バグ魂(ソウル)の不確かすぎる多世界周回 作:カミト6622
第81話:『螺旋の城からの出陣と、曰く付きの刀の噂』
世界中へ回った俺の初手3800万ベリーの手配書。海軍本部が戦慄し、新世界の白ひげ海賊団の怪物どもが俺の足音に笑みを浮かべている頃――。
俺たちの絶対の牙城、天へとねじれ昇る和風魔城『黒曜螺旋城』には、静謐で濃厚な霊力が満ちていた。
島全体の龍穴から湧き出る死気と、俺の陰陽術による空間歪曲が完璧に噛み合ったこの城は、レヴナント号の怨霊たちを全盛期の状態で繋ぎ止める最高の繭(まゆ)として機能している。
最上階の畳敷きの座敷で、俺は次の旅の針路を決めるべく、集めた情報に目を落としていた。
《クロウ様、この黒曜螺旋城に満ちる地脈の力で、私たちの魂の結合は完全に馴染みました。サクヤの銀の指輪、そしてマタムネ様の呪われた短刀に続く……次なる『依代(媒介)』へ向かう準備は万全です》
薬指の弓の指輪から、サクヤの凛とした念話が届く。
「ああ。これからは3800万の賞金首として海軍や賞金稼ぎに追われる身だ。一匹狼のままで新時代の化け物どもを圧倒するには、さらなる呪いの武具が必要だからな」
《ふふ、曰く付きの器探しですか。私を現世に定着させてくれたあの短刀のように、人の強すぎる執念が染み付いた武具は、このグランドラインにもまだまだ眠っているはずですよ》
短刀の奥からマタムネがキセルを燻らせるような穏やかな口調で微笑む。
現代日本の原作知識を持つ俺の頭の中に、グランドライン前半の海域で手に入る「最高峰の曰く付きの刀」の存在が、明確なピースとして浮かび上がっていた。
(名刀であり、なおかつ持ち主を次々と不運な死に追いやる最悪の妖刀……。ローグタウンでゾロが手に入れる前の、あの『三代鬼徹(さんだいきてつ)』か。あるいは、かつてグランドラインのどこかで猛威を振るい、歴史の闇に埋もれた別の“呪われた銘”か)
原作のタイムラインを大きく狂わせない範囲で、俺たちの『百鬼夜行の力』を100%引き出せる特級の媒介。
実は、ウイスキーピークに立ち寄る前の幽霊船の探索、そして怪しげな情報屋の島で手に入れていた古い航海日誌の残滓の中に、ある不気味な噂が記されていた。
――『持ち主の生気を吸い尽くし、戦場で敵味方の区別なく肉体を裂く、錆びついた黒き妖刀』。
それは現在、この近海に浮かぶ「霧に隠れた古戦場の墓場」と呼ばれる島に、数百年もの間、主(ぬし)を失ったまま放置されているという。
「決まりだな。マタムネ、次はその妖刀をあんたの第二の媒介、あるいは俺たちの新たな切り札の依代として調律しにいくぞ」
《おやおや、またしても私の腕が鳴るような、業の深い刃ですねぇ。ドンと従えて差し上げましょう》
マタムネが静かに笑う。
「野郎ども! 牙城の守りを固めろ! レヴナント号、出陣だァ!!」
俺の号令一発で、天守閣の周りに集まっていた藍色の眼光を宿す怨霊の将兵たち、そして白骨の船員たちが一糸乱れぬ手際で動き出す。
幻霧の結界に包まれた黒曜螺旋城の天然の入江から、漆黒の巨大ガレオン船が静かに滑り出した。
海軍本部の最新の航海術も、世界政府の監視の目も、俺たちの拠点には最初から届かない。
その絶対の安全地帯を背に、俺は再び自分だけの自由な航路へと漕ぎ出した。
悪魔の実のせいで生きた仲間は作れない。だが、俺にはサクヤがいて、マタムネがいて、死なない軍勢と和風の魔城がある。
“百鬼夜行”の悪名が世界を震撼させるなか、呪いを力に変える一匹狼の航海は、次なる最強の媒介を求めて、グランドラインの荒波へと突き進んでいく。