死亡エンドの弱小生徒たちを救うため、闇落ちさせて最強に育てたら教え子たちの愛が重すぎる 作:綿紙チル
「え、エラ? どうしてここに?」
アレンは彼女の接近に気づけなかった。
ドアの方を見ると閉まったまま。となるとすり抜けて入って来たのだろう。
音も無ければ、気配もしなかった。
いきなりの出現にびっくりしたのはそうだが、それよりも、モルガナと話しているのを聞かれてしまった……?
「……質問されたのは先生ですよ? 誰と何を話していたのか、教えてください」
エラは困り眉をしている。
だけど確信めいたものもあるようで、その瞳には揺らぎが無い。
「誰とも話してないよ。気のせいじゃないかな?」
「誤魔化すのはやめてください」
彼女はそう言って、ある場所に立った。
そこは先ほどまでモルガナがいた場所だった。
「先生、私はずっと見ていたんですよ。先生がアパートに帰ったときも、学校に来てからもずっと」
エラは瞬きせずにアレンを見つめている。
その一瞬も逃さないと言わんばかりの、写真機のようなの圧。
「ず、ずっと?」
「そうですよ。先生にお泊りを断られてから……今の私にとっては、すべての場所が海であり地上であり……先生の家の壁になることも問題にすらなりません」
それはエラにとって問題にならないだけでは……?
アレンにとってみれば、プライバシーの侵害が。
「ただそんなことはどうでもいいんです」
「良くはないが……」
「些事です。先生がたびたび口にするモルガナという単語……まるで、死んでしまった彼女がここにいるかのように語り掛けて、何が起こってるんですか?」
エラは真剣だった。
本気で心配しているような、そんな様子に見えた。
「…………」
アレンはモルガナの方を向いた。
彼女は何も言わずに頷いてくれた。
「エラには話しておこうか」
「……聞かせてください」
エラに分かるように黒い魔力を放出する。
彼女はそれを心地よさそうに感じていた。
「俺の闇魔術は魂に干渉できるのは知ってるね」
「はい。今でも魂に先生の魔力を感じます」
愛おしそうに自身の胸に触るエラ。
そんなに良いものだと、アレンには思えないのだが。
「初めて闇魔術を使った日、モルガナの魂を現世に呼び出すことに成功したんだ。それから俺はモルガナの魂と話すことができるようになった」
正直に説明した。
モルガナと話しているところを見られている以上、嘘をつく意味もない。
「理論的には分かりました……良かったです」
「うん。なんかごめんね」
エラはホッとしたような表情を見せた。
そんなに心配をかけるようなことだったのだろうか。
「先生、できるのであればですけど、私もモルガナさんと話せるように魂を弄ってもらえませんか? 二人でこそこそされるの、仲間外れにされるみたいで嫌なので」
エラにとっては確かに気に入らない状況だと思う。
家族に疎まれて育ってきた彼女からしてみれば……当然の気持ちだ。
「分かった」
『え!?』
今まで黙っていたモルガナが声を上げた。
「どうしたんだ、モルガナ?」
『いやだってえ……ねえ、折角先生と二人だけの関係だったのに』
「モルガナだって、他の人と話せた方がいいだろ?」
『それはそうだけど……!』
モルガナには悪いと思ってないので、不機嫌そうだけど一旦放置だ。
「じゃあ、エラまた魂を少し変えるね」
「はい。お願いします」
アレンはエラの肩に手を置く。
別に触れる必要性はないが、アレンの
「んっ……、魂を触られるって独特な感覚で、結構好きです」
「そうなんだ……」
エラは恍惚な表情を浮かべていた。
自分にも使ったことのある力だが、そんなに心地の良いものではない。
「一度瞬きして欲しいんだけど……これでモルガナが見えるようになるはず」
エラは言われた通りに目を瞑ってから、開く。
「あ、見えます。モルガナさんのことが!」
『や、やっほー』
モルガナは気まずそうだった。
エラは久しぶりに見た級友に近寄って行った。手を取ろうとして空ぶったかが。
「モルガナさん、一緒に先生を支えていきましょうね」
『うん。エラにも期待してるよ』
ただエラからの提案はちゃんと受け入れていた。
モルガナの表情にはどこか闇があるように感じられたが。
「さて、ここに来てしまった以上、エラにも協力して欲しいことがある」
「私にできることならなんなりと」
エラは恭しく頭を下げた。
そこまでしなくてもいいのに。
ただ、今は時間が無い。
「エラに今の状況を説明するね。実はクレアが――」
クレアが次の出兵に選ばれたこと。
実は王家の血を引いていること。
出兵が明日で時間がほとんどないこと。
「それでモルガナさんの闇魔術で情報を集めてるんですね……で、クレアさんを闇に落として覚醒させたいと」
「……それが一応の想定かな。ただ実際には間に合うかどうか」
モルガナは悩んでいるアレンに、苦しそうに告げる。
『二人とも、続きから話すね。クレアを闇落ちさせるのは、そこにいるエラほど簡単じゃないと思った方がいいかな。彼女の人生、凄まじいんだよね。何せ、毎月のように暗殺されそうになってる……』
「そ、そうなのか!?」
クレアが第十魔術学院に通い始めてから半年ほど。
毎月暗殺されそうになっている。それなのに。
『だけど彼女は一切、動じていない。実際に、二人ともクレアが取り乱すところを見たことある?』
「……ない」「俺も分からなかった」
アレンにも全く気づけなかった。
生徒のことは見ているつもりだったが、本当にクレアのテンションに上下あるのをほぼ見たことなんて無かったのだ。
『さあせんせい、どうやってクレアを
アレンにまだ結論は出せない。
だけど諦めるなんて選択肢は、もう捨てたから。
「クレアに直接話を聞きに行こう」