戦極姫~戦乱に導かれしジェダイの騎士~   作:四駆動戦士

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何気に2話目です。
こんな駄文を読んでくださった方、お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます
これからも頑張っていきたいと思います



祭りでの出会い

『考えるな、感じろ』と我が師であるジェダイマスター・ヨーダから教わったが、状況によってはそれは無理なこともある。

確かにフォースの力を使うことによって解決出来ることは多くある。

しかし今のこの状況を感じて理解出来るとは到底思えなかった。

 

「天城颯馬か、変わった名前だな」

 

当の本人を目の前にして言うのはかなり失礼な事だとわかっていたのだがつい口に出してしまった。

 

「ハハハ、そうか?だが俺もサイラスなんて名前は聞いたことがないぞ?異国の人間なのかい?」

 

天城颯馬は思いの外寛容な人間のようだった。

この人間なら自分の事を話しても問題ないのではないだろうか。

しかし、天城颯馬が自分の事を信じるか信じないかは別問題だか....。

 

「ふむ、天城颯馬と言ったか....悪いが色々と聞きたいことがあるだが」

 

「ああ、良いぜ。歩きながらで構わないか?もう少し先に進めば町が見えてくるからな。後それと俺の事は颯馬で良いよ」

 

「そうか、分かった颯馬。じゃあ、俺の事もサイラスと呼んでくれ」

 

「分かったサイラス」

 

二人は町へと向かうため歩みを進めた。

 

「それで、聞きたいことって?」

 

「ああ、取り敢えずこの星の名前を教えてくれないか?」

 

「星?国ではなくてか?」

 

颯馬の疑問にサイラスの中で一抹の不安がよぎった。

それは出来れば考えたくはないことだった。

 

「え?ああ、そうだな。国の名前だ。すまない....」

 

大概は星に名前がついているが稀に星自体が国として成り立っている場合がある。

そう言う場合は国の名前が星の名前となる。もしかしたらこの星はその稀な星の一つなのかもしれない。

 

「ここは日の本だよ。今は第15代将軍足利義昭様が治めている」

 

「日の本?」

 

聞き覚えの無い名前だ。これでも銀河を旅していたから惑星については詳しいつもりだったが....。

もしかしたら想像以上に遠い銀河に飛ばされたのかもしれない。

 

「颯馬、俺が今から言う言葉に知っている言葉があれば教えてほしい」

 

「分かった」

 

サイラスは颯馬に自分の事や銀河帝国の事、そしてジェダイについて話した。

 

「サイラス、君はいったい何処の国から来たんだ?俺は足利学校で様々な事を学んできたが、こんな言葉は聞いたこともない」

 

颯馬の答えはサイラスの予想の中で最も最悪の答えだった。

つまりこの星の住人は銀河帝国やジェダイの事以前に宇宙そのものが分かっていなかった。

 

「颯馬、最後に一つ聞いてもいいか?颯馬達が立っているこの大地は一つの球体の上に成り立っているということを知っているか?」

 

すると颯馬は声高らかに笑いだした。

 

「ハハハハハハ、流石にそれは無いだろう。それだと途中で落ちてしまうじゃないか」

 

サイラスは諦めたように項垂れた。

ここはもしかしたら遠い銀河とかではなく時間軸そのものが違うのではないだろうか。

文明が自分の知っているものよりも遥かに後退している。

だとしたら通信で助けを呼ぶなんて事は出来ないのではないだろうか。

だとしたら完全に八方塞がりだ。

 

「あ....いや、忘れてくれ」

 

「フム....だがサイラス、俺は笑いはしたが君が嘘をついてるとは思えないんだ」

 

颯馬は急に先程とは売って変わって真剣な顔つきになった。

それはどちらかと言うとサイラスの話に興味をもった感じの顔だった。

 

「颯馬....分かった、俺が出した結論を聞いてくれ」

 

二人は歩みを止めて近くにあった手頃な石に腰かけた。

 

「颯馬、俺はどうやらこの世界とは違う世界から来たようだ」

 

今度は颯馬は笑うことはなかった。

だが、全く信じてはいない顔だった。

 

「何故そう思う?」

 

「俺が颯馬に言った質問は全て俺の世界では常識であり誰もが知っている事だ」

 

「知らない奴もいるかもしれない。俺のように....」

 

