戦極姫~戦乱に導かれしジェダイの騎士~   作:四駆動戦士

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皆様、更新が遅れたこと申し訳ありませんでした
一ヶ月以上期間があいての更新になりましたが読んで頂ければ幸いです


京への道のり~後編~

ジェダイは遥か古の時代から存在してきた。そして、その長きにわたる時の中でライトセイバーを使った戦闘方法が幾つも生み出された。

現在では、ジェダイの戦い方は七つ存在する。そして、サイラスは抜群の戦闘センスに恵まれその七つ全てを使用することが出来る。

そのなかでもサイラスがよく使用するのはシャイ=チョーとソーレスと呼ばれる二つの型だ。

シャイ=チョーと呼ばれる型はジェダイの騎士として最初に覚える型であり、攻撃と防御といった基本的な技を組み合わせた最もシンプルな型だ。

そして、シンプル故に習熟すれば隙のない安定した戦いが出来る。

若いジェダイがよく使っているが使い勝手の良さから熟練したジェダイの騎士も使用している。

サイラスも並の相手ならこの戦いで戦っている。

ソーレスに関しては防御重視の型でジェダイの理念に最も適している戦いと言える。

何故なら、ジェダイは自由と正義を守る騎士であり、自ら誰かを攻撃したり傷つけたりするのはジェダイの理念に反し、フォースの暗黒面に触れることになる。

そのため、ジェダイの騎士は相手の攻撃を受けてから自己の防衛の為に初めて攻撃が出来る。

その点を踏まえると防御重視のソーレスはジェダイとして理にかなった戦いと言える。

そして、今サイラスはその七つの戦いの内の一つ、ジュヨー呼ばれる型で烏丸と対峙した。

 

「公家の人間は朝廷に仕えているんじゃないのか?」

 

目の前にいる白に近い長い銀髪に白い装束を着た烏丸光広という女性はサイラスに対し微笑んでいた。

それは、遊んでくれるのを待っている子供のような微笑みだった。

 

「ほっほっ、そうでおじゃるよ」

 

「じゃあ何故、将軍を助けに行かない?」

 

「麿も人間じゃ。仕えたいと思った人間には命すら懸けて戦おうと思うじゃろう。じゃが、その逆は.....」

 

烏丸は空いている手で服の中から扇子を取りだし口元を隠した。

 

「言いたいことは分かるがお前たちは将軍を補佐する義務を負っているのではないのか?」

 

「そうでおじゃるが、麿は自由人でなぁ」

 

サイラスは話が通じる相手ではないことを悟った。烏丸にとって今の将軍は守るに値しないと言いたいらしい。

 

「どうやら、いくら話し合っても無駄のようだな」

 

「そうでおじゃるよ。無駄な事に時間を使わずに麿と戯れようぞ」

 

くすくすと笑う烏丸はサイラスに刃を向ける。

得体の知れない相手との戦いは、いくらフォースがあるからと言っても油断は出来ない。

 

「では、いくぞよ....」

 

烏丸はゆっくりと体を前に倒すと、地面を蹴った。

そしてそのまま上体が低い姿勢のまま、下から上に切り上げた。

サイラスは、後方に下がりギリギリの所で刀を避けた。

烏丸の速さは常人とは比べ物にならないほど速さで、フォースによる先読みの力がなければ避ける事が難しかっただろう。

サイラスは、後ろに残った重心の反発を利用し、前へ一歩踏み込み水平に凪ぎ払った。

烏丸はこれに反応し刀で受け止めた。

刀同士がぶつかり合い火花が散った。

二人は一瞬のつばぜり合いの後、距離をとった。

 

「簡単にはいかせて貰えないか....」

 

「そち、妙な太刀筋でおじゃるな....」

 

烏丸がそう思うのも無理はない。

サイラスの使っている型、ジュヨーは静と動、相反する特性を同時に併せ持もち、高度な体術と非常に精度の高い剣捌きが要求される難易度の高い型だ。

しかし、その動きは極めて予測困難な戦い方で相手を圧倒することが出来る。

 

