「カードゲームなんて興味なかったのに、いつの間にか夜の女王なんて呼ばれてるんだけど!?」   作:四大神が見てる

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第一話 夜の誘惑者(その2)

 

 

●ターン1巡目

 

プレイヤーA:ホスト

 

手札:5枚

 

ジェム:0

 

プレイヤーB:瑠璃

 

手札:5枚

 

ジェム:0

 

 

 

「先行は俺が貰うぜ、手札を五枚になるまでドロー! そしてジェムを一つゲット!」

 

 ホスト風の男がデッキからカードを引く。そして男の場には、ピンクの宝石……ジェムが一つ配置される。

 

「一応確認しておくぜ。毎ターンプレイヤーの元にはジェムが一つ配給される。このジェムを消費する事で、プレイヤーはカードをプレイする事が出来る! ジェムは毎ターン一個ずつ配給数が増加し、最終的には5個まで一度に配給されるようになるが、先行プレイヤ-は配給数が増えるのは3ターン目以降だ。最終的に、手持ちジェムが10以上になったプレイヤーの勝利になる!」

 

「ありがとう、詳しく教えてくれて。もっと教えてくれると助かるわ」

 

「へへへへ、いいぜ、手取り足取り教えてやるよ、ゲームが終わった後でも色々とな!」

 

 自分が勝利した後の妄想に下卑た笑顔を浮かべながら、ホスト風の男は手札を一枚、ジェムを消費してプレイする。

 

「俺はジェムを一つ消費し、見習いピエロライダーをプレイ! 先行プレイヤーはバトルできない、これで終了だ!」

 

『ゲヒヒヒー』

 

 男の場に現れるのは、スクーターにのったピエロのようなモンスター。座席の上で、ピエロらしく立ち上がってボールでジャグリングをしているが……見習い、というだけあってその手つきはいささか危なっかしい。

 

「それでは私のターン。ドロー」

 

 カードを引いた瑠璃が、手札に目を通す。その瞳が、すっ、と冷酷に細められた。

 

「私はジェムを消費し、手札からイベントカード“絡みつく繰糸”をプレイ。これによって、全てのプレイヤーがモンスターカードをプレイするのに必要なジェムの数は、3ターンの間一つ多くなります」

 

 ぶあ、と上空から、いくつもの細い糸が場に垂れかかってくる。それらはお互いのプレイヤーの手足に絡みつき、その動きを阻害する。

 

 ホスト風の男はちょっと嫌そうな顔をしながらも、律儀に瑠璃のプレイを評価した。

 

「阻害系のカードかい? 面白い手札だが……そういうのは自分の場にモンスターがいてこそだぞ? がら空きの場で自分の動きまで遅くしたら駄目じゃないか」

 

「あら、本当だわ。私としたことが、ミスしてしまったわ」

 

 ふふ、と小さく笑いながら、少女は抱きかかえた兎の縫い包みで顔を隠す。そのデッキから、シャコン、と一枚のカードがピックアップされた。

 

「絡みつく繰糸のもう一つの効果。効果処理後、デッキから“パペットドール”一体をトラッシュに送る。これで私は何もできなくなってしまったわー、ターン終了」

 

「ふぅん。じゃあ、俺のターン、と」

 

 

 

●ターン2巡目

 

プレイヤーA:ホスト

 

手札:4枚

 

ジェム:0

 

プレイヤーB:瑠璃

 

手札:5枚

 

ジェム:0

 

 

 

 ターン移行を受けて、自らのデッキに指をかける男。が、彼はにやっと笑って、デッキの上から手を離した。

 

「さて。本来、このターンで俺が配給を受ける事が出来るジェムは一つ。増えていくのは次のターンからだな。だけど、ルール上、ここでドローを放棄する事で代わりにジェムを一つ多く配給を受ける事が出来る。俺はこのルールによって、ドローの代わりにジェムを一つ追加する! これでジェムの消費数を増やされても問題ないぜ!」

 

「あら」

 

「俺はジェムを二つ消費し、もう一体の見習いピエロライダーをプレイ! そして見習いピエロの効果発動、このカードが召喚された時、自分の場にもう一体の見習いピエロが居る時にコントローラーは一枚ドローできる。下準備が終わった所で……バトルだ、お嬢ちゃんに直接攻撃……ダイレクトトレジャー!」

 

 ジャグリングしていたピエロが、ボールにナイフを紛れ込ませる。そして手元に巡ってきたそれを、投擲!