「そうだな。だがそれでも知らなさすぎるんだ。そしてこの星の技術力はあまりにも低すぎる」

 

するとサイラスは腰に吊るしてあるライトセーバーを出した。

 

「これがなんだかわかるか?」

 

颯馬は近くでそれを見て首をふった。

 

「ただの複雑な金属の筒にしか見えないな」

 

「そうか、じゃあ質問を変えよう」

 

サイラスは、近くの大きめの木に手をついた。

 

「こいつをたった一振りで真っ二つに出来ると言ったら信じるか?」

 

颯馬は首を横に振り、無理だと言った。

 

「自然の木はとても固いんだ。どれだけ切れ味の鋭い刀を使っても人間の腕力じゃあとてもじゃないが無理だ」

 

「そうだな。確かに颯馬達が使っているこの刀という物では無理だろうな」

 

サイラスは、ライトセーバーのスイッチを入れると黄色の光刃が形成される。

 

「なっ、なんだそれは!?」

 

サイラスは颯馬の驚愕の顔を横目で見ながら木に対して袈裟懸けに斬った。

超高出力のプラズマの刃は木を紙を切るかのように簡単に焼き切った。

 

「これが俺のいた世界の武器だ」

 

「ああ.....」

 

颯馬はまるで夢を見ているのではないかといった表情で口を開けて固まっていた。

 

「あともう一つ、俺がジェダイの騎士として扱える力、フォースも見せておく」

 

サイラスは、木に対して手をかざすとフォースの力を使い宙へと浮かした。

 

「う、嘘だろ....俺は夢でも見ているのか?」

 

サイラスのフォースはパルパティーン皇帝との戦いでフォースの力では歴代最強とまでいわれたヨーダをも凌ぐ程にまで覚醒しており、大木一本浮かす事など造作もない事だった。

 

「颯馬、理解してくれとは言わない。だが信じてほしい、そして力を貸してほしい」

 

颯馬は今だ固まったままだったが、辛うじて頷いた。

 

「分かった、信じよう。だからその刀を納めて木を下ろしてくれ」

 

かなり強引で脅迫じみた説得になってしまったが颯馬を説得することが出来た。

後は、颯馬が力を貸してくれるかどうかだ。

 

「そうか、ありがとう」

 

サイラスは、ライトセーバーを腰に納めるとフォースで浮かしていた木をその場に置いた。

 

「それで?サイラスは何が望みなんだ?」

 

「颯馬、お前は仕官先を探して旅をしていると言ったな」

 

「ああ、そうだ。中々見つからないがな」

 

「その旅に俺も同行させてほしい」

 

「旅に?」

 

「ああ、俺は元の世界に戻らなければならない。だが、戻る方法が分からないこの状況ではこの世界に順応するしか今は手はない」

 

「なるほど。そこでこの世界に詳しい俺と旅をしながら元の世界に帰る方法を探すんだな?」

 

「そう言うことだ」

 

「う~ん。しかしなぁ」

 

颯馬は少し困ったような顔で考え込んだ。

何か不都合なことがあるのだろうか?

いや、それが普通なのかもしれない。こんな得体のしれない人間と旅をしたいとは思わないだろう。

 

「俺の旅の目的は軍師として仕官先を探すことなんだよ」

 

「それはさっき聞いたな。『軍師として』は初耳だがな....」

 

「となると俺がもし仕官先を見つけた場合、サイラスはどうするんだ?」

 

「ん?ああ、そういうことか」

 

颯馬は自分と旅をする不安ではなく、旅の目的を達成したあとの話をしているようだった。

 

「颯馬はよくお人好しと言われないか?」

 

「え?そうかな?」

 

「ハハハハハ、大丈夫だよ。颯馬がもし仕官先を見つけたら俺も共にそこに志願兵として仕えるよ」

 

確かに様々な所に行って帰る方法を探すのも良いだろうが闇雲に探しても時間の無駄である。今は何より手掛かりが必要だ。

それには情報がある程度得られる場所に行かなくてはならない。

颯馬は仕官先を探して町を巡る。

つまり情報が集まりやすい場所を転々とするということだ。

それにもし、颯馬が仕官先を見つけても寧ろ好都合と言える。何故なら今が戦乱の時代だからだ。先程颯馬と歩いているときにこの世界についてもある程度話を聞いた。

今は各地の力ある家が兵を挙げ天下統一を果たそうと躍起になっている。

つまり戦争が各地で多発しているということだ。

戦争は何も力とのぶつかり合いではない。

戦争とは情報戦も行われる訳だ。

各地の情報を集めているとなれば、もしかしたら帰る手掛かりがその中にあるかもしれない。

 

