段々、文字の数が減っていっているような...
人との出会いは運命であり必ずそこに意味がある。
サイラスも一本のライトセーバーを持ったがゆえに正体不明の男と出会い、そしてヨーダの元へと導かれた挙げ句、銀河の命運を左右する戦いに巻き込まれた。
しかし、サイラス自身それが不運だとは今は思っていない。
ヨーダの元でフォースを学んだことで様々な知識を得ることが出来たうえ、ろくに友達もいなかったサイラスにルークと言うかけがえのない友と合うことが出来た。
そして、この世界で颯馬と出会い、そして今足利と名乗る女性との出会いで旅は新たな方向へと向かおうとしていた。
「足利....義輝?」
何処かで聞いたような名前にサイラスは、首を捻る。
「サイラス、ちょっと!」
颯馬に腕を掴まれ部屋の端の方に連れていかれ、義輝に聞かれないように小さな声で話し出した。
「サイラス、足利義輝が誰か分かるか?」
「俺を誰だと思っている?この世界のことを何も知らない異世界の人間だぞ?」
「.....そうだったな、悪い。えっと、足利義輝は前の将軍なんだよ」
「つまりお偉いさんって事か。でもなんでこんなところに?」
それほどの人物が目の前にいるのに颯馬は驚くどころか疑いの目で義輝の事を見ていた。
「サイラスは知らなくて当然だな。実は前の将軍足利義輝は数年前暗殺されたんだよ」
颯馬の言葉にサイラスは目を細める。
つまりこの世に生きている筈がない人間が今、目の前にいるということだ。
「だが現に今、目の前にいるじゃないか」
「たぶん偽名を使っているんだよ。自分を隠すために」
颯馬の推測にサイラスは、疑問を隠しきれなかった。
自分の名前を隠すならありふれた名前で通すべきである。
わざわざ暗殺された事が殆どの人間に知られている名前を偽名に使うのは怪しんで下さいと言っているようなものだ。
「なんでわざわざ前の将軍の名前を使うんだ?」
「それは....あの女の頭が少しおかしいんだろう」
「.....まあ、颯馬がそう言うなら俺は特に口は出さないが....」
義輝と名乗る女性に何かしらの危険が無いとは言えないが、あまり怪しさを感じなかった。
それは、義輝が嘘をついている様に見えなかったからだ。
もし隙があればフォースを使って義輝の感情を読み取り、義輝が本音を言っているのか嘘をついているか調べる事が出来るが、今そこまでこの人物に警戒をもつ必要はないように感じた。
今は様子だけ見ていればいいだろう。
「何をコソコソと話しておるのじゃ?」
「いや、なんでもないんだ。それより飯がまだだろう?せっかくの祭りだから食べ歩きでもしないか?」
颯馬の提案に義輝が目を輝かせる。
「おお!いい考えじゃの。サイラスもそれで良いか?」
「ああ、構わない。それより颯馬、お前にこれを返しておくよ」
サイラスは、丁半賭博で得た金を全額颯馬に渡した。
「なんだこれは?」
少し重量のある小袋を渡されて颯馬は首をかしげた。
「颯馬に貸りた金だ。少し増えたが気にしないでくれ」
「増えた?」
何を言ってるんだと思いながら颯馬は袋の中を覗きこんだ。
「......え?」
颯馬は間の抜けた声を出した。
袋の中には、金色に輝く小判一枚と銀銭が詰まっていた。
「ほう、旅の資金には多すぎじゃないかのう。まあ、多いことに越したことはないがな」
義輝は颯馬の後ろから袋を覗き見ていた。
颯馬とは違い袋の中を見ても顔色を変えることはなかった。
「サイラスこの金はいったい....」
「賭け事をしたら勝った」
実際はイカサマ同然の力を使って得た金だがその事は伏せておいても良いだろう。
「あれだけの金でこれだけ勝つって....まさか。あのちか.....」
颯馬はサイラスの力の事を口走りそうになるが、サイラスはそれを遮った。
「颯馬、義輝が早く行きたそうにしているぞ?早く行こう」
「え?ああ....分かった」
「サイラス、妾はそんなに食い意地は張ってはおらぬぞ」
「お腹減ってそうな顔して何を言ってるんだか」
サイラスは、義輝の背中を押しながら部屋を出ていった。
その間も義輝はサイラスに文句をいい続けた。
確かに若い女性に言う言葉ではないとは思ったがフォースの事をあまり知られたくなかった。
あれから祭りを楽しみ過ぎて疲れ果て、宿で泥の様に眠ってから町を出てた。そしてそれから一ヶ月と言う時がたった。
