「よしよし、撫で撫で」
「移るぞ……ケホッ……」
「移ってもいいよ」
「ゴフゥ……グバァ……」
「それは大丈夫じゃないよね!?」
星乃一歌は今相変わらず天馬翼の部屋にいる。遊びに来たというよりかは翼が熱出して学校を休んだのでお見舞いに来た。
元々は何も知らない星乃一歌さんだったが、彼の妹である天馬咲希から学校内で予定があるか無いかを問われ、理由を聞くと翼が珍しく風邪で学校を休んだと聞いたのだ。
「ダッシュで来たんだからね」
「咲希の我儘で無理をさせたな」
「してないよ。翼のためなら火の中水の中草の中森の中土の中雲の中アイスティの中だよ」
「アイスティは違うだろ……ケホッ……」
「喉痛いなら突っ込まないで。穂波や翼みたいにあんまり料理できないけど、お粥くらいなら作れるよ?」
「林檎の皮でうさぎ作ったり、めっちゃ綺麗に剥けるならお粥だって美味いだろ。頼むぜ」
「【黒メッシュの料理人】が美味しいというか分からないよ?」
「そのあだ名宮女まで伝わってんのかよ」
「咲希が司さんから聞いてそれを私達が聞いてなんか独り歩きしてるよ」
止めて下さいマジで。というか翼としては一歌が来てくれるのはとても嬉しいのだが、同時に申し訳なく思う。折角バンドもバイトも無いのならゆっくり過ごしたかっただろうに。
「翼、翼」
「なんだ?」
「一緒に寝たい」
「移るからやめろ貴様」
「移ったら今度は翼がお見舞い来てよ。料理作って。グリンピース以外」
「じゃあ……サボテンの塩昆布和え」
「なんて酷いことをするの!? 人の心無いよ翼!?」
一歌はサボテンを育てるのが好きなので翼の残酷な料理のテーゼに絶望したのだが、翼からしたらサボテンだろうが虫だろうが食えれば料理アレンジして食べる人間なので別に何も思わない。
「サボテンは疲労回復効果あるぞ」
「私の友達を食べないで!!」
「この前兄さん達の前に出したら気味悪がられた」
「いやぁぁぁああ!!」
味は美味しかったらしい。
「うぅ……酷いよ翼……私(の友達)を弄ぶなんて」
「人聞きが悪いな。サボテン食っただけだろ」
「翼のバカ……もう知らない……」
「じゃあ帰って折角の休みを過ごしたらどうだ? だいぶ落ち着いたから俺はなんとかなるぞ」
「翼と寝るまで帰りません」
「寝るな、帰れ」
「私を! 弄ぶ! なんて!!」
「うるせえ、誰もいないけど頭に響く」
なんやかんや言っても一歌は翼と一緒にいたいのだ。翼もそんな雰囲気は分かっているが、これを表に出すわけには行かないので、10割照れ隠ししているだけである。
「翼、歌歌ってあげる」
「プロ歌手予定の一歌の歌が聞けるなんて幸せだな。どんな歌だ?」
「さぁ、今このアイスティを飲み干そうー♪」
「あ、なんか嫌な予感するから中止で」
「それじゃあ六兆年一緒に歌おう」
「鬼か貴様」
病人に六兆年歌わせるとは何事か。喉が死ぬ。いや、風邪ひいてるから喉は痛いし死んでるのだが、治ってもあんな歌歌えそうに無い。
「翼、諦めないで。ビヨンセになったつもりで歌えば歌えるよ」
「性別の壁超えてますので無理ですねぇ」
「それじゃあ自分がルカになった気持ちで」
「TS物かな?」
「翼が女の子……いや、イケル」
「やめてね。でも、ルカ姉様と……歌いたいなぁ……」
TS一歌と百合エンドはちょっと嫌だ。結ばれるならこの姿が良い。というか自分のセカイではいつルカに会えるのか。
「いつか翼も結婚するんだね」
「いつの話してんだ。しかも確定なのかよ」
「相手はダレ?」
「マジトーンやめない?」
「大きくなったら翼と結婚するって翼言ったよね?」
「なんで俺が俺に言ってんだよ」
幼馴染達に可愛いとはめちゃくちゃ言ってた記憶はあるが自分で自分に婚約宣言した記憶はない。
「あ、お粥作るの忘れてた。今作るね」
「え? あ、いや、お気遣いなく……」
「出来たよ」
「早過ぎんだろ」
「これが小説の良いところだよ」
