死亡エンドの弱小生徒たちを救うため、闇落ちさせて最強に育てたら教え子たちの愛が重すぎる   作:綿紙チル

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第11話 クレアの闇落ち

 放課後、アレンはクレアを連れて学校を抜け出した。

 

「アレン先生の家、かい?」

 

 連れてきたのはアレンが借りているアパート。

 彼女を闇に落とすには、学校よりも街中の方が良いと思ったのだ。

 

「そうです。今日はここでクレアさんに個別指導をしたいと思います」

「ふぅん……まさか、変なことしたりしないよね?」

「…………」

「なんで黙るのさ……」

 

 変なことの方がマシのような気もするので、何とも言えない。

 そのまま家に上がってもらった。

 

「普通の部屋だね。本が沢山あるのは教員って感じがするけど」

「日々勉強ですので」

 

 クレアは置いてあった椅子にドカッと座った。

 遠慮がない。

 

「それで、死にゆく私に先生は何を教えてくれるのかな?」

「……少し待ってくださいね」

 

 アレンは机の中に置いてあった縄を取り出した。

 

「何をする気なのかなのかな?」

「逃げられないように、縛ります」

「……嫌だと言ったら」

「それでも無理やり」

 

 クレアは胸ポケットから鈴を取り出した。

 特殊な刻印……おそらくは魔道具の類だ。

 

「アレン先生、これを鳴らすと私のメイドが迎えに来てくれるんだ。これ以上、変なことをしようとしたら鳴らすけど」

「どうぞ」

 

 アレンは怯まずにクレアに近づいていく。

 彼女も一切の躊躇なく鈴を鳴らした。

 

「これで少し待てば、私は救助される。先生はどうなるか知らないけど」

「関係ありません」

 

 アレンは無抵抗なクレアを縄で固定する。

 すぐに助けが来ると思っているからこその、平然とした態度。

 まずはその平静を突き崩す。

 

「さて、まずはこの個別指導の目的を話します」

「どうぞ。聞くだけは聞こうじゃないか」

 

 クレアは縛られて尚、背筋がピンとしている。

 本当にこの状況に動じていないのか。

 

「クレアさんには闇魔術を習得してもらいます」

「闇魔術……? あの、精神的に強いショックを受けると使えるらしい? ハハッ」

 

 なぜか彼女は笑っていた。

 これからとんでもないことをされると分かっているのに、なんで。

 

「私が闇落ち? できるなら今頃しているはずさ……何も知らない先生ごときが、私を闇に落とせるはずないよ」

「かもしれませんね。でもやってみなくちゃ分からないでしょ?」

 

 アレンは壁に立てかけてあった剣を抜いた。

 一瞬だけクレアは表情を強張らせたが、それでも余裕そうだ。

 

「それで私を拷問でもする気かな? アレン先生にそんなことができるなんて、思わないな」

「そう。俺にそんな残虐な手段はとれない。だから」

 

 アレンは心に鉄仮面をかぶることにした。

 決して、ここからブレることは許されない。

 悪魔を演じてでも、彼女を闇に落として闇魔術を発現させる。

 

 アレンはクレアの肩に手を置く。

 

俺は魂に干渉する(ソウル・オルター)。これであなたは一時的に不死になりました」

「な、なんだ今の感覚……? それに不死って?」

 

 クレアに少しだけ動揺が表れた。

 やはり人間、得体のしれないものには恐怖が生まれる。

 

「とりあえず一度体験してください。クレアさんが望む死というものを」

「え、ちょ……!?」

 

 アレンは剣をクレアの首に目掛けて振るった。

 綺麗に首を落とすことができずに、半分ほどで刃が止まった。

 このままでは殺せないのですぐに引き抜く。

 

「ひっ、痛っ、痛い、痛い、痛い! ち、血が止まら……!」

 

 ヒューヒューと音を鳴らしながら声を上げるクレア。

 一分もしないで弱っていき、そのまま意識を失った。

 

俺は魂に干渉する(ソウル・オルター)

 

 魂に干渉する魔術で、肉体を再形成。

 先の闇魔術で死んでも魂が無くならないように細工はしたので、肉体だけ戻してやればすぐに元通りだ。

 

「はっ!? い、今、私、死んだ……? な、なにが?」

「お目覚めですか? クレアさんには闇落ちしてもらうために、何度も死んでもらいます」

 

