死亡エンドの弱小生徒たちを救うため、闇落ちさせて最強に育てたら教え子たちの愛が重すぎる 作:綿紙チル
翌日、空き教室でアレンたちは昨日の調査結果を話していた。
「見つからない……?」
「学校中を隅々まで探したけど、シンシアの居場所は分からなかったです」
そう答えたのはエラだ。
どこでもフリーパスな彼女でも発見できなかった。
「クレアの方はどうだった?」
「ゾンビ化した使い魔を放ってみたけど、教員たちも場所を知らないみたいだね。恐らく、アレン先生もそうなんだろう?」
クレアは肩にネズミを乗せていた。
汚いからやめなさいと言いたい。
「そうだな。何となく教師たちに探りを入れてみたが、知っている人はいなかった。恐らく校長以外は知らないと思う」
「じゃあ校長先生をクレアの力でゾンビ化させたり、先生のお力で魂いじくって奴隷にするとかして……強制的に吐かせます?」
強硬的な提案をするエラ。
それは確かにアリではあるのだが。
『うーん。それは難しいんじゃないかなあ~』
口を挟んできたのはモルガナだった。
エラは一瞬顔を歪めたが、すぐに表情を普段通りに戻した。
「なんでですか?」
『だって、校長を支配下に置くってことは、この学園の表も裏も支配するってことだよ? 軍とも繋がりがあるし、気づかれれば私たちが鎮圧されてもおかしくない。慎重に考えた方がいいよ』
モルガナが昨日言っていた、ピースが揃い切っていないというやつなのか。
この少女は、未来が分かっているだろうに明確なことは言わない。
「もう少し捜査を続けよう。範囲を拡大して街の方まで探すんだ」
「分かりました!」「おっけーだ」
放課後になったら再び動き出そうと思っていた。
ただ、夕方……街は地獄と化していた。
「一体、何が……!?」
目が無くて、耳もなく異形の二足歩行の化物……何百、何千と急に現れた謎の敵対生物が人々を襲っていたからだ。
◆ ◆ ◆
二日前へと遡る。
シンシア・クリフォードは軍の人間たちに連行され、地下牢に囚われていた。
「わ、わ、わたしを、闇落ちさせるって、い、いったい何をさせる気なんですか」
そこにいた人間たちは一切何も答えようとしない。
椅子に縛り付けられたシンシアは震えながら、その人たちの動きを眺める。
彼らは目で合図しあって、シンシアに近寄って来た。
「こ、来ないでください。や、やめて!」
シンシアは顔を持ち上げられて、目に何かを入れられる。
特に痛くはなかったのだが、目がヌルヌルする。
「な、なにを入れたんですか……? こ、答えてください」
だが、軍の人間たちは何も言わずに目に杖を近づけた。
その杖先には火が灯っている。それを目に押し付けられた。
眼球が燃えた。
目に入れられた油が引火しているのだ。
「イギャアアアアアアア!」
シンシアは受けたことのない種類の痛みに叫び、悶えることしかできなかった。
炎が顔全体に写っていき、やがてはもう片方の目も焼いた。
「ああああああああああ!」
呼吸もままならなず、燃えていく。
油を浴びているせいもあって、全く炎の勢いが衰えない。
そのまま上半身も焼こうとしているときに、大量の水を浴びせられた。
「い、いだい……な、な、な……」
声も出ない。
出せないくらいに口の中も焼けてしまっていた。
「……た。だずげで」
目が痛くて開けることすらままならないシンシアは思わず助けを求める。
見えなくとも流石に足音で何となく分かるのだ。
だが、彼らの足音が遠ざかっていった。
目と顔を焼くだけ焼いて、放置したのだ。
「え……」
それからは痛みとの戦いだった。
皮膚が解けて癒着してしまったせいか、目が開けられない。
「シャーロット、みんな、先生、助けて……」
声は少しだけでるようになってきていた。
