元の世界に戻る為に   作:瑠奈地 里多

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第五話

 九十九遊馬と天城カイトの邂逅から一日。

 

「……見るからに酷いね」

「……これは」

 

 遊馬の様子は、明らかに普段とは異なっていた。

 一応普段と同じように態度を取り繕っているつもりだろうが、見る者が見れば明らかに異なっていることが分かる。事実、武田鉄男や観月小鳥といった彼と親しい者たちは時折顔を見合わせ心配そうにしていたのがその証拠だ。

 

「……どうするの?」

「どうするって?」

「……このままにしておくの? それとも、何かするつもり?」

 

 顔を覗き込む輪廻の頭を撫で、昇は言葉を返す。

 

「……実は、少し悩んでるんだ」

 

 自分達が何もしなくとも遊馬は勝手に元気を取り戻す。世界が原作の通りに進む以上、それは火を見るよりも明らかだ。

 しかし、ここで一つの不安が鎌首をもたげてくる。

 

「……遊馬がオノマト連携を使ったことと関係してる?」

「正解。やっぱり輪廻には適わないよ」

 

 彼は原作で彼自身が使ったことのないカードを使用していた。それが彼が自力で手に入れた物であればいい。問題は、そうでないのが明白であることだ。

 世界が原作の通りに進む以上、遊馬のデッキもまた原作の通りに進む。そしてそうである以上、例え一枚でも彼が原作で所持していないカードを使うなどということがあり得ない。

 最もそれは、ただ一つの例外を除いてだが。

 

「仕方ない。少し動くとしよう」

「……ふふ」

「どうかしたの?」

「今の昇、何か悪いこと考えてそうだなって」

 

 口元を隠して笑う輪廻にそりゃないよと言いながらも、昇の口元は弧を描いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……俺をこんな所に呼び出して、何か用かよ?」

 

 放課後。ハートランド学園の一角の外れに遊馬を呼び出した張本人は、彼の問いに笑みを湛えたまま答えた。

 

「かねてから君に言われていたことに、応じてあげようと思ってね」

「昇、それってどういうことだよ!」

「簡単だよ。君は僕と会うたびに言っていただろう? 俺と決闘しようって。今日はそれに応じてあげようと思っただけさ」

 

 昇の言葉を聞いた瞬間、遊馬の顔色が変化する。

 

「……悪い。今日は、ちょっと……」

「――――選べ。道を譲るかくたばるか」

 

 視線を落とした少年に、少女の言葉が突き刺さる。

 

「輪廻……?」

「……貴方の夢の前に立ち塞がっている障害はこんな物じゃない。たかだか一度負けたくらいで諦めるようなら、その夢は所詮その程度だったってこと、違う?」

「そうじゃねえ! けど、俺は……」

「……だったら証明してみせて。貴方の全力をもって、昇と戦うことで」

 

 全部言葉取られちゃったな、と呟く昇の前で、何かしらの覚悟を決めた遊馬が一つ頷く。

 

「ああ、分かった。証明してやるよ、俺のデュエルチャンピオンへの思いがこんなもんじゃねえってことを」

「その言葉、嘘じゃないと信じるよ」

 

 輪廻が小鳥の横に辿り着いたのを合図として、二人の決闘者は己が決闘盤を構えた。

 

「「決闘!」」

 

「先攻は譲ろう。君のターンだ」

「いくぜ、俺のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを確認し、何やら考え込む遊馬。数秒の思考の末、彼はカードを裏側のまま決闘盤にセットした。

 

「俺は、モンスターをセット。カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 普段の遊馬らしくない、弱気な態度。完全に守りに入っているのがその証拠だ。

 そして勿論、昇は手を抜く気は全くない。

 

「僕のターン、ドロー」

 

 引いたカードを確認し、一つ頷く。さて、これを見てどういう反応を示すか。

 

「僕は魔法カードオノマト連携を発動。手札のガガガマジシャンを墓地に送り、デッキからガガガシスター、そしてゴゴゴジャイアントを手札に加える」

 

 昇の一手は、彼の予想以上の効果を示した。

 

