「カードゲームなんて興味なかったのに、いつの間にか夜の女王なんて呼ばれてるんだけど!?」   作:四大神が見てる

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第二話 私にカード部なんて無理無理無理!(その2)★

 

 

 

 

 

 

 

 

●ターン1巡目

 

プレイヤーA:石垣

 

手札:5枚

 

ジェム:0

 

プレイヤーB:瑠璃

 

手札:5枚

 

ジェム:0

 

 

 

 

 

「では、私先行で行きます! 手札を五枚引いて、ジェムを一つゲット!」

 

 先行は先輩からだ。こちらとしても異論はないが、しかし先輩はどんなデッキを使うのだろう?

 

 ちょっと楽しみだ。カード部の部長というからには、きっと強いんだろうし。

 

 ワクワクしている前で、先輩が手札からカードを一枚引く。来るか!

 

「私はジェムを一つ使い、手札から“苔生したゴーレムの破片”をプレイ!」

 

 キュイーン、と光と共に先輩の場に現れるのは、名前通り苔生した石の欠片のようなもの。

 

 コトコト微妙に動いているのが、先輩のモンスター……らしい。モンスター? え?

 

「これで私のターンは終了です」

 

「あ、えと、はい。では私のターン、ドロー。んでもってジェムを一つゲットします」

 

 おっとと、困惑している場合じゃない。私はデッキからカードを一枚引き、手札に目を通す。

 

 んー……。ちょっと困ったな。私の手札のパペットドールって、基本的に能力重視でステータスは高くないんだよね。ストレートに、先輩のモンスターを突破できるようなカードがない。

 

 ま、それならそれでやりようはある。とりあえず、今後の布石を打っておこう。

 

「私はジェムを一つ消費して、手札から“ウソツキのマーシュ”をプレイします!」

 

 こちらが召喚したのは、毛玉のような見た目のちょろちょろする鼠の縫い包みモンスター。妙に学校の階段が似合っているそれが、私の足元を駆け抜けて思わず声があがる。

 

「キャッ、こら、スカートの下をくぐるな!」

 

『ヂュヂュ』

 

 私に怒られて、マーシュは素直に持ち場に戻る。ふぅ、と小さく息を吐いて、私はターンを終了した。

 

「これでターン終了です」

 

 

 

●ターン2巡目

 

プレイヤーA:石垣

 

手札:4枚

 

ジェム:0

 

プレイヤーB:瑠璃

 

手札:5枚

 

ジェム:0

 

 

 

「では、私のターン。私はドローせずにジェムを増加します!」

 

 先輩の場に、ジェムが二つ出現する。

 

 となると、手札にキーカードを握っているな。何をする気だろう。

 

「私はジェムを二つ消費し、手札から“植生したゲートゴーレム”をプレイします!」

 

 先輩の場に現れたのは、石のようなモンスター。旧い遺跡の門のような傾いた石碑を、蔦やら苔やらがびっしりと覆い尽くしている。辛うじて、埋め込まれた宝石のようなものがモンスターっぽさがあるといえばあるといった感じだ。

 

 またしても攻撃的とは言い難いモンスターの出現に目をぱちくりさせていると、対面する先輩がゆっくりと眼鏡を直しながら口を開いた。

 

「ふふ、青坂さん、あまりカードに詳しくない貴女に分からん殺しをするのはフェアではないので解説しますね。私のデッキは、所謂トータスビルド、と呼ばれるものです」

 

「は、はあ……」

 

「このゲームはジェムを集めてしまえば勝利であり、敵を倒さずともジェムは供給されます。それを生かして、徹底的に守りに入り、自分の手持ち資産が勝利条件を満たすまで耐え抜く、それがトータスビルドと呼ばれる戦術です。私のモンスターは相手に攻撃を仕掛ける事が出来ない代わりに仲間を並べる事でステータスが上昇する能力を持っています。これを場に並べ、相手のダイレクトトレジャーを防ぎつつ、総資産が10を越えたら自分のモンスターを破壊し、ジェムを回収する。そういうデッキです」

