超常跋扈鯨海 カー・オン   作:僕らは ねこです げんきです

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好評だったら続けます


はじまりはじまり/タイトルロール

 

 

 

 人種も国籍も、地位も所属する組織も違う200人の精鋭が集う司令室に怒号が響き渡る。

 

 

「神聖祈念弾頭をありったけ用意しろ!他の対神格存在兵器もだ!」

「クラスⅣ相当の現実改変を確認!サイト-8124-Tの上空に巨大なプラズマが発生!財団アメリカ"旧"本部の遺したデータベースと照合、SCP-2143のデータと特徴が一致します!」

「チッ!ギリシャの、それもオリュンポス十二神か!面倒な!!これよりSCP-2143を神霊アポロンの【疑似サーヴァント】に指定!直ちに機動部隊ろ-5“陰陽師“を出動させろ!」

「了解!」

 

 

 司令室に設置されてあるモニターが映し出すのはサイト-8124。かつては異常物体を収容するための施設だったそこは大規模のプラズマと致死量の疫病によって既に倒壊しており、そこにいたヒトが原型をとどめられなくなるような阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

 既にサイト-8124の職員の大半は息絶えており、不運なことに神がばら撒いた体を蝕む疫病に悲鳴をあげながらも生き残ってしまった職員たちも、数分とすれば羽虫のように地を這いながら生命活動を止めるだろう。

 

 司令室にいる200人はサイト-8124の職員だったものたちへと"哀れみ"や"同情"といったものを抱きながらもこれ以上の犠牲を払うことがないように、そして無辜の民を地獄へと(いざな)うことが無いように、必死に司令室内を駆け回り処理を行っている。

 

 彼らには同僚の死を悲しむ暇も、次は己の番なのではないかと恐れる時間も与えられていないのだ。

 

「!!!【八百万神格連合】の増援を確認!データベース該当あり!SCP-1765、運命の三女神!神霊複合体(ハイ・サーヴァント)です!」

「あぁぁぁぁぁ!?またテメェらかよ、少しは間を置きやがれクソ女神どもがぁぁぁぁぁ!!テメェら一昨日(おととい)来たばっかだろーがよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「ちょっ、おい誰か鎮静アンプルをコイツのケツ穴にぶち込んでやれ!こいつ目が死んでる!」

「正気にもどれトワ・ツナワキ!じゃないとたまたま鎮静アンプルを持ってた俺がお前のケツにコレをぶち込まなきゃならなくなる!」

 

 

 

 

 

 

「おぉ………俺の前じゃあんなに冷徹ぶってた研究員がたが発狂してる……ほんとにあの人たちなのか?司令室にいる人」

「ははは、まぁツナワキ研究助手はつい先日彼女に振られてるし、さらに言うと経験の浅い未熟な職員だからねぇ。(ヒサギ)クン優しそうな見た目してるから強気で接してたのかな?彼も程度が知れるねぇ……」

 

 

 壊滅したサイト-8124の上空を一つの戦闘機が悠々と飛行していた。

 

 戦闘機に乗っているのはパイロットの2人と、戦闘機に似合わない家で着るような私服の2人の青年。

 

 手の甲に赤い痣のある、研究助手をボロクソに低評価していた青年が無線機を取り声を吹き込む。

 

 

「あー、こちらO5-13。現在サイト-8124上空を飛行中。司令室応答求む」

『は!?O5!?なんでサイト-8124にいるんですか!?』

「落ち着け落ち着け……先ほど顕現した神格を二柱退去させてきたんだがね。帰り路をちょうどプラズマが通り過ぎたもんだから、ついでにこちらも我々が対処しようということになったのよ」

『う……わかり、ました。そちらに出現した神格はアポロンの疑似サーヴァントです。対処お願いします』

「りょーかい、っと」

 

 

「お〜、やばいっすねアイツ。陽気に歌いながら刃物降らせたり辺りを火の海にしてますよ」

「そりゃまァ、アポロン神だからね。あの神いろんなもん司ってる神だから、こんくらいできてもおかしくないよ」

 

 2人の青年の内、(ヒサギ)と呼ばれた黒い私服を着た青年は白い陶器製のボウルに乗ったスープを口の中に掻き込みながら下の地獄絵図を眺める。

 