「颯馬、次は何処に向かうのじゃ?」
何故かその後も義輝は颯馬達の後を付いてきた。
颯馬は色々と迷惑しているようだが、今となっては諦めているようだった。
ちなみに未だ颯馬は仕官先を見つける事ができないでいた。
その理由はやはり義輝にあった。
義輝は颯馬の仕官先に何故か城の中までついていき持ち前の不遜な態度で城主に接し、ほぼ門前払い扱いされていたのだ。
「ん~、そうだなぁ。この際だから京に行ってみようと思う」
颯馬の言葉に義輝の眉が少し動いた。
「京....近いのか?」
「京のある山城は隣だからゆっくり行っても三日もあれば着くんじゃないか?」
今、颯馬達が居るのは摂津と言う国だ。
有名な石山本願寺があるがサイラスはこの国の神やら仏には関係のない人間だ。
サイラスの信じるものはフォースである。
「なるほど。そう言えば京には将軍が居るんだったか?今の将軍とはどんな関係なんだ?義輝」
義輝の事を前将軍とはサイラスも颯馬も未だ信じてはいないが試しにきいてみた。
ただ、これまでの見てきた義輝の振る舞いにはやはり何処か常人離れしておりサイラスは心の何処かで義輝は本当に将軍ではないのだろうかと思い始めていた。
「....義昭は妾の妹じゃ。あまり話す機会はなかったがの」
義輝は微笑みを浮かべながら話した。
その顔に嘘は見当たらなかった。
「妹か....なら京に行くんだから、顔くらい見て行かなくて良いのか?そもそも、戻るべきだろう?暗殺されずに生きてるんだから」
義輝はサイラスの問に目を伏せた。
「いいのじゃ。義昭は妾よりも将軍としての役目を果たしておる。今更会いに行ったところで邪魔になるだけじゃ」
「そうか?姉が生きているとなれば妹も喜ぶだろう」
「確かに義昭は喜ぶかもしれんのう。じゃが、その後混乱が生じる可能性がある」
義輝の言っている混乱の意味はサイラスにも理解できた。
つまり義輝が暗殺されたから義昭が今の将軍の座についた。
しかし、その義輝が生きているとなれば当然、義輝に再び将軍の位に復帰する話が出てくるだろう。
だが、もし義昭を擁護する人間がいた場合、義輝の復帰を望むもの達とが争うことになる。
ようやく新たな将軍を立てることによって安定してきた家中がまた崩れてしまう。
そうなっては元も子もない。
「だが、義輝の妹はまだ年端もいかない少女なのだろう。姉が共に居てくれたら心強いと思うがな」
「べつに妾は義昭の事を見捨てた訳ではないぞ。もし、義昭に助けが必要と分かれば直ぐに助けに行くつもりじゃ」
「そうか。まあ、俺が口出しすることではないな。すまない」
「よいのじゃ。サイラスは妾の事を心配してくれたのじゃろ?」
「それもどうやら杞憂だったようだな。家族は大事にしろよ」
「わかっておる」
この義輝がもし本当に前の将軍であるなら何故暗殺されそうになったのだろうか?今の義輝を見る限りでは人間性に問題はないと思うのだが....
「おーい!置いてくぞ~!」
義輝と話しすぎたのかいつの間にか颯馬は随分と前を歩いていた。
「わるい!今行く」
「そう言えばサイラス。お主、颯馬の用心棒をしておるのだったな」
「そうだが?何故今更....」
何か嫌な予感がサイラスの脳裏をよぎる。
「なら腕に自信があるのじゃろう?どうじゃ、妾と剣を交えてみぬか」
そうだろうと思った。義輝は重度の剣の収集家であり、既に体の至るところに幾つもの剣が差してある。
それだけではなく、剣術の心得もあるようでその腕も達人級らしい。
これについては颯馬が話してくれたのだが、どうやら颯馬は自分の知らない間に義輝に手を出したらしく、その時にひどい目にあったようだった。
「お断りだ。負けでもしたら颯馬に示しがつかん」
「なんじゃ、つまらぬ。大丈夫じゃ。颯馬はそんなことで主を見捨てはせぬ」
義輝は、どうしてもサイラスと戦いたいらしくしつこく懇願してきた。
そのしつこさに負け、サイラスも諦めて戦うことを了承した。
そのあと、颯馬にその事を話し今日は今いる町に滞在することになった。
颯馬は大丈夫かと言っていたが、上手くやるしかなかった。
サイラスの心の中には勝ちたくない気持ちと負けたくない気持ちと言う矛盾した気持ちが心の中に存在していた。
義輝との試合は日が沈む前に行われることになった。
