻撃力……5400だと!?」
これで希望皇ホープレイが銀河眼を攻撃すれば発生する戦闘ダメージは2400。
残りライフ1600しかないカイトでは、この攻撃に耐え切ることは出来ない。
「行け、希望皇ホープレイ! 銀河眼に攻撃だ! ホープ剣カオススラッシュ!」
なんとか笑いを抑えた二人は、この一瞬を脳裏に貼り付けんとするかのように凝視する。
二人がカイトについてきたもう一つの目的、それは、
「罠カードフォトン・ショックを発動!」
この決闘の結末が、どのような物になるかを確認することだ。
「このカードの効果により、俺の場に存在するフォトンと名の付いたモンスター一体の戦闘で発生するダメージは互いのプレイヤーが受ける!」
「何!?」
銀河眼の
発生した戦闘ダメージは2400。その数値はライフ1600であるカイトでさえ受け切れない物であるのだから、それより少ない遊馬達が受け切れる物ではない。
ZEXAL
LP500→-1900
カイト
LP1600→-800
二人の決着を見届けた二人は即座に元の世界へと帰還し、小鳥らに気づかれぬよう迅速に自宅へと戻る。
今ここにいれば後々面倒なことになる。検証することは山ほどあるが、そんなことは家に戻ってからでも出来るのだから。
「……結局、原作と同じ終わり方だった」
「そうだね。同じような終わり方にはなると思ってはいたけど、まさかここまでとは思わなかった」
自宅に戻った二人はコーヒーを啜りつつ、今日起こったことについて話し合う。
「……昇、カイトのデッキには、確か」
「うん。フォトン・ショックなんてカードは入っていなかった。二日前に見せて貰ったから、今使ったデッキに入ってないとは断言出来ないけれど」
もしも原作にて使ったカードがデッキに入っていない場合原作の流れがどうなるか、二人が確認したかったのはそれだ。そしてそれは、想定される最悪の結果として示された。
「入っていないカードが勝手に入った、それが結論かな」
「……原作の流れを無理やりにでも整える為に、ってこと」
「そうだろうね」
歴史の修正力、という物がある。世界が異なった方向に舵を切ろうとした際、世界の側から修正をかけ元の流れに沿わせる、その原動力だ。今回はそれが、デッキの干渉という形で作用したのだろう。
一戦目カイトが遊馬を倒す寸前でハルトが苦しみ始めたのもそう、二戦目の結末が全く同じになったのもそう。全ては遊戯王ZEXALという物語を台本通り進めるため、邪魔者に妨害させない為だ。
「……厄介ね」
「うん、輪廻の言う通りだ」
自分達転生者はこの世界から見れば異物だ、世界の側からしてみれば除去したい存在であることは疑いようがない。
しかしその為に原作に影響を及ぼすことを許容するかと考えると、それもまた否。
世界からしてみれば原作を台本通りに進めることが最優先であり、それ以外のことはいわば些事にすぎない。自分達が排除されないのもその為だろう。業腹だが仕方なく存在することを許してやる、世界にとって転生者とはその程度の存在だ。
「これではっきりしたね。僕達の計画は、この世界に全力で喧嘩を売るのと等しい行為だと」
「……うん。手袋を片方だけ投げつけてるのと多分同じ」
今はまだ原作にあまり干渉してないことを理由に見逃されているのだろう。しかし一度原作の流れに反旗を翻せば、考えられるありとあらゆる妨害を受けることになりかねない。
だから今は表だって行動を起こさず、徹底的に準備を整える。世界の妨害が本格的な物となる前に、自分達の世界へと戻る為に。
「……焦っちゃだめ。冷静に、冷静に」
「分かってるよ、輪廻。君は何も心配しなくていい。僕が君を必ず、元の世界に戻すから」
今はまだ雌伏の時。爪を研ぎ、準備をひたすらに進めるのみ。
反逆の牙を向ける時は、刻一刻と近づいている。