か細く助けを求めるが、自身の声が響くだけ。
でもそれでも言い続けた。
こんなことが許されるわけないと、助けて欲しいと。
そんな目が見えなくなっている中で、何時間経ったのか。
再び足音が聞こえてきた。
誰の足音かなんて分からない。
だけど複数人いるのは確かで。
こういうときに最悪な考えをするはずもなく。
「た、助けが来た……! こ、ここ、ここです!」
焼けた喉を震わして精一杯叫ぶ。
だけど、やってきた人たちは何も反応してくれない。
「ま、まさか……!」
シンシアの脳内が嫌な予感で埋め尽くされる。
「い、イヤ! いやあああああ!」
シンシアは頭を掴まれる。
そして耳に杖が差し込まれた。
「やめ、やめて! つ、次は何を!」
杖から衝撃波が放たれる。
耳の中で暴れたその魔術は、シンシアの耳中を完全に破壊した。
「ギャアアアアアアアアアア!」
鋭い痛みが耳どころか、脳内までをおかしくする。
あまりの痛みに気を失いそうになった。
だが、軍人たちは容赦しない。
「ま、待って! そ、そっちは……!」
だが容赦なくもう片方の耳中も破壊される。
シンシアは痛みでそのまま気絶してしまった。
それから……少し時間が経過しシンシアは目覚めた。
耳からはキーンと不快な音がずっと聞こえている。
その気持ち悪さ、現状のままならなさに思わず。
「げほっ、げほっ、ぐええええ」
シンシアは吐いてしまった。
「ふぇ、へ、なんで、なんで、こんな痛い思いをしなくちゃいけないの……」
そしてシンシアは泣いた。
どうしてこんな目に合っているのか。
誰も助けに来てくれないのか。
学校だったらシャーロットがいつも助けてくれた。
学校じゃなくても寮が同じな彼女が助けてくれる。
どうして、こういう時に限って来てくれないんだろう。
理由は分かっている。
学校の方針として、闇落ちさせることを目標にしている以上、あの子でも逆らえないのだ。
「そ、そうだよね、あは、アハハ。で、でも、ジョンなら助けてくれるよね? ジョン、出てきて……」
ジョンと呼ばれた二頭身の丸々とした生物がシンシアの前に現れた。
目は確かに見えないが、それでもジョンの姿は彼女には分かるのだ。
『久しぶりだね、シンシア? 学校に入ってから呼ばれたことはなかったよね』
ジョンは話しかけてくれる。
「ともだち、できちゃったから……」
『そうか、僕ももうクビかな?』
この生物は幼い頃に友達もおらず家族から冷遇されていたシンシアが作り出した空想上の友達。目を合わせることが怖かったシンシアだから、目がない。
「わからな――ひっ!?」
『だ、大丈夫かい!?』
シンシアの肩に誰か触れた。
その這うような手は、足まで向かって行く。
助けるような手つきではない。
急に足先に激痛が奔った。
「ギャアアアアアア!」
音を聞こえなくなってしまったシンシアだが、感覚はある。
恐らく爪をはがされたのだ。
「痛い……いたいよう!」
『シンシア、可哀想に……どうにかして君の力になれないかい?』
本人と一心同体であるジョン。
シンシアも助けが欲しいと思っていた。
「助けて、くれるの?」
『ああ、勿論だとも。僕が君の力にならないときがあったかい?』
ジョンは優しく手を握ってくれた。
想像上でしかない生物だけど、誰よりもふわふわした手つきだった。
『願いを言うんだ。どうして欲しいかを』
「じゃあ、ジョン……この人たちをやっつけて!!」
『分かったよ。じゃあ、こう唱えるんだ。せーの』
ジョンからある言葉を授けられる。
シンシアはそれをスッと読み上げた。
「
口しかない二頭身の化物、ジョンが実体と化した。
いきなり現れたそれは軍の人間たちをかみ砕いた。
『僕が君の敵を全て倒してくるね!』