「サイラスが志願兵に?サイラス程の実力なら将になることも出来るぞ」

 

颯馬の言葉にサイラスは首をふった。

確かにフォースの力はこの世界においては絶対的な強さを誇るかもしれない。

しかし、争いとは総じてフォースの暗黒面に触れる事になる。

将ともなれば尚更だ。

だから、兵として戦に立つことになれば己の身を守るために、そして尚且つ不殺に心掛けなければならない。

 

「いや、遠慮させて貰うよ。ジェダイの騎士は色々と誓約が多くてね」

 

「そうか、サイラスなら良い武将になると思ったんだがな」

 

「過大評価しすぎだな。さあ、もう行こう」

 

「そうだな。俺もかなり疲れてきたよ。早く宿で休みたい」

 

颯馬も道中長かったのか心身共に疲れていて、少し足取りが重かった。

そしてサイラスもパルパティーン皇帝との戦いの後、全く休憩をとっていなかった為かなりの疲労感に見舞われていた。

 

「町まではどれくらいだ?」

 

「この山道を抜ければ直ぐだ」

 

颯馬の言うとおり山道を下った後、30分もしないうちに町に着いた。

町は木で作られた木造建築が多く、多くの人間で賑わっていた。

 

「賑わってるな」

 

「ここは中々大きい城下町だからな。賑わいもするさ」

 

「なるほど」

 

文明はしっかりと存在しているところを見るとやはり元の時代よりも遥かに昔なのだろう。

何故なら機械というものが一切見当たらないからだ。

何もかもが自分の手でやり、自らの足で物を運んでいる。

もちろん戦闘機等は見当たらない。

 

「宿はこっちだ」

 

サイラスは颯馬の後に付いて行くと少し年季のはいった宿に着いた。

宿に入ると若い女性がパタパタと近づいて来て頭を下げた。

この宿の女中だろうか。

 

「ようこそおいでくださいました」

 

「今日一泊出来るか?」

 

「はい。空いております。そちらのお連れ様は....」

 

すると女中はサイラスの方に目をやった。

サイラスは、答えを颯馬に頼むように颯馬の顔を見た。

颯馬はその意図を理解したのか頷いた。

 

「ああ、同じ部屋で頼む」

 

ここら辺の事は颯馬に任せるしかなく、この世界の常識を覚えるまでは颯馬に判断を委ねるしかない。

 

「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」

 

颯馬とサイラスは、女中に促され宿の一室へと案内された。

 

「ほう、中々良い部屋だな」

 

案内された部屋は二人が泊まるには充分な部屋で宿の外見の割りには綺麗な部屋だった。

 

「食事はどうされますか?」

 

「直ぐにお願いします。サイラスもそれで良いよな」

 

「ああ」

 

サイラスは頷いた。

 

「かしこまりました。直ぐにお持ちしますね」

 

食事は女中が部屋を去ってから直ぐに運ばれてきた。

食事は白米に焼き魚、味噌汁と質素だったが腹を満たすには充分だった。

 

「この魚は美味しいな」

 

サイラスは、魚の味に少し感動した。

肉厚な身に適度に焼かれた皮の芳ばしさは今まで食べた事がないほど美味しかった。

惑星ダゴバにも魚はいたがどれも泥臭くて食べれたものではなかった。

 

「この国は海に面してるからな。至る所に港があるから新鮮な魚が手にはいるんだよ」

 

「なるほど。そういえば俺たちは今どこにいるんだ?」

 

「今か?今は伊勢と言う国だよ。尾張の左隣の国だよ」

 

「尾張と言われてもな。全く分からん」

 

サイラスは肩をすくめた。

すると颯馬が懐から地図を取り出した。

 

「ほら、ここだよ」

 

颯馬は地図の上の一箇所を指差す。

 

「なんだ。地図があるのか」

 

「そりゃあ、地図がなかったら旅なんて出来ないだろう」

 

「確かに。で?これからは颯馬はどうするんだ?」

 