 その言葉を聞いてクレアは震えていた。

 

「い、今のを何回も?」

「そうです。次は――心臓を狙いたいと思います」

 

 アレンは剣を布をで拭いてから、クレアの心臓を一突きにした。

 

「が、がはっ! がひゅ……」

 

 首を斬るよりは上手く行った。

 アレンとしては、クレアを苦しめたいわけではない。

 故に、ほぼ苦しみを感じずに死んでくれるほうがありがたかった。

 

俺は魂に干渉する(ソウル・オルター)

 

 そしてアレンはまた、クレアを復活させる。

 

「はあはあ、あ、あれが死……?」

「そうです。死とは苦しくて、恐ろしいものなんです。それを味わってください」

「も、もうやめ!」

 

 クレアの静止を効かずに今度は胴体を剣で切り裂いた。

 内臓が壊れてあふれ出してくる。

 

「痛い痛いいだい……!」

 

 どうやらすぐには死ねないらしいので、心臓を切り裂いて介錯した。

 

俺は魂に干渉する(ソウル・オルター)

 

 これで三回目。

 生徒の死ぬ顔を見るのも同じ回数。

 自分で始めたこととはいえ、こちらも吐きそうになっていた。

 出てくる胃酸をなんとか飲み込む。

 

「はあはあ、また戻った……」

「じゃあ次は……!」

 

 アレンは剣ではなくて杖を構えた。

 氷魔法で全身を氷結させようと思ったのだ。

 

 だけどクレアが笑い出した。

 

「あは、あはは! 死って思ったよりも苦しいけど……心には響かないね! だって、戦場で死ぬのはもっと一瞬だろう。だったらこんなもの茶番でしかない!」

 

 クレアの心は折れるどころか、昂っているようだった。

 

 

 彼女は繰り返される痛みと意識の断絶、覚醒に慣れ始めていた。

 

「こんなことで、私を闇に落とす? 先生は甘いねえ!」

 

 クレアは知っているのだ――真の苦しみを。

 

 食事に毒を混ぜられたことがあった。

 あのときは、本当に死ぬかと思った。

 三日三晩吐き続けて、体の中から水分がなくなるような。高熱に、体全身の猛烈な痛み……あれが毒系統では一番ひどかった。

 

 勿論、通り魔に襲われたこともあった。

 火の魔法で襲われて全身が焼け焦げた。

 皮膚はただれて寝返りをうつだけで、痛みに叫んだ。

 

 何度も死にかけたことがあるのに、今更死を体験するくらいで心が折れるものか。

 恐らくアレン先生は、『死ぬべき』と言った私に死を体験させて、それが怖くて恐ろしいものだと思わせようとしている。

 

 だけど、ただ痛いのが強くなったくらいだ。

 発狂するほどの痛みは、来る前に終わらせてくれている。

 

(なんて甘いのだろう……)

 

 アレン先生は変わったと思う。

 エラちゃんが先生によって闇に落ちたのは、何となく分かる。

 その時も恐らくだが非人道的な手段を取ったのだろう。

 並のことでは闇魔術なんて使えるようにならない。

 

 でも、どうせ甘さが残っていたはず。

 それに屈するようなエラちゃんの精神が弱かっただけ。

 

「啖呵を切る、か……本当はやりたくなかったけど、仕方ないな。エラ」

 

 アレンは悲しそうな顔をしてから、その闇落ちさせた生徒を呼んだ。

 

「はい。準備はしてきました」

「ありがとう、恩にきるよ」

「先生から褒めてもらった……お礼に何してもらおうかな?」

 

 何か二人だけでクレアを置いて話を進めている。

 

「クレアさん、場所を変えましょう。エラ、お願い」

「はいっ!」

 

 エラがアレン先生とクレアの手を掴んだ。

 

私は何にも囚われない(ウォーク・スルー)

 

 地面に落ちて自由きままに進んでいく。

 その上下左右もないような移動に、クレアは吐き気を覚えた。

 

(こ、これが闇魔術!?)

