親愛なる彼女を救いたい 作:MJより普通にグウェンが好き
親愛なる隣人杯たる面白いタグを拝見しました。
この小説の投稿開始が9/9なので付けられはしないんですがね。
今回少し長めです。
多分次回も長めです。
起承転結で締める予定でしたが、話を膨らませ過ぎて次回で終わりません。+1話になりそうです。
それからの話をしよう。
俺はヒーロー活動を辞めた。
日和ったから?罪悪感から辞めた?
…どれも違う。
あれほど溢れんばかりに身体に満ち満ちていたスーパーパワーがある日突然、急に萎んだように出なくなった。
暫くの間は首を寝違えたみたいな違和感が付いて周ったが、次第に気にならなくなってしまった。
……ピーターの葬式には勿論出た。
まぁクラスメイトは全員出てたから俺も、特に出る事に違和感はなかったとは思う。
メイおばさんやベンおじさんに何て声を掛けたら良かったのか、俺にはわからない。
遠目で見るだけしかできなかった。
泣こうと思ったけど、親密だったのはザンダーとしてで、俺自身は特にピーターと親しかった訳じゃない。
精々お互い、自分と似たようなポジションだなみたいな奇妙な仲間意識はあったかもしれない。…ピーターは俺の正体を知らなかっただけで、俺は仲良かったつもりだった不思議と涙も出なかった。…やっぱり冷たいのかな、俺。
でも、二人は違う。
ハリーとグウェンは見てられないくらい辛そうだった。
ハリーは特に思い詰めた顔をしてた。元々ピーターと仲良かったからね。そのショックは計り知れないだろう。ハリーといえば、ピーターの生前の頃からそうだったが、前から少し尖った耳と鼻で少し宇宙人っぽいって言われてたのが、今じゃ親友の死のショックで心労もあるのだろう。日に日にやつれていって今にも倒れそうなほど青白くなっている。まるで小鬼の様だ。
周りの奴らは陰で『ゴブリン』と呼んでいる。一回本人に聞かれてそれこそ鬼の様な形相で睨まれてて身が竦んでいた。……俺の。言ってた奴らは最後まで気付いていなかったけど、マジで命知らず過ぎるし不謹慎過ぎるとは思う。
…てかこれもしかしてグリーンゴブリン化フラグか?
嫌なんだけどあのハリーと戦うの、なんか怖いし。
声も石田彰みたいな声するし。
スパイダーウーマンに頑張ってもらうか。
グウェンは今にも泣きそうなのに涙を溢してはならないと言った風にずっと俯いていた。
それから彼女は変わった。
アレほど自慢にしていたロングの髪をショートにして、なんとある日突然!MJのバントに加わった。ポジションはまさかのドラム!
それまでの品行方正の優秀なキャラのイメージをぶち壊すまさかの行動に俺含め、クラスメイトは衝撃を受けていたが、概ね受け入れて行った。
別にそこから非行に走った訳でも、人格が変わって攻撃的になった訳でもない。強いて言うならば欠席はしないけど遅刻が増えたり、前から忙しそうだったが、今は特に輪を掛けて忙しそうになっている。バンドの練習の無い日はとっとと帰ってしまう為、グウェンの友人は寂しそうにしている。
けど、僕はグウェンしか見てないから気付いている。
……皆はボーカルのMJばっかり見てるから、ドラム叩いている時のグウェンの様子なんてちっとも気にする事などないだろう。
ドラムを叩いている時のグウェンの表情は、とても鬼気迫る表情なのだ。
誰にも言えない激情を、ぶつけられない物を目の前の物に全て叩きつける、みたいな、そんな感じ。
「はぁい、レックス。何か私に用事?」
「グ、グウェン⁉︎」
放課後。
そんな風にグウェンが所属しているガールズバンド「メリー・ジェーンズ」の練習風景を野次馬達とボーッと見ていたら、まさか本人が直接来るなんて。
突然の出来事にテンパる僕を他所に、グウェンはくすりと笑う。
「見ない間に、少し変わった?何か背も伸びたみたいだし、それになんていうか……逞しくなった?」
「そ、そうかな?グ、グウェンこそ…髪似合ってるよ」
「ホント?ありがとう」
まさかグウェンが俺に話しかけてくれるなんて!