「お前もかなりの速さで動くな...」

 

「ほっほっ、京ではこの速さについていける者はあらぬでなぁ。剣を避けられたのは久方ぶりでおじゃるよ」

 

「そうか、それは光栄だな。だが、先も言ったが時間は掛けられないんだ」

 

今度はサイラスが先に動いた。

フォースによる高速移動を使い一瞬で間合いを詰め、烏丸の頚部を狙って刀を水平に振った。

 

「......っ!」

 

烏丸はサイラスの速さに驚いたものの、反応しサイラスの一撃を受け止める。

 

「...!?」

 

しかし、烏丸は受け止めた刀に違和感を覚えた。

異様に軽いのだ。

それもまるで受け止めたのかすら分からないほどに....。

その時、烏丸は気づいた。

これは、陽動だと。

攻撃する剣ではなく注意を反らす為の剣だと言うことを。

しかし、気付くのが遅かった。

既にサイラスは、烏丸の脇腹に二撃目を放っていた。

 

「くっ.....!」

 

何とか烏丸はギリギリの所で反応し二撃目を防いだ。

しかし、ギリギリの所で受けた為、受けきる事が出来ずに体勢を大きく崩した。

その隙をサイラスが見逃す事はなく、サイラスは烏丸の腹部に強烈な蹴りを放った。

 

「かはっ!」

 

サイラスの蹴りを腹部に受けた烏丸は大きく後方に吹き飛ばされた。

 

「うっ....ぐっ...」

 

吹き飛ばされた烏丸は腹部の痛みに耐えながらも立ち上がろうとするが、想像以上に強い蹴りに呼吸すらもままならない状態だった。

 

「ここまでだな」

 

サイラスは、烏丸の目の前に立ち刀を突き付けた。

 

「麿の....敗けでおじゃるな....」

 

烏丸は刀をその場に置き、降参の意思を示した。

 

「敗けを認めるのか?」

 

「そうじゃな。そちの勝ちでおじゃる。首を取るのも、慰みものにするのも好きにするがよい」

 

すると、サイラスは刀を納めて烏丸の刀を回収すると烏丸を抱き抱えた。

烏丸の体は思ったよりも軽く華奢な体つきをしていた。

抱き抱えられた烏丸は一瞬何が起こったのか分からず体を硬直させた。

 

「そ、そち!いったい何のつもりでおじゃる!?」

 

「降参した相手を殺したり、傷つけたりするのはジェダイの掟に反する」

 

サイラスは、烏丸を抱えたまま町に行き宿に戻った。

烏丸はサイラスの腕の中で半ば放心状態に陥っていたが部屋に着くと烏丸がサイラスの腕の中で小さく呟いた。

 

「そち、麿はもう大丈夫でおじゃる。下ろしてたも....」

 

気付けば、部屋まで烏丸を抱えたまま来たため、非常に目立ってしまっていた。

宿の主人は何やらニヤニヤしていたがサイラスは気にも止めなかった。

 

「もう、大丈夫なのか?」

 

「う、うむ。平気でおじゃる」

 

サイラスに下ろされ畳の上に下りた烏丸は突然膝を着いた。

 

「ぐっ....」

 

サイラスから受けた蹴りは想像以上にダメージが大きかった。

立とうとお腹に力を入れた時に激しい鈍痛に見舞われた。

 

「本当に大丈夫なのか?......少し待っていろ」

 

するとサイラスは、布団を敷きだした。

 

「そ、そち、何をしておるのじゃ?」

 

サイラスは、腹の痛みに耐えながら首を傾げる烏丸には気にせず手際よく布団を敷いていく。

 

「さあ、横になれ」

 

「........おじゃ?」

 

布団を敷き終わったサイラスの一言に烏丸は口を開けたまま固まった。

布団が敷かれて男から横になれと言われてしまっては思い付く事は一つしかなかった。

 