 

 眼鏡をキラーンさせながら解説してくれる先輩。

 

 なるほど、このゲームはそういう戦術もあるんだ。勉強になります。

 

「でも教えていいんですか、それ」

 

「何。経験者であれば私が並べたモンスターを見て言われずとも理解しますから。ハンデのようなものです」

 

「むむむ……」

 

 並ぶ事でステータスの跳ね上がった先輩のモンスターに思わずしり込みしてしまう私。

 

 これは……どうだろう。やっぱり相手はカード部の部長、私なんかで勝てる相手じゃ……。

 

 大人しくこのまま負けてしまおうかな……。

 

『あらあら。随分弱気な事。そんなんじゃだめよ?』

 

「え……」

 

 ドクン、と胸が脈動する。

 

 発作? いや、違う。なんだか体が熱くなってきて……なんだろ。

 

 先輩の自信ありです、っていう顔を見ていたら……それを是が非でも、崩したくなってきた。

 

「こちらのターンはこれで終了です」

 

「……私のターン。ドロー……あと、これでジェムは二つ貰えるんですよね?」

 

 自分の場に増加したジェムを見て、しばし思案。……よし!

 

「私はコストを1払って、手札から“ヤキモチのリザド”をプレイします!」

 

『ミミミミ……!』

 

 私の場に現れるのは、黒いトカゲのようなパペットドール。影が立体化したようなモンスターが、唯一それだけは色がついている紫の瞳をぱちくりさせる。

 

「“ヤキモチのリザド”の効果発動! このモンスターを召喚した時、私は手札を好きなだけ捨てる事ができます。そして捨てた手札二枚につき、相手の手札を一枚ランダムに捨てさせます。では、私はこれと、これを捨ててっと」

 

 ぽぽい、と手札から二枚のカードをトラッシュに捨てる。えーと、捨てるのはこれと……これ!

 

「ほら、私が二枚捨てたから、先輩も一枚捨ててくださいよ」

 

「え? え……? わ、わかったけど……効率悪すぎない、その効果?」

 

 訝しみながらも、素直に手札を一枚捨ててくれる先輩。ふふ、案外そうでもないんですよ。ま、種明かしするのはまた後かな。

 

「じゃあ次はバトルに入りますねー。リザドとマーシュで、先輩のモンスターに攻撃!」

 

「え、ちょ、貴方達のモンスターのステータスじゃ私のモンスターは……!」

 

 そう、その通り。先輩のモンスターは効果によって互いを強化している。私のパペットドールでは敵わない。

 

 でもそれでいいのだ。

 

 私の命令に従って突撃したパペットドール達が、自分から壁に激突して砕け散る。勿論、私のモンスターを倒した事で、ジェムは先輩のものだ。

 

「じ、自分のモンスターを全滅させた上で、ジェムを相手に譲って……手札を2枚すてて……な、何がしたかったの……?」

 

「まだ終わってませんよ。マーシュの効果発動! 先輩、手札を一枚選んで捨ててくださいね」

 

 にっこりと笑い掛けると、先輩ははっとして自分の手札に目を向けた。

 

 先輩の手札は、先行1ターンの五枚から補充していない。モンスターを2体召喚し、これで2枚捨てられて、残り一枚。

 

 さて。

 

 先輩としては次のターンもジェムを増やしたい所だろうけど、手札一枚で私の攻撃をやり過ごせるかな。私は見せつけるように残り3枚の手札を先輩に向けてひらひらさせた。

 

「っと、さらに私はジェムを一つ使って、保険カードをセットします。これでターンエンド! えへへ、素寒貧になっちゃいましたね」

 

 

 

●ターン3巡目

 

プレイヤーA:石垣

 

手札:1枚

 

ジェム:2

 

プレイヤーB:瑠璃

 

手札:2枚

 

ジェム:0

 

 

 

「それでは私のターン……ドロー! このターン貰えるジェムは二つ、これで合計四つ……!」

 

 流石に手札一枚では何もできない、今回はドローする先輩。大分段取りが狂ったのか、ちょっと焦っているように見える。捨てさせられた手札に必要なカードがあったかな?