「あれって、遊馬と同じ!?」

「インフェルニティじゃねえのか……!?」

 

 突然の事態に目を丸くする遊馬を無視し、昇は次の一手を打つ。

 

「僕はガガガシスターを召喚。効果発動、デッキからガガガと名の付く魔法、罠カード一枚を手札に加える。ガガガリベンジを手札に加え、そのまま発動。墓地のガガガマジシャンを特殊召喚。ガガガマジシャンの効果、このモンスターのレベルを6に変更。さらにガガガシスターの効果、このモンスターのレベルを場のガガガと名の付いたモンスターとのレベルの合計に合わせる。これでガガガマジシャンとガガガシスターのレベルは共に8だ」

 

 レベル8、と聞いただけで怯えた表情をする遊馬。余程あの一戦がトラウマになっているのだろうが、生憎昇に手を抜く気は皆無だ。

 

「僕はガガガマジシャンとガガガシスターでオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイ・ユニットを構築。エクシーズ召喚」

 

 現れるのは竜を象った鎧を着こんだ騎士。あらゆる効果から身を守る、ランク8エクシーズの代表格。

 

「現れろ、神竜騎士フェルグラント」

 

 最初に目を引くのは白銀の鎧、次に目を奪われるのは精悍な表情か。剣を構えた騎士は、切先を己が主の敵へと向ける。

 

「バトル、フェルグラントで伏せモンスターに攻撃」

 

 一挙動のまま飛びかかったフェルグラントは、空中で敵目がけて剣を振り下ろす。

 

「……カイのJHS……」

「……六道さん?」

「……何でもない」

 

 伏せモンスターが表側表示になり、その正体が明かされる。

 

「ゴゴゴゴーレムの効果、このモンスターは一度のバトルでは破壊されない!」

 

 剣を全身で受け止め、青色の身体をひび割れさせながらもゴーレムは攻撃を耐える。その展開に一つ頷いてから昇は己がターンを終わらせにかかった。

 

「僕はカードを二枚伏せてターンエンド。さあ、君のターンだ」

 

 ゴゴゴゴーレムを破壊出来なかったわけではない。ここで破壊しておくことが良いのも承知している。しかし昇はあえて遊馬の僕を場に残した。

 

「俺のターン、ドロー!」 

 

 少年の思惑を知ることなく、遊馬は己がターンを始める。

 

「俺はモンスターをセット! これでターンエンドだ」

「……それが、君の全力かい?」

 

 徹底的に防戦の構えを見せる遊馬に、昇の言葉がかけられた。

 

「あ、当たり前だろ! 昇は強い、だからこうして次のことを考えるのが俺なりのデュエルスフィンクスってやつだ」

「何故僕が君の場にゴゴゴゴーレムを残したのか分かるかい?」

「な、なんでって……単に破壊出来なかったんじゃ」

「フェルグラントの効果はオーバーレイ・ユニットを一つ使い、場のモンスターの効果を無効にした上でそのターン全ての効果を受けなくする。こうすればゴゴゴゴーレムは戦闘破壊出来た。でも僕があえてそれをやらなかった理由、それを聞いているんだよ」

「そ、それは……オーバーレイ・ユニットを温存したんじゃなかったのか?」

「違うね。その答えをこう返そう――何故、エクシーズ召喚しない?」

 

 言葉に形を変えた刃が、遊馬の心臓に突き刺さる。

 

「な、なんでって……」

「希望皇ホープ、ランク4のモンスター・エクシーズ」

 

 今度こそ、その場にいた昇と輪廻以外の全員の顔色が変わった。

 

「な、なんでホープのことを……」

「それを君に教える義務はないよ。僕のターン、ドロー」

 

 未だ動揺が抜けきらない遊馬を置いてきぼりにした上で、昇は己がターンを始めた。

 

「魔法カードおろかな埋葬。デッキからゴゴゴゴーレムを墓地に送る。ゴゴゴジャイアントを召喚、効果でゴゴゴゴーレムを墓地より特殊召喚。ゴゴゴゴーレムとゴゴゴジャイアントでオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。鳥銃士カステルをエクシーズ召喚。効果発動、オーバーレイ・ユニットを二つ使い、場の表側表示のカード一枚をデッキに戻す。僕はゴゴゴゴーレムをデッキに戻す」

