「で、結局何しに学園都市に来たんだ?」
とりあえず第7学区を散策していたら何か思い出すかもしれないと思っていたのだがなかなか思い出す気配がないため上条は訊ねる。
何が目的なのかを。
「うーんとねぇ・・・何かを見届けなきゃっていうのは分かるんだけどねぇ・・・どうしよっか?」
「どうしようか?じゃねぇ!で何を見届けるんだ?」
「うーん、うーん?うーん…わかんない☆」
「てへぺろ☆みたいな感覚で答えるんじゃありませんことよ!!!」
どうやらこの行き倒れ少女は記憶消失らしい、このまま放置というのも後味が悪いですし、上条さんとしても何か事件に巻き込まれるんじゃないかという予感もあってそのままこの場を去るのは気が引けてしまっていた。
このまま
しかし、行き倒れ少女はどうやらその気はないようで。
「お兄さんのお家はどこー?ねぇねぇ?お兄さん聞いてるー?」
くいくいと袖を引っ張ってくる、この子は一体何を言っているんだ上条さんはその言葉に耳を疑った。
お家?ねぇ今なんて?
「お家!お家!泊めて泊めて!」
「待て待てこの行き倒れ少女!何を言い出すんだお前さんは!?これ以上うちに居候を増やす余裕はありません!」
「むー・・・いいじゃん!ちょっとくらい!ケチ!どケチんぼ!!」
「よーし分かったそこまで言うなら絶対に泊めねぇ
「いーやー!!」
という少女の叫びは、まるで非常ベルか何かのように第七学区の雑踏に響き渡った。通行人たちが何事かと振り返るが、行き倒れ少女と上条の奇妙な攻防を見てすぐに興味を失って歩き出す。学園都市では珍しい光景でもなかった。
しばらくして、
____
日も落ちて来た頃垣根帝督と
「まさか
膠を水で溶いた際に発生した臭いがひどすぎて一時の避難かつ晩御飯も兼ねてファミレスにたどり着いたのだ。
「帰る前に消臭剤やらスプレー買いに行くぞありえねぇあんな臭い」
「腐るともっとひどい臭いがするぞ」
「ふざけんな」
天井を仰ぎながら悪態をつく垣根余程耐えられなかったらしい。
「しかしまぁ、あたし食べられるのあるか?ヴィーガン向けの奴とかねぇかな」
「ダキニちゃんって
「基本はな、それとなヴィーガンと
注文用のタブレットをつつきながら食べれそうなメニューがないかとページをめくっていく。
するとサラダパスタが目に入るカートの項目にスライドする。
「あたしこれにするわ、まだ決めてねぇの?」
「うーんお肉か魚か…」
「俺はいい、早く決めちまえ」
「先輩ドリバだけでも頼みましょうよ、カートに人数分入れますからね。決めた!アジフライ定食に決定!」
「ずいぶんと庶民的なやつ選んだな」
「ふっふーん、魚ということは揚げ物にしてもカロリーオフなのです!実に健康的!」
「揚げ物の時点で終わってんだろおい」
智沙音はむっとしたように頬を膨らませ、タブレットをトントンと叩いた。
「先輩は揚げ物に失礼すぎますよ。アジフライだって、揚げたては衣サクサクで中はふわふわなんですからね。それにほら、青魚はDHAが豊富で頭にもいいんです」
「俺の頭が悪いとでも言いたいのか」
「言ってませんよ、ただ先輩はもう少し柔軟性があってもいいかなって……あう、痛い・・・」
垣根は智沙音の額にデコピンをするとタブレットを奪って画面を操作し各々選んだ料理を注文した。
「飲み物勝手に持ってくるぞ」
「あたしレモネードがいい」
「へいへい、彼氏さんのご注文は?」
「なんでもいい」
へーいと軽くうなずき席を離れるダキニ、それを確認した智沙音は垣根に顔を向ける。
「ふふ、彼氏ですってふふふ・・・」
「今更だろ、おいふぬけた顔でじゃれつくなおいこら」
「えへへ~、にゃーん」
と猫の様にじゃれつく智沙音のあまりの気の抜け具合に垣根はやれやれと肩をすくめつつ頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細める智沙音を見ているとドリンクを持ってきたダキニが帰って来た。
「お熱い事で・・・」
ダキニはそう言って三人分のドリンクをテーブルに置いた。レモネードの氷が、ちん、と小さく鳴る。
「うるせぇよ」
垣根はそっけなく返した。
そんなどこにでもある日常を窓の外から眺める男がレシーバーに向けて不穏な言葉を出す。
「標的その一その二共に捕捉、繰り返す標的のそ一その二捕捉。監視を続けるオーバー」
『そのまま監視を続けろ他の班も気付かれないようトラップの準備を進めろ』
その会話は電波となって暗闇を駆けていく、垣根は日常が壊れていく足音がかすかに聞こえた気がした。