 

 そして、地面の中を移動して到着したのが。

 

「ここは……私の家?」

 

 クレアは驚いた。

 門をくぐることなく、気づけば自宅の居間にするっと出てきたことに。

 飾る物もなく王家の血を引いている者とは思えない一般家庭の、ちょっとだけ大きい家屋。

 

「そ、そういえば、私のメイドたちは!?」

 

 殺される体験のせいで完全にクレアは忘れていた。

 縄で縛られる前に呼んだのに……普段ならもう到着しているはず。

 

「会わせてあげます」

 

 椅子の向きを反対方向にされる。

 そこには、意識を失った状態でしばりつけられているメイドたちがいた。

 

「レイン、スノー、ヘール!」

 

 思わず声を上げてしまった。

 クレアはキリッとした視線でアレンを睨んだ。

 

「アレン先生、メイドたちを縛り付けて一体何をする気なんだ……!」

 

 クレアの見せた焦りに、アレンは一気に黒い魔力を放出した。

 部屋全体にアレンの魔力が漂っている。

 

「殺します」

 

 アレンは感情を纏わせないで機械的に言葉を発した。

 あまりの冷たさにクレアは慌てだす。

 

「ま、待ってくれ。闇落ちさせるのは私なんじゃないのか? ど、どうしてメイドたちに手を出すんだ!」

「そう。あくまで闇落ちさせるのは、クレアだよ。あなたは自分が死ぬことを恐れないし、苦痛に思わない。だけど、それはメイドたちのためだと言っていた。だったら、メイドたちを殺せば、あなたは闇に落ちる」

 

 アレンが先ほどクレアを斬っていた剣を持ってメイドの一人――レインに近づく。

 

「本当に待ってくれ! お、お金なら出すし、必要とあれば父さんにも連絡を取ろう。だから、メイドたちには手、手を出さないで――」

 

 クレアが言い終わる前にアレンは剣を振り下ろした。

 先ほどクレアにやったときと違って、綺麗に首を落とすことに成功した。

 

「レイン! レインっ! アレン先生! 冗談だろう? あなたの力なら、ここからでも蘇生させることができるんじゃないか!? な、なあ、助けて……今すぐ助けろよ!!」

 

 クレアは縛られたまま暴れる。

 縄が擦れて、皮膚が裂けるがそんな痛みはどうでも良かった。

 早くしないと、先生はこのまま残ったメイドたちを殺していってしまう。

 

「先生、ま、待ってくれ! わ、私は本当に絶望してる……してるんだ! メイドたちを殺されるのは、自分が死ぬよりも断然辛い。だから、分かったから、待って、待ってくれ、待って、待ってください」

 

 そんなクレアの魂の叫びを聞きつつも、アレンは止まらない。

 二人目のメイドの首を落とした。

 

「す、スノー! スノー! な、なんで、なんで……! 待ってって言ってる! 何でもするって言っている! もう闇落ちしたって言っている! なのに、なんで辞めてくれないんだよ……もう分かったから、だから殺すな! これ以上、本当に!」

 

 だけどアレンは無視した。

 確実にクレアを闇に落とすなら、全員を殺さなくれは意味がない。

 

「三人目」

 

 アレンは無慈悲に剣を振った。

 これで三人全員とも、首を刎ねられて命を失った。

 

「ああああああああああああああああ!」

 

 クレアは発狂したように泣き出した。

 大切な人を目の前で三人も殺されればこうもなる。

 

 少しクレアの発狂が落ち着くまで待つ。

 そこにいたエラもアレンも、一切会話をしなかった。

 斬られた三人の血の匂いと、クレアの声だけが響いている。

 

「ああああああ! げほっ、げほっ!」

 

 ようやくクレアの喉が枯れたようなので、アレンは語る。

 

「クレア。お前は何も悪くない。悪いのはこの世界だ。だけど、その上で、お前は自分の命を軽視しすぎている。クレアが死ねば、お前に仕えた三人のメイドたちも苦しむ、痛いほどわかったと思うが」

「せ、先生は、そんなことのために……?」

 

 アレンにとっては決して『そんなこと』ではなかったが。

 

「ああ、そうだ。だから殺した。じゃないとお前はスタート地点に立てないから」

「そんなことのために、私の大切な人たちを…………許さない、許さない! 私は、先生を絶対に許さない!!」

 

 クレアの体から黒い魔力があふれ出した。

 命を大切にすることを教えるためだけに、人を三人も殺す。

 私の大切なメイドたちを。家族同然の彼女たちを。

 

 この人に全てを取り戻させる。

 だから、殺すでもなく操るでもない。

 アレン先生を支配して、使い倒した後に、死ぬより辛い目に合わせてやる!

 

私はあなたを跪かせる(マイ・ゾンビ)

 

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