バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回   作:カミト6622

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第99話:『厄災の調律と、十数年越しの拳骨』

第99話:『厄災の調律と、十数年越しの拳骨』

 

「……全艦、構えッ!! ――撃てェーーーっ!!!」

 

その号令と同時に、絶対包囲網を敷く十数隻の軍艦から、数百門の砲門が一斉に火を噴いた。

凄まじい大気の震え。空を完全に覆い尽くさんばかりの、圧倒的な砲弾の雨。それらは放物線を描きながら、海面を滑る我がレヴァナント号を木っ端微塵にせんと一斉に殺到する。

 

普通の船なら一瞬で塵すら残さず消し飛ぶ、国家戦力級の理不尽な破壊。

だが、俺とシロは、迫り来る鉄の雨を見上げながら不敵に笑った。

 

「シロ、まずは小手調べだ。お前のその直感で、悪魔の実の力を全開にしてみろ」

「うん、任せて……。――『波動硝子(ガラス・ウェーブ)』!」

 

シロが両手を前に突き出し、ガラガラの実の力を解放する。

瞬間、レヴァナント号の周囲の大気、そして押し寄せる海風そのものが、キィィィンという鼓膜を刺すような高周波の超振動と共に、きらびやかな結晶へと変貌した。大気中の水分を依り代にした、超高密度の巨大な硝子の防壁。

 

そこへ、数百発の砲弾が容赦なく激突する。

だが、爆発は起きない。触れた瞬間に、砲弾の持つ「運動エネルギーという歪み」が、シロの放つ超振動の波動によって瞬時に相殺され、全ての砲弾がその場で動きを止めて『硝子の塊』へと固定されたのだ。

 

「なっ……!? 砲弾が、爆発せずにすべて硝子に変わっただと!?」

海兵たちの驚愕の叫びが響く中、俺は手首のロザリオを弄び、冷徹に微笑んだ。

 

「お前らが放った『破壊という厄(過負荷)』だ。責任を持って自分たちで受け取りな。――『反転調律・厄禍禊(えっかのみそぎ)』」

 

俺がヤクヤクの波動を空間ごと反転させた瞬間、世界の因果が逆転した。

シロの波動で硝子化し、空中に静止していた数百発の砲弾が、今度は俺の調律によって「放たれた軌道を完全に逆流する厄」へと変換される。

 

ドン!!! と、爆発的な衝撃波と共に、数百発の硝子砲弾が、元来た軌跡を寸分の狂いもなく猛スピードで逆噴射した。

 

「な、なんだとォーーーっ!?」

「全艦、回避ィーーーっ!!」

 

遅い。

自らが放った理不尽な破壊が、そのままの威力で自らに返ってくる絶望。

次々と軍艦の甲板や船体に硝子砲弾が着弾し、凄まじい爆音と共に大砲が破壊され、マストがへし折れていく。十数隻の無敵艦隊は、一瞬にして自滅の炎に包まれ、大パニックに陥った。

 

だが――そんな地獄絵図のただ中から、その男は平然と躍り出てきた。

 

「ぶわっはっはっは! 面白い術を使うじゃねェか、ロジャーのガキがァ!!」

 

軍艦の炎をものともせず、大型の主砲塔を力任せに引きちぎって肩に担ぎ上げたのは、海軍の生ける伝説――ガープ中将だ。

その強靭な両腕には、大気を歪めるほどの漆黒の武装色の覇気が、禍々しいオーラとなって完全に凝縮されている。

 

「十数年前はおれの鉄球を受け止めおったな! ならば、こいつはどうだァ!!」

 

ガープが咆哮と共に、担ぎ上げた巨大な主砲塔を、まるでただの石ころのように素手で投げつけてきた。

ボォォォッ!!! と、摩擦熱で大気が燃え盛り、黒い黒煙を纏いながら迫り来る超質量の鉄塊。十数年前のあの「拳骨」の衝撃が、さらに威力を増して俺たちのレヴァナント号へと肉薄する。

 

「クロウ様、流石にあの老兵、ただの肉体強度の枠に収まらぬ生気の塊ですな」

《ええ、クロウ。あの一撃、並の陰陽術では空間ごと消し飛ばされます》

 

黒死一文字からマタムネの、そして俺の背後で実体化したサクヤの声が、同時に俺の魂へと響いた。

 

「分かってる。だからこそ、ここで出し惜しみをする理由がねェ。……サクヤ、マタムネ。前世(1周目)でハオから教わった、俺たちの本気を見せてやろうぜ」

《はい、我が主の御心のままに!》

 

サクヤが美しくも禍々しい巫力を爆発させ、俺の持つ黒死一文字へとその霊体を完全に同調させる。

前世のシャーマンファイトを戦い抜いた俺たちの真髄。悪魔の実の能力というシステムの枠組みすら超越した、魂の結晶。

 

「――甲縛式オーバーソウル・『神威厄神(かむいやくしん)』」

 

瞬間、俺の右腕と黒き妖刀が、サクヤの放つ漆黒の霊気と、ヤクヤクの反転調律の概念を具現化した、禍々しい巨腕の鎧(甲縛式)へと変貌した。

漆黒の鎧の隙間からは、あらゆる因果をネジ曲げる調律の波動が、視覚化できるほどの紫の雷光となってバリバリと空間を割っている。

 

「いくぞ、拳骨のガープ……! 十数年前の借りを、ここで返してやるッ!!」

 

俺は甲縛式を纏った巨腕を大きく引き絞り、迫り来るガープの巨大な鉄塊に向けて、真っ向からその拳を叩きつけた。

 

「――『陰陽調律・万象皆滅(ばんしょうかいめつ)』――ッ!!」

 

ズガァァァァァァァァンっ!!!!

 

世界の終わりかと思わせるほどの、凄まじい大爆発が洋上に炸裂した。

ガープが武装色の覇気と共に放った超質量の鉄塊が、俺の甲縛式の拳と激突した瞬間、その質量も、運動エネルギーも、覇気の衝撃すらも、俺の陰陽の術理によって「存在そのものの厄(歪み)」として強制的に分解され、一瞬にして光の塵へと還元されていく。

 

衝撃波によって周囲の海面が数百メートルにわたって完全に割れ、巨大な潮の壁が乱立する。

その凄まじい嵐の向こう側で、ガープ中将は己の一撃が正面から完全に消し飛ばされたのを目撃し、その獰猛な獣の目を限界まで見開いていた――。

 

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