「どうした?早く布団の上で寝そべると良い」

 

「そちよ、酷いことはせぬと言っておったでおじゃろう?」

 

「痛くはしないから安心しろ」

 

烏丸は首を横に振り拒絶した。

 

「い、嫌じゃ!」

 

「はぁ....負けたのだから言うことを聞け」

 

確かに烏丸はサイラスとの戦いに負けたとき、首を取るのも慰みものにするのも好きにしろと言った。

今さらそれを覆すのは負けた者として、そして武士として情けないことである。

 

「うう....少しでも信じた麿が馬鹿でおじゃる....」

 

その場で斬らず宿まで運んでくれたサイラスの優しさを信じた自分を憎んだ。

烏丸は少し涙ぐみながら布団の上に横になった。

 

「ならいくぞ。痛かったら言え」

 

サイラスは、蹴った烏丸の腹部に軽く手を置き、手にフォースを集中させた。

 

「そ、そち。何を.....」

 

烏丸はサイラスの手が置かれた腹部に異変を感じた。

それは先程まで立てないほどに痛かった腹部の痛みが、みるみるうちに無くなっていったのだ。

 

「まあ、こんなものか。どうだ?まだ痛いか?」

 

「いや、大丈夫じゃ。全く痛くないでおじゃる」

 

「少し虚脱感が生じるが大丈夫だ。今日はゆっくりと休め」

 

サイラスが行ったのはフォースによる治療だ。

ジェダイはフォースを使う事によって精神の沈静や疲労の回復、短い時間で十分な睡眠を取ったり等をすることが出来る。ちなみにこれらの能力は、ジェダイならほぼ必ず備えている一般的な能力である。

他にも呼吸法や瞑想を行い、自己暗示をかけトランス状態になる、などの方法がある。 これは精神的に怪我や火傷の痛みを感じないようにさせて苦痛を和らげるというものから、熟練すれば物理的に体内の毒を除去したり、かなりの大怪我傷を治すこともできるようになる。

そしてサイラスが烏丸に行ったのは他人に対するフォースによる治療だ。

これは、癒される側の身体エネルギーを使い疾病を治したり、傷を治したりすることが出来る。

ただし、これは相手の身体構造を把握しておかなければ逆効果になってしまう。

烏丸の場合は同じ人間であり、腹部の打撲と言う原因がはっきりとしていた為、完璧に治すことが出来た。

 

「確かに、少し体がだるいでおじゃるな。しかし、治療をしてくれるのならそう言ってくれれば良かったのものを....」

 

「治す方法を言って信じたか?」

 

「も、もちろんじゃ」

 

そう言っている烏丸の目は泳いでいた。

 

「そうか。....少ししたら眠気が襲ってくる。抗う必要はない。しっかり眠れば明日には万全な体調で目を覚ますことが出来る筈だ」

 

「....知らなかったとはいえ疑って悪かったでおじゃる」

 

「それは仕方ない事だ。この世界ではあり得ない方法で治したから説明が出来なくてな」

 

この世界の人間にフォースの事を話しても理解しては貰えないだろう。

唯一、フォースについて話した颯馬も理解出来ていないと言えた。

なら、あまり無用な事を話しても仕方ないと思ったのだ。

 

「何か飲み物を取ってくる」

 

サイラスは立ち上がり飲み物を取りに部屋を出た。

途中で会った女中に飲み物を頼み、これを受けとると部屋に戻った。

 

「.....スゥ.....スゥ.....」

 

部屋に入ると烏丸は目を閉じていた。

サイラスは烏丸に近づくと寝息が聞こえてきた。

そのまま、烏丸の顔を覗き込むと完全に寝ていることを確認した。

 

「なんだ寝たのか?.....仕方ない、颯馬を追うのは諦めるか。こいつをこのままにしておくことは出来ないからな」

 

