バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回   作:カミト6622

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第38話:『冥王の指南と魂の調律』

第38話:『冥王の指南と魂の調律』

 

 先日の小競り合いから数日後。俺はオーロ・ジャクソン号の甲板で、副船長であるシルバーズ・レイリーと対峙していた。

 周囲では、シャンクスやバギー、そして他の船員たちが物珍しそうに俺たちの様子を眺めている。

 

「おいおい、クロウの奴、レイリーさんに直々に稽古をつけてもらうのかよ?」

「生意気なんだよあいつ! 俺様だってまだ基礎体力作りなのに!」

 

 バギーの野次を遠くに聞きながら、俺は木刀を構え、全身の力を抜く。

 目の前に立つレイリーは、武器も持たず、ただ自然体で佇んでいるだけだ。だが、そこから放たれる目に見えない威圧感――『覇気』の密度は、常人のそれとは次元が違う。

 

「さて、クロウ。先日の戦いでお前が見せた『おかしな力』……。あれは悪魔の実の能力ではないと言ったな?」

「ああ。俺の生まれつきの『意志の力』さ。ちょっとばかし、魂の扱いが得意なだけだよ」

「魂、か。面白い表現をする。だがお前のそれは、覇気としてはあまりにも粗削りで歪だ。強すぎる意志の塊が、肉体の成長を追い越して暴走しかけている」

 

 さすがは冥王。俺の魂(巫力)が1周目でカンストしているせいで、子供の肉体という『器』に対してエネルギーが過剰であることを一目で見抜いていた。

 

《クク……。手厳しいな、クロウ。だが的外れではないぞ。お主のバグ巫力をこの世界の『覇気』として完全に最適化(チューニング)するには、あの男の言う通り、肉体との調和が必要だ》

 

 俺のすぐ隣で、霊体のマタムネがクスクスと笑う。もちろんレイリーには見えていないが、彼はふと俺の横の空間に視線を走らせ、すぐに俺へと視線を戻した。

 

「いくぞ、クロウ。まずは私に一太刀入れてみろ。ただし、小細工はなしだ」

「へっ、望むところだ!」

 

 俺は床を蹴り、一気に間合いを詰めた。

 踏み込みと同時に、魂の奥底から青いバグ巫力を引き出し、それをレイリーの言う『武装色の覇気』のイメージへと変換する。肉体が子供な分、スピードと攻撃の軽さを、魂の強度(精神エネルギー)で補う。

 

 一閃。レイリーの首元を狙った鋭い横薙ぎ。

 だが、レイリーは一歩も動かず、ただ右腕を少し掲げただけで俺の木刀を受け止めた。ガキン!と、木刀同士とは思えない、金属がぶつかり合うような硬い音が響く。

 

「くっ……!」

「見聞色の覇気で先を読み、武装色の覇気で肉体を硬化させる。お前がやっていることも本質は同じだ。だが、お前は『力(魂)』に頼りすぎている」

 

 レイリーの腕から、圧倒的な覇気の波動が押し寄せる。俺はたまらず後ろへ跳んで距離を取った。

 

「お前の意志の強さは、すでに大人の強者並み……いや、それ以上だ。だがな、クロウ。覇気とは肉体という器があって初めて十全にコントロールできる。呼吸を整えろ。空気を吸い、肉体の細胞一つ一つにその意志を行き渡らせるんだ」

 

 レイリーの言葉に、俺はハッとした。

 (空気にプロテインが入っている)と噂されるこの世界の特異な環境。ただ生きているだけで肉体が無限に強化されるこの理を、俺はまだ使いこなせていなかった。前世の陰陽術の感覚に囚われすぎて、肉体(器)のポテンシャルを無視していたのだ。

 

(そうか……。この世界の豊かな自然エネルギーを呼吸で取り込み、泰山府君の秘術で魂と肉体を完全に『同調』させる。そうすれば、過剰なバグ巫力も、この世界の綺麗な『覇気』として完璧に扱えるようになる……!)

 

 俺は深く息を吸い込んだ。肺腑に染み渡る、この世界特有の力強い空気。

 魂のバグを肉体が受け入れ、急速になじんでいく感覚が伝わってくる。

 

「ほう……。一瞬でコツを掴んだか。やはり恐ろしいガキだな」

 

 レイリーがニィと好戦的な笑みを浮かべた。

 

「よし、合格だ。基礎の方向性は見えた。あとは航海の中で、その身体を限界まで鍛え上げていけ」

「感謝するよ、レイリー副船長」

 

 俺は木刀を収め、自分の手のひらを見つめた。

 魂と肉体の最適化(チューニング)は始まったばかりだ。まだ見ぬ己の完成形に胸を躍らせながら、俺は流れる汗を拭うのだった。

 

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