彼女が好きなのは翼では無く司(じゃないかも)   作:初見さん

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自分の実験に物申されたのは類

「ここを……こうして……これで調整すれば……うん。完成だ」

「ちょっと待てい」

 

 翼が通っている神山高校で怪しい人物が実験中だったので止めた。止められた実験大好き人間、神代類(かみしろるい)。紫色の髪は本当に怪しいマッドサイエンティストのような雰囲気でいるが、しっかりと会話したら案外まともな人間であった。多分。

 

「おや、翼君じゃないか」

「こんにちは類先輩。んで、念のため何してます?」

「司君用の爆発物を作っていただけだよ」

「人の兄貴殺しにかかるのやめろ」

「殺しなんて縁起でもない。僕は次のショーの為に1つ小道具を作っていただけだよ」

「爆発物は小道具じゃねぇんだわ」

 

 普通に先輩なのだが、流石に犯罪者紛いの人間に使う敬語は存在しなかった。

 

「火薬類取締法って知ってます?」

「法を盾にされたら僕も諦めざるを得ないなぁ。というかよく知ってるね」

「俺が盾にする前に諦めてくれ」

 

 口では反省の言葉を言っているが、作る手を止めない類。少し呆れながら翼はその小道具(犯罪)を見る。

 

「ん?」

「どうしたんだい?」

「類先輩、これ以上ニトログリセリン入れたら爆発じゃ済まないっすよ?」

「え?」

「もう少し量減らしません? ってか後5g減らせ、兄さんを殺す気か」

 

 普通に危ないと分かった翼に対して類はかなり驚いた顔をした。

 

「よく分かったね……気づかなかったら司君がちょっとまずい事になってたよ。最近寝てないのもあって油断してたね」

「寝る寝ない以前に爆発物を作るなこの天才馬鹿」

「とにかく申し訳ない。これは少し減らしておいて……また後で作る事にするよ。うちの座長を死なすわけにはいかないからね」

「怪我もさせるんじゃねぇよ、後、その小道具作りは即刻中止にして下さい」

 

 そう言い残して翼はちょっと不敬過ぎたかなと思いながらもタメ口を使わざるを得なかった神代類に向かって軽く一礼して去ったのだった。

 

「それにしても……僕の作品をあの一瞬で見極めた挙句、普通の人では分からないニトログリセリンの事まで指摘されるとはね……」

「おい、類」

「おや、司君じゃないか。どうしたんだい?」

「お前また俺を爆発させようとしたのか!? 翼からタレコミがあったぞ!」

「爆発させようとするなんて人聞きの悪い。僕は次のショーで座長が爆発して何処かに飛んで行ったらお客さんも楽しんでくれるんじゃないかと思ってね。実験……いや、作品を作っていたんだよ」

「何一つ誤魔化しきれてないぞ!?」

 

 結局司は次のショーで爆発した。火薬は少なめなので怪我すらなかった。

 

「所で司君。君の弟君は爆発物に詳しいのかい?」

「そんな訳ないだろ! お前の実験に俺を使うのは良いが弟を巻き込むな!」

「ふむ……ならば独学……」

「話を聞け!!」

 

 ☆

 

「やっぱりあの先輩やべぇな……」

「翼、何かあったのか?」

「いや……類先輩が兄さんを爆発させようとしてな」

「その時点で意味不明なんだが……」

 

 類と別れた後、翼は級友である東雲彰人(しののめあきと)青柳冬弥(あおやぎとうや)の2人を昼ご飯に誘い3人で食べていた。彰人と冬弥はVivitBADSQUAD(長すぎるのでビビバス)と言うストリート音楽のチームに所属している歌い手であり、翼と同じ学年だった。

 彰人は自身のオレンジ色の髪を少し触りながら翼に話の流れを聞く。翼はそれに対して懇切丁寧に説明したつもりだが、やはり回答は意味不明であった。

 

