今更な更新ですが読んで頂けたら幸いです
朝、与えられた部屋でサイラスは目を覚ました。
サイラスは、起き上がり襖を開けると少し冷たい空気がサイラスの寝ぼけた頭を覚醒させた。
「全く、結局昨日は話が進まなかったな」
それには自分に原因があるため誰も咎めることは出来なかった。
「もう少し、辛抱する力を鍛えないとなアイツは」
我慢強さは戦いの中でも非常に重要なことだ。攻め急ぐと相手の罠に嵌ってしまうし、攻められているからといって慌てて攻め返すと致命的な隙が生まれてしまう。
サイラス自身も昔、その我慢強さがなくてヨーダに叱られていた。
戦闘センスとフォースの力に恵まれていたサイラスはその飲み込みの速さに慢心していた時期があった。
しかし、その慢心も圧倒的な強さを誇るヨーダに粉々に砕かれた後は大人しくヨーダの教えを忠実に守り、いつ如何なる時もフォースの教えに従うことを心に決めていた。
「まぁ、それよりもこれからどうするかを考えないとな。颯馬には悪い事をするがここを出て行こう」
サイラスは、始めはここに兵として志願するつもりだった。
それは、颯馬との約束もあったし烏丸とも約束していた事だったが、昨日の夜考えた末にやはりあまりこの世界に干渉すべきでないと思ったのだ。
そして今この国は戦乱の世であり、各地で戦争が起こっていた。
となれば少なからず戦いに身を投じなければならない。今のサイラスであればそう簡単に暗黒面に落ちる事はないが避けれるのであれば避けるべきだ。
サイラスは、身支度を済ませると取り敢えず義輝に会いに向かった。
向かう途中で兵に何度か呼び止められたが名前を告げると、失礼した、と軽く頭を下げれた。
おそらく義輝辺りが便宜を図ってくれたのだろう。
サイラスの格好はこの世界においてはあまりにも不自然であり呼び止められのも無理はなかった。
サイラスは、近くの警備をしている兵に義輝の所在を聞くと軍議の間に居ると答えたためサイラスは軍議の間に向かった。
「ここか…」
サイラスは、フォースで襖を開けると部屋にいた将兵達がサイラスに目を向けた。
サイラスは特にためらうこともなく部屋に入りフォースで襖を閉めた。
その一連のサイラスの行動は将兵達に驚きを与え、とっさに将の一人が刀に手をかける。
「止めぬか」
そこで、一人の女性が将を言葉で止めた。
それは、見事なものでまるで氷ったかのように将は動きを止めていた。
声の正体は義輝だった。大声を出したわけではない、しかし、発した言葉には殺気が込められておりそれが将の動きを止めていた。
「流石だな義輝」
義輝は、軽く溜息を吐くと、まったくと苦笑した。
「お主が奇天烈な入り方をするからこうなるのじゃぞ?」
「ん?ああ、そういうことか。すまないないつもの癖でな」
ジェダイの騎士はフォースを日常的に使用する。
例えば、物を取る時もフォースを使って自分の所に持ってくるし、物を動かす時もフォースを使う。サイラスが軍議の間に入った時のように扉などもフォースで開け閉めする。
そうやってジェダイはフォースの力を日常的に使うことでフォースを自在に操っている。
「それで、どうしたんじゃ?」
「ああ、これから俺はどうすれば良いのかと思ってな」
「なるほどのう、それなら義昭に聞くと良い。今の将軍は義昭じゃからの」
すると義輝は軍議の間の一番奥に目を向けた。
そこには、綺麗な銀の髪のまだ年端もいかない少女が座っていた。
「(この子が将軍?)」
まるで飾られているのではないかと思ってしまうほどその目には生気が感じられなかった。
「あなたがサイラスですね。話は聞いています。烏丸と義輝様を連れてくれたことに感謝します」
「成り行きでそうなっただけです」
サイラスの言葉に義昭は首を振った。
「いえ、貴方のおかげです。今の私ではできる事は少ないないですが、できる限り貴方の望みを叶えましょう」
「……では、少しばかりの金をよろしいでしょうか」
「分かりました。直ぐに用意させましょう」
義昭は淡々答える。
まるで機械を相手にしているかのようだとサイラスは思った。
