死亡エンドの弱小生徒たちを救うため、闇落ちさせて最強に育てたら教え子たちの愛が重すぎる 作:綿紙チル
出兵した学生兵たち十数人は前線近くにある本隊に集められていた。
クレアが周りを見回すと皆緊張でガチガチだった。
無理もない。これからどんなことをさせられるかも分からず、人殺しに励まなくはならない日々が待っているかもしれないのだから。
現れたのは白いマントを纏った光魔術師。
この国では最高位にあたる魔術の使い手だ。
「これより国王陛下より達された学生兵たちへの任務を告げる」
多くの学生たちは国王陛下? と頭に疑問符を浮かべている。
どうしてわざわざ、軍の作戦に王様が出てくるのか。
「諸君らには敵部隊に突っ込んで爆発する自爆兵器として活躍してもらう」
学生たちはその意味が分かっていない。
分かっている人も、その事実に恐れ慄いて何も言えない。
だが一人、空気を読まない奴が。いや、そもそも招待されてないので、この場の雰囲気を無視している少女――エラが手を上げた。
「すいません、もっと詳しく説明してくれませんか?」
「いいだろう。君たち学生兵たちは大人の魔術師たちが防御魔法で守りながら、敵部隊に突撃してもらう。そこで我らが学生兵に仕掛けた爆発魔法で敵諸共爆破する。それが、ここに集められた君たちの役目だ」
「ありがとうございます!」
エラはニコニコと笑って感謝した。
一方で集められた学生兵たちは、震えてしまっている。
冷や汗もすごいし、とても可哀そうだ。
逃げたくても周りに大人の魔術師たちがいる以上は不可能で、敵軍に助けを求めるようなこともできるはずなくて。
そんな気持ちに共感はする。
するが、クレアの大事なものの範疇は狭い。
闇落ちする前から、それは変わらない。
だけど、文句の一つや二つ言いたくもなる。
「全く……国王陛下はとんでもないことを考えるね」
「貴様、それは陛下への侮辱か?」
「そう感じるのは自由だよ?」
光魔術師の男はため息をついた後に、何かに取りつかれたように語りだす。
「貴様ら学生はまだ若いから分かっていないのだ。国王陛下のために死ねるのは名誉なこと……私は、国の為に直接力になれる君たちが羨ましい」
本気で語っているのか、目がキラキラしている。
光魔術師たちはその地位につく際に国王と謁見する機会がある。
何かその時に頭をやられたのか、それともただのカリスマ性か。
だが、そんなことを知らない学生たちは悲壮だ。
どうして自分が国のために死ななくちゃいけない。まだやりたいこともたくさんあったのに――など、心の中は荒れ狂っているに違いないだろう。
「じゃあ、私が君をもっと王様の役に立てるようにしてあげよう」
「なにを言っているんだ? 貴様のような学生に……!?」
クレアは
黒い霧が集められた生徒たちと、光魔術師を包み込もうとする。
「こ、これは闇魔術!? 貴様、一体何を……!」
光魔術師は防御魔術で黒い霧を防ごうとする。
ここで逃げる判断をしないのは、クレアとしては助かった。
なぜなら、ここには二人で来てるから。
「捕まえました♪」
「なっ……! 私の防御魔術をどうやって!?」
背後――ではなくて地面から誰にも気づかれずに迫っていたエラが、光魔術師を後ろから捕まえる。とっさに彼も反撃しようとするが。
「ちょっと遅いかな? これで君ももっと国の為に働けるよ」
クレアの闇魔術による黒霧が光魔術師の体内に侵入していく。
間もなく手をぶらりと下げて、首を垂れた。
「とりあえず頭は抑えたね。ありがとうエラちゃん」
「どういたしまして! 次はこのクレアさんの能力で、味方の指揮系統をいただいてしまいましょう」
「そうだね」
クレアは自分の制御下においた生徒たちと光魔術師を操って本陣を荒らす。
正規の魔術兵たちといえども、自軍から攻撃される恐れなど考えていないのか、無抵抗に襲われていった。
「こ、こいつらなんだ?」「学生兵たちじゃないか!?」「ど、どうして襲ってくるんだ!?」「痛い! 噛みつくな!」「離せ!」「や、やめてくれ!」
次々とクレアのゾンビたちが王国軍を塗り替えていく。
クレアの使う闇魔術
「じゃあ次は――共和国軍を蹴散らそうじゃないか」
「はい! よろしくお願いします! クレアさん」
不死の軍隊となった王国軍に為す術もなく、共和国軍は前線の後退を余儀なくされた。一日にして戦場の様子が塗り替わったのだ。
◆ ◆ ◆
一方のアレンはモルガナがいないことに不安を抱いていた。
いつもならアレンから離れないはずなのに、今日はどこかに行っている。
『せんせ~、帰って来たよ!』
「どこに行ってたんだ、モルガナ! 心配したじゃないか!」
アレンは本当に心配していた。
いくら魂だけの存在とはいえ、次に何かあったら――。
そんなモルガナは、アレンが怒ってくれていることに頬を緩ませた。
『心配かけてごめんね……先生』
「……分かってくれたならいい」
先生が許してくれたと思ったモルガナは、テンション高く喋り出す。
『でも、今日は楽しみだったんだ。私を死に追いやった王国軍の奴らが、どんな惨めなことになるかって! 確かに人生視で見たけど、やっぱり無様だったなあ~、爆弾にしようと思った学生の闇魔術でゾンビにされて敵軍に突っ込んでいくの! 手足も千切れたり、体に穴が開いたり、頭がぶっ飛んだりして……それでも死なない! いや~本人たちとしては嬉しいだろうな~。だって、国王陛下のために戦えるのは名誉とか言ってる連中だよ? 死なない体を手に入れられて良かったね? はぁ~ほんとうに笑える!!』
モルガナは高笑いを続けていた。
アレンはそんな彼女を見て、哀れだとか常軌を逸しているとかは思わない。
心がおかしくなるようなことをモルガナにさせたのだから。
報いを受けろとは思わないが、それでも彼女に満足してもらう方が大事だった。
『せんせ、これかも期待してるよ?』
「何を……?」
モルガナの悪い笑みから目を離せない。
『それは勿論、先生が生徒たちのために頑張ることをだよ』
アレンはそれが何となく本心でないような気がした。
だけど、やるしかない。
例えモルガナに、何か別の目的があろうとも。
やることは変わらない。
生徒を死なせない。
もう二度とモルガナのような子を生み出すわけにはいかないのだから。