 O5を名乗る青年は楸がスープを飲み干すのを面白いモノを見るような目で観察しながら楸と軽い会話を交わす。

 

「んく…………ッぷはぁ~!ごちそうさまです!……?どうしたんすか、こっち見つめて。アンタがニヤけてるのすげぇ怖いんすけど」

「いや~、ちょっとしんみりしちゃってね。君には申し訳ないが、SCP-2035-JPの報告書で君の日記や親子関係を俺は知っているから、君がこのスープを飲んでるのが、こう……ね?」

「うげ…………ッスゥ………まぁ、そうっすね……」

 

 楸は淡い水色の花模様が描かれている白いボウルをケースの中に入れると、複雑そうな顔をしながら立ち上がる。

 

 ボウルの底には、【あまり怪我をしないでくれ。いってらっしゃい】という色褪せたもじが刻まれていた。

 

「強いて言うなら…………こんな俺でも誰かの役に立ってるぞって、あのクソ親父に見せつけてやりたいんすよ。小っ恥ずかしいっすけど」

「かっこいーなぁ楸クンは……」

「ちょっ、茶化さないでくださいよ!日記を他人に見られてるってだけでも恥ずかしいのにぃ!!!」

「あっはっは!悪い悪い!」

 

 

 

「それじゃあ頑張れよ。機動部隊”サーヴァント”、エージェント・ヒサギ」

「ういっす、行ってきます!それじゃ───」

 

 

 

 

「真名開放!天之尾羽張(アメノオハバリ)!」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

“やぁ!そこの君。君だよ君。スマホ、タブレット、PCでこの世界を覗いている君!ちょっと俺の身の上ばなしを聞いてくれないかい?“

 

 

────なんて、巫山戯てみたが。俺がいる世界を覗いている上位存在がいるのかなんて俺にはわかりようがないし、上位存在というヘッドカノンがこの世界に適応されているのかすら怪しいな。

 

 俺の名前は世箕璽(よみじ)叢雲(そううん)。この【SCP財団が存在する世界】に転生した日本人で、元財団トップのO5-13だ。

 

 

 前世の俺の人生はまさに平々凡々。貧乏でも富んでいるわけでもないシングルマザーの家庭で育ち、進学校を自称する人数が多いだけの高校へと通い、そして高校2年の夏を超えることなく事故死した。

 なにか誇れる技能があったわけでも。焦がれるような恋を叶えたわけでも。次の世代に命を繋げたわけでも、ない。すべてにおいて【未成熟】と言えるありふれた人生であった。

 

 しかし、夏休みの最後の日に俺の人生は虚無に様変わりし、新たな世界へと旅立つことを強いられた。

 

 俺が転生したのはSCP財団、あるいはSCP Foundationと呼ばれる創作ホラーの世界だ。

 

 SCP Foundationとは、英語圏の掲示板サイトに投稿された一つの報告書式の画像を起原とするホラー創作郡及びそれらに登場する組織のことで、異常な物体や現象を一般人から隔離し人々の日常を維持すること目的とした『財団』を指す。

 そして『財団』は確保(Secure)収容(Contain)保護(Protect)を使命として掲げて異常物体などを一般人から隔離しており、この三つの理念の頭文字をとってSCP財団と呼ばれる。

 

 そして先ほども言ったが、SCP Foundationの世界では自然法則に反した異常な物体・生物・事物・事象、『SCiP(スキップ)』や『Anomalies(異常存在)』と呼ばれる物が存在する。

 SCiPは誕生した経緯やどのような異常性を持ち合わせているかなど千差万別で、少なくないオブジェクトが人類に対する脅威を持ち合わせている。故にこそ財団がオブジェクトを収容し世界に混乱が起こるのを阻止しているのだ。

 

 

 

 しかし、そんな彼らの奮闘も虚しく、星の終末機構の到来によってとある世界のとある星が西暦2024年で歩みを止め、事実上の“剪定“を受けた。

 

 

 

 世界が滅んだ理由はもちろん異常存在だ。いや異常現象?様々な要因が重なった結果だから定義しにくいな。

 

 端的に言うと、世界の意思である『カー・オン』という存在のお口に、俺たちが住まう地球は合わなかった。だからカー・オンは、SCP-1690-JP『犭貪あるいはウロボロス』という星の終末機構を生み出し、この星の終わりを()()()して消化しようとしたわけだ。