「後もう一つ。この城を出て行く許可を頂きたい」
「なっ!」
「なんじゃと!」
颯馬と烏丸が驚きの声を上げ、立ち上がる。
「これ止さぬか!義昭様の御前であるぞ」
しかし、忠興の父である細川藤孝に制され二人は渋々といった感じで元の場所に座った。
「それとサイラス殿」
藤孝は次にサイラスの方を向く。
「なんでしょう」
「サイラス殿も義昭様の御前で頭が高いのではないか?」
周りを見れば確かに皆座っていた。
「申し訳ありません。まだ、この国の礼儀作法が分かっていないために失礼をしました」
元の世界では偉い人間は椅子に座り下の人間は立っていた。
なのでサイラスは立っているのが当たり前だと思い、座らずにいたのだがどうやらこの世界では逆らしい。
サイラスは、直ぐに正座する。それを見た藤孝は頷き、再び正面へと向き直る。
「サイラス、貴方の実力は義輝様と烏丸から聞いています。我が足利家で働くつもりはありませんか?」
義昭の言葉にサイラスは首を振る。
「申し訳ありません。私には目的がありますので…」
「そうですか…。なら無理に引き止めるのは止しましょう」
「ありがとうございます」
サイラスは頭を下げ、立ち上がる。
今からサイラスはこの家の者ではない。
そんな者が軍議の間に居るのは良くないと考えたからだ。
「藤孝、見送りをお願い出来ますか」
「承知致しました。では、サイラス殿こちらへ」
サイラスは、藤孝に先導されながら軍議の間を後にした。
城門に向かう途中、隣に居る藤孝が口を開いた。
「お主はこの城を出たらどうするのだ」
「正直言えば分かりません」
「分からない?お主、さっき目的があると言ってはおらんかったか?」
「はい。しかし、その目的を果たす為にどうすれば良いのか分からないのです」
「ふむ、なら堺に行ってみてはどうじゃ?」
「堺ですか?」
「左様、ここから南に下った所に和泉という国がある。そこに堺という町がある」
「そこには何があるのですか?」
「そこは他国との貿易が盛んな場所じゃ。自然と情報が集まる場所でな。お主の求めている物も見つかるやもしれん」
情報が不足している今、藤孝がもたらした情報はサイラスに希望を与えるのに十分な情報だった。
「感謝します。闇雲に探すつもりでしたので助かります」
「うむ。では、ついでと言ってはなんだが一つ頼まれてはくれんかの?」
「…なんでしょう」
どうやら情報はタダではなかった。
しかし、サイラスも情報を貰い感謝の言葉まで言った手前、断ることが出来ず承諾してしまった。
「書状をある人物に渡して欲しいのじゃよ」
「ある人物とは?」
サイラスの疑問に少し俯き黙りをきめると意を決したように口を開いた。
「三好長慶じゃよ」
藤孝の重くるしい声音とは裏腹にサイラスの頭の上にはクエスチョンマークが出ているかのように首を傾けていた。
しかし、そんなサイラスを放って藤孝は言葉を続ける。
「分かっておる。今の情勢で三好家に赴くのは非常に危険なことじゃ。しかし、今後の足利家を存続させる為にも三好家とも友好を築いておく必要があるのじゃ。義輝様が生きてお戻りなった今、それが可能かもしれん」
サイラスは既に藤孝の話をほとんど聞いていなかった。要は手紙を渡せばいいんだろ、くらいしか考えていなかった。
「手紙を渡すだけで良いんですよね」
「引き受けてくれるのか」
「まぁ、そのくらいだったらついでの範疇でしょう」
「そうか、恩にきるぞサイラス殿。では、少し書状を整えてくるから城門で待っていてもらえぬだろうか」
「分かりました。では、先に行って待っています」
その後サイラスは城門で門番と世間話という名の情報収集をしていると、良く聞き入った声が聞こえてきた。
「見つけたでおじゃる!」
その声にサイラスは深いため息をついた。
「光広、お前もしつこい奴だな」
「お主が約束を破るからでおじゃる!」
「む、それを言われると痛いな。だが、考えを変えるつもりはない」
この場に颯馬が居ないのは諦めてくれたからなのか、それとも約束を破った男として見限ったのか。
少なからず今は烏丸を説得する必要があった。