 

 2体のピエロが放つ幻影のナイフは瑠璃の盾にしたぬいぐるみに突き刺さると、しゅわあ、と消滅する。

 

「モンスターがダイレクトアタックした時、そのモンスターのランクに見合ったジェムを相手から奪う事が出来る! ま、お嬢ちゃんのジェムは0だが、その場合はローンジェムを獲得する事が出来る! 今回はランク1のモンスター二体でダイレクトトレジャーに成功したから、ローンジェムを二つ入手できる。これは俺の場において普通のジェムと同じように使えるけど、あんまり放置しない方がいいぞ? ローンジェムは殴っても取り換えせないからな!」

 

「あらあら、そうなんですか。じゃあ、早くお兄さんに攻撃して取り返さないといけない訳ですね」

 

「そういう事だな、これでターンエンド! お嬢ちゃんのターンだ」

 

 巡ってきたターンに、うーんと悩み、瑠璃はカードをドローする。

 

 それと同時に、一つ配給が増えて二つのジェムが支給される。

 

 これで、瑠璃もコスト1のモンスターなら召喚できる訳だが……。

 

「言っておくが、ジェム一つでプレイできるモンスターの能力なんてどれも似たようなもんだぜ。このまま後追いを続ける限り、お嬢ちゃんの不利は続く。考えなしにカードは使わない方がいいぜ」

 

「ふふふ、ご説明ありがとうございます。それでは、私はこのカードを使ってみましょうか」

 

 ピッ、と瑠璃が一枚のカードを翳す。たちまちジェム二つが消費され、場にモンスターが召喚されるが……。

 

「私は“パペットドール ワルグチのプーゴ”をプレイするわ」

 

 瑠璃の場に現れたのは、大きな豚の縫い包み。でっぷり太ったそれは、手にした鋏で自らの腹を切り裂くと、中に詰まった綿を露にする。

 

「う、うげえ?!」

 

「ワルグチのプーゴの効果。トラッシュのパペットドールを一体、場に特殊召喚する。おいでなさい、“ヒガミのフォッコ”!」

 

 プーゴの切り裂いた腹の中から現れるのは、狐のような新しいドール。ふっくらしたプーゴと違い、ガリガリにやせ細ったそれは、パペットドール・ヒガミのフォッコ。

 

 赤べこのように首をぐらぐら揺らし、目玉をガランガランさせるそれが耳障りな甲高い声で叫びをあげる。

 

『キィヒヒヒヒ!』

 

「おかしいな。そのプーゴとかいうモンスター、ジェム一つで召喚できるコストには見えないけど?」

 

 見たところステータスは確かに低いが、トラッシュからのリアニメイト効果を持っているモンスターがそんなに安いはずはない。

 

「御明察。プーゴは相手がローンジェムを所有している場合、その数だけ召喚コストを下げる事ができますの」

 

「ふぅうん。そいつを召喚する為に、敢えて最初のターン攻撃を食らったのか。なかなか腹芸が得意なお嬢ちゃん……と言いたいが、その為にローンジェムを相手に与えるのはまあ、下策だぜ?」

 

 このゲームにおいて、勝利を目指すうえでの安牌はいくつかあるが、その一つがローンジェムを多く獲得する事だ。ローンジェムは持ち主の勝利点にはなるが、その一方で相手には奪われない。

 

 バトルを介してジェムを奪い合うこのゲームに置いて、プレイヤー間を移動しないローンジェムを獲得すればするほど対戦相手との格差は開いていくのだ。

 

「なるほど。よく肝に銘じておきます。……それではフォッコの効果発動。このカードをプレイした時に相手はランダムに手札を一枚、トラッシュに捨てる。申し訳ありませんが、一枚手札を捨ててくださいませ」

 

「へえ……やるじゃん。その為に1ターン目にそいつをトラッシュに送ったのかな? ま、良い取引とはいえないかもだけど」

 

 余裕しゃくしゃくで、手札を一枚トラッシュに送るホスト風の男。捨てられたカードは、イベントカード“連続召喚”。コスト0で発動できるイベントカードで、1ターンに二回のモンスターカードのプレイを可能とするものだが、コスト増加カードを使われている今では意味が薄い。捨てられても惜しくはないカードだ。

 

 これで男の手札は二枚になってしまったが、彼の顔にはまだ余裕の色が濃い。

 

