バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回   作:カミト6622

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第29話:『十祭司のプラント突破と、救済の契機』

 

 

 ――グレートスピリッツが眠る、パッチの聖地・最深部。

 そこへ至る道には、大自然の属性を模した十の『プラント(階層)』が存在し、ハオを守るために命を賭したパッチ族の十祭司たちが立ち塞がっていた。

 

 通常のトーナメントを凍結し、最終章へと突入したシャーマンファイト。

 砂漠、砂丘、渓谷と、地獄のようなプラントを進むにつれ、十祭司たちの容赦のない大自然のオーバーソウルに、麻倉葉たち『ふんばり温泉チーム』や道蓮、木刀の竜たちはジリジリと巫力を削られ、満身創痍の防戦一方に追い込まれていた。

 

「クク……! 聖なる神の身体(グレートスピリッツ)へは一歩も通さん! ハオ様が王として目覚めるその時まで、ここで肉体ごと塵に帰れ!」

 

 次なるプラントで立ち塞がった十祭司が、空間を埋め尽くすほどの極大の属性大魔術を展開する。葉たちの限界を超えた防御壁がピキピキと悲鳴を上げ、まん太が「もうダメだぁ!」と絶望の悲鳴をあげた、その瞬間。

 

「――お前らの大自然のルール(五行)、俺の頭上から押し通せると思うなよ」

 

 凍りついた戦場の真ん中へ、俺――御門 蓮夜(みかど れんや)が静かに一歩を踏み出した。

 一般モブのカモフラージュを完全に脱ぎ捨てた、魂の器五十万オーバーの異次元のプレッシャー。

 

「甲縛式オーバー・ソール――『真・神鳴の神弓(しん・かむなりのしんきゅう)』」

 

 ドォォォォォンッッッ!!!

 

 闘技場を破壊したあの白銀と紅蓮の『巫力の甲冑』、そして左腕と一体化した【白銀の神弓】が具現化する。それを見た十祭司たちが、「カリムから聞いた怪物か……!」と一斉に顔を引きつらせた。

 

 彼らが放った大自然の極大熱線が俺へと迫る。だが、俺はハオから直接叩き込まれた陰陽術の極致――『五行相生(ごぎょうそうしょう)』の術式を展開した。

 十祭司たちの放つ自然エネルギーそのものを、俺の神弓が最大の『好物(エネルギー)』として強引に吸い込み、光の弦へとそのまま上乗せして超増幅させていく。

 

「五行反転。――墜ちろ」

 

パァァァァァンッッッ!!!

 

 音速を置き去りにした白銀の閃光――『真・陰陽神鳴の一矢』が放たれた。

 それは十祭司たちが命を賭して展開した絶対防御の壁を、文字通り紙切れ同然に正面から木端微塵に粉砕(バースト)した。衝撃波だけでプラントの強固な岩壁が次々と崩落していく。

 

「がはっ……ぁ……っ」

 巫力を根こそぎ全損させられた十祭司は、戦う意志を完璧にへし折られ、その場にドサリと崩れ落ちた。もちろん、出力はコントロールしてある。

 

「す、げえ……。十祭司のオーバーソウルを、たった一撃で無力化しちゃったよ……」

 後ろで見ていた竜が腰を抜かし、蓮が「これほどの差があるというのか……っ」と拳を握りしめる。アンナだけは「ふん、当然よ。私の往復ビンタの価値を見せなさい」と腕を組んでいたが、その瞳の奥には確かな安堵があった。

 

 だが、俺の本当の戦いは、十祭司を突破したその先にあった。

 崩落した十祭司の衣服の奥から、ハオが千年前、あるいは前世の歴史の中でパッチ族へ残したとされる、古い粘土板の断片(術式の残滓)がカラリと転がり落ちたのだ。

 

 それを手にとった瞬間、俺の魂の最深部に完成していた『泰山府君祭(たいざんふくんさい)』の累積構造が、共鳴するように激しく鳴動した。

 

(……これは、ハオの魂の『因縁のコア』……!?)

 

 脳内に流れ込んできたのは、千年間、裏切りと憎悪に塗れ、誰も信じられずに孤独の王として君臨し続けたハオの、魂の最深部にある『渇き』の記憶だった。

 泰山府君祭を完全完成させた今の俺のバグ魂だからこそ、その粘土板に刻まれた千年前のハオの魂の「システムの綻び」を完璧に解析することができた。

 

 ハオをただ力ずくで消し飛ばすのではない。

 グレートスピリッツと融合して神となった彼の魂を、この泰山府君祭の結合術式を使って内側から包み込み、千年の憎悪の因縁だけを綺麗に浄化して、彼の魂そのものを救い出す――『ハオ救済の鍵』。その絶対的な術式の取っ掛かりが、俺の白銀の指輪へとガチリと吸い込まれて固定化された。

 

《……蓮夜。手に入れましたね。未来の王を、あの絶望の因縁から解き放つための真の力を》

(ああ、サクヤ。一般モブの旅人として、ハオから千年の秘術を叩き込んでもらった恩返しだ。あの最悪なラスボスの絶望だけは、俺たちの神弓で、裏から完璧にぶち壊してハッピーエンドに変えてやるよ)

 

「行こう、葉。お前の双子の兄貴が、神の器のど真ん中で、俺たちの特等席を待ってるぞ」

「――うん! 行こう、御門くん!」

 

 葉はいつもの真っ直ぐな、そして確かな闘志を宿した笑顔で頷いた。

 オラクルベルの赤い警告灯が、激しく明滅し、グレートスピリッツの完全覚醒の刻限が迫っていることを告げている。

 ハオ救済の鍵をその手に握りしめた御門蓮夜の、世界の理とインフレを完全に置き去りにする【最終章・真の原作破壊】の決戦が、パッチの聖地の最深部で、いよいよ絶対的な幕を開けようとしていた。

 

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