「もちろん仕官先を探すよ。明日、朝に出発して大和の高取城に行こうと思う」

 

「そこで仕官先を探すのか?」

 

「いや、それはまだ分からないけど....取り敢えずここの人間に大和の情勢を聞いてこようと思う。ついでにサイラスの探している事についても聞いてくるよ」

 

「良いのか?」

 

「ついでだよ。気にしないでくれ」

 

そう言って夕食を食べ終わった颯馬は部屋を出ていった。

サイラスは、色々と世話をしてくれる颯馬に感謝しつつ少し申し訳ない気持ちになった。

 

「ふぅ、何か悪い気がしてきたな。だが、俺が颯馬にしてやれる事といったら用心棒くらいか」

 

サイラスは、宿の窓から町に目を向けると楽しそうに歩いてうる親子や酒に酔って足元がふらふらな男が多くいた。

 

「ルークは無事だろうか....」

 

ルークの実力なら無事にデス・スターから脱出しているだろう。

パルパティーン亡き今、同盟軍が負ける要素はない。

帝国軍の殆どは抵抗せずに投降するだろう。

 

「やっぱり俺は死んでることになってるのかなぁ」

 

事実、元の世界にルークが生きている痕跡がない以上、死亡扱いされてもおかしくない。

 

「全くなんでこうなったんだ?」

 

サイラスは、少し考え込んだ。

 

「物事には全て意味がある筈だ。つまり俺はここに来た理由があると言うことだ」

 

すると襖が開き颯馬が入ってきた。

 

「どうしたんだ?一人でぶつぶつと....」

 

「あ、いや。元の世界の事を考えててな」

 

「そうか。こっちは少し情報が手に入ったよ」

 

「どんな情報だ?」

 

「一つは大和の国についてだ。大和の高取城の城下町で近く祭りがあるみたいだ」

 

「祭りか....」

 

「あと、もう一つはサイラスが探している情報についてだ」

 

颯馬の言葉にサイラスは、目を見開く。

 

「何かあったのか!?」

 

「ああ、少し前にここの民が俺達の居た山で大きな光を見たそうだ」

 

「光....」

 

「民は雷じゃないかと言っていたがな」

 

やはりあの光が原因か....

 

「恐らく俺が元の世界で襲われた光と同じものだろう」

 

「つまりその光の正体を追えばサイラスが元の世界に戻る方法が見つかるわけだな」

 

「そう言うことだな」

 

「どうする?ここに留まるか?」

 

「いや、颯馬と共に行くよ。俺がこの世界に来たのには理由がある筈だ。その理由を探すためにも今は行動を起こすべきだ」

 

「そうか。なら良かった」

 

「良かった?」

 

「ああ、さっき祭りがあると言っていただろう?だからもしかしたら当日に宿がとれないかもしれないんだ。そこでさっき今から大和に向かう飛脚がいたから小銭を持たせて宿を予約してもらうように頼んだんだ。一部屋二人でね」

 

颯馬はそう言うと笑みを見せた。

その顔に邪な感情はなく純粋な善意だった。

 

「何からなにまですまないな」

 

「いや、助けてもらったお礼だよ。サイラスが助けてくれなかったら今頃丸裸だよ」

 

颯馬は恥ずかしそうに頭の後ろを掻いた。

 

「そうだな。颯馬は少し強くなった方が良いのでは?」

 

サイラスは冗談ぽく言うと颯馬は額に手を当てて困った顔をした。

 

「頭を使うのは楽しいんだがな。剣術は全然ダメでな。だが、それも解消されたからな」

 

颯馬はサイラスを見る。

 

「まさか、俺のことか?」

 

「そう言うことだ」

 

サイラスは、わざとらしく溜め息をつく。

 

「精々頑張るよ」

 

「頼りにしているぜ。サイラス」

 

 

 

 

 

 

 

サイラスと颯馬は朝早く起きて準備を済まし出発した。

大和までの道は整備されており、天候にも恵まれたおかげで予定通り着くことが出来た。

 

「盛り上がってるな~!」

 

颯馬がその人の多さに驚いていた。

祭りが始まるのは夜だがその準備のために慌ただしく人が動いていた。

 

「宿で一旦休むか?」

 

「そうだな。これでは動くに動けんからな」

 

二人は予約されているはずの宿へと向かった。

話通り部屋は予約されており、スムーズに部屋を借りることが出来た。

 