 さっきも言ったように、ローンジェムを持っている彼はまだ有利な立場だ。それに、このゲームはターン経過とともに扱われるジェムの数が加速度的に増えていく。まだまだ、焦る局面ではない。

 

「それでは、バトルといきましょう。プーゴ、フォッコ! お相手のピエロに攻撃です!」

 

 見習いピエロに襲い掛かる、狂暴な縫い包みたち。ばね仕掛けのように飛び出したフォッコの頭がピエロを噛み砕き、プーゴが鋏でピエロの首をちょんぎる。

 

 無惨に撃破されたピエロたちの亡骸は、輝くジェムに変化すると瑠璃の場へと一人でに収まった。

 

「相手モンスターを撃破した事で、コスト分のジェムをいただきますね。私はこのジェムを一つ使い、保険カードをセットします」

 

 ピコン、と瑠璃の場に一枚のカードがセットされる。

 

 保険カードとは、特定の条件を満たした時に自動的に発動する特殊なカードだ。一度セットしたらプレイヤーの意思に関係なく発動する。

 

 その効果は千差万別であり、一体何が起きるか予想する事は困難だ。

 

 男は多少眉をひそめたが、考えても仕方ない、と推測を打ち切った。

 

「ふふ。これで私のターンは終了です」

 

 

 

●ターン3巡目

 

プレイヤーA:ホスト

 

手札:3枚

 

ジェム:2(うちローン2)

 

プレイヤーB:瑠璃

 

手札:4枚

 

ジェム:1

 

 

 

「俺のターン、ドロー。んでもって、俺もジェムを二つ貰えるわけだ。これで、俺の場にあるジェムは、ローンジェムも合わせて4つ! お嬢ちゃんのイベントカードの妨害があっても、コスト3までのモンスターが召喚できるって訳だ。正直、ちょっともったいなくはあるが……宵越しの金は持たない主義でね! 俺は手札から、コスト3、“ジャグラー・ザ・フレイムヘッド”をプレイ!」

 

 男の場に現れたのは、燃える髑髏をジャグリングする首無しピエロ。その失われた頭に、回転する髑髏が収まると「ケケケケー!」と甲高い笑い声をあげた。

 

「ジャグラー・ザ・フレイムヘッドは相手プレイヤーのモンスターに二回まで攻撃できる! んでもって、お嬢ちゃんのモンスターのステータスはそれより低い! バトルだ、豚と狐の縫い包みに攻撃!」

 

 主人のリクエストに応えて、首無しピエロが炎の髑髏を投擲する。それは隕石のように場に降り注ぎ、瑠璃の場のモンスターを爆発で包み込んだ。悲鳴のような叫びをあげて燃え尽きる二体のパペット、その跡地にはジェムが合わせて5つ並び、吸い込まれるように男の場に戻った。

 

「ははは、こりゃあいい! コストを踏み倒しても、倒された時にはジェムが手に入るもんな! これで所有ジェムの差は5と1!」

 

「あら、倒されてしまいましたわ。でもここで、フォッコのもう一つの効果発動。私の手札から一枚、トラッシュに捨てなければなりません。私は“ビビリのラ・クーン”をトラッシュに捨てますわ」

 

 手札を一枚、トラッシュに捨てる少女。効果というよりそれはデメリットではないか、と男は訝しんだ。

 

「あんまり悠長にもしていられないぜ、さらに俺はコスト1を支払って保険カードをセットする!」

 

 男がセットした保険カードは“巨獣の軋み”。召喚コスト3以上のモンスターを召喚した場合に発動し、そのターンそのモンスターを攻撃できなくする。後半になればなるほどジェムの増加が加速し、大型モンスターによる一発逆転がしやすくなる。それを阻止するカードである。

 

「これで俺のターンは終了!」

 

「ふふ、私のターン。ドロー……そして、ジェムを三つ、獲得しますわ。そして私はジェムを二つ使い、手札から“ウソツキのマーシュ”をプレイします」

 

 瑠璃の場に現れるのは、本来召喚コスト1の鼠のような弱小モンスター。小さな毛玉のようなパペットが床をこちょこちょ動きまわるのを見て、男は厭味ったらしく小さく哂う。

 

「おいおい、この場に及んでそんな壁モンスターでしのぐつもりかい?」

 

「ふふふ、どうでしょう。鼠の一噛み、猫をも殺すといいますでしょう? ……これで私はターンエンドです」

 

 

 

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