「はい翼君、あーんして」
「嫌です」
「あら? どうして?」
「なんか嫌な予感しかしないので」
「私と翼君の仲じゃない」
「アイドルが何してんすか」
翼がこうなったのは時間を少し遡る必要がある。ただ、その前にそれを目撃した一歌達の話から焦点を置くことにする。
「一歌、なんか元気ないね翼に嫌われた?」
「しほちゃん容赦ないね。いっちゃんどうしたの? お兄ちゃんと喧嘩した?」
「一歌ちゃん、もう一度翼君と話し合ってみようよ」
「なんで私が翼と喧嘩した程で話が進んでいるの?」
誤解である。一歌が悩んでいることに誤解は無いが、喧嘩はしていない。ただ……
「翼が他の女の人と仲良さそうにメッセージ送ってる所見ちゃって……」
「「「殺そう」」」
「早いよ!?」
暴走レオニである。一歌の恋を邪魔する女、子供は皆殺し精神なのはみんなが一歌を大切に思っている証拠で……
「咲希、穂波。女と翼を叩こう」
翼も殺されるのが確定した。
「待って待って待って!? 翼は……その……」
「いっちゃん。お兄ちゃんはいっちゃんがつかさお兄ちゃんを好きだと勘違いする愚か者だよ? 放っておいたらいっちゃん以外の女の子にコロッと行っちゃう浮気者なんだから、早くその場所に連れて行って!」
「えっ咲希!? 練習は……」
「ほら、一歌早く準備しなよ。今から翼を一歌大好き人間に洗脳するから」
「何もよく無いよね!? 穂波……どうしよう……」
「とりあえず尾行ならサングラスだよね!」
「話聞いて!?」
結局4人で翼の元に向かうことにしました。
☆
「まさか翼君に会えるなんて……運命ってやつかしら?」
「そんな甘いもんじゃないです。と言うか、俺はただあの時、雫姉さんが変な男に連れてかれそうになってたから声をかけただけなんですけど?」
「あら、あの人そんな人だったの?」
「間違いなくそうだろうがお前アイドルだぞ?」
相変わらず突っ込むときはタメ口で話す翼。結論浮気でも彼女でもなんでもない。この水色ロングヘアーでとある仲間からは顔が良いと言われるほどの美少女は
幼馴染である日野森志歩の姉であり、翼も認識があるアイドル。
——うるせぇ、近所迷惑だ
街を歩いていれば道に迷ってしまった挙句知らない男に何処かに連れてかれそうになったところを、翼がこう言ってその男をフルボッコだドンした結果(雫はナンパだと気づいてない)軽く会話した後、折角久しぶりに会ったから後日カフェでお姉さんとお茶しない(逆ナン) と誘われたので本日2人はここにいただけである。
「まぁ、それにしても……久しぶりですね」
「そうよねぇー、何ヶ月ぶりかしら?」
「3から先は覚えてませんよ。雫姉さんもアイドル活動出来て良かったです」
「うふふ、ありがとう翼君。ところで……」
「なんですか?」
「あそこで泣いている女の子は……翼君の知り合い? というかあれ……しぃちゃんよね?」
「え? って……何で一歌泣いてんだ!?」
流石に急いで迎えに行った翼。しばらくして、店の中に入ってきた5人がいたが、翼は一歌の手を引きながら雫と座っていたカフェの席に案内する。
「グスッ……翼……浮気してない……?」
「浮気どころか付き合ってねぇわ。志歩、雫姉さんが今日のご飯について聞きたいらしいぞ」
「まさか翼の浮気相手がお姉ちゃんだったなんて」
「浮気どころか付き合ってねぇわ」
「お兄ちゃん最低! 責任とっていっちゃんとウチでお風呂入りなさい!!」
「浮気どころか付き合ってねぇわ。後なんだその罰」
「翼君、据え膳食わぬは男の恥だよ」
「据え膳どころか何も用意されてねぇんだけど」
「翼……ギュッてして……」
「なんだよ今日の一歌めんどくせぇな」
「いっちゃん止めるの大変だったんだよー、『私には何も無い……何も無いの!!』って大泣きしちゃってさ」
「お前に何もないわけねぇだろ、プロ予定の青春ギターボーカル野郎」
一体なんやら分からないが、とりあえず一歌が泣いてるのは流石に堪えるので、言う通りに抱きしめてやった。
「あらあら、仲が良いのね、一歌ちゃんと翼くん」
「本当だよ……早く付き合えば良いのに」
「でもお兄ちゃんは……いっちゃんがつかさお兄ちゃんが好きだと誤解してるし……」
「うーん……」
「ほなちゃん? どうしたの?」
「え……あ、ううん。何でもないよ……」
穂波は一歌と翼のやり取りに少しばかり疑問に思ったが、気のせいだと信じることにした。
「翼、ケーキ食べて良い?」
「貴様俺に金払えと申すか」
「お願い翼。私の半分あげるから……」
「抹茶パフェ食べるから抹茶ケーキ頼んでくれたら許す」
「やった。抹茶嫌いじゃないからそれにするね」
「半分くれよ? 絶対だぞ?」
「分かってるって」
「「「もうこの2人恋人じゃない?」」」
「あらあらウフフ……」
流石にここまでしておいて付き合ってないなんて翼と一歌以外のみんなからしたらありえない事だが、付き合ってないのだ。
「翼、あーんして」
「あーん。ほら一歌食いたいなら口開けろ」
「あーん」
「ずるいわ! 翼君私のあーん断ったわよね!」
「お黙り、雫姉さんはアイドルでしょ?」
「ならアイドル辞めるわ!」
「「アホかお前(アホなのお姉ちゃん)?」」
「わぁ、綺麗なツッコミだね。お兄ちゃんとしほちゃん」
「やっぱり……翼君……いや、無意識なのかなぁ」
「翼、翼、あーん」
「あ? あぁ……ほらよ……って貴様サラッと俺のわらび餅全部食うんじゃねぇよ!?」
「モキュモキュ……え? 何?」
「一歌貴様! これ以上繰り返すものかと俺は誓った!!」
「えぇ……私わらび餅とアイスと白玉と抹茶ゼリーしか食べてない」
「充分だ貴様!! ケーキ半分よこせ!!」
「翼怒ってる?」
「泣いてなんかいません! 怒ってなんかいません! 戦場で何をバカなことを!」
「よしよし」
「頭撫でるな貴様!!」