「時系列が秒単位なんですがそれは」
「聖なる、純愛お粥を受け入れー♪」
「マジでその歌はやめろ」
しかも熱いので飲み干せませんでした。許して(純愛お粥)
「翼をくださいませ」
「そんな歌じゃなかった気がする」
「卒業式の定番だよね」
「タイトル違うと思う。急になんだよ?」
「翼を頂きます」
「それも違う……ってなんで俺の指食べてんだ!?」
「あれ? 翼、怪我した? 翼の指金属の味がするんだけど」
「一歌が鉄の鍋でお粥作ってくれたからそれ触った匂いだろ」
「なんだ、翼の血なら喜んで……」
「怖いから。何する気なんだよ」
飲む。ストレートに一歌に言われたので、照れた。怖がれ。
「そう言えばお粥どうだった?」
「美味しいよ。ありがとう一歌」
「えへへ……(黒いハート)」
「怖い怖い。なんだよ(黒いハート)って」
「翼に愛してるとか、美味しいとか、ありがとうって行ってくれるだけで私の心が救われるんだよ。翼が私という人間を作ってくれた」
「私、翼と出会えて良かったな」
心臓がはち切れそうである。もうこのまま言ってしまいたい。私こと天馬翼は星乃一歌を中学の、咲希を見舞いに来てくれて話し相手になってくれた時から気になっており、自分が過労で倒れた時に咲希のついでだったとは思うが……自分の事も心配してお見舞いに来てくれやがって……ああもう! 一歌好き! 大好き!! お前の事が本気で好きだったんだよ!!
「はっ!? 俺は今何を……!?」
「どうしたの? 翼?」
「い、いや……その……俺も一歌がいてくれて嬉しいよ。なぁ、一歌が良ければもう少しいてくれないか? 風邪のせいか独りぼっちは寂しいんだ」
「そうなの? 珍しいね。いいよ、一緒にいてあげる。魔女になっても困るし」
「俺は男です」
「翼ちゃん可愛かったよ? あの時のゴスロリ姿のやつ。お嬢様みたいで本当に最初誰だか分からなかったんだから」
「あれは……まぁ、一歌がどうしてもそのイベント行きたいって言ってたしな」
「しかも翼やっぱり頭良いんだね。ねぇ、覚えてる? 昔私達4人で考えても分からない問題を翼は一眼見ただけで簡単に答えたよね。それと同じくらい謎解き早かったよ」
「中学の頃か? あれ確か、教師が成績関係無しに東大だかの問題出したやつよな?」
あの時面白そうだからとみんなで解いてみたのだが、一歌、志歩、穂波、咲希はでも足も出なかった。そんな時たまたまお茶とお菓子を持ってきた翼が一度問題を見ただけでスラスラと回答を書き始めた時はみんなが目を丸くしたのだ。
「なんかテレビで見たことあっただけ」
「あの時私は思いました」
「なんで敬語?」
「翼こそが……メシアだと」
「宗教的に謝れ」
でも凄かったと一歌は伝えた。好きな人に凄いとか言われたら気持ち良くなっちゃうからやめて欲しい。
「それじゃあ翼、おやすみ」
「待て、なんで布団に入ってくる?」
「あ、汗臭いかな?」
「違う。風邪移るぞ」
「翼のなら良いよ。その代わり、風邪移ったら翼が看病してね。そして私が満足するまで一生一緒にいる事!」
「一生!?」
「そう。しかも保障は一生涯」
「昔の保険CMみたいに言うな」
「おやすみ、翼……zzz」
「嘘だろ病人の俺を差し置いて寝やがった」
結局一緒に寝た。それを見た咲希と司は写真撮って幼馴染グループに送りやがったが、なんの問題もなかった。そして一歌は風邪を引いたが、咳と鼻詰まりくらいだったので寝込む事は無く平和に終わったらしい。
「私翼に看病されてない!!」
「そろそろ一歌はリスカして翼に構って貰えば?」
「しほちゃんはなんて事言ってるの!?」
「それは……ちょっとアリかも……」
「無しだよ一歌ちゃん。絶対無し」
本当はもっと一歌がR17.9の言葉でヤンデレ暴走して、翼が冷静にツッコミを入れる小説の予定がなんかコントみたいになってる。
まぁ、書きやすさ丁度良いから良いか。(自己満足)