「なら、勝負するでおじゃる。お主と麿との本気の真剣勝負でおじゃる」
烏丸は真剣を抜き、サイラスに殺気を向ける。
それは、前に戦ったときよりも鋭さを増していた。
サイラスは笑みを浮かべた。やはりお前は分かりやすくて助かると、そしてありがとうと、心の中で呟きサイラスはローブの中でライトセーバーを握った。
「……良いだろう。なら俺も本気をだそう。自分の力と自分の本当の武器で戦おう」
サイラスはローブを脱ぎ去ると同時にライトセーバーのスイッチを入れる。
柄の両端から黄色の光刃が形成される。その長さは2メートル超ほどあり高周波のプラズマブレードは振動するかのように異音が響いていた。
サイラスのライトセーバーを見た周囲の兵は驚きの声を上げ腰を抜かしていた。
烏丸も顔には出していないが、目の前で起こっている非現実に少し震えていた。
「行くぞ光広」
先に動いたのはサイラスだった。
フォースによる肉体強化で一気に間合いを詰めると上段に斬り払った。
「……っ!」
烏丸は間一髪のところで後方に下がりそれを避ける。それに対してサイラスは斬り払った勢いのまま体を回転させもう一方の光刃で下段に斬り払った。
「くっ!」
烏丸は真上に跳躍しそれも避ける。
そして、上空からサイラスの首を狙う。
「おじゃ!」
しかし、烏丸の動きはサイラスには分かっていた。
フォースによる先読みの力と光線ですら反応しうる超人的な反射神経がそれを可能にしていた。
サイラスは、烏丸に手を突き出しフォースプッシュを放った。
「なっ!」
烏丸はサイラスのフォースプッシュを受け数メートル吹き飛ばされ後ろの城壁に激突した。
フォースプッシュによるダメージもそうだが壁に激突した際のダメージは大きく肺の酸素が全て吐き出された。
「がはっ、はっ、はっ…!」
既に二人の強さに差がありすぎた。
そして、それと同時に烏丸の中でサイラスの存在が変わりつつあった。
今までは努力すれば勝てる相手だと思っていた、サイラスと今後共に剣を交えればその強さに辿りつけると思っていた。
しかし、今は違う。
烏丸も今まで感じたことのない敗北感とどうやってもその強さに辿り着けないという絶望感に支配されつつあった。
「烏丸……」
サイラスは今も苦しそうに呻いている烏丸に近づく。
烏丸はサイラスを睨め付け、刀を握り締める。
その目には敗北感と絶望感に支配されつつも、目の前の相手に対して決して屈しないという強い意志があった。
「そなたは何者なのじゃ。その力と武器は何なのじゃ」
「卑怯だと思うかもしれないな。だが、これが俺の戦いだ」
サイラスは、城壁の一部にライトセイバーを振るった。
ライトセーバーは、いとも簡単に城壁の石垣を切断し、切断面を溶かした。
それを見た烏丸は静かに目を閉じ、小さな声で呟いた。
「麿の負けでおじゃる」
その言葉を聞き取ったサイラスはライトセーバーのスイッチを切り、烏丸に手を差し出した。
烏丸は、少しためらった後、渋々サイラスの手を取った。
「光広、お前には全て話そう。俺が何者なのかを」
サイラスは光広に全てを話すことにした。
「良いのでおじゃるか?」
「別に大した話しでもないんだ。ただ、信じてもらえるかは別の話だがな」
「もう既に信じられぬような事を目にしたからある程度のことなら信じるでおじゃる」
「そうか。まぁ、こんなところで話すのも何だ、場所を移そう。そうだな、光広の部屋でいいか?」
「ダメでおじゃる」
即答だった。本当に何の迷いも感じられない清々しいまでの回答だった。
「別にいいじゃないか。この城で光広に割り当てられた部屋だろう?見られて困るものはないだろう?」
「ダメなものはダメじゃ!」
何をそんなに頑なにしているんだとサイラスは思った。
しかし、そうなると困った。
サイラスも既にこの城の者ではないため自分が使っていた部屋を使う訳にはいかなかった。
しかし、ここでサイラスは城内の方に進んでいった。
「何処へ向かうのじゃ?」
「使えそうな部屋がないか聞いてくる」
サイラスは城内で近くに居た女中に話しかけた。