今から颯馬達を追いかけても追い付くことは無理だろう。それに今からでは直ぐに日がおちて、辺りが真っ暗になってしまう。

そして何よりサイラスは、京までの道のりを知らなかった。

 

「そういえば、こいつは京の貴族だったよな。なら明日、案内して貰えば良いのか」

 

サイラスは、寝ている烏丸を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

朝、木の窓の隙間から日の光が射し込みサイラスを眠りから覚醒させた。

 

「.....さてと、行くか」

 

サイラスは、布団から出ると手早く着替えを済ませ、隣で今も寝ている烏丸の体を揺すった。

 

「おい、起きろ。朝だぞ」

 

「う....まだ眠いでおじゃる....」

 

烏丸は布団を頭まで深くかぶりまた寝息を立てた。

 

「ダメだ。さっさ起きろ」

 

サイラスは、再び体を揺する。

 

「....なんじゃ?しつこいのう」

 

烏丸は嫌々布団から顔を出した。

すると、近くに座って烏丸を見ているサイラスの顔を見て飛び上がった。

 

「な!なんでそちがおるでおじゃるか!?」

 

「いや、なんでって....」

 

「よ、義輝を追って京に行ったのではないでおじゃるか?」

 

「それが京までの道を知らなくてな。そこでお前に案内してもらうと思ってな」

 

「そんなのおことわ...」

 

ガシッ....

 

サイラスは、烏丸が言い終わる前に烏丸の肩を掴んだ。

烏丸の体が驚きで一瞬震えた。

 

「まあ、そんなことを言うな。旅は道連れ世は情けと言うだろう?迷える子羊を助けると思って案内してくれ」

 

サイラスの言葉に烏丸は呆れたように顔を項垂れた

 

「何が子羊でおじゃるか、そちは狩られる側よりも狩る側の方でおじゃろうが。そんな奴は迷わせておいた方が世のためじゃ」

 

「まあ、そんなつれない事を言うな。俺と京までの楽しい旅をしようじゃないか」

 

そう言うと烏丸を無理やり肩に担ぎ上げた。

 

「おじゃぁぁぁ!何をするでおじゃるか!下ろさぬか」

 

「言っておくが負けたお前に拒否権はない」

 

「うぐっ.....」

 

戦いに負けた事を言われては烏丸は何も言い返す事は出来なかった。

この世界での一騎討ちはそれなりの意味のある戦いのようだった。

それは、勝った者と負けた者で完全に上下が分かれるほどだ。

最悪、敗者は切腹し死ぬことになる場合もあるし、勝者の名を上げるために首を取られる場合もある。

無論サイラスは、敗者に切腹を要求することも、この世界で名を売るために首を取ることもしない。

何故なら彼がジェダイの騎士だからだ。

自由と正義を守る為に戦う彼が自分の自己満足の為に誰かを傷付けたり命を奪ったりはしない。

そんなことをすればいくらサイラスと言えど暗黒面に堕ちてしまう可能性がある。

 

「分かったら。行くぞ」

 

サイラスは、烏丸を担いだまま部屋を出ようとする。

しかし、烏丸はそれを必死に制した。

 

「ま、待つでおじゃる!せめて服を着替えさせてくれなのでおじゃる!」

 

見ると烏丸はいつの間に着替えたのか宿に常備されている寝間着に着替えていた。

 

「いつの間に着替えたんだ?まあ、良い。早く着替えてくれ」

 

サイラスは、烏丸を下ろし烏丸が着替えるのを部屋の外で待った。

少しして烏丸は昨日着ていた白いろの装束に着替えて部屋を出てきた。

 

「さて、行くぞ」

 

「言っておくが、京に行っても手遅れかも知れぬぞ」

 

「まあ、その時はその時だ。取り敢えずは颯馬と義輝と合流する」

 

すると、サイラスは昨日回収した烏丸の刀を烏丸へ返した。

 

「なんじゃ、返してくれるでおじゃるか」

 

「お守りは苦手でな」

 

「自分の身は自分で守れ、でおじゃるか」

 

