「天馬殿! 天馬翼殿はいるか!?」
「翼、なんか呼んでるぞ」
「何のようだ、ソラ」
彰人達と普通に昼ごはんを食べていたら知ってる女子が翼を呼んだ。名をソラ、翼が手伝っている料理部の女子生徒である。基本的に翼に用が無い料理部だが、今回は何やら騒がしい。
「天馬殿! アルト殿の代わりに料理部の大会出てはくれないか!?」
「はい……?」
☆
「KAITO、助けてくれ」
「あいにく和食以外なら僕も対象外だぞ貴様」
「和食じゃないんだなコレが」
セカイの中でKAITOと翼は話をする。料理部にはアルト、ソラ、テオの3人が所属しており、近日中に小規模の学校対抗で料理大会があるらしい。
そこには代表を1人選んで料理を作るルールなのだが、エースであり出場予定の女子生徒アルトが法事で参加出来ないことが判明。
こうなれば残りのソラか唯一の男子生徒テオどちらかが大会に出ないといけないのだが……
「お題は『フランス料理』で誰も作れないんだってよ」
「もう解散すればいいんじゃないか?」
「そもそも高校の部活で『フランス料理』作らされる身にもなってみろ泣くぞ」
「それで……貴様は出来るのか?」
「まぁ、作れるが大会に出せるほどの自信は無い。だからお前に聞いたんだが……」
無理だとKAITOは伝えた。だよなと一言返した翼はどうするべきか迷ったのだが……
「そう言えば最近新しい奴が入ってきたぞ?」
「新しい奴?」
「こっちだ。もしかしたら僕よりなんとかなるかもしれん」
KAITOの言葉に疑問を抱きながら彼の案内についていく翼。そこにいたのは……
「もしかして同じボーカロイドか?」
「そうだ」
「って事はルカ姉様か初音ミク……」
「残念だったわね。ルカじゃなくて」
「何でお前なんだよ!?」
メイコである。ボーカロイドシリーズの女性タイプであり、ショートヘアの茶髪が有名だが、KAITOが青ではなく白色の髪であるように、メイコは赤髪だった。
「普通ならミクがきてレンリンがきてそこにルカ姉様がきてそこからお前達KAITO&メイコだろ!?」
「そんなこと言われても……私達も貴方の想いから作られてるからなんで私達が先なのかわからないのよね」
そう言われては返す言葉はない。だが、メイコは翼の顔を見て少し微笑んで話す。
「それに……私、料理出来るわよ?」
「本当か?」
「ええ、フランス料理もね」
「もしかして……これも俺の想いか?」
KAITOが一歌関連……つまりは愛などの想いから来ているのなら、メイコは将来の夢である料理関係の想いから来ていると予想した。
「さぁ? でも、最終的な想いは……『星乃一歌と付き合って幸せになりたい』その想いから出来ているのよ」
「それが……フルートと料理如きで一歌と付き合えるとは思ってないが?」
「それは自分で考えろ。だが、この経験はいずれ貴様の役に立つ」
「ならば砕いて見せよう。我が生涯を込めた最高傑作の料理で……」
「翼……貴方が最大の強敵だったわ……」
「僕はなんの話をしてるか分からないし、まだ始まってもいないだろ貴様ら」
と、言うことで……
「翼が得意な……というか、出来るフランス料理は何かしら?」
「ブイヤベース、クロックムッシュ、ブラマンジェ」
「充分過ぎない?」
「メイコ、天馬翼は全ての物事を平均85点の実力で進める化け物だぞ」
「誰が化け物やねん」
「そこに、フルートと料理というものが120点の実力で完成しきっている化け物だ」
「誰が化け物やねん」
「なら、それでいきましょう。クロックムッシュは味を日本人好みに整えて、ブイヤベースはスープだから味付けを調整しなくても問題ないわね。デザートもそれが簡単だからやってみましょうか」
「ヨイチ(酒)入れるか?」
「「いらない(わ)」」
アクセントにワイン小さじで突っ込もうとした翼だが、学生なので止められた。そうして本番までの間にみっちりとセカイで料理の練習をし続けた翼である。
「なんか……初めから味は文句無しね……」
「なんやかんやいっても僕は天馬翼を認めてはいる。これくらい出来る男だとは思ってたぞ」
「後は見栄えか」
「そう言えば……出場する事は料理部に返事したのか?」
「俺がバイトでキッチンしてるって知られてるから強制参加でした」
「もう料理部潰せばいいだろ」
「それは可哀想よ」
☆
「それでは天馬殿、本日はお願いする」
「天馬、済まない」
「なんとか形にはする」
そうして始まった料理大会で天馬翼はリミッターを外した。今回のお題『フランス料理』はあくまでも学生向けのお題では無いのだが、それを作れる人間がいれば御の字の評価になる。だからこそ翼は……
「キャロットサラダ」
「は? めっちゃ綺麗……」
「ジャガイモの冷スープ」
「うわ……美味しそう……」
「クロックムッシュ大盛り」
「「タワーじゃん!?」」
「デザートにブラマンジェ」
ガチガチの本気で固めた。クロックムッシュに関しては少し邪道だが学生向けの大会という事で量を増やす事で綺麗なタワーにして見た目のダイナマイトを増し増し。盛り付けはそれ以外フレンチ料理人の写真を参考に星付きでもおかしく無い見た目にする事で、対戦高校に絶望を見せた。化け物降臨である。
「て……天馬殿……?? これは……」
「俺の最大の本気。これでダメなら優勝は諦めてくれ」
「い、いや……優勝とかはもう考えてなかったんだけどよ……これは……」
「「とんでもねぇ(ない)ミシュランが現れた……」」
結局、どの高校も翼を超える見た目に出来ることや味付けは不可能だったのでそのまま優勝した翼だった。
「メイコにヨイチ止められててよかったぜ」
『『入れるつもりだったの(か)!?』』
なんかスマホが吠えたが気のせいだろう。料理も奇跡もあるんだね。因みに後日、神山高校新聞で翼がポケットに手を入れながら堂々と笑みを浮かべて自分の料理を食べる審査員を見ていた写真が流出したので【黒メッシュの料理人】と呼ばれた事に気がついたのは、司が大声で知らせたからである。
「よぉ、【黒メッシュの料理人】今度俺に弁当作ってくれ。金は払う」
「彰人、構わんぞ。じゃあ俺が本気で作って優勝した一品入れてやる」
「おお! それはありがたいな、どんな料理だ?」
「キャロットサラダ」
「彰人、良かったな人参だぞ」
「すみませんでした。俺が悪かったです」