今日はなんて良い日なんだ!
よし!
この充足感のまま、この場を去ろう!
俺みたいなナードが、これ以上彼女の時間を奪うなんて許されない!
「じゃ、じゃあグウェン。練習頑張って「ちょっと待って」え?」
まさかの俺氏、呼び止められる。
「前から思ってたけど、レックスって私の事嫌いなの?」
「え?」
俺が?そんな事、天地がひっくり返っても有り得ないのに。
「だって私と話してると、すぐ何処か向くし何処かに行こうとするじゃない?だから嫌われてるのかなーって」
「いや、そ、そんな事ないよ。ただ、君と一緒にいるのが、あまりにも恐れ多いって言うか荷が重いというか…え〜っとその…兎に角、なんかそんな感じなのだよ!」
そんなテンパってる俺の反応にグウェンはキョトンとした顔をした後。
「…プッ、フッフフフフ‼︎アッハッハッハ‼︎」
まさかの大爆笑。
「え、何?なにか変な事言った?」
「『なのだよ』って何、何なのその急なキャラ!アッハッハッハ‼︎…フフ、おかしい!まだ笑える!」
何かがツボに入ったらしく、まだ笑っていた。
このままにしておくと、人の注目を浴びて悪目立ちしてしまう。
彼女は良くても、俺はダメだ…!
どうにかしないと…!
「グ、グウェン!ほら、水!飲んで落ち着いて!まだ開けてないから」
「ンフっ…ありがとう」
とりあえず丁度持っていた水を渡して、彼女に飲む様に促す。
にしても、美人は何をするにしても絵になるというのは正にこの事を言うのだろう。
水を飲む動作一つとってもまるで、絵画の様だ。
美しい。これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう。
…少し俺の中に悪戯心が沸いてきた。
「なんかそんな感じなのだよ」ボソッ
「ブハッ!」
「ちょっとグウェン⁉︎」
「ごめんレックス!大丈夫⁉︎」
思いっきり水吹き出して来た。
これに関しては笑わせた俺も悪いな。
美人に水を吹きかけられるとか…我々の業界ではご褒美です!
「あー良いよ良いよ、外で乾かしてくるし」
そう言いながらある程度タオルで顔等を拭き、その場を離れようとする。
すると、その隣にグウェンが追随する。
「…なんで着いてくるの?」
「その…ちょっと話があるの。外で服が乾くまで暇なら私とお話ししない?」
神様、今日は僕の人生最高の日です!
今日死んでも良い!
●
……神様、今日は僕の人生で最低の日です。
「…プッ、ククッ」
「笑いたきゃ笑ってくれ…」
誰もいない場所で話そう、という事で屋上に移動する事になったのは良かった。そこはまでは良い。
けど移動する最中にカップルの喧嘩に巻き込まれて俺がまた水を被ったり、それでバランスを崩して足元に何故かあったバナナに滑って転んで、ゴミ箱に頭から突っ込む羽目になるとは。
一部始終を見ていたグウェンは大爆笑。
移動中も俺の顔を見たら笑っちゃうからか、まともに顔を見て話してもくれなかった。
スーパーパワーがあれば今頃は、こんな醜態を彼女の前で晒す事なんて無かったのに。
「ゴメンゴメン…。そんな拗ねないでよ」
「拗ねちゃいないやい」
ただ恥ずかしがってただけです。
暫くひとしきり笑ったグウェンは、落ち着いたのか先ほどまだと打って変わって話し始めた。
「レックスはさ、スパイダーウーマンについてどう思う?」
どう思う、か。
この話題は今とてもデリケートだ。
彼女が直接話す分には構わないかもしれないが、他の人からしたらとてもじゃないけど触れ辛い。
あれだけ街中でスパイダーウーマンを持ち上げておいて、いざピーターを殺したとなったら街の人々は一斉に手のひらを返したように批判し始めた。
まぁ特に酷いのは市長だね。言わずもがなJが三つのちょび髭がトレードマークのあの方。…俺の記憶が確かなら、新聞の社長じゃなかった?