 

 ハハ、ワロス。

 

 俺らには到底想像のつかない上位存在の意思ひとつで星が、世界が滅ぶんだから溜まったもんじゃないぜ。

 

 当然、当時の俺らも各々世界滅亡に抗う手立てを考えまくった。

 

 

 とあるO5は永久機関を搭載した星間航行船で星から飛び出し、遥か彼方の星へ移住するという案を出した。

 とある時空間異常によって未来から届けられた()()の報告で頓挫することになった。

 

 とあるO5は並行世界への移住を提案した。

 調査で判明した、『この宇宙とそれに隣接する並行世界において、この消滅現象は普遍的な存在であり、移住したところでその並行世界のSCP-1690-JPに呑まれるだけである』という事実により挫折となった。

 

 

 そして最後に、とあるO5は聖杯を使って世界の救済を願い、その願いは『犭貪あるいはウロボロスが存在しないほど遠く離れた世界へ異聞帯として侵略する』という形で叶えられた。

 

 

「あぁクソッ、どうなってんだ……原作じゃあ異聞帯に全然人理側の(お助け)サーヴァントいなかっただろ……アノマリーに神格を憑依させて疑似サーヴァント召喚とか、人理君ちょっと本気過ぎない?」

 

 とあるO5

 もしかして:俺

 

 俺⁉️俺‼️俺俺俺俺‼️Ahh~↑↑↑真夏のJamboree〜〜〜〜‼️‼️レゲエ砂浜Big Wave

 

 はい。

 

「令呪をもって命ずる。バーサーカーよ、その神格の霊核を砕け!」

『はいよっ!これで───トドメだッ!』

『SCP-2143の終了を確認!SCP-1765も撤退していきます!我々の勝利です!』

『っしゃオラァ!一昨日来やがれこのクソ神格共ッ』

『ダメだ、コイツ全然止まらねぇ!もう鎮静アンプルぶち込むぞ!』

 

 汚い(未来予知)。

 

『ンァー!!!』

 

 無言で通信を切る。仕事終わりだってのに変なもん聞かせやがってッ……!

 

 

 ところで話は変わるが、この世界を覗き込んでるかもしれない上位存在諸君はFGOというソシャゲを知っているだろうか。

 

 そう、かつて英雄として名を馳せた偉人たちを英霊として召喚し、魔力供給(意味深)することで有名なstayなnightの系譜である。

 

 俺はストーリーの途中でおっ死んで転生してしまったので、半端なところまでしか知らないのだが、前世で少々嗜んでいた。

 

 だから───聖杯が目の前に落ちてきた時は驚いた。

 

 入手経路は至って普通、SCP-1437『ここではないどこかに続く穴』というアノマリーから飛び出てきたのだ。

 

 SCP-1437は異世界へと繋がる穴だ。地面にぽっかりと開いている。生物はこの穴を通った瞬間に死亡するがその他は普通に通過出来るというだけの穴。

 

 これは推測になるのだが───この聖杯はどこかの世界で聖杯戦争に使われていたのだろう。杯の中にはかなりの量の魔力リソースがあった。

 恐らく聖杯戦争の勝者が『根源』へと至る道を開こうとしたが、何らかの不具合かミスで『こちらの世界』へと繋がってしまったと思われる。

 

 まさかFate世界とSCP世界が繋がるとは思いもせず、当時O5-13に就任したばかりで、『犭貪あるいはウロボロス』という世界の危機に焦っていた俺はこれ幸いと食いついてしまったのだ。

 

 常識に当て嵌められない異常物体に釣られては行けないなど財団では常識であったはずなのに。

 

 

 降霊儀式・英霊召喚……聖杯戦争の基盤となった霊長の世を救う為の決戦魔術は『この世界』の霊長の世の危機に反応してしっかり作動した。

 

 聖杯戦争。財団───というより俺主催で繰り返すこと、六回。決戦魔術としてのシステムが後押ししてくれたのか、うろ覚えの詠唱でも呼び出せた英霊達を焚べて、焚べた後の炎を呼び水にさらに英霊を召喚し、また焚べてを繰り返す。

 

 三回目を始める頃には既に慣れ始め、格の高い神霊を焚べるようになった。

 

