バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回   作:カミト6622

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第24話:『法と正義の不条理と、魂の結合術式』

第24話:『法と正義の不条理と、魂の結合術式』

 

 シャーマンファイト本戦リーグ、最終戦。決勝トーナメント進出をかけた運命の戦い。

 ソロチーム『御門蓮夜』として指定された岩山闘技場に立ちはだかったのは、あの純白の軍服に身を包んだ、冷酷な光の天使を従える3人組だった。

 エックス・ローズの次ノ戦力である『X-Ⅱ』のメンバーたち。

 

「御門蓮夜。君がハオの陰陽術を使い、あの化け物と密約を交わしていることはパッチの十祭司を通じて把握している。ハオに与する者は、いかなる理由があろうとも我らの絶対なる正義のもとに排除する!」

 

 彼らは一斉に叫び、特殊な銃の媒介から強烈な光の巫力を爆発させた。

 具現化するのは、冷徹な機械の天使たちのオーバーソウル。前戦のオリジナルたちとは一線を画す、無慈悲な組織的波状攻撃が、ソロの俺――御門 蓮夜(みかど れんや)を圧殺せんと一斉に襲いかかってくる。

 

(ハオの術を使っただけでこれか。本当に、胸糞悪い独善的な正義だな……)

 

 俺は感情の波をフラットに保ち、左手の指輪を掲げた。ハオから叩き込まれたばかりの、魂の固定化と五行の術式を全開にする。

 

「――オーバーソウル」

 

 ドォォォォォンッッッ!!!

 

 俺のデカすぎる魂の器から溢れ出た青い巫力は、ハオの累積術式を上乗せされたことでさらに精錬され、手元で【物理的な硬度すら伴う、神々しい白銀の剛弓】へと完全固定化された。

 さらに、サクヤが弓へと同調するその瞬間、俺の脳内に、昨日ハオから学んだ『泰山府君祭(たいざんふくんさい)』の記憶の断片が、強烈なひらめきとなって駆け巡った。

 

(……待てよ。魂を固定化し、引き継ぐ術式。これを今、サクヤの霊体と俺のバグ巫力の『結合』にそのまま応用すれば――!)

 

ズクンッ、と俺の魂の器が熱く脈打つ。

これまではただ膨大な巫力を力任せにサクヤの弓へ『圧縮』していただけだった。だが、泰山府君祭の核心に触れた今の俺は、サクヤの霊体そのものを俺の累積バグ魂の深淵へと完璧に『結合・融和』させる、真のオーバーソウルの取っ掛かりを本能的に掴みかけていた。

 

キィィィィィン……ッッッ!!!

 

 決戦場全体の空間が、昼間のジャンヌの『シャマシュ』すらも生温く感じるほどの、異次元の質量重圧によって悲鳴を上げる。

 引き絞られた光の弦に番えられたのは、空間の光と大気の五行をすべて吸い込み、完全に『物質化』した白銀の巨矢。

 

「墜ちろ。――『陰陽神鳴の一矢(おんみょうかむなりのひとや)』」

 

ドドォォォォォンッッッ!!!

 

 落雷を遥かに超えた、まるで世界の軸が爆発したかのような大轟音。

 放たれた一撃は、エックス・ローズの3人が必死に展開した大天使の防御壁を、まるで太陽の前に晒された氷細工のように、一瞬にして跡形もなく正面から粉砕(バースト)した。

 

「なっ……大天使の防壁が、ただの一射で……っ!?」

 

 驚愕に目を見開くマルコの部下たち。しかし、放たれた光の奔流は、彼らのオーバーソウルだけを木端微塵に消し飛ばし、3人の肉体から数センチ逸れた地面を穿ち、背後の岩山を綺麗に半分に削り取って消滅した。

 彼らは無傷だ。だが、巫力を根こそぎ全損し、持霊の天使たちを強制的に大人しくさせられたことで、その場に膝を突き、ガタガタと震えていた。

 