『ピーター・パーカーを殺したのはスパイダーウーマンだ!』と以前よりも批判が強くなった。
俺はピーターを殺された、と思った。
けど冷静に考えてみたが、彼女がピーターを殺す理由が考えられない。
ただ、助けられなかっただけとかなら、分かるが新聞を読んでいるとそうでもない様子なんだ。
彼の遺体には、無数の打撲痕があった様だ。
それが直接的な死因には繋がってない。
けど考えられるのは、スパイダーウーマンがピーターに何かしたのは事実だ。
だから引っ掛かる。
「俺は、少し複雑だ……」
「そう?何で?」
「あれだけスパイダーウーマンが好きだったのに、アイツの死因はスパイダーウーマンだ。そりゃそうでしょ」
「……え?」
グウェンは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
なんか変な事言ったか?
「どうした?」
「ピーターがスパイダーウーマンを……?ねぇ、それって誰から聞いた?」
……これはどうやら、失言だったらしい。
付き合いの長いグウェンですら知らない事を、ほぼピーターと話した事がない男の口から漏れて来たんだ。
とりあえず誤魔化そう。
「いや、前に街中で見かけた事があってね。そん時に話しかけた時にチラッと聞いただけだよ」
「………そう」
先程までと打って変わって急に静かになったグウェンの様子が気になるが、俺もそれどころではない。
何故なら。
(距離が!近い!)
ずっと気にしないように距離を置いて話していたんだが、屋上の手摺に向かい合って話してたのを良いことに彼女からいつの間にか距離を詰められていたのだ。
一メートルくらい距離を置いていた筈なのに、今じゃ拳一個分くらい離れた距離しか無い。
気にしないようにしていたがもう無理だ。
「グ、グウェン。話してたら喉乾かないか?喉乾くよな?喉渇いたろ?俺ちょっと買ってくるよ!」
「え、あ、ちょっと!レックス⁉︎」
「すぐ戻るからー!」
早口に捲し立て、その場から逃げる様に立ち去る俺。
情けなくも、彼女から離れる為に階段を駆け足で降っていた俺はいつしか早歩きになり、落ち着いた所で足を止める。
「……何やってんだ俺は」
……冷静に考えると、俺酷くね?