 

 オーバーレイ・ユニットを二つ装填した猟銃の撃鉄が落ち、放たれた弾丸が遊馬のモンスターをデッキに封じ込める。

 

「バトル、カステルで伏せモンスターに攻撃」

 

 伏せモンスターはゴゴゴゴースト。守備力0でしかないこのモンスターでは当然カステルの攻撃に耐えきることなど出来ず、焦りからか遊馬は伏せカードを使う。

 

「くっ……罠発動、ハーフ・アンブレイク! このターンゴゴゴゴーストは戦闘では破壊されず、ゴゴゴゴーストとの戦闘で発生するダメージは半分になる!」

「フェルグラントの効果、オーバーレイ・ユニットを一つ使い、ゴゴゴゴーレムの効果を無効にし、このターン他の効果を受けなくする。勿論、君の発動したハーフ・アンブレイクもね」

「しまっ……」

 

 効果を失ったゴゴゴゴーストではカステルの攻撃に耐えられるはずもなく、弾丸に撃ち抜かれた泥人形は元の姿である鎧へとその姿を変える。

 そしてもう、遊馬を守るカードは場には存在しない。

 

「いけ、フェルグラント。遊馬にダイレクトアタック」

「う……うわあああああ!」

 

遊馬

LP4000→1200

 

「僕はこれでターンエンド」

 

 この決闘は未だナンバーズの出ていない通常の物だ。そしていくら精巧な物とはいえARビジョンである以上実際のダメージは発生しない。

 しかし、遊馬はターンを譲られてなお立ち上がれずにいた。

 

「どうした? 君のかっとビングはそんな物だったのか?」

「……う」

「選べ、道を譲るかくたばるか。二番煎じになるけど僕も同じ問いかけをしよう。ここで僕相手に全力を出せないのであれば――――君は、夢を捨てた方がいい」

「ちょっと! 貴方に遊馬の何が分かるってのよ!」

「そうだ! いくら昇さんでも言っていいことと悪いことがあるんじゃないですか!?」

「……黙って」

「り、輪廻さん?」

 

 普段殆ど喋らない輪廻が声を出したことに驚いたのか、昇以外のその場の全員が輪廻を見る。

 

「……これは昇なりの優しさ。叶わない夢を見るくらいなら、さっさと諦めてしまった方が楽。違う?」

「でも、俺は!」

「だから私は貴方に全力を出せと言った。その覚悟を私達に見せて、証明して見せろと。もしそんな簡単なことも出来ないのであれば、貴方の大切な物を、その未練もろとも私が『狩る』」

 

 輪廻が本気だというのは、彼女の雰囲気が豹変したことが何よりの証明だ。

 

「か、狩るって……」

「遊馬からの話で聞いた、ナンバーズ・ハンターと同じ台詞じゃないか……」

「輪廻がそれをやる必要はないよ。遊馬が本気を出せないのであれば、この場で僕がその希望を摘み取る。さあ遊馬、選べ。このままターンを続けるか、それともサレンダーするか。夢を追い続けるのか、それとも諦めるのか」

「……俺は」

「十秒待とう。その間に君が、君自身の意思で決めるんだ」

 

 与えられた時間は無いに等しい物であり、一見無茶振りとしか思えない物だ。

 

「そんなの無茶だろ」

「酷すぎるわ……」

「……黙って見てて」

 

 ギャラリーの反応など意に介すことなく、昇は対戦相手にのみ意識を向ける。

 与えられた時間に見合わない極限の選択。それを目の前にまで迫られて。

 

「俺は絶対に諦めねえ。デュエルチャンピオンになるって夢も、ナンバーズを揃えるって目標もだ」

 

 それでもなお遊馬は立ち上がり、決闘盤を構えた。

 そしてそれを合図としたかのように、水色の精霊が姿を現した。

 