「少しよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょう」
「光広殿の部屋を探しているのですが、なかなか見つからず…」
「それでしたらそこの突き当たりを右に行った一番奥の部屋がそうですよ」
「そんな近くに…ありがとうございます」
サイラスは烏丸に部屋があったと伝え烏丸を連れて烏丸の部屋へと向かった。
もちろん烏丸には誰の部屋かは伝えていない。
烏丸の部屋まで後少しのところで烏丸は歩みを止めた。
「ちっ…」
サイラスはつい舌打ちをしてしまった。
「主よ、何故今舌打ちしたでおじゃるか?」
「気のせいだろう?ほらあの一番奥の部屋だ」
「そこは麿の部屋でおじゃる!」
「なに?そうだったのか?まぁ、この際仕方ないだろう」
「何が仕方ないでおじゃるか!」
烏丸はサイラスの前に立ち両手をいっぱいに広げた。
「…いっておくが部屋の扉だったらここからでも開けることが出来るぞ」
そう言ってサイラスは部屋の襖に手を向けた。
襖はフォースによって開かれ、その瞬間烏丸の絶叫が響き渡った。
「おじゃ〜〜〜!!」
烏丸は全力で襖を閉めに行くが、サイラスの強力なフォースはそれを許さず烏丸がどれだけ力を入れてもびくともしなった。
その隙に烏丸の後ろからサイラスは部屋を覗き見た。
「なるほど。部屋が汚いから見せたくなかったのか」
烏丸の部屋は少しの汚いの度を越え魔窟のようになっていた。
どうやったら一日でここまで汚くなるんだろうかと考えてしまう程だ。
「取り敢えず、ここに突っ立っていても仕方ないから入るぞ」
「い、いやじゃ」
「…あのなぁ、もう手遅れなんだから気にするなよ。さぁ、入った、入った」
烏丸を強引に部屋に押し込み、腰が下ろせる場所を探し、腰を下ろした。
「さてと、何から話そうか」
しかし、烏丸は小刻みに震えており、話せる状態ではなかった。
ここまで来るとサイラスにも罪悪感が生まれてくる。
「光広悪かった。この通りだ」
「そなたにだけは見れれたくなったじゃ」
「俺は別に気にしてないぞ」
「麿が気にするのじゃ」
サイラスはどうにかして烏丸の機嫌を取ろうと考えた。
「そ、そうだ。光広、この刀をお前にやろう。なにか知らんが業物らしいぞ」
サイラスは盗賊から貰った刀を烏丸に渡す。烏丸もやはり武人として刀には興味があるらしく、刀を受け取った。
「この刀は…!サイラス、この刀を何処で手に入れたのでおじゃるか」
「なんだ突然?こっちに来た時に盗賊から貰ったものだが?」
烏丸は先程とは打って変わって興奮気味だった。
何をそんなに興奮しているんだとサイラスは首を傾げた。
「これは大包平と呼ばれる名刀でのう」
「あ〜、長くなるんだったら止めてくれあまり時間がなくてな」
あまり時間をかけすぎると藤孝が戻ってくる可能性があったので手短に済ませたかった。
「そうかのう。それで本当にこの刀を麿にくれるのかえ」
「ライトセーバーより切れるんなら考えるが?」
サイラスの答えに烏丸は肩をすくめた。
「なら、この刀は有難く麿が使わせて頂くでおじゃる」
サイラスは、頷くとライトセーバーを烏丸の前に置いた。
「さて、話を戻すぞ。まずは、俺の世界の話からだ」
サイラスは全てを話した。
銀河帝国、ジェダイ、フォース、サイラスの知っている向こうの世界の事について全て話した。
烏丸は興味が湧いたのかサイラスの話を聞き入っていた。
「まるで絵空物語よのう。しかし、そなたの存在とこのライトセーバーと呼ばれる刀を見た今、その話も真の事なのじゃろ」
「理解してくれて助かるよ。と言うわけで俺は情報が集まるらしい堺という場所に向かうことにした訳だ」
「堺?あの和泉のかのう?」
「流石だな。その堺で合っている」
「今は三好領じゃからのう。行くなら気をつけた方が良いかもしれんでおじゃるな」
「そうか。忠告感謝するよ」
と、そこでサイラスは烏丸が口にした三好と言う言葉で藤孝の書状の事を思い出した。
「光広、三好長慶と言う名前に心当たりはないか?」