友達が死んでナーバスになってる女子を一人放り出して来てしまった。
自販機で水を買いながらそんな事を考えていた。
グウェンが何が好きなのかも、よく考えたら知らない。
とりあえず無難に水を選んだけど、これも良くない気がする。
「……謝ろう、グウェンに」
そう思い踵を返したところに、意外な人物が立っていた。
ピーターの親友で、グウェンの友人でもある男子生徒。
ハリー・オズボーンその人である。
会社の御曹司でも自販機で飲み物買うのかなぁって思ってそのまま去ろうとすると、肩を掴まれた。
「まぁ待ちなよ、君に話があるんだ」
「んだよ?俺人待たせてるんだけど?」
「じゃあその待たせてる人の為にもなる事だ、あまり時間は取らせないさ」
その時のハリーの怪しく笑う顔が何と言うか、まるで本物の小鬼の様に下卑た笑いを見て、俺は何か大きな事に巻き込まれる様な嫌な予感が過ぎるのを無視できなかった。
●
夜のニューヨーク。
夜を照らすビルの明かりの間を、飛び交う影があった。
鳥か?飛行機か?──否。
白と黒がメインのコスチュームに身を包んだ人、スパイダーウーマン…グウェン・ステイシーである。
彼女は放射線の蜘蛛に噛まれてからスパイダーウーマンとして活動してきて今日まで、様々な敵と戦って来た。
誰も彼も一癖も二癖もある人物ばかりで、手強いヴィラン達だった。
だが彼女はそんな犯罪者相手に命懸けの戦いを挑み、全員を塀の中に送り込んで来た。
そんな彼女でも連日連夜、奇怪な事が続いていた。
『はぁ、最悪。今日で三日連続よ、三日連続』
警察の無線を傍受し、現場に来て見れば居たのはトカゲの化け物だった。
トカゲ……
あの時の感覚を今でも身体が覚えていて、トカゲの化け物達を攻撃する手が少し震えていた気がする。
襲われていた警察官の声に正気を取り戻し、全員伸して来たが。
幸いにも短時間しか人体を変化させる効果しかなかった為、トカゲ達は直ぐに人間に戻った。
そしてそのトカゲ達の中に、自身が良く知る人物がいた。
それも自身の学校に通う教師のカート・コナーズである。
彼はグウェン…スパイダーウーマンの姿を見ると、トカゲから人間に戻ったばかりで覚束無い足取りで駆け寄ってきて忠告してきた。
「気を付けろ、アイツの…あの男の狙いは君だ!」
そう言うと、気力を無くしたように倒れてしまった。
彼の言葉を聞き呆然と立ち尽くした。
アイツ。
連日連夜、このトカゲ事件を起こし、グウェンを悩ませている存在。
空を緑のグライダーで駆り、直ぐ何処かに飛んでいき此方を嘲笑うかの様に振る舞う緑色の衣に身を包んだ怪人。
グリーン・ゴブリン、彼はそう名乗っていた。
そして、彼女の心配事はそれだけではなかった。
『レックス、大丈夫だったかな?』
それは、放課後バンド活動している自分を見ていた同じクラスのクラスメイトである。
最近何故か目で追う機会が何故か増えたが、グウェンにとっては数少ない親しい異性の友人だった。
そんな彼とバンドの休憩時間中に話していたら、彼は唐突に席を外した。
戻って来たかと思ったらハリーで、ハリー曰く「何か用事があるって言ってたよ」と彼が買って私に渡そうとしていた水を私に届けてくれた。
ハリーとも最近まともに話していない気がする。
彼も私に水を渡すと、「僕も用事があるんだ。もう少しでグウェンにも嬉しい知らせを持って来れるよ」と言い帰ってしまった。
あまりにも怪しい。
明日にでも聞いてみるか、と思っているとここ数日で聴き馴染みになってしまった飛行音が聞こえて来た。
『プレゼントは気に入ってくれたかなぁ、スパイディ?』
奴だ。