『その言葉、待っていたぞ』

「ア、アストラル!? お前どこ言ってたんだよ!」

『君がいつまでも腑抜けているから、立ち直るまで大人しくさせておこうと思ったのだ。最も、こんな形で立ち直るのは私にとっても些か予想外だった』

 

 アストラルは訝しげな眼を向け、昇に対して詰問する。

 

『……君は、何者だ?』

「相剋昇、ただの民間人だよ。そんなことより早くドローしてくれないかな? ターン終了の宣言はしたはずなんだけど」

「おおっと、忘れてたぜ! さあ、行くぜアストラル!」

『……まあいい。この勝負、勝つぞ遊馬!』

「おう! かっとビングだ、俺! 俺のターン、ドロー!」

 

 デッキからカードをドローし、頷き合う少年と精霊。ギャラリーがかたずを飲んで見守る中、彼は手札の魔法カードを発動した。

 

「俺は魔法カードガガガ学園の緊急連絡網を発動! このカードは俺の場にモンスターが存在しない場合のみ発動出来るカードだ! そしてその効果でデッキからガガガと名のついたモンスター一体を特殊召喚する! 俺が呼び出すのは――来い、ガガガガール! さらに俺はガガガマジシャンを召喚! ガガガガールの効果発動! このモンスターのレベルを4にする!」

 

 デッキから呼び出された少女と手札より現れた青年。二人のレベルは4、この状況で遊馬が呼び出すモンスターは、一体をおいて他にない。

 

「俺はレベル4のガガガマジシャンとガガガガールでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚! 現れろ、No.39! 希望皇ホープ!」

 

 遊馬の希望にしてアストラルの希望。二人の最も信頼するモンスターであり、今この場においては、彼の覚悟の証明でもあるモンスター。

 

「どうやら、覚悟を決めたみたいだね」

「……これで、一安心」 

 

 二人は少し安心したように表情を和らげるが、あまりに微かな変化だったためか遊馬が気づいたそぶりはない。

 最も間近で見ていた小鳥は、輪廻の表情の変化に気づいていたが。

 

「ガガガガールの効果発動! このモンスターを素材としてエクシーズ召喚に成功した時、相手モンスター一体の攻撃力を0にする! ゼロゼロコール!」

「フェルグラントの効果、オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、このターンホープの効果を無効にする。ガガガガールの効果はあくまでも特殊召喚されたモンスターに付与される効果だ。これで僕のモンスターの攻撃力はゼロにはならない」

『だがこれでフェルグラントを守る物はなくなった――遊馬!』

「おう! 俺はホープでカステルに攻撃! ホープ剣スラッシュ!」

 

LP4000→3500

 

 

「……ねえ、六道さん」

「……何?」

「……もしかして、最初から遊馬を立ち直らせるのが目的だったの?」

 

 二人の決闘から目を離すことなく、小鳥は輪廻に問い掛ける。

 

「……貴女は、どう思う?」

「え、わ、私!? 私はそうだったらいいなーなんて思うけど……でも、多分違う気がする」

「……ふふ」

 

 小鳥の答えに輪廻は苦笑するのに気づくことなく、遊馬はさらなる追撃の手を打った。

 

「魔法カードホープ・バスターを発動! 相手フィールドの一番攻撃力の低いモンスター一体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える! いけ、ホープ!」

 

LP3500→800

 

「……半分正解で、半分外れ」

「……え?」

「……貴女の答え。的は外れてないけど、少し違うっていった所かな」

 

 自然な笑顔を浮かべて輪廻は小鳥の答えをそう評する中、遊馬とアストラルは互いに視線を合わせる。

 

「俺はこれでターンエンド! どうだ昇、俺の覚悟は!」

「いい覚悟だ。これなら君はもう大丈夫だろう。なら次は、僕の覚悟を見せる番だね。僕のターン、ドロー」

 

 昇がカードをドローする中、輪廻は小鳥に言葉を返す。

 

「私達としては彼が立ち直ろうが立ち直れまいがどっちでもよかった。ただ、不確定要素だけは排除しておきたかったっていうのが本当の理由」

「……それってつまり、遊馬のことはどうでもよかったってこと!?」

「……そうは言ってない。ただ」

「ただ、何よ?」

 

