バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回   作:カミト6622

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第11話:『予選最終戦、音速の暗器と不可避の包囲網』

 シャーマンファイト本戦予選、第3戦。勝てば本戦進出、負ければ脱落の最終決戦。

 オラクルベルが指定した場所は、深夜のふんばりヶ丘の広大な中央公園だった。月明かりだけが照らす静寂の中、俺――御門 蓮夜(みかど れんや)は、指輪のチャームをそっとなぞりながら敵の到来を待っていた。

 

「クク……。お前が2連勝中の『光弓の野良』か。ただの運の良い一般モブかと思ったが、少しは骨がありそうだな」

 

 不意に、頭上の大樹の枝から、鈴の鳴るような鋭い声が降ってきた。

 見上げると、そこには全身を漆黒のタイトな忍装束に包んだ、小柄な男が立っていた。男の名は飛影(ひえい)――ではなく、オリジナルシャーマンの『影狼(かげろう)』。裏の暗殺社会で生きてきたという、速度特化型のシャーマンだ。

 

「俺の持霊は、かつて忍びの里で恐れられた伝説のムササビ忍獣『疾風(はやて)』。そして、俺の媒介(依り代)はこれだ」

 

 影狼が両手の指の隙間に、何十本もの細い投針(暗器)を挟み込む。

 

「――オーバーソウル!」

 

 男の身体が爆発的な緑色の巫力に包まれた瞬間、彼の背中に半透明の巨大な皮膜(翼)が具現化し、両手の投針が超振動を始めてキィィィンと不気味な高音を奏でた。

 速度と隠密、そして「音」を操る、極めて厄介な暗殺型のオーバーソウル。

 

「いくら強力な弓を持っていようと、放つ前に間合いを詰めれば終わりだ。音速の恐怖に震えながら、ハチの巣になりな!」

 

シュッ、と風が鳴った。

次の瞬間、影狼の姿が完全に視界から消失する。

 

(速いな。……だが、ただ速いだけだ)

 

 生まれつきバグ仕様で魂の器がデカい俺の巫力センサーは、空間の僅かな空気の歪みから、彼の移動軌跡を完全に捉えていた。

 

チチチチチッ!!!

 

 突如、俺の全方位の闇から、超振動を伴った何十本もの投針が、音もなく同時に襲いかかってきた。まともに喰らえば、肉体ごとハチの巣にされてスクラップ行きだ。

 

《蓮夜、防ぎますか!?》

(いや、避ける必要はねえ。――サクヤ、防壁だ!)

 

 俺が指輪に巫力を込めると、光の弓を形成する前の高密度な巫力の残滓が、俺の周囲に球体の『青い光の結界』を瞬時に展開した。

 

ガガガガガガガッ!!!

 

 凄まじい火花が散り、超振動の投針が結界の表面で次々と弾き飛ばされていく。魂の器の絶対量が違いすぎるのだ。いくら暗殺用の鋭い一撃とはいえ、俺のバグじみた高密度巫力の壁を貫通することなどできやしない。

 

「なっ……何だその堅牢な結界は!? 暗器の超振動すら完全に無効化するだと!?」

 

 中空を飛び回りながら、影狼の焦燥に満ちた声が響く。

 

「ただ守ってるだけだと思うなよ。お前が空中にいる限り、着地する場所は限られてる」

 俺は結界を解くと同時に、手元に【純白に輝く巨大な光の弓】を具現化させ、一気に上空へと引き絞った。

 

「無駄だ! 俺の速度にはついてこれまい!」

 影狼が再び超高速のジグザグ移動を開始する。だが、俺が放ったのは、奴の身体ではなく、**公園の木々の隙間の空間**だった。

 

パァンッ!!!

 

 放たれた一矢は空中を切り裂き、そのまま複数の小さな光の網へと霧散した。

 ――技の名は『サクヤの蜘蛛網(ささめあみ)』。

 かつて戦場で敵の退路を断つためにサクヤが使っていた、範囲制圧用の巫力トラップだ。空中の一帯に目に見えない巫力の細い糸が、網の目のように張り巡らされる。

 

「な、何だこれは……っ!? 身体が、動か――」

 

 超高速で飛行していた影狼は、自らの速度のせいで、その不可視の巫力の網へと自ら激しく突っ込んでしまった。蜘蛛の巣に引っかかった虫のように、空中でその動きが完全にピタリと停止する。

 

「これで、逃げ場はないな」

 

 俺は2射目、予選突破を決める最後の一矢をまっすぐに引き絞った。

 指輪のチャームが激しく鳴動し、魂のバグ巫力が一点に収束していく。放たれるのは、これまでの戦いをすべて終わらせてきた、あの絶対的な一撃。

 

「――『神鳴の一矢(かむなりのひとや)』」

 

ドドォォォォォンッッッ!!!

 

 落雷のごとき大爆音と共に、太い白銀の閃光が夜空を真一文字に切り裂いた。

 空中に縫い付けられていた影狼のオーバーソウルは、その圧倒的な光の奔流に呑み込まれ、**何一つ抗う術もなく一瞬で粉々に粉砕(バースト)された。**

 

「ぎゃあああああああああっ!?」

 

 持霊を完全に浄化され、巫力を全損した影狼は、そのまま地面の芝生の上へとドサリと真っ逆さまに落ちていった。気絶してピクリとも動かないが、前回の男同様、出力はコントロールしてある。

 

ピピッ、ピピッ、ピピッ。

 

 静まり返った公園に、電子音が響く。

 ポケットから取り出した銀色のオラクルベルの画面には、燦然と輝く『QUALIFIED(予選通過・本戦進出)』の文字が刻まれていた。

 

《お見事です、蓮夜。これで3連勝。我らも晴れて、本戦の舞台へ進出ですね》

「ああ。長かった予選もこれで終わりだ」

 

 俺は光の弓を消滅させ、指輪をそっと撫でた。

 一般モブとして気配を隠しつつも、裏では圧倒的な超火力と戦術で予選を完全勝利で突破した。

 

 ここから先は、パッチの村へ向かう本戦(アメリカ編)が始まる。麻倉葉、道蓮、そしてハオの軍勢。本物の化け物たちが蠢く本戦の舞台で、累積バグを持つ男の『本当の原作破壊』が、いよいよ本格的に幕を開けることになる。

 

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