この耳障りな様に喋る声、喋り方。
奴しか有り得ない。
『……ゴブリン!』
『おおっと、大層お気に召してくれた様子!こりゃ今度のも気にいるゾ!』
此方がその不快な態度に腹を据えかねてるのを見て、心底愉快そうに笑う。
『またトカゲのお友達?ワンパターンで飽きない?それともお友達がトカゲしかいないの?』
そう思っていたら、何か雷が弾ける様な音が聞こえてくる。
スパイダーセンスが反応し、その場から跳躍するとさっきまで居た場所に電撃が走る。
辺り一面に煙が舞う。
『いや、俺も友達は別に居るぜ?親友は今も昔も、たった一人だけだったけどな!ゴホン!……今日はスペシャルなゲストをお呼びしました!ではご登場願いましょう!続いての挑戦者はこの御方ー!』
そこに立っていたのは青いコートに黒いアンダースーツを着た男。電気を身に纏っている男。
当然、私はその人物を知っている。
数日前にも会っている。
『ザンダー⁉︎』
『残念、ハズレ!それは彼が世を偲ぶ仮の名さ!あと俺が単純に気に入らない!彼の本当の名は、オズコープの遺伝子操作の実験動物から生まれた怪人、エレクトロ!』
「……罪の報いを受けろ、スパイダーウーマン!」
そう言いながら、電撃を放ってきた。
この前とは違う、明らかにこちらを殺す気の攻撃だ。
スパイダーセンスが反応するまま、電撃から身を翻す。
『ねぇ、ザンダー!貴方ヒーローじゃ無かったの⁉︎私が今こんな状態だからさ、貴方に期待する声の方が多いんだけど!』
彼女の事が嫌いな市長は、彼女が善良な市民を殺した犯罪者と世論を持って行きたいらしく、そこばかり取り沙汰される。
だが目の前の彼は自分と同じであっても、活動は地味。
ゴミ拾い、チンピラ退治、家具の修理やバッテリーの充電。
一見すると派手さは無いまでも、根強いファンがいる。
そんな人達が、スパイダーウーマンの批判をしている一方で彼の復帰を待ち望んでいる声があった。
…因みに市長はスパイダーウーマンもザンダーも犯罪者呼ばわりである為、彼のファンから痛烈なバッシングを食らっているのはご愛嬌。
「報いを受けろ!ハァ!」
だが彼からは何も返ってこず、寧ろ攻撃の手がより一層強まった。
ウェブを壁面に飛ばし、其方に飛び付いた。
だがその前に彼女がいた地点に大量の電撃が放たれる。
ウェブを放ちながら、それで拘束を出来たことを確認しながら呆れたように口を開く。
『コミュニケーションって知ってる?テニスの壁打ちじゃ無いのよ?』
するとそこに、グリーンゴブリンが迫って来た。
次は彼の番かと思っていたが、攻撃が来ることはない。
『やるな、流石だスパイダーウーマン!』
『あらそう、お褒めの言葉ありがとう。次は貴方かしら?』
『いや、まだ彼は遊びたがってるみたいだぜ?』
『……え?』
その言葉と共に、彼女のスパイダーセンスが警鐘を鳴らす。
ザンダーの方を見ると、衝撃の光景が広がっていた。
電撃で、彼女の蜘蛛糸による拘束を焼き切ったのだ。
自前の能力で拘束を解き放つ敵は居なかったので、彼女は驚いた。
『ウソでしょ⁉︎』
『そんなチンケな攻撃で彼は終わらないってさ!ラウンド2だ、スパイダーウーマン!』
「裁きをォ、受けろォォォォ!」
『ッ!』
更に威力の増した、電撃を彼女は避けようとするも、威力だけではなく、スピードも増しており、避けきれずに脇腹に掠ってしまう。
スーツと人体が焼ける嫌な匂いが彼女の鼻腔に入ってくる。
幸いにも深傷では無いから動きに支障はないものの、一瞬遅れて鈍い痛みが走る。
『…ねぇ、ちょっと、そのままだと貴方もヤバいんじゃないの?』