 小鳥の詰問に慎重に言葉を選ぶ中、昇はこの決闘を終わらせるべく動き出す。

 

「罠カード、リビングデッドの呼び声を発動。墓地のガガガマジシャンを特殊召喚。さらに僕はゴゴゴゴーレムを召喚。僕はレベル4のガガガマジシャンとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚」

 

 漆黒の闇が姿を変え、一体の竜の姿を形作る。

 顎から伸びた一本の刃はあたかも巨大な牙のよう。ある意味奇妙な言い回しだが決して誤りではない。何故ならそれは、主が愚鈍なる力に抗う為に使う、いわば反逆の牙なのだから。

 

「現れろ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」

 

 攻撃力2500、守備力2000。所謂主人公属性と言われるモンスター。ホープと全く同じステータスのモンスターが現れたことに遊馬が驚く中、外野では輪廻が小鳥に何やら囁いていた。

 

「ダーク・リベリオンのモンスター効果。オーバーレイ・ユニットを二つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にした上でその攻撃力を加える。バトル、ダーク・リベリオンで希望皇ホープに攻撃」

「ホープの効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、相手の攻撃を無効にする! ムーン・バリア!」

「手札から速攻魔法禁じられた聖杯を発動。ホープの攻撃力を400ポイント上げる代わりに効果を無効にする。攻撃は続行される」

「しま……」

 

 雷を纏った咢がホープを貫く。ナンバーズはナンバーズでしか破壊出来ないという事実がある以上、本来であればこの戦闘でホープを破壊することは出来ない。

 しかしムーンバリアを無効にされた時点でナンバーズの耐性もまた無効になっている。断末魔の叫びと共にホープは破壊され――この戦闘で発生したダメージは、遊馬の残ったライフを奪い尽くすには十分すぎる物だった。

 

「う、うわああああああ!」

 

遊馬

LP1200→-900

 

「……それ以上のことは私からは話せない。どうしてもと言うのなら、力尽くで黙らせる」

「……分かったわ」

 

 会話を終わらせ自らの元に向かった輪廻の頭を軽く撫で、昇は近寄ってきた遊馬と向き合う。

 

「元気になったみたいだね」

「ああ。俺の為にわざわざありがとな!」

 

 先程までのしおらしさはどこえやら元気いっぱいに頷く遊馬に、昇もまた笑顔で言葉を返した。

 

「なあに、構わないよ。寧ろ、こちらからお礼を言いたいくらいだ」

 

 

 

 

 

 

「おい。そこの二人、止まれ」

 

 遊馬達と別れて五分後。自宅へと向かっていた二人に、そんな言葉がかけられる。

 昇と輪廻は計画通りとばかりに頷き合い、声の主の方へと振り向いた。

 

「どうやら、上手く釣れたみたいだ」

「……そうみたい」

「釣れた? どういう意味だ!」

 

 二人の会話に引っかかる所があったのか声を荒げる少年とは対照的に、一切表情を崩すことなく昇は答えを返す。

 

「あの一戦は、君をおびき寄せるためのエサさ」

「……何だと?」

「君だろう? 遊馬にオノマト連携を渡したのは。困るんだよ、僕達のあずかり知らぬ所でうろちょろ動かれるとね」

「……原作のことを知ってやがる。ってことはお前ら」

「悪いけど、それ以上について話す気はないよ」

 

 昇から放たれた極めて濃い殺意を感じ取り、少年の足が一歩後ずさる。

 

「悪いけど、君を逃がすつもりはない。さあ、構えるんだ」

「くっ……逃がすつもりはねえってことかよ!」

「……そういうこと。安心して、私は手出ししない。やるのは昇と貴方の二人だけ」

 

 少年にかけられたのは優しげな、しかし冷徹な宣告。逃げられないと悟った少年はデッキを決闘盤にセットし、Dゲイザーを装着する。

 それを見た昇もまた全く同じ行動を取り、敵である少年を見据えた。

 

『ARビジョン、リンク完了』

 

 感情のない機械音声。

 合図となるそれが鳴り響いた瞬間、二人の転生者は己が剣を引いた。

 

 

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