「三好長慶?心当たりも何も、現三好家の当主でおじゃるぞ」
「な、なに?」
烏丸の答えにサイラスは動揺した。
「(まさかかなり面倒くさい事を引き受けてしまったのか?)」
サイラスは心中そう呟く。
「何かあったのかえ?」
「いや、何でもない。たまたまその名前を耳にしただけだ」
「なるほど。確かに義輝暗殺を企てたのは三好長慶とも言われておるからのう。この足利家にいればその名前くらい耳にするでおじゃろう」
「そうだったのか。すまないな色々世話になった」
「なに、また来る時があったら共に戯れようぞ」
「その時は歓迎会でも開いてくれ」
「うむ、貴族の宴を開いてしんぜよう」
サイラスは立ち上がり、急ぎ城門へと向かった。
烏丸も見送りくらいさせいて欲しいと付いてきた
城門には既に藤孝が手に書状のような物を持ち待ち構えていた。
「申し訳ありません。世話になった者たちに別れを遂げていたら遅くなりました」
「なに、それは致し方ない事、それよりこちらをお持ちいただきたい」
藤孝は書状をサイラスに渡すと、さらに懐から少しの大きめの袋も手渡した。
それはサイラスが義昭に頼んだ金だった。
「これくらいあれば当分は心配いらんじゃろう」
「助かります」
「道中気をつけるのじゃぞ」
「はい。お世話になりました」
「いつでも戻ってくるがよい」
「そうだな、困ったらまた来るよ」
そう言うとサイラスは突然烏丸を抱きしめた。
「な、なにをするでおじゃるか!放すでおじゃる!」
少し間、烏丸を抱きしめるとサイラスは抱擁を解いた。
烏丸の顔は赤く染まり、少し放心状態になっていた。
「俺の国での親しい者との別れの挨拶だ」
そしてサイラスはそのまま反転し城門を出るべく歩き出す。
「そう言えば光広」
城門を出ようとした所でサイラスは振り向き烏丸の名前を呼んだ。
名前を呼ばれた光広は我に返った。
「部屋の掃除もそうだが、たまには風呂にも入った方がいいぞ?」
「なっ!余計なお世話でおじゃる!」
再び烏丸の顔が赤く染まり、それを見たサイラスは満足げに笑いながら再び前を歩き出した。
そして、サイラスの旅は始まった。
最初に目指すのは交易の町”堺”。
後日談
サイラスが去って数日後、烏丸は部屋で忙しなく動いていた。
「うーむ、何故か余計散らかっているような」
そこへ一人の女中が烏丸の部屋の異変に気付く。
「光広様?何をなさっているのですか?」
「む?いや、ちと掃除しようかと思おうてな」
烏丸の言葉に女中が目を見開き驚きの表情を浮かべる
そして、女中が急ぎ足で何処かへ向かって行ったと思えば…。
「大変よ!光広様が部屋の掃除をされているわ!」
その女中が大声で騒ぎ出した。
光広が部屋を掃除している事は直ぐに城内に駆け巡った。
そして、挙げ句の果てに城の重鎮にまで話が伝わってしまい…。
「あの光広がですか?」
「なに?光広様が?」
「あの光広がのう」
「えぇ!あの光広様が掃除ぃ!」
城の将達も烏丸が掃除している事に大きな衝撃を受けた。
そして、部屋の掃除は女中数人がかりで行われ半日近くを要した。
ちなみに烏丸は掃除しようとしても散らかすだけなので女中に追い出された。
「光広様。お部屋の掃除が終わりました」
「すまぬのう。麿一人では到底出来なんだ」
と烏丸は女中達に礼を言い、部屋を出て行った。
「光広様?どちらに行かれるのですか?」
「ん?ちと風呂にな」
烏丸の言葉に女中達はまたしても驚きの表情を浮かべた。
そして、例に同じく大声で騒ぎ出した。
もちろん、その事は城の重鎮達に伝わり…。
「あの光広がお風呂にですか?」
「なに?光広様が風呂に?」
「あの光広が風呂にのう」
「えぇ!光広様がお風呂ぉ!」
烏丸が何故急に身の回りを綺麗にしだしたのかは様々な憶測を呼んだが、当の本人は気が向いたからだと言い張り真相は謎のままとなった。
藤孝が心当たりがあるような口振りだったが烏丸に口止めされたのか話す事はなかったという。
読んで頂きありがとうございました
自分の知識不足な所が多く不快に思われた方が多々おられるかもしれませんが
これからもよろしくお願いします