 

 六回目を終える頃には───異世界の空想樹をコピーペーストしてこの世界のテクスチャに貼り付け、異聞帯(ロストベルト)として異世界への侵攻を開始した。

 

 勿論、他世界の人類の存続を脅かすこの行為は財団の『人類の正常な世界を維持し、保護する』という理念に真っ向から反するため、こっそりと秘密裏に始めた。

 

 他のO5たちは勘が鋭く面倒なので、共犯者となる1人を覗いて全てのO5がいない日本支部に空想樹を立てることで、一時的に他のO5たちには消えてもらった。

 

 

 しかし、だ。

 

 何事も上手くいくとは限らない。寧ろ上手くいく方が珍しいもので、この日本支部に立てた空想樹なのだが、実のところ不完全な存在なのである。

 

 原作を途中までしか知らないので空想樹には詳しくないのだが……異星の神を介さない完全に独立した空想樹だからなのか、異聞帯が完全に形成されず、不完全な空想樹に相応しい不完全な異聞帯が生まれてしまったのである。

 

 形や分類は異聞帯というよりも特異点の方が近しい。

 

 ヒューム値が非常に低く、人理側の修正力があれば自然と修正されてしまうような弱々しい特異点だ。

 

 さらにダメ押しの如く神格やら疑似サーヴァントが人類史の断末魔、異聞帯・特異点へのカウンターとして大量に召喚され始めてまぁ大変。今まで秘密裏にしてきたサーヴァントの存在が財団の一般職員にまで露呈する事態と相成った。

 

 

 ので、第七次聖杯戦争は今までと違った様式で開始した。

 

 サーヴァントの存在が知らしめられてしまったのなら仕方がない。というより寧ろ露呈したことを利用してしまえばいいのだ。

 

 ということで今まで俺主催で開いてきた聖杯戦争を、『聖杯戦争』という単語を財団に隠したまま財団主催で開催させた。それが機動部隊サーヴァント-7(”人理の担い手”)。SCPー███ーJPという『この世界』の人類の危機に対抗すべく召喚された、霊長の世を救う為の決戦魔術の正しい使い方で呼ばれた英霊たち。

 

 

 知名度補正最高のセイバー

 財団の英雄のアーチャー

 冠位英霊のライダー

 カスのキャスター

 星盗みの英雄のアサシン

 神殺しのバーサーカー

 伏せ札のプリテンダー

 

 

 この世界に根付いたこの世界の英霊である彼らを使って、カウンターとして呼ばれたサーヴァントたちを聖杯に焚べることで空想樹を成長させるのだ。

 

 少々予定外の選出が含まれているが問題ない。

 

 何故なら私にはグランドライダーがついているから!

 

 山の翁やソロモンに並ぶ英霊がついてるんだ、勝ち確だろコレ。勝ったな!

 負けフラグになるので風呂には入りません。

 

 ちなみに召喚の内訳はセイバー、アーチャー、アサシンが日本支部───現財団本部の理事たちの横槍で召喚させられ、不慮の事故でカスとバーサーカーが召喚され、予定通りに行ったのはライダーとプリテンダーのみである。

 

 無能……!あまりにも無能……!大事な戦いどころでカス手札を引くとは!六回もリセマラしたせいで運命力が尽きたか……

 

「機動部隊サーヴァント-7、バーサーカー。ただ今帰還しましたっす」

「おぉ、お帰り楸くん。どうだった、今回の魔力リソースは回収出来たかい?」

「バッチリっす。今回はかなり格の高いカミサマだったみたいで、かなりの量ですよ」

「流石はアポロンってところか。器の方につられてくれたみたいで助かったな……機神の方は悪辣だっただろうよ

 

 戦闘機に地上から飛んできた楸くんことバーサーカーを迎え入れる。

 

 楸 裕介……SCP-2035-JP『燃え尽きた青年』を依代として召喚された疑似サーヴァントの彼は、元はごく普通の家庭に生まれたごく普通の青年である。

 その身のうちに神格を宿してはいるが、英霊としてのステータスは平々凡々。本来であれば到底太陽神殺しなど出来ない。

 

