(そういえば友達と
私は買ったばかりのタピオカミルクティーを見ながらふと思う。それにいつもより心が軽いというか、楽しい。
それはそうだろう。だって‥‥‥
「‥‥ということで、ソフトテニス部に入部が決まった咲希ちゃんとタピオカでかんぱーい!」
ずっと入院していた幼馴染と、咲希と一緒なんだから。
「はい、乾杯。部活決まって良かったね。」
「うん。見学つきあってくれてありがと!」
「無理はしないようにね。部長さんはゆるい部活だから平気って言ってたけど、少しづつ慣れていかないと。」
「うん!にしても、部長も顧問の先生もみんないい人でよかった~。病気のこともあったから、運動部に入ると迷惑かけちゃうかもって、ちょっとだけ不安だったんだよね。」
「咲希‥‥‥」
「んー!部活に入ると、高校生活の第一歩を踏み出せたーって感じするね!そして第二歩目は……これ!」
「これって‥…タピオカミルクティーのこと?」
「そう。放課後に友達とタピる!流行には遅れちゃったけど、すっごくやってみたかったんだよね!みんながタピオカタピオカ盛り上がってた時に、アタシはずーっと味のうす~い病院食ばかり食べててさー…‥‥」
「それは確かに、悔しいかもね。」
生まれてからずっと体が弱くて病気がちだった咲希は、嫌と言うほど病院食を食べてきた。多分、今まで食べてきた物の殆ど。普通の人が一生で食べるよりずっとたくさんかもしれない。
「治ったからには、美味しいものたくさん食べちゃうんだから!」
可愛い顔でやけ真剣に言う咲希。実際、真剣に言っている心からの言葉なのは分かるんだけど、ちょっと面白い。咲希は昔からずっと変わらない。可愛いくて、明るくて、ずっと入院してたなんて思えないくらい元気。
「あ。美味しいものって言えばさ、昔みんなで食べたアップルパイも美味しかったよね。」
「アップルパイ?」
「ほら、小学生の時だよ。いっちゃんがミクの歌好きだから、みんなで演奏してみよーってなった時あったでしょ?」
「あ、あったね。穂波が吹奏楽部でドラムできるようになったから、みんなで咲希の家に楽器持って行って‥‥‥」
「そうそう!みんなでバンドやるぞー!って、はりきってやってみたんだよね!そしたら…‥」
「びっくりするくらいバラバラだったんだよね‥‥‥あの時はしほちゃんがムキになって大変だったよね~。完璧にできるまでやる!って言って聞かないしさぁ。で、みんなヘトヘトになった頃に、
楽しそうに思い出を語っていたのに、少しだけ咲希の笑顔に翳りが出る。
「ふたりだけだと、ちょっとだけ寂しいね。」
‥‥‥そう。2人だけじゃないはずだった。一緒にいるはずだった幼馴染はあと3人。
志歩と穂波は同じ学校に通っているけど、中学の時から関係が拗れちゃって全然話せていない。渚月に関しては…‥‥‥‥
「…‥‥‥‥‥うん。そうだね‥‥‥‥‥。」
ここ3年は話すどころか顔すら見られなかった。あの事故の時、助けてくれたあの人が多分そうだと思うんだけど、まだ確証はない。
「‥‥‥‥もし帰って来たんだったら、会えるかな…‥‥なんてね。」
そんな都合よくいってたら、今頃こんな事には‥‥‥‥‥って、あれ?
「‥‥‥‥‥咲希?」
___________
エージェントとしてのミッションやブラックケース、記憶の手掛かりについての調査、勉強もいいが、少しは高校生らしい事をしてみるべきだと思ってセンター街に来たのだが、こうしてみると色々あるもんだな。特に音楽系が。
東雲も冬弥とストリートで歌っててイベントも出てるって言ってたし、所々でミクの歌が聞こえてくるしそういう物なのだろう。
「‥‥‥‥にしても冬弥がストリートねぇ。」
あのぼんぼんオーラだとクラシックやってそうな物だけど、それが彼の選んだやりたい事なのだろう。記憶も夢も忘れてしまった俺と違ってやりたい事を頑張っているのだからそれだけで凄いと思うし、羨ましい。もし俺にもそういう物があったのなら、早く思い出して精進したいところだ。
「って言っても、冬弥が知ってる烏丸渚月は精々3年前までなんだよな‥‥‥‥。」
話によれば俺は3年ほど前にこの街からいなくなったらしく、しかもその理由は冬弥が口にするのをためらっている程の内容らしい。そこが一つのターニングポイントであることには間違いない。俺には幼馴染がいるらしいので上手く聞き出せればいいのだが、記憶喪失であることをどう説明すればいいのだろうか。冬弥には言っていないのでこのまま隠し通した方が良いのか‥‥‥?
だが、青柳冬弥は決して鈍い人間ではない。今はどうにかなっているが、直に違和感を持ち始めるだろう。俺の事を知っている人も少なくないはずだし…‥‥。
「でも名前は分かる…‥‥‥俺自身の夢に潜入すればもしかして‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥
「…‥‥‥え?」
ちゃんとした名前じゃない。親しい人を呼ぶあだ名だとすぐに分かる。そして、それが俺に向けられたものだと直感する。できてしまう。
ピンクのグラデーションがかかった、金髪のツインテールの女子高生。背は伸びたが、無邪気な瞳はあの頃と‥‥‥‥‥‥あの頃?
