バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回 作:カミト6622
第36話:『魂の強度と意志の力』
ロジャー海賊団の航海は、退屈とは無縁だ。
オーロ・ジャクソン号が『偉大なる航路(グランドライン)』を進む中、激しい砲撃音とともに、敵の海賊船が横付けしてきた。
「おいおい、景気がいいねェ! 野郎ども、派手に迎撃しろ!」
ロジャーの豪快な号令とともに、船員たちが一斉に敵船へと飛び移っていく。
普段なら見習いの俺やシャンクス、バギーは船の死守か雑用のはずだが、今日の俺には目的があった。
(マタムネ、サクヤ。……ちょっと実験(検証)といこうじゃねえか)
《ふむ、お主の言う『覇気』とやらの本質を見極めるのだな。……よかろう、いつでもいけるぞ、クロウ》
霊体として寄り添うマタムネが不敵に微笑む。
俺はどさくさに紛れて敵の戦闘員がひしめく甲板の片隅へと躍り出た。目の前には、巨大な大鉈を構えた大柄な海賊が立ち塞がっている。
「ガキが、チョロチョロしてんじゃねェ!」
大鉈が風を切り、俺の脳天目がけて振り下ろされる。
だが、遅い。1周目でカンストさせた俺の動体視力と戦闘経験からすれば、止まっているも同然だ。
俺は最低限の動きでそれをかわしながら、自身の魂の奥底――青く滾るバグ巫力を、あえて『ワンピースの世界の理』に沿わせるように変質させて押し出した。
(覇気ってのは、全世界の全人類に宿る『意志の力』……気配や威圧、疑わない強さ。それって要するに、魂そのものの強度だろ?)
シャーマンキングの世界における『巫力』もまた、魂の強度であり、精神力そのものだ。
本質が同じなら、相乗効果がないはずがない。
俺は一歩踏み込み、掌を敵の胸元にかざした。
ただの打突ではない。カンストした莫大な巫力(精神エネルギー)を、この世界の『武装色の覇気』のように凝縮し、さらに『陰陽術』の波形に乗せて叩き込む。
「――『魂威(こんい)』」
ドンッ!!!と、大気が爆ぜるような衝撃音が響いた。
触れただけの俺の掌から、目に見えない不可視の圧力――いや、圧倒的な『格の違い』を示す精神的衝撃が放たれたのだ。
「が、はっ……!?」
敵の巨漢は、肉体的なダメージだけでなく、まるで魂そのものを直接殴られたかのように目を剥き、一歩も動けずにその場に崩れ落ちた。白目を剥いて失神している。気絶だ。
(なるほどな……。武装色のように肉体を硬化させるだけじゃない。陰陽術の霊的干渉を乗せることで、敵の『精神(魂)』へ直接覇気を叩き込める。実体を持たない悪魔の実の能力者(ロギア)が相手でも、これなら魂ごと消し飛ばせるな)
「へぇ……。今の、ただの力任せじゃないね」
感心したような声に振り返ると、そこには数人の敵を片手で気絶させたレイリーが立っていた。
その鋭い眼光は、俺が今放った『異質な意志の力』をはっきりと捉えていた。
「驚いたな、クロウ。お前、今『覇気』を使ったな? それも、ただの武装色や見聞色とは違う……まるで魂そのものをぶつけてくるような歪な覇気だ」
「さあね。俺にとっては、これが『普通の意志の力』さ」
俺は不敵に笑い、懐の霊符を指先で弄んだ。
検証は成功だ。ハオ直伝の技術と、この世界の覇気は反発しない。むしろ、魂を極めた俺にとって、覇気というシステムは最高の玩具(チートパーツ)だった。
「がははは! 面白いものを見たなレイリー! おいクロウ、お前やっぱりタダの雑用じゃねェな!」
遠くからロジャーの豪快な笑い声が聞こえる。
伝説の海賊たちにその片鱗を見せつけながら、俺のバグ能力は、この世界に合わせた最適化(チューニング)を急速に進めていくのだった。