バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回 作:カミト6622
第64話:『世界のすべてを繋ぐ航海と、驚愕の道標』
白ひげ海賊団からおでんさん、トキさん、そして幼いモモの助や日和たちを乗せ、密航してきたイヌアラシやネコマムシまでを乗せて出航したオーロ・ジャクソン号。
賑やかになった甲板のテーブルで、ロジャー船長は一枚の拓本を広げながら、ニカッと豪快に笑った。
「わはははは! これがビッグ・マムのところから奪い取った『赤い石』の写しだ! 世界に4つあるというこの『ロード・ポーネグリフ』の示す4つの地点を結んだその中心に、最後の島がある!」
すでに旅の目的や、光月家が古代文字を読み解けることは全員が知っている。
だからこそ、ロジャー船長は世界政府の目を盗んで集めてきた情報を、惜しげもなく新しい仲間に明かしていた。
「あとの3つについて、俺には多少の心当たりがあるんだがな」
そう語る船長に、机の上の図面を覗き込んでいたおでんさんが、何でもないことのように声を弾ませた。
「何だロジャー、だったら話は早い! その石のうちの1つは、我が故郷『ワノ国』にあるぞ!」
「……何ィ!? ワノ国にあんのか!!?」
ロジャー船長がガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、目を丸くして驚愕の声を上げる。
だが、驚く船長に追い打ちをかけるように、イヌアラシとネコマムシが、いとも簡単に声を繋げた。
「何を驚いてるんだ、ロジャー。我らの故郷『ゾウ』にも、もう1つの赤い石があるぞ」
「そうがぜよ! ゆガラらの探すその石なら、もこもこの『くじらの樹』の中に、大昔からずっと眠っちゅうがぜよ!」
「ゾウにもだとォ!!?」
まさか自分たちが命がけで探し求めていた最果てへの鍵が、今まさに同じ船に乗っているおでんやイヌアラシ、ネコマムシたちの故郷に眠っているとは夢にも思わなかったのだろう。
ロジャー船長だけでなく、隣で聞いていた副船長のレイリーさんまでもが、信じられないものを見るような顔で完全に絶句していた。
大人たちのそんな熱い会話から少し離れたマストの陰で、俺――クロウは、手首のロザリオを軽く撫でながら彼らを見つめていた。
自分が『シャーマンキング』の世界から力と記憶を引き継いで周回している『転生者』だということは、この船の誰にも喋っちゃいない。
シャンクスのやらかしで誤飲した『ヤクヤクの実』の呪いを、魂の巫力で「調律(サポート)」に変質させ、裏で船やみんなの限界負荷(厄)を吸い取り続けていることも、俺だけの秘密だ。
俺のすぐ傍らに霊体として寄り添う持霊『サクヤ』が、俺にだけ聞こえる念話で静かに呟いた。
《クロウ様……。ついに世界の真実の扉が開こうとしていますね。ですが、赤い石の導く先には、これまでにない巨大な運命のうねりを感じます》
(分かっている。ロード・ポーネグリフが揃うということは、ロジャー海賊団の旅が、本当に終わりの一歩手前まで来ている証拠だからな)
「よし、野郎ども! 針路決定だ! 幻の島『ゾウ』、そして『ワノ国』へ向かうぞ! 全てのピースを集めに行くぞ!」
『おう!』
ロジャー船長の豪快な号令に皆が応じ、オーロ・ジャクソン号の針路が力強く定められていく。
「おい、クロウ! 何ボーッとしてんだよ、次の島に向けて帆の調整だ!」
シャンクスが麦わら帽子を直しながら、元気よく声をかけてくる。
「へっ、次の島には一体どれだけの宝が眠ってんのかねェ!」
バギーが早くもまだ見ぬ最果ての財宝に目をギラつかせながら、シャンクスの後ろから割り込んできた。
「はいはい、今行くよ。バギー、宝の前にまずは自分の仕事をこなせよ」
苦笑しながら二人の見習い仲間に応じ、俺はマストのロープへと手をかける。
ロジャー船長が自分で決めた、世界の真実へと繋がる最後の針路。
オーロ・ジャクソン号は、千年以上生き続ける巨大な象の背の上にある国――『ゾウ』へ向けて、全速力で海を切り裂いて進み始めた。