逆行したのにチートができない 作:タイムトリッパー
「ということで、よろしく、憂太!」
二週目五条はざっと説明して挨拶をした。
婚約者についてはいきなり話すほど馬鹿ではない。
ただ里香ちゃんについてと自分についてと乙骨との馴れ初めについてを説明した。
「僕が……里香ちゃんを呪った、ということですか……?」
乙骨憂太は青ざめていた。
「僕は……僕は、なんてことを……」
「でも、どうあっても結ばれる運命のカップルみたいだし、実際愛し合ってるから良いんじゃない?」
二周目の五条は、あっけらかんと言った。
「野薔薇から、かなりの良妻賢母って聞いてるよ。いつだって憂太を支えて、守ってくれてたって。最後、絶対死ぬってところを助けてもくれたって」
「支えて……守って……」
乙骨は俯いた。ずっと一緒だった。
怖いときも、辛いときも、里香は自分を守ってくれた。
「そうだ。里香ちゃんはいつだって、僕を守ってくれてた」
「でしょ? あとは憂太が手綱を取れるように練習だね。里香も憂太の言うこと聞いてたっていうし、男なんだから、ちゃんと女の子をリードしてあげなよ」
「リード……」
まるで普通の女の子を扱うみたいに、軽く五条は告げた。
「僕、里香と憂太の結婚の証人もしてるし、練習も見てきたから、なんでも聞いて!」
「それなら」
「うん」
「それなら、里香ちゃんの呪いの解き方を聞きたいです」
二周目の五条が瞬いた。
乙骨は俯いたまま、拳を握っていた。
「僕が呪ってしまったなら、里香ちゃんを解放してあげたい……」
「そっかぁ……。そういえば、野薔薇がそんなこと言ってた気がする」
二周目の五条は、少しだけ目を細めた。
自分の知っている乙骨憂太は、自ら里香を呪った。
死にゆく彼女の手に指輪をはめ、結婚しようと告げ、世界が決めた別れを拒絶した。
けれど、こちらの憂太は違う。
違っていい。
最終的に宿儺を倒すなら。
「憂太が望むなら、もちろん協力するよー!」
「……はい」
「その代わり、学校もしっかり通おうよ」
一周目の五条が横から口を挟んだ。
「一人は寂しいよ? それに、日本には――いや、僕には君が必要だ。僕も死にたくないからね」
「…………」
「君、すごーく強くなるみたいだから。頼りにしてるよ」
自分が必要だと言われて、乙骨は困ったように視線を落とした。
未来では、この人は死ぬらしい。
自分だけが特級術師として最後まで生き残る。
そんなことを言われても、まだ実感なんてなかった。
「呪術って、本当になんでもありなんですね」
乙骨はぽつりと呟いた。
「並行世界の人が来るなんて……」
「ほんとだよねー」
こうして、二人の五条に説得された乙骨は、四月から高専へ通うことになった。
なお、五条悟に対する里香ちゃんの好感度は爆上がりである。
仲人なら敬意を払わないとね!
◇
少し時は遡る。
二月三日、21時から始まった夏油傑誕生会は、深夜まで続いた。
用意をしてくれた伊地知には本当に感謝である。
牡丹餅を食べ、ケーキを食べ、ゲームをして、途中から何を祝っているのか分からなくなりながらも遊び続けた。
その中で、一周目の五条が妙なものを目撃した。
「傑ー」
「ん?」
二周目の五条が夏油の横へ寄っていく。
そこまではいい。
夏油がコントローラーを持ち上げた、その腕と脇腹の隙間へ頭を突っ込んだ。
ずぼっ。
「…………」
「!?」
一周目の五条が固まった。
何をしているんだ、こいつ。
「悟、狭いよ」
「入れたから狭くない」
「そういう問題かな」
そう言いながら、夏油は五条を追い出さなかった。
むしろ腕を下ろしたせいで、五条の頭を抱え込むような格好になった。
二周目の五条も当然のようにそこへ収まり、夏油に頬を押しつけながらゲームを続行する。
「……お前ら、いつもそれやってんの?」
「何が?」
二人揃ってこちらを見た。
「何がじゃねーよ」
何がなのかは上手く説明できない。
距離感がおかしい。
近い。
近すぎる。
俺らこんな近かったっけ。近かったかも……。
そしてよく見れば、夏油の反対側には硝子がいた。
こちらもこちらで、夏油へ寄りかかってゲーム画面を眺めている。
「硝子まで何してんの?」
「何が?」
「お前もかよ!」
「何がだよ、うるさいな」
硝子も五条も夏油もわかってないようだった。
なんなら硝子の頭がずれたら、肩を少し下げて寄りかかりやすくしてやっている。
「距離感おかしくない?」
「そうかい?」
「おかしいだろ」
「普通じゃない?」
二周目五条まで不思議そうな顔をする。
一周目の五条は、しばらく三人を眺めた。
仲がいい。
もちろん、自分達だって仲は良かった。
学生時代はいつも三人だった。
けれど、これは何か違う。
こいつら、距離感0距離である。
友達でも恋人でもこんなにくっつかない。
もはやそのベタベタっぷりはペットの域。
夏油の誑かしパワーが凄すぎるのか……!?
