バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回 作:カミト6622
「――神鳴の一矢(かむなりのひとや)……ッ!」
限界まで引き絞られた光の弦から、眩い白銀の閃光が放たれた。
落雷のような大爆音と共に、音速を超えた衝撃波が夕暮れの通学路を激しく震わせる。
「くっ、大自然の精霊たちよ、我が盾となれ――ッ!!」
パッチ族の十祭司カリムが瞬時に動き、腰の装飾品から呼び出した複数の精霊を重ね合わせ、強固な巫力の防壁を眼前に展開した。パッチの精霊による防御は並のシャーマンの攻撃など蚊ほども通さない。
だが、俺の魂の奥底に眠るバグ巫力を上乗せした一撃は、その『並』の常識を遥かに逸脱していた。
ズガァァァァァンッッッ!!!
激突の瞬間、カリムが自信を持って展開した精霊の防壁が、まるで薄いガラス細工のように**根元から粉々に粉砕(バースト)した。**
「なっ……馬鹿な、私の防壁が力ずくでブチ抜かれただと!?」
カリムの瞳に初めて本物の戦慄が走る。爆風が彼の自慢の羽飾りを激しく吹き飛ばし、圧倒的な光の矢がその肉体を飲み込もうと突き進む。
普通なら、ここでカリムは直撃を受けて戦闘不能になるか、あるいは十祭司としての本気を出して相打ちを狙うところだろう。
だが、俺の狙いは最初からそこにはなかった。
原作知識がある俺は、パッチ族が防御を破られた際、本能的にどの方向へ身体を退避させるかの『癖』を完全に把握している。
(そこだ――ッ!)
放たれた閃光の軌道は、カリムが動くはずの未来の退路へ、最初からわずかにズラしてあった。
カッ……!!!
閃光がカリムの身体のすぐ真横をすり抜け、遥か後方の空へと消え去っていく。
凄まじい風圧に顔を歪めながらも、カリムは何とか直撃を免れた――かに見えた。
「はぁ、はぁ……っ。な、なんという凶悪な威力だ……。危うく死にかけたぞ……」
カリムが冷や汗を流しながら己の無事を確認した、その時だ。
ビリリッ、と静かな音が響いた。
見れば、カリムが着ていた伝統装束の右肩の生地が、**一寸の狂いもなく綺麗に撃ち抜かれ、丸い風穴が開いていた。**
「……な……っ?」
カリムは自分の肩の穴を凝視し、絶句した。
ただの力任せの暴発ではない。あの超規格外の破壊力を持つ矢を、こちらの回避行動を完璧に読んだ上で、傷一つつけずに服の一角だけを正確に射抜いてみせたのだ。
圧倒的な『破壊力』と、不気味なほどの『超精密射撃』の完全な両立。
「……一撃当てれば合格、だろ? カリムさん」
俺が指輪を下ろすと、巨大な光の弓は静かに霧のように消散した。
生まれつきバグ仕様で魂の器がデカい俺の、これが初めての公式戦の戦果だ。
カリムはしばらく呆然と立ち尽くしていたが、やがて深くため息をつくと、腰のオカルトベルから一つの小さな端末を取り出した。
シャーマンファイトの参加証であり、通信機でもある【オラクルベル】。
「……見事だ、御門蓮夜。テストは文句なしの合格、いや、合格なんて言葉では生温い。君のような底の知れない怪物を、ただの一般モブの野良シャーマンとして見過ごしていたとは、パッチ族の情報網も焼きが回ったな」
カリムは苦笑しながら、オラクルベルを俺に向かって放り投げた。
「受け取りたまえ。君をシャーマンファイトの本戦参加者として登録した。……君がこの大会でどこまで行くのか、試験官として楽しみにさせてもらうよ」
「ああ、ありがとよ」
オラクルベルを受け取り、ポケットにしまい込む。
《お見事です、蓮夜。十祭司の肝を完全に冷やしてやりましたね》
(ああ。でも、これで俺も正式なプレイヤーだ。麻倉葉たちの戦いを見物しつつ、いつでも介入できる切符を手に入れた)
ピピッ、とポケットの中でオラクルベルが静かに起動する音が聞こえた。
500年に一度の大戦の表舞台へ。バグ仕様の魂を持つ男の本格的な原作介入が、今、静かに幕を開けた。