バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回 作:カミト6622
第46話:『風を待つ甲板と自由の価値』
海軍の軍艦が同士討ちで勝手に自滅してくれたおかげで、オーロ・ジャクソン号は無傷で包囲網を抜け出すことができた。
追っ手の影が水平線の彼方へと完全に消え去った頃、甲板にはいつもの緩やかで活気ある時間が戻っていた。
「いやぁ、それにしてもさっきのは傑作だったな! まさか海軍の奴らが勝手にぶつかり合うなんてさ!」
ロープを巻き直しながら、シャンクスが麦わら帽子を直して楽しそうに笑う。
「ケッ、運が良かっただけだろ! 俺様が睨みを利かせてやったから、海兵の奴らがビビって舵を回し損ねたに決まってるぜ!」
「はいはい、バギーの睨みのおかげだな。そりゃあ大層な威圧感だったよ」
「あァ!? クロウ、お前その目はなんだ! 信じてねェな!?」
いつものように騒がしい二人を適当にいなしながら、俺は心地よい潮風を全身に浴びていた。
服の奥にしまい込んだロザリオが、ヤクヤクの実の不運オーラを完全にシャットアウトしてくれている。だからこそ、俺はこうして普通の海賊見習いとして、気ままに航海の一幕を楽しめているのだ。
《おやおや、ずいぶんと満足そうな顔をしているな、クロウ》
実体のないマタムネが、俺の隣でマストに寄りかかりながら煙管をくわえる。
(まあな。1周目は色々と背負うものが多すぎた。だがこの2周目は、誰に指図されるわけでもない。この伝説の船に乗って、世界の果てをこの目で見る……。これ以上ない自由だろ?)
《なるほど。最強を誇示するでもなく、モブとして縮こまるでもない。己の力をただ『自由』のための盾とするか。お主らしい、実によいスタンスだ》
マタムネがクスクスと嬉しそうに笑う。
そう、俺は世界を支配したいわけでも、最強の海賊団を作りたいわけでもない。ただ、誰にも邪魔されずに、この不確かな世界を気ままに旅したいだけだ。そのために、ハオ直伝の陰陽術も、このヤクヤクの不運も、すべては自分の自由を守るための便利な道具(ツール)として使わせてもらう。
「おーい、見習いども! 手が空いてるなら、ちょっと厨房のジャガイモの皮剥きを手伝ってくれ!」
船医のクロッカスが、船内から顔を出して声をかけてきた。
「はーい! すぐ行きます!」
「ちぇっ、また雑用かよ……。おい、クロウ、どっちが早く剥き終わるか勝負だ!」
「いいよ。負けた方が今日の夜の見回り交代な」
不敵に笑うバギーを追いかけ、俺たち3人は厨房へと向かう。
世界の理を裏から少しだけバグらせながら、俺の自由で気ままな2周目の周回は、最高の仲間たちと共にどこまでも続いていく。