「皆、楽しそうだな」

 

「戦乱の世でなければいつもこのような光景が見れたのだろうが、今ではいつこの場が戦場になってもおかしくない時代だ。将軍でさえこの乱世では安全ではないのだからな」

 

「誰かが天下統一を成し遂げなければ争いは続くということか」

 

「ああ、早く終われば良いのだがな」

 

「颯馬なら天下統一を果たせるんじゃないのか?軍師を目指してるんだろう?」

 

すると颯馬はキョトンとしたあと大笑いした。

 

「ハハハハハッ!確かに軍師として仕えた家を天下統一に導く事が出来たのならこれ以上の名誉はないな」

 

「なんだ?颯馬はそれくらいの野望は持ってないのか?」

 

「そうだな。今は軍師になることしか考えていなかったからな。そのあとの事は考えていなかった。ハァ、今日は良い酒が飲めそうだ」

 

「それは良かったよ。じゃあ是非とも付き合わせて頂くよ」

 

そのあと颯馬は酒を交えながら夜が来るまでサイラスにこの国の事を語り続けた。

途中でサイラスがあまりの話の長さに途中で聞くのを止める程にまで話し続けた。

 

 

 

 

そして、夜がやって来た。

至るところで火が灯り、音楽が鳴り響く。

音楽に合わせて踊る人や出店で買った食べ物を食べる人、そして何処にでもいる酔っ払い。

 

「こんなに賑やかな祭りは久しぶりに見たな」

 

「人に酔いそうだ」

 

サイラスは、あまり人混みが好きではなかった。

 

「あっ!そうだ。サイラス、これを渡しておくよ」

 

颯馬は懐から小袋をサイラスに渡した。

 

「これは....金か?」

 

袋の中身には銅銭が入っていた。

 

「少ないけどな。祭りを楽しむ事は出来ると思う」

 

「しかしこれは旅の資金だろう?」

 

「いいんだよ。大したお金は入っていない」

 

「だけど....」

 

「サイラスが早くこの世界に馴染むためだよ。受け取ってくれ」

 

颯馬は厚意でいってくれているのであろう。

ならば無下にすることは出来ない。

 

「分かった。ありがとう」

 

「ここからは別行動にしよう。満足したら宿に戻る事。それで良いか?」

 

「分かった」

 

「それじゃ、またあとでな」

 

颯馬と別れ一人になると取り敢えず祭りの中を歩いた。

サイラスの全身を覆うフードの着いたマントは周りから少し奇異の目で見られたが祭りと言うこともありサイラスの格好よりも祭りの方に意識が向いていた。

 

「そこのあんた!」

 

横から急に声をかけられサイラスは、顔を向けると出店の人間が笑顔でこちらを見ていた。

 

「どうだい?焼きたての餅はいらないかい?」

 

店主の前には程よく焼けた餅があり、芳ばしい匂いが漂っていた。

サイラス自身、餅といった物は初めて見る。

 

「ふむ、じゃあ一つもらえるか」

 

「あいよ!」

 

サイラスは、金を店主に払うと店主は手頃な焼けた餅に海苔を巻いて渡してくれた。

サイラスは、一口その餅を食べると外側はパリッとしていて中はモチモチの食感に海苔の風味が鼻を抜けた。

 

「これは美味しいな!」

 

「あんた、餅を食べるのは初めてかい?」

 

店主の質問にサイラスは頷く。

 

「なるほどね。もしかして異国の人間かい?」

 

「まあ、そんなところだ」

 

「だから見たこともない格好をしてるわけだ。そうだ、そんなお前さんに是非とも食べてほしいものがあるんだ」

 

すると店主は先程の白い餅とは違い、茶色い餅に海苔を巻いた物をサイラスの差し出してきた。

 

「これは試作品でよ。醤油で味付けをした餅だ。食べて見てくれ」

 

サイラスは、促されるままその餅を食べる。

 

「ほお、これも美味しいな。味が濃くて少し喉が渇くけど....酒によくあうかもしれない」

 

「なるほど酒か!なら居酒屋に売り込むのもありだな。ありがとよ兄ちゃん。ちなみにその餅は俺の奢りだ」

 

「すまないな。ありがとう」

 

