「で、最近どうなの一歌」
「どうって……何が?」
「翼の事。私と穂波は司さんが好きだから翼のことは幼馴染……まぁ大切な幼馴染にしか見てないけど……一歌は翼の事好きなんでしょ」
「うん……好きだよ」
「だから、ちょっとは進展したのかなって」
「最近よく貴様って呼ばれる様になったよ」
「それは後退してない?」
バンド練習の休憩中、一歌と志歩は珍しく恋バナをしていた。一歌は兎も角、志歩がその手の話をするのは珍しい。正直一匹狼でクールな性格が当てはまる志歩だが、多少なりとも一歌と翼の関係性はやはり気になるのである。
「でも、わたし達と話す時はちゃんと名前で呼んでくれるよね翼君」
「たまにお兄ちゃんはお前って言うけど、貴様って言うのはいっちゃんだけだよね」
「わーい」
「それは喜んじゃダメじゃない? もうさ、正直翼がどう思ってるか聞いたら? デートとかしてさ」
「そういえばこの前翼からミクのライブチケット貰ったから行こうかな」
「え? お兄ちゃんそんなの渡してたの?」
「うん。『二枚しかないからレオニのメンバー誘えない分兄さんと観てこいよ(イケボ)』って」
「(イケボ)いる??」
「というか……そういえば翼君は一歌ちゃんの好きな人は司さんって思い込んでるんだっけ……」
一歌が翼と恋人トゥルーエンドを迎えるためにはまず一歌が好きな人は司ではなく翼だと言わないといけないのだが……
「もうそれ告白だよね」
「そうなんだよね……せっかく翼の家に行ったり、ベッドに寝転んで無防備状態になってるのに……1ムラもしないなんて……」
「いっちゃん1ムラって何?」
「翼が1回欲情する事。2回欲情したら2ムラ」
「「聞いた事ないよそんな数え方」」
志歩と穂波が突っ込むがいざ仕方なし。ただ、翼が一歌に対して他に好きな人がいると勘違いしているのなら、そんな感情は湧かないのだろう。
「とりあえず……練習しようか、志歩」
「うん……なんか一歌が可哀想に思えてきた。私達はもう司さんに伝えたけど」
「え?」
「因みに保留中だよ」
「ずるい」
「いっちゃん駄々こねるならさっさと告ればいいのに」
「恥ずかしい」
☆
「という訳で翼、今日は僕とデートしてもらうよ!」
「だからキャラ変えんなって言ってんだろ貴様」
安心しろ翼。お前に対してだけだ。そう一歌は言いたいのだがそんな事を言うと告白に近い。恋は戦争、先に告白した方の負けである。
いや、一歌としては眼や態度が好き好きオーラを纏っているので側からしたらバレバレだが、翼だけは『コイツは兄の司が好きなんだよなフィルター』のせいで気づかないのだ。
「それじゃあ行こうか、翼!」
「なんかボーイッシュ過ぎねぇ……って一歌走るな転ぶぞ!?」
正直一歌が暴走してるのは単にキャラ変ではなく大好きな
「ミックミックミー!!」
「一歌それ違う人」
「ミク可愛いよー!!」
「まぁ……一歌が楽しいならいいか……でも、司兄さんじゃなくてよかったのかよ」
「ミックミクにしてやんよ!!」
「俺に向かって言うなよ」
ライブでも暴走した一歌であった。ミクのライブイベントも終わり、今日は解散するのかを考えたのだが……
『それでは本日最後のパフォーマンスです。特別ゲストとして
「ルカ姉様!?」
「翼楽しそう」
「まさかルカ姉様が来るなんて……かっこいい!! 可愛い!!」
「翼楽しそう」
「ルカ姉様ー!! おい一歌! 今ルカ姉様こっち見たぞ!?」
「筋金入りのルカオタクだね」
「一歌に言われたくないんだが……ルカ姉様ー!!」
「ルカが好みかぁ……これは……厳しいなぁ……」
「だってルカ姉様はアイツよりマシだし……」
「なんの話?」
「もう1人の俺の話」
「流石司さんと咲希の兄妹。厨二病なんだね」
「俺の家族厨二病扱いしないでくれない?」
翼が好きなのはミクではなくルカである。一歌はそこまで髪は長くないし身体も巡音ルカの方が大人な身体つきなのでどうすることもできない。
——ゴグバァ!!
「腹減ったな、なんか食うか?」
「今のお腹鳴った音じゃなく無い!?」
「あ、ホットドッグあるぜ。一歌は食べるか?」
「食べるけど……翼の身体どうなってるの……?」
「お腹鳴っただけ」
小腹が空いたのもあり、一歌とホットドッグを食べておいた翼。イベントが終わり、帰り際一歌が翼にお願いした。
「翼の家行って、翼のフルート聞きたい」
「俺の? やめた方がいいよ」
「どういう事!? でも、結構吹けてない?」
「ナイトオブナイツしか吹けない」
「充分だと思うよ!?」
「後、兄さんのピアノと咲希のキーボードなら人に聞かせるために練習してるからアレだけど、俺は趣味程度でやってるから人に聞かせるものでもねぇよ」
「でも、作詞の時演奏してくれてるじゃん」
「一歌が曲あれば作詞捗るとか言うからやってるだけだ」
「トゥンク……!!」
「惚れるな惚れるな」
私のため!? すっごいときめいちゃった! なんてセリフが聞こえるくらいの勢いで一歌が翼に惚れた。いやもうすでに惚れているが、もっと惚れた。
「じゃあ翼の家集合ね」
「いや一緒に来いよ」
「お洒落してくるから」
「コンサートじゃねぇんだけど」
「後さ、翼」
「どうした?」
「眠いからおんぶして……嘘嘘ごめんて、拳握らないで」
「面倒な女だ……ほら」
一歌の言葉に対して全力でそげぶしようとした翼だが、何を思ったのか急に一歌に背を向けて腰を下ろした。
「え?」
「眠いんだろ。さっさと乗れや」
「いいの?」
「最近法定速度変わったからおんぶして走っても大丈夫だろ」
「まさかの走る時速30Km!?」
「うるせぇ早く乗れ」
そう言ってそのまま一歌を背中に乗せて、そのまま小走りで家に向かう翼であった。
「翼、遅い」
「マジで殴るぞ貴様」
「僕眠くなっちゃったなぁ」
「寝てろ寝てろ。俺が怒りでお前を振り落とす前にな」
「怖くて寝られないよ」
「はぁ……なんで俺はこんな奴を……」
「えっ……やっぱり迷惑……?」
「ちげぇから寝てろ。断罪の歌歌ってやるから」
「そこは私達の歌を歌って?」
「じゃあ六兆年とビヨンセの物語」
「それはなんか違うよね!?」
「お前が六兆年歌う時にその人になったつもりでとかインタビューに答えやがったからだろ……」
なんやかんやで一歌には甘い翼。一歌は少し聞いてみることにした。
「翼は好きな人いる?」
「ルカ姉様」
「恋した人いる?」
「いる」
「ルカ以外では誰?」
「KAITO様」
「髪の毛齧るよ?」
「怖いよ」
「理想の女はだぁれ??」
「怖いよ……まぁ、素直で大人しい奴かな。後、仲間想い」
「クーデレになればいい?」
「一歌はそのままが可愛いぞ」
「じゃあ病むね」
「意味わからんから病むな」
「翼がスターになったらカッコいいのに」
誰がなるか。俺は奇跡の殺戮者だと笑いながら一歌をおんぶした翼である。