バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回 作:カミト6622
第101.5話(閑話)
――新世界、万国(トットランド)『ホールケーキアイランド』。
「ハァ~~~ママママ! 面白い手配書が回ってきたねぇ! ガープのクソじじいの大艦隊を正面からコケにして、傷一つなく消え失せた幽霊船だって?」
お菓子の城の玉座で、大量のウェディングケーキを口に放り込みながら巨躯を揺らしていたのは、四皇“ビッグ・マム”ことシャーロット・リンリンだった。
あいつの狂気を孕んだ風球のような眼光が、新しく刷り直されたクロウの「3億2000万ベリー」の手配書、そしてシロの手配書を睨みつける。
「かつてロジャーの船に、どこからか拾われてきた赤子の見習いがいたって話は政府の諜報から耳にしちゃいたがねぇ……。あのロジャーの残党が戻ってきたのかい! おれの『魂(ソウル)』の能力とも違う、悪魔の実や覇気とも違う、触れもせず全ての破壊を相殺しちまう不可解な怪異の理……。ハァ~~ママママ!」
ビッグ・マムは、手配書に写る少年のあまりにも底の知れない不気味さに声を尖らせる。
「あのガキの船には、生きてる人間が一人も乗っちゃいない怨霊の軍勢(百鬼夜行)の国があるんだろ? おれの国(トットランド)にない珍獣のコレクションに、ぜひとも加えてやりたいねぇ! ペロスペロー! 次にあの船の目撃情報が入ったら、すぐにおれに報告しな!」
ビッグ・マムはよだれを垂らしながら、新しく目の前に現れた歴史のイレギュラーへの強欲な執着を燃え上がらせていた。
◇
――新世界、ワノ国『鬼ヶ島』。
「ウォロロロロ……! 3億2000万だと? 海軍の本部艦隊を返り討ちにしてその程度かよ。政府の役人どもは相変わらず、本当の『脅威』の測り方を知らねェらしい……」
山のように積まれた巨大な瓢箪から、凄まじい勢いで酒を煽っていた巨漢――四皇“百獣のカイドウ”が、床に転がっていた手配書を巨大な足で踏みつけながら、低く響く声で笑った。
「カイドウさん、そのクロウってガキ……ただのルーキーじゃなさそうですね。海軍の機密によれば、ガープの全力の一撃を正面から完全に消し飛ばしたとか」
大看板の火災のキングが、静かに翼を休めながら問いかける。
「ウォロロロ! 昔ロジャーの船に『赤子の頃から乗っていた見習いがいる』とは聞いていたが、十数年前にガープの拳骨で沈んだはずの亡霊が、現世に戻ってきたってわけか。おれが『ウオウオの実』の幻獣種の力でどんな天変地異を起こそうが、あいつを前にすればすべて最初から何も起きていねェかのように『無』に消されちまうかもしれねェな……」
カイドウは瓢箪を床に叩きつけ、その獰猛な竜の瞳を怪しく光らせた。
大昔のロックス海賊団の時代にも、その後のおれの戦いの中でも、こんなタチの悪い力を持つガキの記憶(おぼえ)は一切ねェ。悪魔の実でも覇気でもねェ、文字通りの『世界に紛れ込んだバグ』だ。
「覇気だけがすべてを凌駕するこの海で、覇気の概念そのものを手も触れずにへし折る、この世の理の外側にいる亡霊か。ウォロロロ! 面白いじゃねェか! クロコダイルのような口先だけのワニ公が堕ちたことなどどうでもいい……。あの戦場をただ見下ろすだけの餓鬼が本気で世界を壊しにくるってんなら、おれの『最高の戦争』の相手として、これ以上の不足はねェなァ!!」
カイドウは巨大な金棒『八斎戒』を肩に担ぎ、まだ見ぬ歴史の亡霊との、世界の底を揺るがすような大決戦を確信して、凶悪な咆哮を轟かせるのだった――。