「まあ、危なくなったら助けてやる」

 

「そちよ、麿を誰だと思っている」

 

「.....俺に負けたやつだろ」

 

サイラスは、ため息混じりに言った。

 

「うぐっ.....」

 

烏丸は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「冗談だ。お前が強いのは分かっている。それにこの国の事はお前の方が詳しいだろうから頼りにしている」

 

「そういえばそちよ、お主何処の国の者でおじゃる?」

 

「...........」

 

サイラスは、言葉に詰まった。

それも当然であるサイラスの故郷は別の世界にあるのだから出身を聞かれても答えることはできない。

 

「若いときから流浪の旅をしていてな。故郷の事は忘れてしまったよ」

 

サイラスの答えに烏丸は不思議そうに首をかしげた。

 

「ふむ、そんな前から旅をしておるのに京までの道がわからぬのでおじゃるか?」

 

「.....いや、まぁ、方向音痴でな」

 

「よく死ななかったものでおじゃるな」

 

「運には恵まれていてな」

 

「ならその運を使って京まで行くでおじゃる」

 

「さてと、行くか。いつまでもここで長居しなも仕方ないしな」

 

「遂に話を無視しよったか....」

 

「そう言えばいつまでもお前では不便だから名前で読んで良いか?」

 

「もう、好きにするでおじゃる....」

 

その後、サイラスと烏丸は町で馬を貸りて京のある山城を目指した。

 

 

 

 

 

早馬で二日間ろくに休憩もとらずに走り続けた為に二人はかなりの疲労に見舞われながらも京がある山城へと到着した。

日は既に沈んでおり城下町は提灯の光で幻想的な雰囲気を出していた。

 

「麿の役目もここまででおじゃるな。では、麿は屋敷に帰るでおじゃる」

 

烏丸は公家なので当然住んでいる屋敷も京にある。

 

「まあ、待て。せっかくだから城まで案内がてら観光しようではないか」

 

烏丸は露骨に嫌そうな表情を浮かべた。

 

「何故自分の住んでいる所で観光せねばならんのじゃ?それに城ならここからでも見えるでおじゃろう」

 

「全く光広はわがままだな。そんなんじゃ結婚出来ないぞ?」

 

「どっちがわがままでおじゃるか!そ、それに結婚は関係ないじゃろう!」

 

サイラスが冗談で言った結婚という言葉に烏丸は顔を真っ赤にしながら反応した。

サイラスはそれを見て不敵に笑った。

 

「何を焦っているんだ?まさか....」

 

「し、城に向かうのでおじゃろう?さっさと付いてくるでおじゃる」

 

「そうだな。助かるよ」

 

「ハァ...そちというやつは」

 

烏丸はため息を吐きながらも城の方向に馬を歩かせた。

サイラスは、烏丸の横に並ぶように馬を歩かせ烏丸に付いていった。

京の町に入って程なくしてサイラスはある違和感に気付いた。

 

「信長とか言うやつに攻められたにしては綺麗な町並みだな」

 

「確かに...変でおじゃるな」

 

普通であれば攻められて町がある程度壊されていても不思議ではない。

そして何より最も標的になるはずの城がまだ遠目であるがしっかりと健在していた。

つまり、信長は京に入っていないと言うことになる。

 

「まあ、城に行って颯馬と義輝に会えば分かるか」

 

「そうでおじゃるな」

 

二人は京の現状に違和感を抱き、少し急いで将軍が居る城へと向かった。

城の門にはもちろん兵が配置されており周囲を警戒していたが、そこは公家である烏丸が門番と話を通してくれたお陰で問題なく通ることが出来た。

 

「助かった。俺だけだったら門前払いを受けていたよ」

 

「まあ、麿も少し気になることがあるしのう。気にするでない」

 

「将軍の事か?」

 

「うむ。義輝が今の将軍義昭様を助けに行ったのであれば確実に問題になっている筈でおじゃる」

 

「まあ、死んだ筈の前将軍が生きていたんだからな」

 

「そうじゃな。そしてその状況を....」

 

そこでサイラスと烏丸は歩みと会話を止めた。

理由は、前からこちらに向かって歩いてくる三人組がいたからだ一人は背の高いかなり年をとった老人ともう一人は紫色を基調とした装束と長い黒髪が特徴的なまだ二十を越えないくらいの少女、そしてもう一人は....

