死亡エンドの弱小生徒たちを救うため、闇落ちさせて最強に育てたら教え子たちの愛が重すぎる   作:綿紙チル

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第14話 軍の要望

 クレアとエラが学院に帰って来た。

 しかも他の生徒兵たちまで連れての帰還。

 彼女らを引率していたのは、軍に所属している光魔術師だった。

 

 教職員と生徒たち全員で、戦場から戻ってきた彼女たちを迎えている。

 

「やあ、アレン先生。帰ったよ」

「クレア……! 無事だったんだな、本当に良かった!」

 

 アレンはクレアの姿を見るなり、傍に駆け寄った。

 抱きしめたくなったが、流石に行き過ぎた行動だと思ったので自粛した。

 

「先生……私もいるんですけど?」

「エラも無事だったんだな! 良かった……怪我もないようで、本当に……!」

 

 エラは上目遣いでアレンのことを見つめている。

 そして、拗ねたような表情で小さく申し出た。

 

「先生、寂しかったので抱きしめてもらえませんか?」

「……わかった」

 

 生徒との距離感として褒められたものではないのは分かっている。

 だけど、本人の頑張りに報いるため、多少の無理くらいはしてあげるべきだ。

 

「わ、わあ……嬉しいです」

 

 まだ幼い少女の体。

 細くて小さくて……こんな子を戦場へと送ってしまった。闇落ちさせてしまった。

 そんな贖罪を込めるくらいしか、アレンにはできなかった。

 

 抱擁を終えるとエラは満足そうに頬を溶かしていた。

 

「ありがとうございます。頑張った甲斐がありました」

「こんなことでいいのか……? 何か欲しいとかあれば……」

「……今はこれでいいんです。これからも先生のお力にならせてください」

「すまない……」

「謝らないでください、私が望んでいるんですから」

 

 そう言ってエラは地中に沈んだ。

 これから戦場からの帰還を祝う式典があるのだが……面倒なのだろう。

 

 そんなことを思っていると、クレアがアレンの袖を掴んだ。

 

「なあ、先生……その私も……抱きしめてくれないか?」

 

 クレアは顔を真っ赤に染めて、アレンのことをまともに見れていない。

 だけど強く袖を握っているのか服に皺がかなり寄っている。

 何も言わずにアレンはクレアを抱きしめる。

 

「よく帰ってきてくれた……本当にありがとう」

「わ、悪くないな……いや、これが私を守ってくれる男だからか……」

 

 クレアが顔を胸に埋めてくる。

 本当は戦場になんて出るはずもない身分だ。

 怖かったに違いないだろう。

 

「ありがとう、アレン先生……元気が出るよ」

「そうか……それは良かった」

 

 クレアが自分から離れるために背中を向けた。

 顔が真っ赤だったし、見られるのが恥ずかしいのかもしれない。

 

 二人との再会を喜んだ後、壇上に校長と光魔術師が立った。

 どうやらこれから、お偉いさんたちのスピーチがあるようだ。

 

 先に話し出したのは光魔術師だった。

 白いローブを纏っているので遠くからでも分かりやすい。

 

「生還した生徒の皆さん……おめでとう。君たちの活躍、いやその中に紛れていた闇魔術の使い手というべきか。彼女――機密保持のために名前は伏せるが、その少女の力によって、共和国軍の前線を大きく後退させることに成功した。泥沼状態にある戦争に、一筋の希望を見せてくれたと言うべきだろう。盛大な拍手を」

 

 教職員、生徒たちの拍手が講堂を包み込んだ。

 クレアの活躍によって命を奪われずに済んだ学生兵たちは多いだろうし、感謝している教員も多いのではないか。

 

「さて、そこで軍から要請がありました」

 

 次に話し出したのは校長だった。

 彼女は相も変わらずいつもの無表情。

 

「闇魔術を学校で教えて欲しいと」

 

 教員や生徒たちは困惑している。

 その程度には闇魔術が禁忌だという認識はみな持っているからだ。

 

 再び話し出したのは光魔術師。

 どこか希望に満ちた表情で、アレンのことを見つめていた。

 

「闇魔術は今日まで禁忌とされてきた。何故なら、その使い手の多くは精神的に強いショックを受け理性を失い大規模な魔術事件を起こす――暴走するのが常だからだ。しかし、此度の戦争で活躍した少女は暴走していなかった。我々軍上層部は、それに強い希望を感じたのだ。ゆえに、君たちには闇魔術を習得して欲しい」

 

 そんなことをつらつらと語る光魔術師にアレンは共感ができなかった。

 確かに闇魔術の力は強大だ。

 それはエラの何でもすり抜ける力や、クレアの周囲の人間を意のままにゾンビ化して操る力。どれもが常識の埒外の力だ。

 

 だが、闇落ちさせるというものが、どれだけ生徒に負担をかけるか。

 教師に負担をかけるか。

 

 失敗すればどうなるのか、なんて一切考えていないような。

 

 再び声を張ったのは校長の方。

 

「幸いにも闇魔術の発現に関して分かっていることがあります。それは、魔力量が多い者ほど適性があるということです。本校は魔力量を徹底的に強化するカリキュラムを採用しています。なので、我が校で闇魔術の発現を試みることは適しているのです」

 

 アレンは一つだけ納得したことがあった。

 軍はもう生徒を爆弾にしようとは思っていない。

 それよりも価値がある闇魔術使いとして育成することを、学院に臨んでいるのだ。

 

「みなさん、これからも励んでください。我が王のために」

 

 光魔術師はそれだけ言って頭を下げた。

 形式的な拍手はあったが、そこにいた者は内心共感していなかっただろう。

 

◆ ◆ ◆

 

 新しくなった第十魔術学院の教育方針。

 闇魔術の発現を目指すということに選ばれたのは――。

 

 シンシア・クリフォード。

 

 アレンのクラスに所属している生徒だった。

 

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