バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回 作:カミト6622
第41話:『ヤクヤクの能力と船上会議』
俺が『ヤクヤクの実』を誤飲してから数時間が経過した。
オーロ・ジャクソン号の甲板には、ロジャー船長やレイリー副船長をはじめ、主要な船員たちが集まっていた。その中心で、俺はバギーとシャンクスと共に並んで立っている。
「がははは! おいおい、本当かシャンクス! クロウが昨日持ち帰った悪魔の実を、そんなマヌケな理由で食っちまったのか!」
ロジャーが腹を抱えて豪快に笑う。隣のレイリーは呆れたように溜息をつき、バギーとシャンクスは気まずそうに下を向いていた。
「すいません、ロジャー船長……俺たちが部屋で騒いだせいで」
「俺様は悪くねェ! シャンクスが肉を離さねェからだ!」
「もういい、二人とも。……それで、クロウ。体調はどうだ? 悪魔の実を食ったとなれば、もう海には泳げんぞ」
レイリーの気遣わしげな視線に、俺は肩をすくめて応えた。
「ああ、体は何ともない。ただ、さっきからちょっと困ったことが起きててさ……」
俺がそう呟いた瞬間、近くにいた船員の持っていたモップの柄が唐突にバキリと真っ二つに折れた。さらに、風もないのに上から干してあった洗濯物がヒラヒラと落ちてきて、ロジャーの顔面にジャストミートする。
「ぶふっ!? なんだぁ?」
「これだよ。俺が食ったのは、超人系(パラミシア)の『ヤクヤクの実』。周囲に不幸や不運をまき散らす、厄災人間だ」
俺はため息混じりに、この能力の性質を船の大人たちに説明した。
「今はまだ食ったばかりで制御が効かない。半径数メートル以内の人間に、自動的に小さくて細かい不運がランダムで発動しちまうんだ。さっきのモップや洗濯物みたいにな」
その説明を聞いた船員たちが、一瞬だけザワついた。海賊にとって不運の呪いなど、航海に直結する一番不気味な能力だからだ。
だが、当のロジャーは顔から洗濯物を剥ぎ取ると、さらにニカッと笑った。
「がははは! 面白れェ能力じゃねェか! 不幸をまき散らす人間か、お前らしいぜクロウ!」
「笑い事じゃないぞ、ロジャー。航海中に重要な器具が壊れたり、操舵を誤ったりしたら大ごとだ」
レイリーが腕を組んで冷静に窘める。その視線が俺へと戻った。
「クロウ。お前自身、この自動発動を止める術はないのか?」
「……前世、じゃなくて、俺の『感覚』としては、修行次第でなんとかなると思ってる。この自動で垂れ流れてるエネルギーを内側に閉じ込めて、触れた相手や、任意のタイミングだけで発動できるように変える。それが当面の目標だ」
ハオ直伝の陰陽術によるエネルギー制御のノウハウがあれば、悪魔の実の波形を抑え込むこと自体は不可能じゃない。時間はかかるが、必ず自分の意志でオン・オフを切り替えられるようにしてみせる。
《ふむ……。呪詛の力を内包し、必要な時にだけ解放する『五行の調律』だな。お主の得意分野ではないか、クロウ》
俺の肩の後ろでマタムネが煙管をくわえながらクスクスと笑う。もちろん大人たちには見えていないが、俺が「やってやるよ」と心の中で応じる。
「よし、決まりだ!」
ロジャーがパンと手を叩いた。
「クロウ! 今日からお前は、その不運の力を完全にコントロールする修行だ! レイリー、こいつの特訓に付き合ってやってくれ!」
「ああ、言われずともそのつもりだ。放置しておいて、船が呪われるのは勘弁だからな」
レイリーがニヤリと不敵に笑う。
こうして、誤飲から始まった俺の『ヤクヤクの実』の能力生活。ロジャー海賊団という最強の環境の中で、俺は自動発動の「厄災」を、完璧な「暗器」へと変えるための過酷な修行へと足を踏み出すのだった。