店長のレガシーカードが別のカードだった妄想   作:恒河沙

3 / 5
「僕はキミとは違う。
 僕には角があって、キミには無い。
 でも、違うから、キミが好きなんだ」
――烈風の刃


愛とはなんなのか?その答えを探すため、オニムスは立ち上がったのです!

 あの日から、店(MeeKing)の閉店作業の後、誰もいない店内でボクとフツオくんが二人だけでする事が増えた。

 いつもはボクから彼を誘うけれど、今日は珍しくフツオくんから誘ってくれた。

 そのせいか、いつもより熱っぽくボクのものを指が這い回っている気がする。

 今は手袋で覆われて見えないけれど、彼の指は節くれ立って堅い。

 その指が動くのをつい目で追ってしまう。

 そんな事をする余裕なんて無いと、わかっていても惹きつけられてしまうんだ。

 

「店長、どうしました?」

「なんッ……でもないよ……」

「そうですか。じゃあ続けますね」

 

 あまり感情の乗っていない声の後で再開される行為。

 悔しいッ……。ボクだけが一方的に気にしてしまう。

 初めての時はフツオくんも動揺している所を見せてくれていたけれど、日課のようになった今ではボクを翻弄してばかりだ。

 誘っておきながら、いつも先に音を上げるのはボクだし、フツオくんはボクに満足できているのかな……?

 

「んッ……」

 

 行為が終わると共に生じる微かな虚脱感。

 若いせいか、それとも別に理由があるのか、フツオくんはあれだけ動いているっていうのに、疲労はボクの方が大きい。

 まだ熱の残った瞳をボクに向けてくる。

 何度もしてるからわかるけど、アレはまだ続けたい時のサインだ。

 ああ――今夜もまた、一度だけじゃ終わらない――。

 

 

 

「で、あのカードはどうだったフツオくん?」

「そうですね。使ってみて、色んなカードに対応できそうですけど、アレ一枚じゃうまく回りませんね。

 同じテーマのカードをもう何枚か入れて、シナジーのあるテーマも追加してってなりそうです」

 

 フツオくんがデッキからカードを取り出して、店舗販売用のスリーブと交換する。

 今日のファイトは、店舗の奥に保管しておいた中で見つけた古いカードに、フツオくんが興味を持ったからそのテストだった。

 

「じゃあ、一応取り置き扱いで販売リストからは除外しておくね」

「あざっす!」

 

 ファイトが終わった後の感想戦。

 今日はフツオくんが使ってみたいカードがあったからだけど、多くの場合はボクがデッキの改良をしたいから、閉店後にファイトを頼むようになった。

 今日も三回のファイトを済ませて、今は晩御飯と言うには少し遅い時間だけど、ナスとキュウリのドライカレーを二人で食べている。

 食事を兼ねているから、カードを並べながらというわけにはいかない。だけど、講師役はフツオくんだからボクのデッキ内容は知ってるので問題無い……あれ? これでいいのかな?

 フツオくんは毎回のようにデッキを変えてくるから、様々なデッキの対応策を教えてくれるし、ボクの使う銀河乙女や試作で組んだエニグマの改善案も出してくれる。

 ボクばかりが得をしてるような気がして、フツオくんに聞いてみたら、一人回しには限界があるからボクとファイトする方が良いそうだ。えへへ。

 でも、デッキの完成度を上げるため、もっと多くの人とファイトして経験を積みたいらしい。……なんかえっちっポイ。めっ!

