死亡エンドの弱小生徒たちを救うため、闇落ちさせて最強に育てたら教え子たちの愛が重すぎる 作:綿紙チル
アレンはシンシアを抱きかかえたまま、地下牢から外に出た。
相変わらず彼女が生み出した怪物はいるがアレンを襲ってこなくなっていた。
「この魔獣みたいなのは、シンシアが生み出しているのか?」
歩きながら、当の本人に問いかける。
この騒動をどう終わらせるのかはシンシア次第なのだから。
「……う、生み出しているというか、この子達はわたしの友達が実体化したもので」
「……詳しく教えてくれないか?」
シンシアはこくりと頷いた。
「わたし、幼い頃から自分にしか見えないお友達がいて……それがこの子たち、ジョンなんです。軍の人たちに拷問されたときにこの子たちを思い出して、助けてと願いながら
想像上の友達を召喚する力。
それがシンシアの手に入れた闇魔術、
「なるほど……じゃあこの世界から見えなくすることはできるか?」
「で、できると思います。やりますか?」
シンシアはアレンの腕の中で首を傾げた。
本来なら可愛らしい動作なのだが、目元の火傷のせいで痛々しい。
「……いや、まだいい。俺たちが脱出するまでは暴れさせておいてくれ」
「分かりました。じゃ、じゃあなりふり構ず人を襲わせます」
「ああ、頼む」
もう避難は済んでいる頃合いだろう。
ここから襲われる人はいないし、いたとしても大体死んでいる。
「……頼むと言ったが、嫌なら止めていいんだぞ?」
「……? ぜ、ぜんぜん嫌じゃないですよ? わたしのことを放っておいて、呑気に過ごしてるやつらの命なんてそんなものです」
シンシアは微笑んでいたが、アレンの心は痛くなるばかりだ。
こんなことを言う生徒では無かったのに変えられてしまった。
今の世界全ては、彼女の復讐対象なのかもしれない。
どこかでシンシアの心に余裕を作ってあげたい。
アレンはそう確かに思った。
秘密警察の拠点から出て、物陰に隠れていたエラと合流した。
「先生! シンシアさん! 無事でしたか……良かったです」
エラが大きな息を吐いている。
そこまで心配をかけているとは思ってもいなかった。
「ごめん。待たせた」
「いえ、いいんです。シンシアさんもお帰りなさい」
エラはシンシアの傷ついた顔から目を背けなかった。
一瞬だけ顔を歪めたが、臆することなくシンシアを見ている。
「え、エラさん……もしかしてわたしを助けに?」
「そうです。先生の頼みですから」
「……! せ、先生、あとでエラさんとの関係について教えてください」
シンシアは何かに気づいたのか、眉を上げていた。
ただ疑問に思うこともあるようで。
「わかった。移動中に話そう。エラ……俺の家まで頼む」
「了解です。では先生、今はシンシアさんを抱えていらっしゃるので、抱き着く形で失礼します」
エラに抱き着かれて地中に潜る。
そこでエラとの関係性をシンシアに答えるのだった。
この学校は元々生徒を爆弾として消費していたこと。
モルガナはそのせいで命を落としたこと。
次に学院側に目を付けられそうなエラに闇魔術を習得させ、戦場でも死なないように鍛えたこと。
「ど、どうしてエラさんはそんな先生を……?」
シンシアは自分のように拷問されたと考えた。
それなのに、どうしてアレンのことを慕っているのか分からない。
「アレン先生には酷いことをされました……でも、それは私のことを思っているからこそだって分かったからです」
シンシアはエラに言い知れぬ感情を覚えていた。
嫉妬にも似たような、殺意にも似たような。
「せ、先生がわたしたちを助けようとしているのは分かりました。それを学院側の手柄にされたことも、何となく……」
シンシアは納得したように俯いた。
だけど、ポツリポツリと涙を流していた。
こうなる前に助け出して欲しかった。
悪いのは世界だって分かっているのに。
泣いているうちにアレンの家に到着していた。
「……せ、先生、それでこれからどうするんですか?」
「……シンシアにも聞きたい」
「な、なんでしょう?」
アレンがシンシアをベッドに下ろした。
何日かぶりの優しい感触に、再び涙があふれ出そうになる。
「恐らくシンシアの闇魔術が暴走したことで街では百単位の死傷者が出ていると思う。俺はあなたを、来るべき反逆の日まで匿いたいと思う。それで大丈夫かどうかを聞きたいんだ」
「……わたしはどういう扱いになるのでしょう?」
「闇魔術の暴走で死亡したことにする。最後は自分の体を、自身で召喚した使い魔に食わせて……と説明して」
シンシアはアレンの意見に反論はなかった。
両親も兄弟もどうでもいい。
あいつらも壊すべき世界の一部。
奴らにとっても自分の生死なんてどうでもいいはず。
ただ、想像上の友達が必要なくなったのはこの学院に入ってから……本当の友達になってくれた女の子のことだけは気がかりだった。
「先生、わたしが生きていることをシャーロットに伝えて欲しいんですけど、か、可能でしょうか?」
シャーロットも助けに来てくれなかった。
だから壊すべき世界の一部なのかもしれない。
それでも、義理だけでも通したかった。
「……分かった。伝えて来よう」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃあ、ジョンの実体化を解除してくれ。俺は説明しに行ってくる。エラはシンシアのことを見ていて欲しい」
そしてアレンは自室をあとにした。
到着した軍や学校の教員たちに嘘の顛末を説明。
かなり時間が取られると思ったが、不祥事を民衆に知られたくないと思った軍の方がカバーストーリーを流しており、それに乗っかった。
それから避難指示が解除され、生徒たちも寮に帰っていた。
「シャーロットさん、話があるのですが」
「あ、アレン先生……」
泣きじゃくっている少女、シャーロット・ポールにアレンは声をかけた。