辺りが夕焼け色に染まり少し冷たい風が頬をくすぐった。
試合は町外れの草原で行われた。
サイラスの目の前には長い金色の髪をなびかせ悠然と立っている義輝の姿があった。
夕焼けに色に染まる義輝の髪は輝きを放っており、より一層の美しさを放っていた。
試合は木刀で行われ、頭以外の部位を先に打つことが出来きた方の勝ちと言う一本勝負とした。
審判は颯馬が行い、判定は颯馬に委ねられる。
「準備はいいかのう、サイラス」
「いつでもどうぞ」
「余裕じゃな」
「まさか、びびりまくっているよ」
サイラスはそう言い肩をすくめる。
「そうは見えぬがな.....。まあ良い、早く始めるとするかの。颯馬」
義輝に呼ばれ颯馬は頷く。
「それでは双方前へ!」
サイラスと義輝は木刀を持ち、一歩前へ出る。
「試合は一本勝負とし、頭部への攻撃は禁止とする」
サイラスと義輝は同時に頷き構えをとる。
サイラスは人差し指と中指を伸ばして前に突きだし、木刀を持った手は後ろに大きく引くという弓を引いたような特徴的な構えをとった。
逆に義輝は木刀を両手で持ち正面体に構える基本的な構えをとった。
それらを見た颯馬は唾を飲み込み叫んだ。
「始め!!」
先に動いたのは義輝だった。
「行くぞ!サイラス!」
瞬時にサイラスとの間合いを詰めサイラスの右肩を突いてきた。
サイラスは慌てることなく右半身をを引き、突きをかわした。
義輝は突いた木刀を直ぐに戻し、狙いを上半身から一転して下半身に移し、左の太股を打ってきた。
サイラスは、それを木刀で受け止める。
義輝は更に手を休めることなく剣を繰り出すが、サイラスはこれを全てかわしたり木刀で受け止めた。
「はあッ!」
サイラスは受け止めた木刀を受け流し、義輝の胴を狙った。
義輝はすぐさま反応しギリギリの所で防いだ。
それと同時に義輝の顔に驚きの表情が浮かんだ。
二人は一旦距離をとった。
義輝の剣捌きは確かに達人級だ、並の人間なら瞬殺されてしまうだろう。
しかし、相手はフォースという超越的な力を使うジェダイの騎士なのだ。
普通では図ることは出来ない。
現にサイラスはフォースの力である予知能力を応用し非常に高い空間把握能力をもって義輝の高速剣を防いでいた。
更に戦い方もジェダイの騎士達が編み出した戦闘の型を使用しており、今サイラスが使っているのはソーレスと呼ばれる防御を重視した戦闘方法だ。
この戦闘方法は本来であればフォースによる先読みと高い反射神経を用いることにより光速に近い速度で飛んでくるレーザーやブラスター等を反射したり偏光させたりするのに使うが対人戦も行うことができる。ただ、反撃が主体なため長期戦や集団戦の方がこの型は向いている。
「サイラス、お主強いではないか。まるでこちらの動きが読まれているようじゃ」
流石に勘が鋭いようだった。
ならこれ以上余計な事を感付かれる前に勝負を決めなければならない。
ならば次の一刀で決めよう。
どちらも文句のない決着の付け方をしようと思った。
上手く行くかは義輝次第だが。
「行くぞ!」
今度はサイラスが間合いを詰めた。
「....!なるほど面白い!」
それに対し義輝もまた間合いを詰めた。
そして、お互いの距離が縮まり攻撃の間合いに入った瞬間、サイラスと義輝は同時に剣を出した。
「......ッ!」
「......クッ!」
二人は同時に動きを止めた。
そこには、サイラスと義輝の喉元に剣先が向けられていた。
「りょ...両者、引き分け!」
颯馬はお互いが行動不能と判断し引き分けとした。
これはサイラスの狙いでもあった。
勝ちでもなく、負けでもない結果、引き分けと言う結果を。
しかし、この結果に導くためにはお互い勝負に出ないといけない。
もしあのとき、義輝がサイラスの突撃に応えず防御に徹した場合、違う結果になっていただろう。
「サイラス、この結果を狙ったじゃろ?」
義輝は少し不満そうな顔でサイラスを見た。
「義輝程の相手にそんな余裕があるわけないだろう」
「あれだけ簡単に妾の攻撃を受けきっておいて何をいっておるのじゃ」
「義輝が俺の誘いに乗ってくれなかったら少し厳しか.....ッ!!」
サイラスは何者かの気配を感じた。
それはフォースによる空間把握能力がなければ気づかない程で颯馬と義輝は気付いていなかった。
