もし龍騎のライダーバトルに青春鉄道のジュニアが参戦したら 作:Arumisael
この作品は仮面ライダー龍騎、及び青春鉄道(紙端国体劇場)の二次創作です。
第1話 鉄路のライダー
─耳鳴りが聞こえる。ああ、今日もノコノコと向こうから獲物がやってきたらしい。京浜東北の説教を半ば強引に切り上げ、在来の執務室を後にする。察したらしい宇都宮や、埼京ら若い在来達が、ヒーロー活動、頑張ってね!と後ろからやじ声援を飛ばしてきたが無視をする。「これ」は決して、「ヒーロー」なんてものじゃあない。
全ては、己が敬愛する兄のためであるのだから。
***
東京駅丸の内駅舎。つい先日、創建当時の丸屋根への復元計画が発表されたばかりのそこは、異様なほどの静けさに包まれていた。周囲には人の姿はなく、案内看板はすべて鏡写しのように反転している。
異界の東京駅の中、、ボディースーツと鎧を身に着けた二人が異形の化け物─ミラーモンスターを相手していた。『ミラーワールド』と称される世界では、
「おい蓮!一匹そっち行った!」
「わかっている!」
対して、ナイト─紺のボディスーツと、西洋の騎士のような出で立ちの彼は、
一か八かの賭けに出よう─そう言っているのだろう。不意に動きを止めた龍騎からの視線を受け、分身を消す。
互いに切り札のカードに手を伸ばした─その時だった。
《ファイナルベント》
ノイズがかったその読み込み音声と共に、大きな影が改札口からこちら側へ飛び立っていく、刹那、十数体はいたバケモノの身体が同時に爆ぜ、砕け散ったのだ。
「……たか」
呆気にとられる龍騎の隣で、ナイトは上へ飛び上がるナニカから、人影が降り立つのを視界に捉えた。黒を基調としたボディスーツを覆う鎧は夜空のような濃紺で、随所を彩るオレンジの差し色が特徴的だ。先程影と認識したモノは鳥獣型のミラーモンスターだったようで、その特徴的な尾と飛び方は、ツバメを彷彿とさせた。
「ッ待て!」
一足早く我に返ったナイトは、咄嗟に声を上げて相手と接触を試みた。が、しかし、新たに現れた仮面ライダーは、そのテールコートの様な出で立ちのマントをヒラリと翻し、まるで自分たちが見えていないかのように、無言で走り去っていった。
***
翌日、在来執務室。
「〝東京駅で遂に行方不明事件発生か!〟だってね、東海道。」
二つ折りケータイの画面を見せながら、宇都宮が貼り付けた笑みを見せる。
「『東海道上官の警護での離席を見逃す代わりに、管轄の駅構内に現れたモンスターも処理する』ってのが、僕らとの約束じゃなかったっけ?」
「ついにA○SOKも陥落しちゃったね☆」
「誰がALS○Kだ!」
笑顔で追求する宇都宮に、山手が茶々を入れる。朝礼前ということもあり、人身で現場に回っている総武と中央以外、ほぼ全員がこの執務室に顔を見せていた。
今朝からのもっぱらの話題は、ここ最近世間を騒がせている連続行方不明事件だ。原因不明・犯行手口不明の今なお謎に包まれた事件だが、この部屋にいる連中は、訳あってことの真相を知っていた。
それは〔鏡の中に棲む未知のバケモノが人間を食い物にしている〕と、いうもの。あまりに突飛な、現実味のない話だ。まともな人間であればまず取り合うことはないだろう。
しかし、彼らもまた、鉄路がヒトの形を取った、という特殊な身であったので、多少の摩訶不思議な出来事には慣れていた。
そしてもう一つ、彼ら鉄道路線の一人である東海道本線が、『仮面ライダー』と呼ばれる姿に変身できるようになったこと。
仮面ライダーは、鏡の向こうの世界へ行き来できる能力を持ち、バケモノ(東海道曰く〝ミラーモンスター〟と呼ぶらしい)を退治できるのだという。一部の同僚は鏡からの妙な気配を感知していた上、若手在来に変身解除を見られたことで、東海道本線が奇妙な能力を手に入れたことは、すぐに周知の事実となった。
「今まであいつらの標的は決まってたんだ!それが急に…」
「ハイハイ言い訳は後で聞こうか」
「でもさ〜本当にあの…ミラーモンスター?だっけ、なんなんだろうね」
「アレの被害が出ると乗客が減りかねないし」
「いい迷惑だよな〜」
「いっそのこと東海道がずっと変身してればいいじゃん」
「馬鹿言うな!兄さんから突然連絡があったらどうするんだ! それと、アレは時間制限付きなんだよ!」
正確には変身時間ではなく、異界の滞在時間のほうだが、そんなことを説明してやる義理もない。
周囲から畳み掛けられる文句から逃れるため、東海道はポケットのタバコに手を伸ばした。
「ねぇちょっと東海道、今ここで吸う気?」
「わかってる」予想通りだ。京浜東北の視線に捕まり、仕方なく、本当に仕方なくという体で、執務室を後にすることに成功した。
「帰ってきたらちゃんと仕事してよね」当の本人にもバレていたが─
一時的に脱出した東海道は、このまま兄への差し入れを買いに行ってしまおうかと思案して、微かな耳鳴りに顔をしかめる。廊下の窓ガラスに目を遣れば、そこには陽炎のようにユラユラと人影が居座っていた。
(戦え)
(全てのライダーを倒し、最後の一人となれ)
(お前が兄を守りたいのなら─それしか方法はない)
やや着古したベージュのコートを着た男は、いつもただそれだけを言い残し消え去っていく。
わかっている、きっかけは偶然と言えど、結局この
だとしても─自分が今ここで戦いから降りれば、兄を防衛する手段は未来永劫失われてしまうのだ。
この怪物騒ぎから兄を絶対に守り抜く。
そして全てが終わったその暁には、兄を巻き込んだこいつを徹底的に─
確固たる決意を胸に、東海道本線は日常へと戻っていった。