「硝子ぉ」
突然、夏油が甘えた声を出した。
「んー?」
「悟がこの前勝手に私のプリン食べたんだけど」
「傑! 今それ言う!?」
「今度チクるって言ったじゃん」
「名前書いてなかった! 俺無罪!」
「私が買ってきたところを見ていただろう!」
「美味しかった」
「はい自白。聞いたかい?」
「聞いた。で、求刑は?」
「テーブルの上の牡丹餅持ってきて」
「行ってこい」
「やだー! 俺落ち着いたばっかじゃん! 今傑の膝枕タイムじゃん!」
二週目五条が足をバタバタとさせ、頬を二週目夏油に押し付ける。
「牡丹餅くれないならほっぺた食べちゃうよ」
カプっと二週目五条のほっぺたを甘噛み。
「私もお酒のおかわり欲しい。五条お願い」
「全くもー!」
夏油が腕を動かし、五条は渋々パシられた。
と言っても、立って歩けばすぐのテーブルの上のものである。
五条は牡丹餅を持ってきて、そしてまた定位置に落ち着いた。
さらにその上に二週目硝子がオン!
「さんきゅ、五条。えらいえらい♪」
「乗るなよー、重いって。ちょっ 髪の毛かき回すなよ」
きゃっきゃっきゃ
「あっ……」
あっまーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!
一緒にいた七海と一周目硝子と伊地知は口からだばーっと砂糖を吐き出した。
それぐらいすごかった。
公衆の面前ですることか。
だがしかし待ってほしい。
初めはこうではなかった。
最初に夏油が硝子へ告げ口したのは、もっと大変なことだった。
呪霊はいない方がいいよね、と悟に聞かれた
肯定したら、そのまま悟が自分の前から消えてしまうところだった。
実際に消えたかどうかは重要ではない。傑がそう感じた。
慌てて訂正したらなんとか思いとどまった。傑はそう理解していた。
それは夏油に非常に大きな傷とおそれを作った。
怖かった。自分では抱えきれない衝撃だった。
だから近くにいた硝子に訴えた。
こいつ自分を悪者にしようとしてる! と。
夏油は正義マンだったので、それは驚天動地の出来事だった。
怖かった。どうしようかと思った。硝子は味方してくれた。
どうにかなった。成功体験だった。
それからだった。
悟に置いていかれたような気がしたときも。
悟が一人で何かを決めてしまったときも。
悟に腹が立ったときも。
寂しかったときも。
悟に直接ぶつけるのは戸惑ってしまうような事を、夏油は硝子に訴えるようになった。硝子は本当に困った時はちゃんと一緒に悟にクレームを入れてくれた。
十年以上経った今では、夏油はすっかり味をしめて、プリンを食べられたことまで告げ口する。
「傑、すぐ硝子にチクるじゃん!」
「言うよ。君、たまに意地悪してくるからね」
「悪かったって! ほら多分可愛い子はいじめちゃうとかそんなんだって!」
「すごい言い訳が来たね」
「五条、それは肝心の可愛い子に嫌われる奴だぞ。小学生かよ」
「嫌われてねーし! 嫌われてねーよな!?」
「どうかな? ごめん、大好きだよ、ショック受けた顔しないでよ」
あまーーーーーーーーーーーい!!
まさしく言葉すら出ない。
っていうか頬にカプってする!? する!????