 

「颯馬!」

 

サイラスは三日ぶりにその名を呼んだ。

自分の名前を呼ぶ声に颯馬はこちらを向き一瞬驚いた表情を見せたがすぐに笑みへと変わった。

 

「サイラス!無事だったのか!」

 

颯馬は足早にこちらに近づいてきた。

 

「俺が死んだと思ったか?」

 

「そ、そんなことはない。ただ、少し遅かったから心配になっただけだ」

 

「そうなのか?それは悪かったな。光広をそのままにすることが出来なくてな」

 

「光広?」

 

すると、烏丸がサイラスの後ろから姿を現した。

 

「お、お前は!」

 

「また会ったでおじゃるな」

 

烏丸を見た颯馬は後ろに飛び退いて刀を抜いた。

 

「なんでお前がここにいるんだ!」

 

「麿は公家なのじゃからここにおっても不思議ではないじゃろう?」

 

「そうだが、お前が俺たち味方とは限らないだろう!」

 

「ふむ、麿はそれで構わぬでおじゃるが、後ろにいる者と一度話をした方がよいのではおじゃらんか?」

 

「え?」

 

颯馬は後ろを振り向くとそこには、鬼のような形相で立っている老人が立っていた。

 

「この....馬鹿者が~~~!!!」

 

ゴンッ!

 

颯馬の頭に拳が降り下ろされた。

その音は、鈍いのに何故か周りに響き渡った。

サイラスも烏丸もその音から痛みを想像し颯馬から目をそらした。

 

「城の中で刀を抜く者が何処におるか!しかも公家である烏丸殿に刃を向けるとは...この恥知らずめ!一から教育しなおしてやるわ!」

 

すると、頭を抱えて悶絶している颯馬の首根っこを掴まえてずるずると引きずって何処かへ行ってしまった。

その姿を見送ると先程颯馬と老人と一緒に歩いていた少女が声をかけてきた。

 

「ええと...なんかごめんなさい。お父さん、なんか颯馬には厳しくて」

 

「あれは痛そうだったなぁ、光広」

 

「そうでおじゃるな。じゃが、そちの蹴りの方がもっと痛いでおじゃる」

 

「なんだよ。まだ、根に持ってるのか?治してやっただろう?」

 

「治して貰った事には感謝しておるが、負けた事を考えると悔しいのじゃ」

 

「じゃあ、また暇な時に戦ってやるよ。」

 

「本当でおじゃるか!?」

 

烏丸は目を輝かせ笑みを浮かべサイラスに詰め寄った。

ここまで戦う事が好きと言うのはもう戦闘狂だ。

ジェダイナなら確実にダークサイド落ちが確定する。

 

「その代わり木刀な。命の奪い合いは勘弁してくれ」

 

「あの~、もうそろそろ良いですか?」

 

サイラスと烏丸の話が終わるのを待ちきれなかったのか少女が話に割り込んできた。

 

「おっと、すまない。大事な方を放っておいてしまった。すまない話してくれ」

 

「あ、うん。光広様は当然ですけど、サイ...ラスだったっけ?も義輝様と知り合いなんだよね?」

 

「そうだ。まあ、知り合いといっても最近知り合ったぐらいの間柄だがな」

 

「そうなの?義輝様が貴方のことを凄く心配してたわよ?光広は凄く強いから心配だって」

 

少女の話を聞いてサイラスは一瞬、烏丸を見ると烏丸は扇子で口元を隠してサイラスから目をそらした。

 

「確かに強かった....気がするな」

 

「気がする?」

 