「いやー凄いっすね、財団の技術力。本当に俺なんかでもあのバケモン倒せちゃいましたよ」

「ふふ、あまり財団を舐めないでくれよ。電力を魔力に変換する工程には大変苦戦させられたが、それさえ乗り越えれたら後はこちらの物だ。何せ国がバックに付いてるんだからな。魔力も資源も潤沢だ、欲しいリソースは何でも言ってくれたまえよ」

 

 しかしそれは一般人が彼を召喚した場合の話。金に物言わせて霊基を強化し、内に秘めた神格の出力を上げれば神殺しも難くない。

 

「この後は回収した魔力を大聖杯に注ぎに行くよ。さっきのアポロン神に、その前に退去させた二柱だ、これは期待出来るぞぅ!」

「あー……なるほどっすね。ちなみになんすけど……他のサーヴァントの方々とかもいらっしゃいます?アーチャーさんとアサシンくんは問題ないんすけどね!一応聞いとこうかな〜って……」

「はは、安心したまえよ。セイバーは引きこもり、アーチャーとアサシンは理事たちの護衛、カスは英雄狩りに出かけてる。大聖杯を隠してるアソコは誰も居らんさ。いるとしてもライダーぐらいだ」

「ライダーさんはライダーさんで緊張するんすけどね……」

「やっぱサーヴァント的にはグランドは大御所みたいな感じなんだ?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 空を、日本を覆うようにして現れた嵐の壁。サーヴァントなんていうファンタジー要素の塊のような存在になった今の俺でも触れるだけで死んでしまうソレを、易々と超えてやって来るカルデアの者達───一体どんな人物なんだろうか、などと目の前を先導する彼の背中を眺めながら考える。

 

 

 俺の名前は楸 裕介。不相応な自覚はあるが、この世界を守るために召喚されたサーヴァントの一人、バーサーカーとして財団で働かせて貰っている。

 

 今は目の前でご機嫌なマスターが財団施設にこっそり建てた隠し部屋───聖杯戦争の根幹である大聖杯の隠し場所に向かっている最中だ。ちょっと気になることと言うか、不安になる事があり、移動中の暇つぶしがてらにカルデアの者たちについて考えている。

 

 カルデア、とは。ステップを踏みながら陽気に歩くマスター曰く。人類の理を守るため、未来の存続を確約するため、あちらの世界の国連保証のもとに設立された機関。人類を滅ぼす大災、ビーストを幾度も打ち破った救世主たち。

 

 そのビースト達の中には俺でも知っているような有名人であるソロモン王も含まれるという。

 

 にわかに信じ難いが───そのカルデアの者達の功績は、人類の存続を掲げる財団としては見習わなければならないと高らかに語るマスターの姿を見ると思わず信じてしまう。しかし同時に、マスターはそのカルデアと戦う事になるということを理解しているのかとも、考えてしまう。

 

「あのー、御先管理員?少し宜しいでしょうか……」

「はい?あの、見て分かりませんか?いま私不機嫌なんです。どこかの誰かさんが書類を私に押し付けて消えたせいなんですけどね」

「あの、俺、元とはいえO5……一時的に権限を理事会に渡してるとはいえ財団のトップ……」

「は?自分のせいで機嫌の悪い相手を前にして最初にすることが謝罪でも言い訳でもなく権力を盾にすることですか?ほんとにダメな男ですね。だから同じO5でも女性に紳士的なO5-12さんの方がモテてるんですよ?同じO5として恥ずかしくないんですか?女性の12さんに負けてるんですよ?」

「火力高すぎ高すぎ。骨も残らん。というか12は猫かぶってるだけで───」

「そもそも、マスター?とかいう仕事だって、念話越しに出来るでしょう。執務室から出る必要ありましたか?もしかして書類仕事サボるつもりで嬉々として飛び出したわけじゃありませんよね?」

「ぐっ……!今日は『ヤバい日』だったか!バーサーカー!俺は置いて先に行け!」

「う、ウッス……」

「は?は??は???なんですか、それ。次に口から出す言葉には気をつけた方が良いですよ、執務室で干からびた姿で見つかりたく無かったら、ですが」

「こわい!」

 

 お、おっかねぇ……まさにマシンガントークだ。俺も一言二言話そうと考えていたが一切挟むことすら出来ずマスターを置いてきてしまった。

 