一周目の五条すら驚愕に固まっている。
思考が真っ白になった一周目五条は、夏油に密着してチョークスリーパーをかけた。混乱のあまり自分でも何してるかわかってない。
「さ、悟どうしたんだい!?」
「プロレス? 俺もやる!」
「じゃあ私コントローラーもーらい。ほらお前らどけどけー」
七海達は、そっと退避した。
その夜は結局、五条2人と夏油は雑魚寝になった。二週目硝子は流石に割り当てられた部屋へと戻った。
二人の五条に挟まれた夏油は、寝る直前まで「暑い狭い」と文句を言っていたくせに、追い払おうとはしなかった。
翌朝。
一周目の五条はいつもの癖で早く目を覚ました。
今日も悪夢とセットである。でも隣に眠る夏油を見ると急速に落ち着いた。
自分の知る夏油ではないとはいえ、いまだに信じられなかった。
隣を歩める可能性は存在したのだろうか?
少し眺めていると、寝ぼけた夏油が身じろぎした。
「ん……悟……」
「ん?」
腕が伸びてきた。
ぎゅっと抱き込まれる。
「…………」
離れようと思えば、いくらでも離れられる。
けれど。五条は引き込まれるままにした。
五条はそのまま夏油にがっちりホールドされ、目を閉じた。
もう一度眠った。
久しぶりに、悪夢に魘されることなく、長く眠った。
◇
朝食後は乙骨との話し合い。それが終わったら今後の予定について話し合い。
今日の予定は全てリセットである。ごめん伊地知。
四人の事情聴取と今後の任務の振り当てであり、乙骨も入れて相談である。
二週目五条にとって、乙骨は幼くとも全てを話すべき同盟者だったというのも影響した。
ひとまずいるだけでいいから、と言われて座らされている。
「傑だけど、やっぱりこっちの傑が呪詛師になってる以上、監視はしないと不安だよね?」
一周目の五条が手を挙げた。
「ってことで、僕と組んで任務しようよ」
「明らかにオーバーキルです」
即座に伊地知が止めた。五条のいる現場に基本他の術師はいらない。
「えー」
「二級術師、いえ三級術師と組んでもらうなどで、いかがでしょうか」
「教師でよくない?」
二周目の五条が口を挟んだ。
「それなら学校から出ないで出来るし、出るとしても生徒と一緒の行動になるし。宿儺復活が間近の現状、流石に傑や硝子を一人で置いておくのはちょっと。硝子は恵と、傑は俺と行動か高専待機が安心かなー」
「もったいなーい! 短期間なら分かるけど、長期でしょ?」
夜蛾は頭を抑えた。
「その前に、知っている情報を全部吐け」
「良いけど、こっちの話も聞かせてよ」
二周目の五条は椅子へ深く腰掛けた。
「二つの世界の情報を合わせて、見えてくるものもあるかもしれないし。あと、お菓子とジュース出してね。情報料も欲しい。一年間の生活費にするから」
「伊地知ー! お菓子とジュースちょうだい。お昼はお蕎麦ね! 生活費はある程度は渡すけど、基本任務で稼いでよ。任務だけど……」
「腰を据えるな、お前は任務に行け、悟」
「嫌ですー!」
わちゃわちゃしているところへ、報告が飛び込んできた。
総監部で死者が出た。
空気が変わった。
「……早速?」
二周目の五条が呟く。
「早速だね」
夏油も笑わなかった。
未来情報をぶちまけた翌日である。
偶然だと考えるには、少々タイミングが良すぎた。もしかしなくても、策謀が渦巻いていた。
結果として、五条達はしばらく謹慎となった。
未来で罠任務が横行していたと聞いた直後なのだから、当然でもある。今の状況で不用意に外へ出す方が危険だった。
ついでに総監部そのものの護衛もする事になった。その間に尋問もする。
任務をしないことについて、文句は出なかった。
「桃鉄しながら未来喋ってればお金もらえるんだからいっかぁ」
「ダメに決まってるだろう。護衛も兼ねているんだから大人しく会議場で待機してろ」
「ええー! ずっとあそこで待機!? まじ!??」
「人が死んでるのだぞ」
「鼻歌まじりに罠依頼ぶつけて来てたじゃん。自分の番が来ただけだって〜。わかったよ、もう」
◇
「でさ」
お菓子の袋を開けながら、二周目の五条が言った。
「未来ってかなり大変な状況だから、出来れば全情報を僕にだけ言って、僕が取捨選択してほしいんだけど」
「え。やだ」