 食べ終わった後も何度かファイトをして、MeeKingの夜は更けていった。

 

 

 MeeKingの朝は遅い。

 休日や、新パックの発売日にはもっと早く開くが、平日ならば11時頃に開店する。

 午前中にはあまり来客がないけれど、昼休みの時間帯にはお客さんがそれなりの数入ってくれる。

 だから昼前には開けておく必要がある。だけども開店直後にはお客が少ないので、この時間で在庫の管理や夜食の下拵えをしたりするんだけど――今日は開店前からお客様が待っていた。

 

「遅いぞ。セト」

「カドさん!?」

 

 お店の前に立っていたのは、袖や裾がフリルになった浴衣姿の小柄な女性。この上磐市市長の常盤火戸(ときわかど)さんだった。

 イタズラが成功した子供のような笑顔でボクを見ると、さっさと開けろと言うので慌てて扉の施錠を外す。

 

「ふぅ――この衣装は少し早いかと思ったが、外で待っておると中々暑くなってきておるの」

 

 夏も近くなっているから店内では冷房が働いている。

 カドさんはそんな店内の空気を扇子で自分に送りながら、ゆっくりと店の様子を観察していた。

 

「ふむ……。以前来た時よりもだいぶ変わっておるの。

 シングルカードは見やすい配置になっておるし、パックも発売順に並べておる」

「ふふふ。そうでしょう? がんばったんですよ」

 

 主にフツオくんが。

 

「何より灯りも点けず薄暗かった店内が明るくなっておる。

 お主も少しは真面目に商売をする気になったか」

「愛、ですよ。カドさん」

「何故そこで愛ッ!?」

 

 ? なにか変なこと言ったかなあ?

 

 

 

 ううむ……。セトには少しと言ったが、以前来た時とはまるで別の店じゃ。

 ここ(MeeKing)が潰れて別のカードショップになったという噂を聞いて、慌ててやって来たが……そんな勘違いをされても仕方があるまい。

 以前は外が暗くなるまで灯りも点けることなく、四角い所を丸く掃いては隅に埃が見えていたというのに。

 飾られているシングルカードも分類ごとに分けられており、見る者の事も考えた配置で、眺めているだけでも購買意欲がそそられるようじゃ。

 そして、何よりも変わったのはセト本人に違いあるまい。

 以前は伸ばし放題のボサボサだった髪も、片目を隠す前髪こそ長いものの、セミロング程度の長さで綺麗に切り揃えられ軽く編み込みまで入っておる。

 服装も動きやすく地味なのは変わらぬが、以前のようなシワが目立つ物や生乾きの物ではなく、清潔な物を身に纏っておった。

 紅(べに)や白粉程度とはいえ化粧も覚えて……かつてはどこに出しても恥ずかしい立派な干物女子だったのが、一夜干し程度には取り繕えておる。

 店の改善とセトの変化、本人の話によれば一人のバイトが入ってからであるとか。

 もしも、そやつがよからぬ企みを抱いておるようなら排除すべきか……。セトは信頼しておるようじゃが、こやつポンコツじゃしなあ。

 

「今日は平日ゆえ仕方ないが、バイトの少年とやらも見ておきたかったの……」

 

 つい、思っていた事をこぼしてしまった。

 吾の隣でそれを聞いたセトじゃが、何やら顔が妙に青ざめておる。

 

「だだだだダメですよカドさん! 未成年相手は犯罪だよ!」

 

 それ、お主の場合でも犯罪なんじゃよなあ。




カレー食ってる辺りに入らなかった話

今日もフツオくんが自分の組んだデッキの解説をしてくれる。
熱がこもると、時々早口になってくるけれど、そこがなんとなく可愛らしい。
ああ、でも、どうしても魅入ってしまう。
彼の指、目、口……。
様々なカードをプレイしていく指に、ボクを殺(あい)すための手段(カード)を切ってくる指に。
手札や墓地、盤面を見通す目に、ボクに強い殺意(あい)を向けてくる目に。
カードの効果を説明してくれる口に、ボクを殺(あい)す言葉を紡いでくれる口に。
どうしようもなく魅かれてしまうんだ……。


モブの思想だとファイト=殺し合いなので、それに脳を焼かれた店長が愛=殺意と認識してユベルっちゃった。
書く側になってわかったけど、ユベルの思考ってちゃんと理屈づいてたんやなって。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。