「ぁあ‥‥‥‥痛ぅッ!?」
頭痛。頭の奥の深いところが溶けたように熱くなり、ふらっと体が崩れる。視界が低くなり地面が近くなるが中途半端に膝を着いたところで止まる。
「ちょっと大丈夫!?」
――――――なるほど、この子が支えてくれたのか。
「‥‥‥‥大、丈夫、だから。ありがとう。」
実際は奥の熱‥‥痛みは多少マシになったが、それでも片頭痛より大分痛い。恐らく普通の一般人なら意識を失っていたのではないだろうか。よく耐えたイレブン。
「咲希!どこ行って…‥‥って!!」
君は、あの時の‥‥‥‥
「…‥‥そっか。無事だったんだ。良かったよ。」
「咲希、一体何があったの?」
「分かんない‥‥‥いきなり頭押さえて倒れかけちゃって…‥‥これ、救急車呼んだ方がいいかのかな?」
「‥‥‥‥少し休めば、大丈夫だから。呼ばなくて、いい‥‥‥。」
「「‥‥‥‥‥‥。」」
「…‥‥それじゃあ。」
支えてもらっていた手をポンポンと優しく叩き、気合でその場を立ち去ろうとするが、しっかりと手首を掴まれる。
「‥‥‥‥だから、大丈夫だって。」
「なら、ちょっとだけ付き合って。前のお礼もしたいし…‥‥‥久しぶりに話さない?渚月。」
‥‥‥‥‥これは、ちょっと不味いかもしれない。
_______________
抵抗はしたものの、結局は2人によって近くのカフェに連行される事になった。頭痛は大分マシになったが、倒れかけた後女子高生二人にカフェに連れ込まれるという状況に先程とは違う冷や汗が流れるのを感じる。今更だが、俺だけ奥の席だから逃げようにも逃げられない。エージェント・イレブン、ナイトメアと余り関係ない所でピンチである。
「‥‥取り敢えず、久しぶりだね、渚月。」
「‥‥‥‥ああ、久しぶり。」
自分でも笑ってしまいそうになる位に曖昧で適当な返事だ。こんなので、この二人をこれから騙していくつもりなのか、俺は。
「‥‥‥よく分かったな。」
「
元気よく答えるのは金髪ツインテール。なるほど、君が冬弥の言っていた例の”妹さん”らしい‥‥‥‥
「見れば分かると思うんだけど、咲希、退院できて一緒に学校に通えるようになったんだ。」
「ほなちゃんとしほちゃんも同じ宮女なの!」
‥‥‥”一歌”とその”ほなちゃん”、”しほちゃん”も幼馴染か親しい友達だった可能性が出てきた。というかそうなんだろうな。
お嬢様学校の生徒4人と幼馴染、しかもそれなりに仲が良かったのがこの態度から容易に想像できる。記憶を失う前の俺ってなんだったの?
「ひとまず、おめでとう。」
「うん、ありがと!でも、折角ならなつくんとも同じ学校が良かったなあ~。」
「咲希、うちは女子高だよ?」
「うっ、そうだった…‥。でもお兄ちゃんと同じ制服だからなつくんも神高だよね。お兄ちゃんからお話し聞けるし、いっか。もう会った?」
「会ってない…‥と思う。」
「そうなんだ…‥‥まあ、そのうち会えると思うよ。お兄ちゃん、声大きいし。」
「声が大きいから会えるとは限らないんじゃない?…‥‥確かに司さんは声大きいけど。」
声が大きい先輩か…‥‥心当たりはあるな。冬弥が尊敬している人でもあるし、金髪ツインテール改め咲希が俺に会った事を話すと思われるので、会う日も近いだろう。
「…‥‥‥流石に、厳しいか。」
冬弥は内気で思慮深いようなので詳しく聞いてきては来ないが、決して鈍い男ではない。加えて咲希の兄となると、流石に誤魔化し続けるのは困難を極める。
「…‥‥‥なあ、二人とも。もし‥‥‥」
「「?」」
「‥‥‥いや、何でもない。‥‥この後用事あるから、この辺で失礼するよ。」
「ああ、うん。ごめんね、無理に誘っちゃって。」
「いや、会えてよかったよ。」
「今度はゆっくり、たくさんお話ししようね!」
「…‥‥‥ああ。
3人分の会計をそっと置いて店を後にして、しばらく歩くとため息が零れる。
「‥‥‥‥ダメだな、これでは。」
人を言い訳にして、自分を正当化しようとしている自分が情けなくて、悔しくて、申し訳なくて。
今にも____________
「‥‥‥‥‥早く寝よ。」
なのに今、夢に逃げようとしている俺は、なんだろうな。
烏丸 渚月/イレブンの拠点は?
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深層心理の作戦室
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セカイ(名前は未定)
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自室(スパイダーマン的な)
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そんなものはない