サイラスは、近くの小石を掴み人が隠れらるほどの茂みに勢いよく投げた。
すると、キンッ!と金属に当たったような高い音が響いた。
突然の出来事に颯馬も義輝も口を開けて固まっていた。
少しして茂みの中から白い装束をきた女性が現れた。
「ほっほっほっ、まさか気付かれるとは思わなかったでおじゃるよ」
その女性の姿を見た義輝が何か気付いたように声を発した。
「まさかお主は公家の人間か?」
「なんだ?義輝、知り合いか?」
「いや、面識はないが...お主、公家の人間なら官位があるはずじゃ。教えよ」
「義輝.....まさかとは思ったが、そちは足利義輝かえ?」
「そうじゃ」
「そうでおじゃるか、なら名乗らなければならぬなぁ。麿の名は烏丸光広、官位は正二位行権大納言じゃ」
義輝と烏丸の会話はサイラスにとって何をいっているのか分からなかった。
しかし、横にいる颯馬は何故か目を見開き、口を開けて間抜け面をしていた。
「颯馬、公家ってなんだ?」
「..........」
サイラスの声が聞こえていないのか颯馬は固まったままだった。
サイラスは、颯馬の脇腹を拳で小突いた。
「ぐふっ!なにするんだよサイラス!」
「お前が無視するからだろう?で、公家ってなんだ」
「えっ?ああ、公家は朝廷に仕える貴族の事だよ。それで烏丸家はかなり有名な家なんだ」
「ヘェ、いまいちよくわからないな」
サイラスは別段興味を示すことはなかった。
何故ならそんなことよりも別に疑問があるからだ。
「しかし、何故その公家の人間がこんなところにいるんだ?」
「それは分からないけど....物見遊山じゃないか?」
颯馬も分からないようだった。
さて、そうなると直接本人に聞くしかないようだが、その本人は義輝と話している。
「しかし、義輝や。こんなところで油を売っていていいのでおじゃるか?」
「何の事じゃ?」
「なんじゃ聞いておらぬのでおじゃるか?ほんの数日前、今の将軍を京から追放しようと織田が兵を上げたそうな」
「!!」
義輝は激しく動揺した。
「はよういかねば。お主の妹が織田に殺されてしまうぞよ」
すると烏丸はおもむろに腰に差してある刀を抜いた。
「何の真似じゃ?そこを退かぬか」
「せっかく教えてやったのじゃ。麿と少し遊んでくれても罰はあたらぬじゃろ?」
「そんな暇はない!早くせねば義昭が殺されるのじゃ!」
義輝の怒声が響き渡る。
颯馬とサイラスは、いつも飄々としている義輝とは似ても似つかぬその姿に驚いた。
「おいおい、いったいどうなっている?颯馬」
「俺にも分からん!ただ、分かるのは義輝が京に行きたがってる事くらいだ!」
「なら、行かせてやるべきだろう。妹の命がかかってるんだから」
「だが、あの烏丸をどうにかしないと行けないし、もう戦う気満々だぞ」
「颯馬、義輝を連れて京に行け。あいつの相手は俺がする」
「お前はどうするだ!?」
「あいつを何とかしたら直ぐに追い付く、だから早く行け」
するとサイラスは、この世界に来たときに盗賊から貰った刀を抜き、跳躍した。
フォースによる身体強化での跳躍の高さはゆうに五メートルを越え、烏丸の頭上から強襲した。
「おじゃ!?」
上空から振り下ろされたサイラスの刀を烏丸は防いだものの、耐えきれず後方に吹き飛ばされた。
「義輝!こっちだ!」
颯馬は義輝に叫んだ。
義輝はサイラスを一瞥し、すまないと言い残し颯馬と町に戻っていった。
恐らく町で馬を借りるのだろう。
「さて、俺もあいつらに追い付かなくてはならない。さっさと終わらせてもらうぞ」
「そちは何者じゃ?あのような跳躍、人間とは思えぬ」
「お前はこの世の全ての人間にあったことがあるのか?お前の知らない人間もいるだろう?その一人が俺だ」
「ふむ....まあ良いでおじゃる。お互い思う存分戯れようぞ」
サイラスは、大きく息を吐いた。
時間はかけられない。
ならば戦い方は一つしかない。
あらゆるジェダイの戦闘の型を極めた物しか習得、制御出来ないとされる究極の型、ジュヨーをもって目の前の敵を戦おう。
それがもっとも早く目の前の敵を倒すことができる。
サイラスは僅かに、心の中に戦闘による高揚感を灯らせた。
読んで下さってありがとうございました。
更新ペースを一定にしていきたいのですが中々難しいですね
次も頑張って書きたいと思います。