一周目の五条が即答した。
「私も嫌だよ」
夏油も即答した。
「悟にどれだけ重荷を背負わせるんだ」
「えー。僕なら慣れてるし」
「慣れているから何だ。君一人に全部預けて、誰に何を知らせるかまで君一人の責任にするなんて嫌だよ」
「でも五条がどんな酷いことをされたか言いふらすのも気が進まないな」
硝子が煙草を弄びながら言った。
「っていうか、本人にも言いたくない」
「こわぁ。僕何されちゃうんだよ」
一周目の五条が引いた。
「硝子が言いたくないって、どんだけ酷いことされんだよ」
「脳みそくり抜かれて」
「その時点で死なない?」
五条は真顔になった。
「いや、もうここまで来たらさ」
一周目の五条は頭を掻いた。
「関係者集めて、情報ばーっと出しちゃおうよ。羂索に情報が流れるのも、作戦変えてくるのも織り込み済みでさ。下手に情報統制して疑心暗鬼になるより、全部ちゃぶ台返ししようよ。っていうか総監部の前で情報独占します宣言って勇気あるよね……」
「でも、悟が心配するように、本当に扱いが難しい情報があるんだよね。こっちでいうこと判断するよ。12月までには入れるんだし、フルオープンは無しかな」
夏油がすぐに言った。
「悟が責められるのは嫌だよ。考えなしに悟を責める相手は絶対に出る」
夏油は一周目の五条を見る。
「私は十二月七日に帰るんだ。その後、悟を守ってあげられない」
「傑」
一周目の五条が、目を見開いた。
さっき見たものを思い出した。
二周目の自分が、何の遠慮もなく夏油の腕の中へ頭を突っ込んだ光景。
こっちの夏油はとことん五条に甘いらしい。
そう思うと、五条にいたずら心が湧いた。
「僕は十年一人ぼっちだったから、あと二年ぐらい耐えられるよ」
「…………悟」
効いた。
夏油の顔が曇り、五条は手応えを感じた。
だから、もう少しだけ押してみる。
「十年間、お前に捨てられたときのこと夢に見るし。一人ぼっちだし。辛いけど、あと二年ぐらいで全部終わるんだろ」
「私がいるだろ! 私がいるだろ! なんだよ、私を差し置いて世界にお互いしかいないムーブしやがって、同級生は私もいるだろ!」
二週目硝子が怒鳴ってさっと気配を消した一周目硝子の背を押した。
「硝子だけじゃやだ……」
「お前な!」
「硝子分も必要だけど、傑分は必須栄養素なんだ……」
半分くらいは、わざとだった。
こう言えば夏油が甘やかしてくれると思った。
昨夜から今日にかけて、それはもう十分に学習した。
可哀想な声も出した。
捨てられた、なんて言葉もわざと選んだ。
夏油の罪悪感を刺激している自覚だってある。
ただ。
口にしてみると、思っていたより駄目だった。
悪夢を見るのは事実だ。
あの日のことを今も夢見る。
捨てられたと思ったことは嘘じゃない。
一人ぼっち。
自分で並べた言葉に、夢の中で何度も見た夏油の背中が重なった。
「……あと二年なら、僕、一人でも……」
声が震えた。
あれ。
五条は自分の手を見る。指先が、わずかに震えていた。
「悟?」
夏油の顔色が変わった。
「……あれ。おかしいな」
泣く予定はなかった。
ただ、二週目五条のように、甘えたかっただけなのに。
目の奥が熱くなって、瞬きをしたら、一滴落ちた。
「……僕、本当に寂しかったみたい」
「さ、悟ぅ……!」
夏油が立ち上がった。そのまま五条を抱き寄せる。
「私がいるよ。十二月までずっといるから。こちらの私のことだって、一緒に考えよう。だから一人で何とかしようとしないでくれ」
「……うん」
「私が君を捨てるなんてありえないよ。私は世界より君を選ぶって誓ったんだから」
「でも、こっちのお前、知らない奴と家族を作ってて……俺のことはどうでもよくなったらしくて……」
「さ、悟〜!」
夏油の罪悪感に直撃した。
「私、私を殴ってあげるよ! 時間はたっぷりあるんだ。ギャフンと言わせちゃおう!」
「傑、それ自分」
「分かっているよ!」
「硝子ぉ!」
「なんで私に言うんだよ」
「こちらの私が悟を十年も一人にした!」
「だから私はいたって言ってるだろ!」
「そういう意味じゃないんだよ、硝子ぉ!」
「知ってるよ! みんなで夏油締めんぞ」
大騒ぎである。
少し離れたところで、乙骨はその様子を眺めていた。