 

「やりますね、青坂さん。でも私がトータスビルドだからと、守ってばかりと思わない事です。私は手札から、ジェムを2つ支払い、“鉄拳のトーテムポールズ”をプレイします!」

 

 先輩の場に現れるのは、グー、チョキ、パーの形をした石像が積み重なったようなゴーレムモンスター。これまでのと毛色が違い、どことなく攻撃的に見える。

 

 となると……。

 

「バトルです! がら空きの青坂さんに、ダイレクトトレジャー!」

 

 案の定、先輩は攻勢に打って出た。確かにここでダイレクトレジャーを決めればローンジェムをゲット、私と差を広げる事が出来るけど……。

 

 甘いなあ。

 

 そんなの、想定してるに決まってるじゃん。

 

「ここで私の保険をプレイします! “差別なき停戦命令”!」

 

「なっ……」

 

「このカードは、自他問わずプレイヤーに対するダイレクトトレジャーに対して発動し、それを無効にして攻撃モンスターを手札に戻します。ということで、そのモンスターにはお帰り、願いますねー」

 

 発動した保険カードによって攻撃を無力化され、バウンドするようにして先輩の手札に戻されるモンスター。先輩は眼鏡がずり落ちているのにも気が付かず、自分のミスにわなわなと震えている。

 

「な……な……」

 

「もう先輩、初志貫徹しないと駄目ですよ? トータスビルドで行く、と決めたなら半端なアタッカー入れちゃ駄目です。でないと、こういう事になりますよ?」

 

「あ、貴女、最初からこの展開を読んで……?」

 

 それは勿論。だって先輩とっても素直なんだもの……そういう人、嫌いじゃないですよ。

 

「く……で、でも私の場にはまだゴーレムモンスターが居る! そう簡単に突破できると思わない事ね、これでターン終了!」

 

「はい、では私のターン、ドロー。えへへ、これでジェムが三つ貰えました、っと」

 

 手札を確認して、私はにっこりと笑う。

 

「それでは、私はジェムを三つ消費しまして、“ワルグチのプーゴ”をプレイします」

 

 ずももも、と私の場に現れる豚のぬいぐるみ。手にした鋏で腹をかっさばくと、そこから綿をかきだしていく。その中から現れるのは、先ほど倒されたマーシュの姿!

 

「プーゴは召喚時、トラッシュのパペットドール一体を呼び出す事ができます。そして、トラッシュから復活したマーシュは、パニッシュメントを持ちます!」

 

 私の説明に、先輩の目に理解の色がよぎる。

 

「そうか、その効果の為にさっきは自爆特攻を……!」

 

「そういう事です、先輩。気づくのが遅いですよ、経験者なのに」

 

「相手にジェムを渡してまでする事じゃないでしょ?! 自分のモンスターを何だと思ってるの!」

 

 そうかな? パペットドールはトラッシュから呼び出すカードが多いカテゴリだし、それって実質合意って事だと思うんだけどなあ。

 

 まあいっか、これ以上は水掛け論だ。

 

 私の常識、相手の非常識、ってね。

 

「それじゃあバトルです! マーシュでゲートゴーレムに、プーゴでゴーレムの破片に攻撃!」

 

 ちょろちょろ、と走っていった縫い包みの鼠がごそごそとゲートの中に潜り込み、突如として燃え上がる。炎によって瓦礫を繋ぎとめていた草木が燃え尽き、ガラガラと崩れ落ちるゲートゴーレム。

 

 それによってゴーレムの破片のステータスは元に戻る。そうなれば流石にプーゴでも、コスト1のモンスターぐらいは容易く撃破できる。

 

 アイスピックのように閉ざした鋏が石に突き刺さり、割り砕く。

 

「これで、ジェムを計三つ、頂きました♪ ありがとうございますね、先輩」

 

「ぬぐぐぐ……」

 

「これで私はターンエンドです」

 

 

 

 

 

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