 さっき話していた女性は御先管理員だ。本名は御先 稲荷。特筆すべき所は狐耳が生えてるところだろうか。

 最初に見た時はこの人もサーヴァントなのかと勘違いした。魔力を感じられなくてすぐに勘違いに気づいたけど。彼女の狐耳はアノマリー……財団が相手取っている異常な存在が影響しているらしく、財団が彼女を保護したのをキッカケに財団で働き始めたらしい。

 

 機嫌が良い日と悪い日の落差が凄いけど、悪い人じゃない。今回に至ってはマスターが仕事を彼女に押し付けた事が原因で責はこちらにあるので、まぁ、残当だ。機嫌が良い時は本当に良い人。

 

 でもまぁ、彼女の気持ちも分からないでもない。マスターは……何というか、世界の危機を前にしているのに少しお気楽すぎると言うか。書類仕事を押し付けるし、時々O5の12さんとふざけ合っているのを見るし。御先管理員は知らない事だろうけど……この世界を滅ぼしに来る、あちらの世界を一度救ったというカルデアを前にしても、態度が変わらないし。

 

 

「カルデア……人理継続保障機関、フィニス・カルデアかぁ……」

 

 カルデアの者達に関する情報は機密情報にあたる。知っているのは財団の元トップであるマスターとO5-12さん、日本支部理事会の方々に、今回召喚された俺を含む七騎のサーヴァント達。異聞帯や空想樹に関する本当の情報は日本支部理事会の方々でさえ共有されていない。

 

『理事の面々にはカルデアについてはほんの少ししか流してないから、そこんとこ宜しく!』

「いやぁ……理事会の人達、予想も付かないだろうなぁ。世界の危機に立ち向かってるつもりが、本当はこっちが異世界に侵略を仕掛けてる側だなんて」

 

 カルデア、カルデア、カルデア、カルデア……

 

 少し前に召喚されたあちら側のカウンターサーヴァント、ジャンヌ・ダルクが漏らした情報。人理とサーヴァントの関係、間もなくカルデアの者達がこちらの世界へやってくるだろうという予測、殆どのサーヴァントはカルデアに協力的であるということ。その情報郡からマスターにとって都合の良い情報だけ引き抜いて理事会へ横流し。

 

 

 近い未来、カルデアという異世界の者達がこの世界にやってくる。

 

 そのカルデアという組織は、いま日本を襲っているサーヴァントたちと協力関係にある。

 

 =異世界からやってくるカルデアの者たちは、サーヴァントを使って日本を襲っている元凶であり、いずれこの世界を滅ぼしにやって来る。

 

 

 世界を救うために異世界を滅ぼす、生存競争。この争いの当事者となってしまったカルデアの者たちには憐憫の情を抱く。上の情報も一言一句、何一つ間違っていないのだから、余計に哀れだ。

 ただ、『生存競争を仕掛けた侵略者はこちら側である』という情報と、『こちらの世界を滅ぼさなければあちらの世界も滅びてしまう』という事実を隠しているだけで。

 

 

「更に可哀想なのが、向こうは『空想樹を折らなければ勝てない』ってのに対してこっちは『時間を稼ぐだけで勝てる』ってのがね……」

 

 そう呟いて、窓ガラスの奥に映る一本の桜の木を見つめる。

 

 大聖杯と、他の異聞帯の空想樹をコピー&ペーストして作ったっていう空想樹の種子と、アノマリーである桜の木を融合させて新たに生み出した、この世界の空想樹。

 

 名前は、カー・オン

 

 由来は宇宙に存在するアノマリーらしい。

 

「壮観だろう。財団が所有する施設の地下、奥深くの隠し部屋。そこにひっそりと佇み花を散らせる桜の木。実に幻想的だと思わないか?」

「お、もう戻ってこれたんすか」

「御先管理員の好物で釣ったあと逃げてきた」

「殺されますよ」

「いいんだよ!というか今は空想樹の話だ!」

 

 後ろから声をかけてきたマスターと言葉を交わす。その頬には薄らと冷や汗のようなものが流れており、御先管理員に恨みを買った自覚はあるようだ。なら大人しく説教受けてろよ……と思わなくもないが、何分自分も両親の説教から最後まで逃げ続けた身なので口にはしない。

 