朝に言われた言葉を思い出す。
『学校もしっかり通おうよ。一人は寂しいよ?』
あのときは、そういうものなのかな、くらいに思っていた。
この人は最強なのだという。
未来でも、今でも。
そんな人でも、一人は辛いらしい。
十年経っても夢に見る。
思い出しただけで、手が震えてしまうくらい。
乙骨は、自分の隣にいる里香を見た。
里香ちゃんは、ずっと一緒にいてくれた。
ずっと守ってくれた。
自分は一人ではなかった。
でも、里香ちゃんを解放したら。
その後は。
「……なるほど」
乙骨は小さく呟いた。
「一人は、辛いんだ」
だったら、四月から学校へ行くのも、そんなに悪くないのかもしれない。
「あー。今から私、酷いこと言う」
騒いでいた家入が、ちょっと覚悟した感じで言った。
「禪院家皆殺しにした犯人が許されるんだから、夏油いけんじゃね? 駄目?」
「は?」
五条が真顔になった。
呆れて見ていた総監部もざわざわとした。
代表して一周目五条がいう。
「何それ。それは許されないだろ。御三家潰して無罪はないだろ」
「でも実際許されたらしいし……。御三家皆殺しが許されるなら、宿儺倒せば一つの村皆殺しぐらい許されない? 実際、追い込まれてたって意味では総監部のやったことでもあるわけだし」
「確かに、呪術界は法治国家ではないけど……悪いけど、私としては何も言えないよ。理由はあったにしても罪は罪だし、当事者の私が言っていいことじゃない。それに、悟にそういう横車はおさせたくない」
「わかってる。総監部ここにいるから、聞いちゃえって思って。夏油には自分のやったことの責任を生きてとらせる。夏油が五条の盾になるなら、私たちは安心して全部話せる」
それに総監部は食い気味に否定する。
「いやいやいや。そもそも禪院家皆殺しがありえぬわ。無罪? ありえぬ」
「御三家を一つ皆殺しにしたんだろ?」
代表して一周目五条が聞く。禪院家壊滅の詳細は聞いてなかった。
呪霊ではなかったらしい。
恵は大好きなおばあちゃんのやったことなので一生懸命気配を消していた。
「うん」
「それで犯人が許された?」
「らしい」
「なんで?」
宇宙猫の心境で一周目五条が二週目五条に問う。
「知らない。今はそいつ普通に術師だから、それもあって言えないっていうか、言って良いかわからないっていうか」
「お主らか」
総監部の決めつけに首を振る。
「違う。まだやってない事で処刑しないって縛るなら話すけど……」
「待て待て待て。何故、庇い立てする」
「複雑な事情があるんだって。あと、宿儺討伐の立役者でもある」
「それでも御三家の一つを皆殺しで無罪はないわ」
総監部は断言する。
「でもそれが通るからさ。それなら夏油だって通るんじゃないって? もちろん、説得してこれ以上殺さないようにさせる必要はあるだろうけど」
家入がさらに言い募る。
「通らんわ。通らせるか!」
「僕も、それ通すのはないかな……。その、傑には悪いけど」
「いや、悟はそれでいいんだよ。それが正しいんだ。いや、確かにここまで来たら全部話しちゃう方がいいかもね。どの選択をしても後悔はするんだし、それが一番マシかも。一年後に超法規的措置とか個々の判断がすごく多用されるからね」
「僕はフルオープンがいい。関係者集めよう。知ってること全部出して、みんなで考えようぜ」
未来情報を一人に背負わせない。
責任も一人に背負わせない。
隠し事もしない。
誰か一人が判断して、間違えたら全部その人間のせい。そんな形にはしない。
羂索に情報が漏れるなら、それも込みで未来を変える。
どうせ既に、未来は滅茶苦茶に変わっているのだ。
だったら盛大にちゃぶ台をひっくり返してやればいい。
ただ、情報をまとめて整理する時間はもらう。
そういうことで、2月14日。
バレンタインデーに、未来情報合同説明会が開かれることとなった。
なお、せっかくのバレンタインなので、黄金世代プラス恵で、手作りチョコも配っちゃうよ!
議題は、日本滅亡級の未来について。
お土産は、手作りチョコレートである。
なお、そっとチョコを速やかに回収する準備も進められた。
この策謀溢れる状況で手作りの食べ物を受け入れられるか。