先程までと違ってどんどん大量の雷を発しているが、彼にも余裕が無くなってきている様にも見える。
『流石心優しきスパイダーウーマン!良いことを教えてやろう、ご覧の通り彼は電撃を放つ・蓄える能力がある!しかし、それにもメモリーみたいに許容できる量にも限度がある!そしてそれを超えると…ドカン!爆発してしまう!』
ゴブリンは仲間の男の末路を、さも面白おかしく話している。
グウェンはゾッとした。
『止めないと!貴方の仲間でしょ⁉︎』
『え〜?まさか〜?それだったら、何の為にこれを打ったか分からないじゃん?』
そういうとゴブリンは懐から一本の注射器を取り出して此方に見せびらかす様に掲げている。
中身の液体が何かは分からないが、それで目の前の彼を操り使い潰そうとしている事から碌なものでないことは確かだ。
「ゴホッ」
その時、目の前の彼が咳き込んでいた。
すぐになんとでも無いという風に振る舞うが、口元を拭った頬には血が滲んでいた。
相当無茶を強いているらしい。
『ザンダー…!もうやめて、ゴブリン!貴方の狙いは私でしょ⁉︎』
『今更止められるか!二つに一つだぜ、スパイダー!お前が死ぬか、コイツが死ぬかだ!』
そう言っている間にも、手を緩める事なく無数の電撃を放って来た。
『ちょっとちょっと、危ないってば!』
苛烈さを増す攻撃に、堪らず避ける。
ウェブスイングをしながら、どうやって倒すかを考えながら。
『逃げたぞ、追え!』
「………」
●
『ここまで来れば、大丈夫かしら』
そう言いながら、グウェンはある廃マンションの屋上に着地した。
都心に近付けば近づく程、ザンダーの力の源である電力が供給出来てしまう。
ならば、現在誰も人がいないこの建物なら、通電していないし、他の人達が被害を被ることはない。
『なるほどなぁ、考えたなスパイダーウーマン!確かにこの建物には電気が通っていない!奴のパワーダウンを狙ってるんだろ、戦略的には正しいぜ!』
そこに現れたのはグリーンゴブリン。
まるでこちらの手の内などお見通しだと言わんばかりに声を張り上げている。
いつ何処から攻撃が来るか構えているが、来る気配がない。
(待って、何でコイツ一人で現れた…⁉︎普通なら一緒に追ってくるんじゃ⁉︎別行動?何処から来る…?)
『けどな、俺もさっき知ったんだが……』
バリッ
その時、屋上の隅の通電していないコンセントから音がしたかと思うと、そこからザンダーが現れ、此方に奇襲をかけて来た。
スパイダーセンスが反応したが、既に間に合わない速度で一直線に首を掴まれてしまった。
『しまった…!ぐっ…!』
『コイツ、自分の身体を電流の中に潜ませることが出来るんだと!チートだよなぁ‼︎そう思わないか、スパイディ?』
首の締まる力が強くなる。
息も苦しくなって来る。
片方の手でウェブを放とうとするが、電磁力も操る事が出来るのか、そのままウェブシューターを取られてしまった。
その一方で身体から発せられる電力はどんどん上がっていく。
『そんな…!』
「さば…き…を…!オ…レの」
そう言いながら自分のマスクに手を掛け、外した。
その下の素顔を見て、私は衝撃を受けた。
『レックス…?』
「オレの…友……達の…仇を!」
『コイツは驚いた!なんと、エレクトロの正体はお前が殺したピーター・パーカーの学友の少年だったのだ!』
ザンダーの正体は、レックスだったのだ。
凄まじい動揺が走る。
しかし、ここでやられれば彼に友人殺しの汚名を着せることになる。
それだけは避けなくてはならない。
そう思い、身体に力を入れる。
『ごめん、レックス!』
そう言い、再びウェブを放つ。
闇雲に放ったウェブは勿論、誰にも当たらなかった。
