バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回   作:カミト6622

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第40話:『シャンクスのやらかしと運命の誤飲』

第40話:『シャンクスのやらかしと運命の誤飲』

 

 『ヤクヤクの実』を見つけてから一夜が明けた。

 俺はあの不気味な果実をどう扱うべきか、部屋の片隅でじっくりと考えあぐねていた。前世の陰陽術による解析では、俺のバグ魂との親和性は極めて高い。だが、海の呪いを受けるリスクを考えると、もう少し検証が必要だった。

 

 ――しかし、運命というやつは、往々にして予測不可能な方向から突っ込んでくる。

 

「おーい! クロウ、ここにいたか!」

 

 ドタドタと騒がしい足音とともに、俺の部屋の扉が勢いよく開いた。

 入ってきたのは、両手に美味そうな骨付き肉の皿を抱えたシャンクスだ。そのすぐ後ろから、真っ赤な鼻を膨らませたバギーが怒鳴りながら追いかけてくる。

 

「待ちやがれシャンクス! その肉は俺が先に目をつけといたんだぞ!」

「ははは! 早い者勝ちだって、バギー! お、クロウ、お前も食うだろ?」

 

 狭い部屋の中で、二人の見習いがいつものようにドタバタと追いかけっこを始める。

 

(おい、狭い部屋で暴れるんじゃねえ。……というか、机の上の宝箱に近づくな!)

 

 嫌な予感がして俺が立ち上がった、まさにその瞬間だった。

 バギーがシャンクスの背中に飛びかかり、シャンクスが「おっとっと!」と大きく体勢を崩す。その弾みで、シャンクスの肘が机の上に置かれていたあの古い宝箱を激しく弾き飛ばした。

 

 ガシャァン!!

 

 衝撃で宝箱の蓋が開き、中からあの禍々しい紫色をした『ヤクヤクの実』が宙を舞う。

 

「あ、やべっ!」

「おい、なんだその不気味な果物は!?」

 

 シャンクスとバギーの視線が、放物線を描く果実に注がれる。

 そして次の瞬間、落ちてくる果実の真下にいたのは――驚いて口を開けていた、俺だった。

 

 スポッ。

 

 信じられないことに、奇妙な形の果実は、俺の開いた口の中へと完璧なコントロールでスッポリと収まってしまった。

 

(ぶっ――!?)

 

 吐き出そうとしたが、後ろからバギーがさらに突っ込んできて、俺の背中にドスンと衝突する。その衝撃で、喉の奥に引っかかっていた果実が、ゴキュリ、と音を立てて完全に胃の中へと落ちていった。

 

「「あ……」」

 

 シャンクスとバギーが同時に凍りつく。

 俺は喉を押さえ、猛烈な不快感に襲われていた。

 

(……マ、マジで、糞まずい……っ!!!)

 

 反吐が出るほどの腐った生ゴミのような味が口いっぱいに広がり、涙が出そうになる。だが、それ以上の異変が、すぐに俺の身体の中で起き始めた。

 

《おいおい、クロウ! 大丈夫か!? 魂の波形が急激に変質していくぞ!》

 

 霊体のマタムネが血相を変えて叫ぶ。

 胃に落ちた悪魔の実の『呪い(システム)』が、俺の魂の奥底にある『バグ巫力』と接触した瞬間、激しく反応したのだ。

 

(くそっ……! 慌てるな、いつもの陰陽術(コントロール)でいける。精神を集中させて、この流れを制御する……!)

 

 ハオ直伝の陰陽道の技術を用いて、俺は身体に駆け巡る悪魔の実のエネルギーを宥め、自分のバグ巫力に綺麗に噛み合わせていく。海の呪い(カナヅチ化)は世界のルール上防げなかったが、能力の主導権はこれで完全に俺のものだ。

 

「お、おいクロウ……大丈夫か? 変な色した果物、丸呑みしちまったけど……」

「悪かったよ、俺がふざけてたせいで……」

 

 青ざめるシャンクスとバギーが、恐る恐る俺の顔を覗き込んでくる。

 俺は大きく一つ息を吐き、喉の不快感を堪えながら立ち上がった。

 

「……気にすんな。それより、お前ら、ちょっとそこから離れた方がいいぞ」

「え?」

 

 その瞬間、自動発動(初期状態)の『厄災』が産声をあげた。

 シャンクスが慌てて一歩下がった拍子に、何もない平らな床で思い切り足が滑り、派手にひっくり返る。

 

「痛っ!? なんだこれ、床がめちゃくちゃ滑る……!」

 

 さらに、バギーが持っていた肉の皿の底が、謎の金属疲労を起こしたかのように突然パカリと真っ二つに割れ、肉が床に転がった。

 

「ギャーッ! 俺の肉がァ!? ……っていうか、なんか急に部屋の空気が不吉になってねェか!?」

 

 怯える二人を見ながら、俺は自分の手のひらを見つめ、ニィと不敵に口元を歪めた。

 周囲に微小な不幸を自動でまき散らす、厄災人間。

 

(へっ……。とんだやらかしで食っちまったが、この能力、磨けばとんでもねえ『凶器』になるじゃねえか)

 

 ヤクヤクの実の能力を手に入れた俺の2周目の周回は、ここからさらに混沌の渦へと巻き進んでいくのだった。

 

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