「くっ……殺せ! 悪魔(ハオ)の手先め! 我らをここで生かすなど、何のつもりだ!」

 リーダーの男が、悔しさと恐怖に顔を歪めて叫ぶ。その瞳には、かつてハオに仲間を皆殺しにされた時の絶望がフラッシュバックしていた。

 

 俺は光の弓を静かに消滅させ、冷え切った瞳で彼らを見下ろした。

 

「殺すわけないだろ。無駄な殺生をする趣味はねえよ。降伏するなら、大人しくそこを退け」

「な、何だと……!? 我らを侮辱するか! ハオを倒すための我が命、正義のために捧げて散るなら本望――」

 

「侮辱? ……なぁ、お前らは、道を歩いている時に、そこらにいる『蟻(あり)』をいちいち気にしながら踏み潰すか?」

 

 ――ッ!?

 観客席の最上段で笑みを浮かべていたハオが、その言葉に一瞬だけ驚いたように目を見開いた。

 

「お前らが命をかけようが、正義のために散ろうが、俺にとってはそこらの蟻の小競り合いと大差ないんだよ。蟻がどれだけ俺を悪だと吠えようが、わざわざ気に留めて踏み潰すほどの価値もない。お前らの『命の価値』なんて、その程度だ」

 

 圧倒的な『格の違い』による冷酷な拒絶。

 彼らが人生のすべてを捧げ、魂を削って縋り付いてきた「ハオを倒すための気高き聖戦」という大義名分が、ただの中学生の口から放たれた「蟻の小競り合い」という無慈悲な一言によって、完全に、跡形もなくへし折られた。

 

「あ……、あ……」

 

 リーダーの男の手から、媒介の銃が力なく転がり落ちた。

 戦う意志すら湧かない。命を捨てる覚悟すら、ただの虫ケラの羽ばたきとして一蹴されたのだ。その圧倒的な不条理と虚無感の前に、3人の心は完全にポッキリと折れ、目からは絶望の涙がボロボロと溢れ出していた。

 彼らはガタガタと震える手でオラクルベルを取り出し、血の気の引いた顔で、自ら降伏ボタンを押した。

 

ピピッ、と静まり返った闘技場に電子音が響く。画面には『QUALIFIED(決勝トーナメント進出決定)』の文字。

 

「……フハハ、アハハハハハハハッッッ!!! 最高だ、最高だよ蓮夜!!」

 

 観客席から、ハオの狂おしいほどの歓喜の大笑いが降ってきた。

 そして、そのハオの笑いに呼応するように、別の観客席に陣取っていたハオ組のシャーマンたちからも、一斉に下品で容赦のない嘲笑の嵐が巻き起こった。

 

「ギャハハハハハハ! 見ろよあのエックス・ローズの無様なツラ! 正義正義ってうるさいからバチが当たんだよ!」

「ハオ様を狙うとか言っといて、ただの蟻扱いされて泣いてやんの! ダサすぎ!」

「いい気味だわ! ざまぁみろホワイト野郎ども!」

 

 ハオ組の面々が狂喜乱舞して大爆笑する中、プライドを完璧にへし折られたエックス・ローズの3人は、涙を流したままガタガタと震え、ただその場に崩れ落ちていた。

 観客席の別の場所で、「御門くん、今の戦い方、それに魂の気配が……」と、ガタガタと震えながら戦慄する葉やアンナたちの視線を完全に無視し、俺は静かに闘技場を後にした。

 

(ハァ……、また目立っちまったが、まぁいい。それより今の感覚……)

 

 俺は歩きながら、自身の左手の指輪をそっとなぞる。

 戦闘の中で掴んだ、泰山府君祭を応用した『魂の結合術式』の確かな取っ掛かり。一般モブの仮面の下で、ハオの英知すらも自分のバグシステムへと完全に融合させつつある御門蓮夜。

 決勝トーナメントという真の魔境を前に、世界のすべての理不尽を塗り替えるバグ魂の咆哮が、パッチの村の暗闇で、いよいよ絶対的な形として完成しようとしていた。

 

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