精々明後日の方向に放たれた。
……かに見えただろう。
『相当苦しいらしいなぁ、最後の足掻きもこれで終わりか?』
『……えぇ、狙い通りよ』
そう言うとグウェンは思い切り貼り付けていたウェブを引っ張った。
その張り付いていた先に有ったのは、給水タンクであった。
レックスと自分目掛けて落ちて来た給水タンクは、ものの見事に炸裂した。
『これが狙いだったのか!けど何も変わらねぇ、やっちまえエレクトロ!』
そう言い放つゴブリンに同調する様に此方に手を向けて放とうとするザンダー。
しかしどういうわけか、身体から何も出ない。
『…?オイ、どうした⁉︎何をやってんだ!』
『やっぱりね。思った通りだわ』
『まさか…お前!』
『知らなかった?水道水は純粋な水と違って、ミネラルや不純物がたっぷり入ってるの。おかげで貴方のお友達の電気が、全部水に逃げてショートしちゃったみたいね!』
…これは能力を操っているザンダー本人も知らないことだが、ザンダーは身体に電気を充分に溜めて放つ戦い方をするが、それは彼自身の話であって衣服や肌になると話が変わって来る。大量の水を浴びて全身が濡れてしまうと、衣服や肌を伝って電気が一気に周囲へ逃げてしまい、上手く操れなくなるのだ。
目論見通りにハマってしまい、こうしてザンダーの無力化に成功した。
後は正気を取り戻せば…と思ったその時。
『ったく…使えねぇなぁ!』
そう言い放ち、ゴブリンはザンダーにカボチャ型の投擲物を放って来た。
『!ザンダー、逃げて!』
スパイダーセンスでそれの正体が爆弾である事を瞬時に見抜いたグウェンは、受け取って止めようとするも既に起動しており、二人の間で爆発が起きた。
『…ゴホッ、ゴホッ…』
爆風に吹っ飛ばされながらも致命傷は免れたグウェンはすぐさま立ち上がる。
が、今しがた自分の前で攻撃を喰らった彼の姿を探す。
『レックス、嘘でしょ……』
そこには、ピクリとも動かない友人の姿があった。
また一人、目の前で大事な人を失ってしまった。
『またしても仕留め損ねたか、だがまぁ良い!当初の予定通り最後はこのオレ自身の手で仕留めるとするか!』
『…奇遇ね、私も貴方だけは絶対に私の手で倒したい気分よ』
友人の死を前に、静かな怒りに燃えるグウェン。
これ以上、目の前で大切な人を失わない為にも、奴は此処で倒さねばならない。
体勢を低くして、ファイトスタイルを取った。
●
何故か身体中から迸る痛みで目が覚めた。
「凄い体が痛い…筋肉痛なんて目じゃ無いが?」
まるでフルマラソンをした翌日の筋肉痛の様なものが身体中にあって…というか身体も何か濡れてね?
にしては臭い…泥水の中に直接突っ込まれたみたいな匂いが体からするんだけど?
後なんで俺ヒーローコスチューム?着替えた覚えないけど?
……その前に。
「つかここ何処?俺確かグウェンと話してて、ハリーと自販機の前で話してたら『君がウチの研究施設に忍び込んだ一部始終はバッチリ収まってるデータがある。公開されたくなかったら……』って脅して来たから普通に警察に電話しようとした……以降の記憶がないな」
しかし、どうやら何処かの建物の屋上であることは確かだ。学校ではない。
「どうやってここまで来たんだ?」
身体中の汚れを払って動こうとした瞬間、強烈な反応が走った。
『死ね、スパイダーウーマン……いや、グウェン!ピーターにあの世で詫びろ!』
よく見たら、少し離れた建物の上空で今まさにスパイダーウーマン…素顔が見えてグウェンが、空飛ぶグライダーに乗った緑色の格好の怪しい男に落とされていた。
…いやコイツ、グリーンゴブリンじゃん!