店主と別れを告げるとサイラスは、再び町を歩き出した。

しばらく祭りの雰囲気を楽しんでいると再び声を掛けられた。

 

「そこのあんた、どうだいいっちょ賭けてみないかい?」

 

「賭ける?」

 

「ああ、簡単だ。丁か半かどちらかを決めて当てることが出来たら金が貰える。簡単だろ?」

 

男が言うには、二つのサイコロを水などを入れる容器の中で見えないように転がし出た目の合計の偶数か奇数を当てるそうだ。

当てることができれば賭けた額の同額を報酬として貰うことが出来る。

逆に外してしまうと賭けた金は没収される。

 

「ようは当てれば良いのか?」

 

「そう言うことだ。どうだいやってみないかい?」

 

「まあ、少しなら....」

 

「よしきた!じゃあこっちだ」

 

賭博は家屋の中で行っているらしく、サイラスはその家屋のなかの空いてる場所に腰を下ろした。

既にサイラス以外にも十人程の客がいた。

 

「それでは、揃いましたので始めます」

 

審査及び進行役の中盆と呼ばれる人間が賭博の開始を宣言する。

するとツボ振りと呼ばれる女性が茶碗の様な器とサイコロ二つを準備する。

準備が終わると中盆が掛け声を発した。

 

「はい、ツボ」

 

「はい、ツボをかぶります」

 

そしてツボ振りが縦に器を振る。

 

「さあ、張った!張った!」

 

中盆の進行で客が丁か半か張っていく。

サイラスは、サイコロが入っている器をじっと凝視した。

 

「客人どちらか決まりましたかな」

 

中盆がサイラスに問いかけた。

他の人間は既に賭け終えてサイラスを待っていた。

 

「すまない。では、丁で....」

 

サイラスは、それと同時に颯馬に貰った金を全額賭けた。

 

「出揃いました」

 

中盆が全員が賭けた事を確認する。

 

「勝負!」

 

そして中盆の掛け声と共にツボ振りが器を開く。

中盆がサイコロを確認し声をあげる。

 

「サンゾロの丁!」

 

サイラスは、見事に的中させた。

だが、サイラスにとってこの賭博は既に賭博ではなくなっていた。

何故なら、サイラスはフォースの透視の力で器の中のサイコロの目を透視していたのである。

フォースの存在を知っている人にとってはイカサマであると気付くかも知れないが、この世界の住人はフォースの存在を知らない。

つまりバレる事は無いのだ。

 

「.........」

 

ただ、サイラスはあることを考えいた。

このフォースの使い方は暗黒面に触れるのだろうか?

正直言って触れている気がする。

だが、確かに私欲の為に使っていると言われればそうなのかもしれないが、颯馬に金を返す為だと考えれば別に大丈夫だろう。

返す段階で少し返す額が増えても文句は言われないだろうし暗黒面に触れる訳ではないだろう。と

自身で正当化することで暗黒面に触れていることを否定した。

その後もサイラスは一回もはずすことなく丁半賭博を終えた。

最後の方は貸し元の顔が青くなっていたがサイラスは気にしないことした。

 

「さてともうそろそろ宿に戻るか」

 

サイラスは充分に『祭り?』を楽しんだと思い宿へと向かった。

 

「ん?あれは颯馬か?」

 

宿に戻る途中偶然にも颯馬を見つけた。

だが、颯馬は一人ではなく一人の女性と話をしていた。

それも身なりの良い綺麗な服に身を包んだ女性とだった。

 

「.....お邪魔かな」

 

サイラスは、別の道から宿へと帰ることにした。

宿に戻り颯馬を待っていると程なくして颯馬が帰ってきた。

 

「遅かっ.....」

 

サイラスは言葉を詰まらせた。

何故なら颯馬の後ろには先程颯馬と話していた綺麗な身なりの女性が立っていたからだ。

 

「すまないサイラス。事情はあとで話す」

 

すると後ろの女性が颯馬の前に出てきた。

 

「主がサイラスか?」

 

何やら随分と上から目線の口調に驚きつつもサイラスは平静を装った。

 

「そうだが、貴女は?」

 

「妾か?妾は足利義輝じゃ。これからよろしく頼むぞサイラス」

 

 

 

 




ありがとうございました。
もう少しテンポよく話を進めたいのですが自分の能力では、それも難しく....お恥ずかしい限りです
次の話も書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

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