【イシュタル・ファミリア】の本拠、その頂上、そこでは下層の喧騒が嘘の様に静まり満月の光が優しく照らしていた。
まるでこれから生贄となる娘を憐れむ月神の様に。
贄姫の為に設けられた祭壇には逃さぬとでも言うように4本の鎖が伸びその一つ一つが春姫の四肢に繋がっている。
そんな春姫の前にイシュタルが立ちその手には殺生石が握られていた。
「さぁ春姫よ!!その身を差し出すのだ」
怪しげな光が殺生石から放たれ運命を受け入れた春姫は目を閉じる。
そんな春姫の耳に扉を蹴破る音が響き目を開け振り返ると下へと続く階段が明け放たれ黄色の異形がそこには立っていた。
「何だ貴様は?……………………いや、その姿、色は違うが前に見たことがある、ゼッツ、ベル・クラネルだな」
「ベル様?アレが?」
困惑する春姫を他所にイシュタルとベルは話を続ける。
「彼女の魂は渡さない、彼女の魂は彼女の物だ、お前がどうこうしていい物じゃない」
「良いや、私の物だ、私が拾い育てた、故にその命をどう使おうと私の勝手だ、ついでだ、貴様も私が拾い育ててやろう」
「断る」
「ならば死ね!!私の邪魔をする者は誰であろうと許さん!!」
イシュタルのその言葉を合図に周囲で控えていたアマゾネス達が襲い掛かるがベルは雷速で移動しあっという間にアマゾネス達を気絶させる。
「馬鹿な、まさかここまでとは…………」
イシュタルの頬を汗が流れる。
「今度はお前だ、グッ!?」
しかし突如ベルの体に不調が現れ体が点滅し始め足取りが覚束なくなりイシュタルはニヤリと笑う。
「どうした?相当なダメージを負っている様だな、当然か、下層にも数多の眷族を置いていた、ここまで来るのに相当ダメージを負っただろう、だが私の邪魔をした貴様は許さん!!フリュネ!!」
イシュタルが名前を呼ぶとまだ控えていたのか美女が多いアマゾネスの中でも悪い意味でとびきり目立つ巨大な女が現れた。
「ゲゲゲ、呼んだかいイシュタル様」
「奴を貴様にくれてやる、煮るなり焼くなり好きにすると良い」
フリュネはベルの姿を見るとニタリと気持ち悪い笑みを浮かべ戦斧を担ぐ。
「なら好きにさせてもらおうかね!!」
そう言って襲い掛かるフリュネの攻撃をベルは何とか回避しカプセムを入れ替える。
BOOSTER メツァメロ メツァメロ メツァメロ
「ハァ!!」
上手く動かない体に鞭を打ちカプセムを回転させる。
Good LUCK Rider ゼ ゼ ゼ ゼ ゼッツ BOOSTER!!
同時にベルの両手両足、そして顔にマフラーの様な物が現れ体も多少強固になる。
「な、何だいありゃあ」
「夜の終わりだ」
ベルはそう言うとトリガムを3度押しブースターカプセムを回転させる。
「夜の終わり〜?ゲゲゲゲゲゲ!!まだまだ終わらないよ!!寧ろこれからが夜の始まり!!つまりあたいらの時間がさ〜!!」
フリュネは下衆な笑み浮かべながらそう言いベルに戦斧を叩き付ける。
「ベル様!!」
土煙の向こうで春姫が叫び次第に煙が晴れていくがそこにベルの姿は無く、春姫は一瞬ベルの姿を幻視する。
次の瞬間、まるで空から雷鳴が降ってきた様にフリュネに蹴りを入れるベルの姿が現れる。
フリュネは何が起こったのか分からないまま意識を失いその場に崩れ落ちた。