状況は分からんが、兎に角ヤバいことだけは理解した俺は電気を操って飛ぼうとしたが、上手く操れない。
「グウェン!」
慌てて走るもこのままでは、グウェンが死ぬ。
スパイダーウーマンと言えど、高所からの落下のダメージは計り知れない。
そうだ。
それに、この光景を阻止しようと頑張っていた筈なのに、結局グウェンをこんな目に合わせてしまっている。
その時、俺の手に何か固いのを握ってあるのが分かった。
「これって…ウェブシューター?」
なんで俺の手にあるのかは分からないが、これならグウェンを助けられる。
そう思い片手に付け、糸を飛ばして建物間を移動し、落下中のグウェンの下に入り、着地する。
何故か分からないが、うまく出来た。
「嘘、レックス…何で生きてるの?」
「勝手に殺さないでよ…平気?」
「平気だけど…」
暫くお互いに何を話して良いかわからなくなり、見つめあったまま無言の時間が続く。
「「あ、あの」さ」
「あ、ごめん」
「いやそっちから話してよ」
「いやそっち先でいいよ」
やはりグウェンは美人だ。
こうしてみると、本当にそれがよくわかる。
あれ?そう考えたらなんか恥ずかしくなって来たな。
「……そろそろ降ろさない?」
「あ、ごめん」
そう言われたので横抱きにしていたグウェンをそっと下ろす。
やっぱり無言が多いな、会話が続かない。
「とりあえず、アイツが敵でいいんだね?」
「そ、理解早くて助かる」
「……因みにだけど、アイツ名前グリーン・ゴブリンって名前だったりしない?」
「すごいね天才、よっ!名探偵!」
「茶化さないでよ……」
と言うことは中身はハリーだな?
マジかよ、結局俺も戦う羽目になるのかよ。
「グウェン」
「何?」
「積もる話は色々あるけど、これだけは言わせて」
「……」
「俺も手伝わせてくれ。君の背負ってる大いなる責任って奴、俺も一緒に背負いたい」
「レックス…」
これは本音だ。
本当はスパイダーウーマンにあったら言いたかった。
貴女は一人じゃ無いと、俺も大いなる責任を持つと。
……ピーター殺された現場の時は違ったって?
それはそう!
『良い話してる所悪いけど、お前ら良い加減目障りなんだよ!ド腐れ共が!』
怒りゲージMAXって感じのグリーンゴブリンが此方に迫って来た。
なんであんな怒ってんだ?
「来るよレックス、構えて!」
「あぁ、やろうグウェン!」
まぁいい、やってやる!
髪が短くなった後のグウェンは、バイオ4のアシュリーみたいな感じの髪型をイメージして頂ければ。
簡単な人物紹介!
レックス(仮称)…今回本編ずっと良い所無しだぞ!
一日に三度水を被った男!本当はあと二回被る予定だったし、最後に至っては生コンを被せる予定だったぞ!この後の展開考えたらボツになった!
水を被ったら電気が操れなくなるって言う設定は、元ネタのうちの一つであるアニメ版のスタティック・ショックから。全身電気人間が水なんかで弱体化するかって?それはそう。
因みにハリーに脅された時に警察に電話したと言っていたけど、悪用されるくらいならと普通に自首するつもりだったぞ!
ハリー…ピーターの親友だった。ピーターが死んだ辺りから様子がどんどんおかしくなっていった。実はピーターがリザードになった所も、リザードが暴れてスパイダーウーマンが来て戦った所も全部見ていた。
レックス曰く声が石田彰に似てるらしい。
ザンダーが自身の会社の実験動物から力を手に入れた事を知り、脅して協力させようとしたが普通に断られた為に違法な薬品で従わせてた。
グウェンに良い報告とは、スパイダーウーマンを殺した事を告げようとしていた。
スパイダーウーマン…衝撃の事実!なんとスパイダーウーマンは、グウェン・ステイシーだったのだ!
街の平和を守る為に日々悪党と戦っているスーパーパワーを持った少女。
ピーターを失った(自分がやった)から、心機一転して色々な事をやっているらしい。
レックスに絡むのは、何か彼から感じるかららしいが…?
市長…Jが三つのあの方。ザンダーも嫌いだが、スパイダーウーマンはもっと嫌い。
ピーターの件を知り、意気揚々とバッシングしている。
その際に「大いなる力には、大いなる責任が伴うと彼女は知るべきだ!」と宣う。お前が言うのかよ。
カート・コナーズ…レックス達の通う学校の教師。生物学が担当だったが、ハリーに利用されたぞ!
哀れ本家リザード!因みにこの辺りの展開はスパイダーグウェンにもあったぞ!