バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回   作:カミト6622

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第78話:『百鬼夜行の進撃と、海軍本部への戦慄』

第78話:『百鬼夜行の進撃と、海軍本部への戦慄』

 

巨大な黒いガレオン船――『レヴナント号』が、グランドラインの荒波を静かに切り裂いて進む。

甲板で一糸乱れぬ動きを見せているのは、肉体を持たない白骨の船員や、藍色の眼光を宿した怨霊の将兵たちだ。

 

他人に不運を撒き散らす『ヤクヤクの実』の呪いは、彼らのような「最初から死んでいる存在」には一切通用しない。それどころか、俺が魂の巫力で巡らせる調律の波動を受け、彼らの霊体は以前よりも強固に、そして冷徹な兵隊として完璧に機能していた。

 

(……はは。生きた仲間は作れねェが、これなら命令一つで一糸乱れぬ操船ができる。一匹狼の航海にしちゃあ、上等すぎる大艦隊だろ)

 

手首のロザリオを軽く弄びながら、俺は新しく手に入れた船長席の椅子に深く腰掛けていた。

 

《クロウ様、前方に不調和な叫びを上げる、下俗な魂の集団を感知いたしました。……どうやら、新時代(大海賊時代)の波に乗った、少しばかり血気の盛んな海賊たちのようです》

左手の銀の指輪から、サクヤの凛とした念話が届く。

 

俺が船長室の窓から前方を見据えると、そこにはドクロの旗を掲げた3隻の大型海賊船が、こちらの黒い船体を包囲するようにして進路を塞いできていた。

「鉄の牙」の異名を持つ、懸賞金3千万ベリーの新生海賊団。新時代が始まってから瞬く間に名を上げた、この海域ではちょっとした大物だ。

 

「おいおい! なんだあのボロ船はァ! 幽霊船のフリか!? 面白ェ、野郎ども、大砲を撃ち込んで沈めてやれ!」

拡声器を通した敵船長の汚い声が響き、同時に、無数の砲弾がレヴナント号に向けて一斉に放たれた。

 

――ドゴォォォォォン!!!

 

激しい着弾音が響き、船体にいくつかの直撃が走る。だが、俺は微動だにせず、ただ不敵に口元を歪めた。

 

「野郎ども、お前たちの本来の戦い方を見せてやれ。……調律開始」

 

俺がロザリオに手を当てて呟いた瞬間、レヴナント号の全体に、ヤクヤクの実の反転波動が巡る。

船体の木材にかかった『破損の厄』が瞬時に吸い上げられ、直撃したはずの砲穴が、生き物のように勝手に塞がって元通りに修復されていく。これこそが、呪いの船を従えた俺の調律の真骨頂だ。

 

「な、何だと……!? 大砲が効いてねェ!? 傷が消えていくぞ!?」

敵の海賊たちが顔色を変えて狼狽える。

 

「サクヤ、マタムネ。合図を出せ」

 

《はい、クロウ様》

《ふふ、それでは、新時代の若者たちに、少しばかり古い怪談をお見せしましょうかねぇ》

 

短刀の奥からマタムネが静かに現世へ顕現し、俺の巫力を注ぎ込まれた短刀が、あの巨大な光の巨刃――『鬼殺し』の大剣へと姿を変える。

俺がその大剣を虚空に向けて一閃すると、それが突撃の号令となった。

 

――オォォォォォォォっ!!!

 

レヴナント号から立ち上る漆黒の霧が、生き物のように敵の3隻の船へと爆発的に広がっていく。

そして、その霧の中から、武器を手にした白骨の兵隊や怨霊の群れが、咆哮を上げながら敵陣へと一斉に飛び移っていった。

 

「ひ、ひぃぃ!? 本物の幽霊だァァ!!」

「斬っても手応えがねェ! クソ、何なんだこいつらは!!」

 

肉体を持たない怨霊たちに、普通の刀や銃弾など一切通用しない。一方、俺のヤクヤクの力を分け与えられた怨霊たちの刃は、敵を斬るたびに瞬間的な『不運の厄』を相手の肉体へと叩き込んでいく。

 

「うわあああ!? 急に刀の柄が滑って自分の足を斬った!!」

「大砲に火をつけようとしたら火薬が暴発しやがった!!」

 

甲板は瞬く間に、俺たちの放った不運に囚われ、自滅していく海賊たちの地獄絵図へと変わっていった。

戦いと呼ぶのもおこがましい、文字通りの一方的な蹂躙。

ほんの数分の出来事で、懸賞金3千万の海賊団は、一糸乱れぬ百鬼夜行の軍勢の前に完全なる壊滅を迎えた。

 

***

 

――数日後。海軍本部、情報管理室。

 

世界政府の上層部、および海軍の将校たちの元に、東の海(イーストブルー)からグランドラインへと突入した「ある未確認の脅威」に関する緊急報告書が届けられていた。

 

「……何だ、この報告は。グランドライン前半の海域で、数々の新生海賊団が、跡形もなく壊滅しているだと?」

長い机を囲む会議の席で、険しい表情で書類を睨みつけるのは海軍本部の少将だ。

 

「は、はい……! 生き残った海賊たちの証言によれば、襲撃してきたのは、大砲の直撃すら瞬時に修復する巨大な漆黒のガレオン船。そして、それを率いているのは、生きた人間ではなく、無数の『不死の怨霊の軍勢』であると……!」

 

報告を行う情報将校の額からは、冷や汗がだらだらと流れ落ちている。

 

「馬鹿な、幽霊船の怪談話など海軍が本気にすると思うか! 現実的な能力、あるいは組織の仕業と考えろ!」

 

「それが……その船の目撃証言のなかに、かつて『海賊王』ゴール・D・ロジャーの船に乗っていた、例の“見習いのガキ”によく似た少年の姿があったという報告が入っています! 手首にロザリオを巻き、藍色の光を放つ短刀を携えた少年が、その怨霊たちを完全に統率していた、と……!」

 

その言葉に、会議室の中の空気が一気に凍りついた。

 

海賊王の遺した不穏な血脈、そして見習いたちの動向は、海軍本部にとっても最大の警戒対象だ。

赤髪のシャンクスや、バギーといった見習いたちが自身の海賊団を立ち上げようと動いているなかで、まさか最も目立たなかったはずのもう一人の見習い――クロウが、生きた仲間ではなく『死者の軍勢と呪いの船』を従えて、新時代へ真っ先に牙を剥き始めたのだ。

 

「……海賊王の船の奴らは、どいつもこいつも狂っているな。その少年の手配書を大至急作成しろ。生かしておけば、新時代のパワーバランスが根底から覆りかねんぞ……!」

 

海軍本部の奥深くで、俺たちの存在に対する本当の『戦慄』が、静かに形を成し始めていた。

 

(にしし、海軍の連中もそろそろ俺たちの足音に気づいた頃かね)

 

俺はレヴナント号の船首に立ち、サクヤとマタムネと共に、夕日に染まるグランドラインの海原を不敵に見据えていた。

仲間はいらない。呪いと怨霊を従えた俺の、本当の意味での『自由の航海』は、世界のすべてを巻き込む百鬼夜行となって、さらに激しく加速していく。

 

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