サイラスの一言に少女は首を傾げる。

 

「そちは一言余計でおじゃる!」

 

烏丸はサイラスの足を踏んづけようとするがサイラスは足を引いてこれを避ける。

 

「ぐぬぬ....!」

 

サイラスは悔しがっている烏丸を他所に少女との話を続けた。

 

「それで?今日は義輝に会えるのか?」

 

「聞いてみないと分からないけど...今から貴方が生きていた事を伝えにいくからそのと時に聞いてみるわ」

 

「そうか。では、頼む」

 

「うん。じゃあ、客室で待ってて!光広様はどうなさいますか?お屋敷に戻られますか?」

 

「いや、麿もちと義輝と話がしたいからのう、サイラスと待たせて貰うでおじゃる」

 

「分かりました。では、案内しますね」

 

「そう言えば、君の名前をまだ聞いていなかったな」

 

「あっ、そうだった!ごめんなさい、名乗ってなかったわね。私は細川忠興。今は足利義昭様に仕えているわ」

 

「忠興...。忠興殿と呼べば良いか?」

 

「う~ん。あまり堅苦しいのは好きじゃないから、私しか居なかったら呼び捨てでもいいけどお爺ちゃん....さっき颯馬を連れていった人ね、がいるときとかは気を付けてね」

 

「分かった。そうしよう」

 

どうやら、先程の老人は礼儀や作法にうるさいらしい。

この世界の事をあまり知らない内はあまり関わりたくはないと思った。

 

 

 

 

 

忠興に客室に通されたサイラスと光広は取り敢えず腰を下ろした。

畳と木の薫りがする部屋は、最初は慣れなかったサイラスも今では落ち着けるようになっていた。

 

「惑星ダゴバにいた頃に比べれば快適だよな」

 

「ん?何か言ったでおじゃるか?」

 

独り言のつもりで小さな声で言ったのだが烏丸にかすかに聞こえたらしい。

 

「いや、こっちの話だ」

 

「そうでおじゃるか。して、サイラスよ。そちはこれからどうするのじゃ?」

 

「どうするとは?」

 

「旅の共であった義輝ともう一人の男は今の状況から察するに足利家に仕えておるじゃろう。そちはどうするのかと思うてな」

 

「ふむ、俺の目的を達成するのには颯馬の協力が不可欠でな。颯馬がこの家に仕えるのであれば俺もこの家に仕官しようと思っている」

 

それを聞いた烏丸は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「そうでおじゃるか。そちなら良い武将になれるじゃろう」

 

烏丸の言葉にサイラスは首を振った。

 

「いや、武将として志願せずに兵として始めようと思っている」

 

烏丸は目を見開き驚いた。

 

「何故じゃ!?そちほどの力の持ち主であれば将として武功を上げることも容易いのでおじゃるぞ」

 

「別に名声や金が欲しい訳じゃない。目的を達成出来ればそれでいいんだ」

 

「先程から目的と言っておるが、そちの目的とはなんなのじゃ?」

 

サイラスは言うのを躊躇った。言っても信じて貰うのに今は時間がないからだ。

それに今はできるだけ自分の力は隠しておきたかった。

兵として始めるのにもその理由からだ。

戦いでフォースを使うのは仕方ない。

ただし、それが目立ってしまっては駄目だ。

そこでサイラスは、混戦した中で戦えば目立たないと思ったのだ。

もし、武将として戦えば兵はその将の戦いに注目するだろう。

だが、混戦した中で戦える兵であれば目立つことなく戦えるだけでなくジェダイとしての戦いも可能だ。

だから、今は出来るだけ目立たない選択をとろうとサイラスは考えた。

 

「悪いな。それはまだ言えないんだ」

 

「そうでおじゃるか。まあ、構わぬでおじゃる。そちと戦えるのであれば兵でも武将でも麿は構わぬ」

 

「結局そこなんだな....」

 

サイラスはため息をつくと、誰かの足音が近づいてくるのに気付いた。

 