「なるほど、つまり翼は天才なんだな」

「「冬夜は何を聞いてそう思ったんだよ」」

 

 冷静に話を聞いていたクールビューティーに近しい性格の冬夜は静かに訳の分からない事を答えた。

 

「理由は一つだ。翼は神代先輩の実験を一目で見て何の化学物質が多いかを見極めて事故を阻止したから。話を聞くにそう言う事だろ?」

「あ……そうか! そうだよ翼、お前なんでそれを理解出来たんだ!?」

「俺はただ類先輩を放っておいたら兄さんに危害が及ぶって事に対して同意が欲しかっただけなんだけど」

 

 翼としては兄である司を心配しての事で話をしたつもりが、何故か翼自身があの変人ワンツーと呼ばれる神代類の実験に対して物申せたのかに話題が飛んだ。

 

「翼、お前もまさか……変人」

「人聞きの悪い事を言うな彰人。まぁ、最近類先輩が調子乗って司兄さんを怪我させかけてるのを聞いたから、爆発物に関して調べ尽くしたんだよ」

「それを調べてる時点でお前は天才なのでは?」

「揶揄うな冬夜。んで、どうやらニトログリセリンとか尿素とか、硫酸、塩酸、過酸化水素、硝酸、塩素酸カリウムにナトリウム、アセトン、硝酸カリウムにアンモニウム、ヘキサミンが爆発の関連みたいでな。そのツテの話読み漁って何グラムが適量なのかとか法に触れない程度に調べたら……」

「翼、それくらいにしておけ。彰人が泡吹いて混乱してる」

「それは気絶って言うんだよ」

「ナンダソレイミワカンナイ」

「腹筋がわんだほい?」

「言ってねぇよ!? にしても……なんかお前ってあれだよな」

「なんだよ」

「司センパイの弟には思えないな」

「こら、彰人失礼だぞ」

「いや、いいよ。確かに性格はあんまり似てない……いや、あっちの方が陽キャラ過ぎるだけかもしれんが、俺は比較的大人しいとか言われるしな」

「司センパイの弟と聞いてまたうるせぇやつがと思ったんだけどよ」

「彰人、失礼だぞ」

「まぁ、兄さんが変人だしな。仮に弟だからと言ってスリー扱いされたらたまったもんじゃねぇ」

「翼が一番まともかもな」

「そう思ってくれんなら良いや。でも、兄さんだってうるさいだけで根は優しいんだ」

「悪い、俺は全くそう思えない」

「彰人や冬弥はそうかもしれんが、ああ見えて俺や妹の咲希の面倒を見てくれたり、お兄ちゃんだからと言って我慢しながら俺達の我儘聞いてくれたりしてたんだぜ。みんなにとってはうるさい変人だが、俺にとっては兄さんと呼べる最高の男だよ司は」

「まぁ……確かに俺も我儘で高飛車な姉がいるけど……嫌いになった事はねぇな……すまん、さっきの発言挽回させてくれ」

「撤回だぞ彰人」

「まだ迷っても挽回って言葉を出せるくらいは成長してんだな。勉強出来ない割にちゃんと覚えてんじゃん」

「うるせぇよ!」

 

 なんやかんやで仲がいい3人はその後も腹筋がわんだほいするような話題を……

 

「「してねぇよ」」

「彰人と翼は誰と話してるんだ?」

「そういえばお前だけ黒髪メッシュ入れてる理由あんのか?」

「兄さんと間違えられない様にするため。黒髪は俺の好み」

「なるほどな。てっきり憧れの人をとかかと思ったぜ」

「憧れ……ねぇ……」

「いるのか? 翼にも」

「さぁな」

「「??」」

「そういえば彰人、いつもの女装はしないのか?」

「あら、いやだわ私としたことが……ってしたことねぇんだけど!?」

「たまに彰人がオネエになる話が……」

「言え、その相手燃やしてやる」

「ラジオで」

「なんの話だよ!?」




 腹筋がわんだほい
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