「人工贋作空想樹カー・オン。俺たちが住まうこの世界が滅ぶことになった原因の一つの名を冠する空想樹だ。何とも皮肉な名前だろう?この世界を滅ぼした存在の名を、この世界を存続させる為の空想樹に付けるなんて。他の異聞帯の空想樹が銀河の名前を冠しているから、仕方なくこの名を付けたのだがね」

「あー……名前って、あっちの世界の魔術じゃあ大事みたいですからね。もしかして宇宙のアノマリーの名前を付けることであっちの空想樹に()()()ってことですか?」

「おっ、流石に魔術への理解が深いな。正解だ、この空想樹は不完全だからな、少しでも原典に近付ける必要があったんだ」

 

 そう言って、マスターはロックを解除し、収容室の扉を開ける。

 

 その桜の木の姿を形どった空想樹は、幹は太く、家が三軒は建ちそうな広さの収容室の四隅まで枝を伸ばす大樹だった。

 

「ここ、ここに聖杯戦争の要の大聖杯がある。まぁ完全にこの空想樹と融合しているから空想樹全体が大聖杯であって、この大聖杯の器は見せかけ、かつての名残に過ぎないんだがね」

 

 マスターが桜の木の根元に埋まっている、黄金色の大きな球体を指す。

 

「俺がこの空想樹をこの地に植える前、六度開いた聖杯戦争。それらを開催するために一番最初に取り組んだのが大聖杯の作成だ」

 

 サーヴァントから魔力を徴収し、聖杯で願いを叶えるにはまず魔力をためる杯と聖杯戦争のシステムが必要だった。

 運良く手にした小聖杯は所詮、願いを叶えるためのコードを出力するためだけの機械。大聖杯なくして聖杯戦争は開けず、聖杯戦争なくして世界を救えるだけの魔力はたまらない。

 

「聖杯の中に魔術に詳しいサーヴァントの魂───記録が複数残っていて良かったよ。あれが無ければ聖杯戦争も空想樹もこの計画も、始まる前から終わっていた」

「へー……」

 

 非正規の手段で召喚された、疑似サーヴァントの己とは違う真なる英雄……どんな姿をしているんだろうか?以前俺が対応したギルガメッシュという人は何故か全裸だったが、あんな感じで個性が強いのだろうか……万夫不当の英霊サマなんだから個性的なのは当たり前か。

 

「さて、それじゃあ魔力リソースを回収するから、霊基に埋めた聖杯の雫出して」

「あっ、ウッス!」

 

 想像も付かない偉人たちの姿に思いを寄せていた頭を切り替えて、霊基の奥底に沈めておいた聖杯の欠片を取り出す。

 

 マスター、というか財団に召喚されたサーヴァントは皆、カウンターサーヴァントから魔力を吸収するためにそれぞれ身体に聖杯の欠片を入れている。なんでも、回収しないと残った余剰魔力で新しくサーヴァントが呼ばれてしまうし、せっかく人理君がサーヴァントを呼んでくれたんだから有効活用しないと勿体ない!とのこと。

 

 身体を張っていた有り余るほどの魔力が、聖杯の欠片───聖杯の雫ごとゴッソリ取り出されるのを感じる。

 

「ん〜、ヨシ!魔力リソース搬送完了!よく働いてくれたよ、エージェント・ヒサギ。セイバーとライダーは緊急時以外は働かないしアーチャーとアサシンは理事たちに取られちゃったから、キャスターに次いで魔力リソース貢献ランキングは君が2位だぜ!」

「あ、ありがとうございますッス……」

「よくやった!褒めちぎってやる!」

「あはは……」

 

 カルデアの不安や隠し事に対する後ろめたさはあるが、褒めてもらえるし、この超能力を隠さずに生きていける職場は案外気が楽だ。

 

 召喚された当初は少し驚きもあったが、自分でも驚くほどやっていけてる。

 

「うっし、搬送も終わったし一緒に上に戻るか!」

「あ、自分少し時間を置いてから行きます。御先さんに巻き込まれたくないので」

「チクショウ!バレてたかッ!」

「一緒にって、道連れ狙いだったんスかマスター……」

「うぉっ、信頼度が下がる音ォ!クソッ、マイサーヴァントの信頼を取り戻すために一人で行くしかねぇか!しゃあない、逝ってくる!」

「あぁ〜……行ってらっしゃい、ッス?」

 

 未来について考えることは多いし、マスターは企みごとがあるし、職場の人にも隠し事がいっぱいだし、普通に死にそうな職場だけど……

 

 認めてもらえる心地良さを知ってしまった俺は、この環境を手放したくなくてたまらないのだ。

 

「まぁ……なるようになるか」

 

 未来のことは、未来で考えれば良いさ。カルデアが来てから考えるってのは……遅すぎかな?