「ん?忠興か?」

 

「まあ、そうじゃろうな」

 

足跡が部屋の前で止まると呼び掛けの言葉もなく勢いよく襖が開かれた。

 

「え?」

 

「おじゃ?」

 

開かれた襖から入ってきた人物を見て二人は言葉を失った。

 

「サイラス!無事であったか!」

 

そう入ってきたのは義輝だった。

忠興が謁見の伺いをたててくれた筈なのだが本人がこっちに来てしまったらしい。

 

「義輝様~!待ってくださいってば~!」

 

パタパタと足音が聞こえて来ると遅れて忠興が部屋に入ってきた。

 

「忠興、遅かったな」

 

サイラスが冗談ぽく言うと、忠興が膨れっ面で反抗した。

 

「だって、義輝様にサイラスが生きてたって言ったら凄い勢いで走っていったんだもん」

 

「よくこの部屋が分かったな」

 

「妾は前の将軍じゃからな。城の構造は知っておるぞ」

 

「ああ、そうだったな....それで?なんでこの部屋にいるのが分かったんだ?」

 

「しかし、よく生きておったの。後で知ったのじゃが光広の剣術はかなり強いと聞いたから心配しておったのじゃぞ?」

 

義輝はサイラスの疑問をスルーして話を続けた。サイラスも特に聞きたいことではなかったので気にしないことにした。

 

「ああ、光広は強かったよ。危うく負けるところだった」

 

「そうか。しかし、その光広に勝ったのじゃから誇りに思うと良いぞ」

 

「ああ、そうするよ.......光広、このくらいで良いか?」

 

「じゃから一言多いといっておるじゃろう!それに別にそんなこと頼んでおらんでおじゃる!」

 

「相変わらず我が儘だな。だから結婚できないんだろ」

 

「なっ!一度ならず二度までも...!もう、容赦はせんでおじゃる!」

 

烏丸の我慢が限界を越えたのか烏丸は抜刀しサイラスに襲い掛かった。

 

「おいおい、いくらなんでも急過ぎるだろ!」

 

「おじゃ!」

 

手加減が一切ない烏丸の刃がサイラスの腹を薙ごうとする。

しかし、サイラスは素早く反応しこれを避ける。

 

「ぐぬぬ!不意打ちでも当たらぬか!」

 

「不意打ちかよ!武士としての正々堂々は何処に消えた!」

 

ちなみにジェダイの騎士に不意打ちは通用しない何故ならフォースによる先読みが出来るからだ。

 

「そち相手なら仏も許してくれるでおじゃる」

 

「意味が分からん!」

 

刀を持って暴れる烏丸とそれを必死に避けるサイラスを見て、驚きのあまり戸惑っている忠興とその横で腹を抱えて笑っている義輝がそこにいた。

 

「義輝!笑ってないで止めてくれ!」

 

「お主は烏丸に勝ったのじゃろ?なら自分で止めれるじゃろう」

 

「また俺が勝ったら次は絶対に拗ねるぞ?こいつ」

 

サイラスは、烏丸の攻撃を避けながら義輝と話してると、余計に烏丸の攻撃が激しくなる。

 

「分かった!謝るから、許してくれ!」

 

「許さんでおじゃる!」

 

その後、約二十分間刀を振り続けた烏丸は力尽きてその場に倒れた。

 

「もう....無理でおじゃる...」

 

そして、それに付き合ったサイラスも同時に畳の上に倒れた。

 

「烏丸、お前....しつこいぞ....」

 

「そちが、さっさと麿に斬られれば直ぐに終わったでおじゃる」

 

「俺のせいかよ」

 

「主らよう頑張ったのう。で?何から話せば良いかのう?」

 

サイラスと烏丸は互いに顔を見合わせ頷き、義輝に告げた。

 

「明日にしてくれ」

 

「明日にしてたも」

 

 

 




ありがとうございました
これからも腐らず少しづつ書いていこうと思います

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