 

 

 

 


 

【登場人物紹介】

原則、SCPがサーヴァントとして召喚されている

 

・セイバー

 引きこもり。この情報だけでなんのSCPかわかるなら貴方はSCP博士。ヒントは主人公の名前。

 

・アーチャー

 財団の英雄と言えばの彼ら。一人とは限らない。

 

・ライダー

 グランドライダー。正直Fate世界でも召喚されたら冠位貰えるのではってくらいの知名度と伝説。

 

・キャスター

 胸糞。ケツを拭く用の紙。もう既にわかる人にはわかると思うので、誘導して惑わすためにちょっと捻りを入れて言うと〇ー〇〇ー・〇〇〇・オルタ。

 

・アサシン

 知名度的にもほとんどの人がわかんないと思われる。アサシンとは、何も誰かを暗殺した者だけが言われるのではない。中華の女帝、革命期の処刑人、諜報員……あのウィリアム・テルさえもアサシンの資格があるというのだから節操のないクラスと言えるだろう。

 

・バーサーカー『楸 裕介』

 SCP-2035-JP メタタイトル:燃え尽きた青年

 発火能力を持ってしまっただけの青年。サーヴァントとして呼ぶには格が足りないので神格である〇〇〇〇を宿して顕現した、主人公が呼んだサーヴァントの中では唯一の疑似サーヴァント。なんと、かなり格が高い神格を宿しているのにこの中では最弱。

 

・プリテンダー

 ランサーの代わりにエクストラクラスで召喚。情報の少なさという面で一番わかんないと思われる。知名度は日本支部で言うとトップクラス。プリテンダーって情報だけでバレたら作者泣いちゃう。

 

 

 

敬称略

 

アポロン神の疑似サーヴァントの元ネタ

SCP-2143『雨に唄えば』 執筆者:A Random Day

http://scp-jp.wikidot.com/scp-2143

 

運命の三女神のハイサーヴァントの元ネタ(ネタ腐らせてる間にFGOの方に来ちゃったよ……どうしよ)

SCP-1765『姉妹達』 執筆者:Dmatix

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1765

 

バーサーカーの元ネタ

SCP-2035-JP『燃え尽きた青年』 執筆者:SOYA-001

http://scp-jp.wikidot.com/scp-2035-jp

 

バーサーカーが持ってたボウルのスープ

SCP-348 『パパの贈り物』 執筆者:Zyn

http://scp-jp.wikidot.com/scp-348

 

やぁ!そこの君!の元ネタ

SCP-2144-JP『やぁ!そこの君。君だよ君。そこでこのページをぼうっと眺めてる君。ちょっとしたことなんだけど、このリンクをクリックしてくれないかな。』 執筆者:Mitan

http://scp-jp.wikidot.com/scp-2144-jp

 

SCP-001-JP AiHeの提言『惟鯨(削除済)』 執筆者:AiliceHershey

記事が削除済なので代わりにこちらをどうぞ

https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/40505.html

 

SCP-1690-JP『犭貪あるいはウロボロス』 執筆者:physicslike

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1690-jp

 

SCP-1437『ここではないどこかに続く穴』 執筆者:Tanhony

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1437

 

御先管理員 執筆者:AiliceHershey

人事ファイルが削除済なので代わりにこちらをどうぞ

https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/42594.html

 

はじまりはじまり

SCP-2900-JP『エンドロール』 執筆者:first man

http://scp-jp.wikidot.com/scp-2900-jp

 

【後書き】

サーヴァントの名前明言されてないけど記事のリンク貼った方が良いのか悩む。

話を掘り進めるなら

  • 主人公
  • セイバー
  • アーチャー
  • ライダー
  • キャスター
  • アサシン
  • バーサーカー
  • プリテンダー
  • カルデア
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