「天馬さん、ハンバーグって作れますか?」
「今作った」
「天馬、パエリア作ってくれない?」
「はいこれ味見用」
「天馬殿、和食作ってー」
「味噌汁白でいいか?」
「「「めっちゃ美味え!!!」」」
神山高校料理部。料理を愛し、料理に愛された男女が集う部活動の中に、部員じゃないが翼はいた。
別に部員になる気もないが、兄である司経由で翼が料理出来る事が知られたので料理部が翼を助っ人として様々な料理を作って参考にしたいと頼んできたのだ。翼も料理にはかなり通ずる人間なので時間があればと協力している。
「にしても良くここまでの味とクオリティを作れるもんだな」
「そうだね。私も料理系男子は何人か見てきたけど、ここまで作れるのは天馬しか知らないわ」
「彼女でもいんのか?」
「まぁ……」
「「「リア充死ね」」」
「すまん言い方が悪かった。まぁ、一応妹が病院に通ってた時、兄さんがバイトしてたから俺は家事してたんだよって言いたかったんだ」
「兄……ってあの変人ワンツーの天馬司かよ!?」
「あ! そうだよ、どこかで聞いた苗字だと思ったらその人の弟だったんだ!」
「俺の兄がご迷惑を。兄さんは今度ぶん殴っておく」
「なんつーか……性格は似てないんだな……」
「アレが特別なだけだ」
「なんだ……変人スリーが出来ると思ったのに……」
「喜ぶなアホども」
料理部の男女と話す翼は兄が割と変人として活躍(笑)している事に謝っておいた。妹の話題になった時、天馬咲希の話をすると、みんなは知っているみたいだった。
「レオニならいつも聞いてるぜ、あの咲希ちゃんって子の兄なんだな」
「あれ? レオニのみんなって幼馴染バンドじゃ無かった?」
「俺も男だが4人と幼馴染だよ」
「「「うらやまけしからん」」」
「お前らが思ってるもんじゃねぇよ。現にあの内の2人は兄さんが好きみたいだしな」
「「「なんだと!?」」」
「仲良いなお前ら」
そう翼は部員3人に伝えた。志歩と穂波の話はしてないが、それくらいなら誤解ないように伝えて問題ないだろう。プロになったら口は閉じておく事を考えてるが。
「ん? そう言えば今2人って言ったよな? 妹はともかくレオニって4人じゃないか?」
「そうだよ。後1人は誰に惚れてるの?」
「一歌は妹の咲希かな」
「「「はぁ??」」」
「嘘に決まってんだろ。一歌は……まぁ、妹から聞いたのはそれくらいだ。因みに妹はまだ好きな人はいないらしい」
いても困るがなと。そう言って翼は今日の講義はここまでと伝えて、教室を出ようとする。料理部の人達はお礼を言って翼を見送った。
廊下を出ると綺麗な夕日が輝いていたのを見ていた翼は彰人が来ている事には気がつかなかった。
「おい、翼。何してんだ?」
「おっと……彰人、お疲れ様。流石の彰人も、夕日が綺麗なことは分かるよな?」
「はぁ? ってすげぇ眩しいな……綺麗な夕日だ……」
「ははっ、素直で良いなお前は」
「何言ってんだ? 頭でも打ったのか?」
「料理部にフライパンで喧嘩しに行ったら料理作って褒められたよ」
「何してんだお前……そんなんなら料理部入れば良いじゃねぇか」
「妹に何かあっても困るからな。部活動は悩んでる」
「お前さ、やりたい事ねぇのかよ? 我慢してたら身体に悪いぞ?」
「一つだけある」
「なんだよ?」
「まぁ、それをする前に星が綺麗すぎてな。それが出来ないんだよ」
「天体観測でもすんのか?」
「ははっ、今度一歌達を誘ってみるか、因みに俺の夢はコックだ」
☆
「お兄ちゃんお腹すいたー」
「今作ってるから待ってろ」
とある休日、兄の司がフェニランで座長をしている間、翼は咲希の2人で家の中にいた。咲希はバンド練習やソフトテニス部も無いので、家でのんびりする事にしたのだ。
「出かけなくて良いのか?」
「最近疲れたから今日は休むー」
「そうか」
高校から退院して今は元気になった咲希だが、いつなんどき何があってもおかしくないので無理は絶対にさせないようにするのが翼の役目である。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なん?」
「どんな返事なの……最近いっちゃんとデートしてるけど何か進展した?」
「しねぇよ。アイツは司兄さんが好きなんだって何回言ったら……」
「じゃあお兄ちゃんはどうなの?」
「ぬん?」
「だから返事……仮にいっちゃんがつかさお兄ちゃんの事好きだったとしても、つばさお兄ちゃんがいっちゃんの事どう思ってるのかそう言えば聞いた事ないなぁって」
「はぁ……怠い」
「お兄ちゃんさっきからなんなの!?」
咲希の疑問に対してとてつもない溜息で返した翼は少し静かになった後、出来た料理を咲希の前において……
「一歌は一歌。それで良いんだよ」
「え? どういう事?」
「一歌は一歌。まるち様じゃないぞ」
「本当に何言ってるの!?」
「とあるベイクラフターの禁忌目次」
「ごめん……本当に意味わからない。もしかして……照れ隠しでもしてるの?」
「一歌は俺のものでは無い。兄さんの物だと信じておけばいつか道は開かれる」
「ねぇ、お兄ちゃん。それってさ……もしかしてお兄ちゃん知ってたの?」
「知らんけど」
「知らんのかい!?」
間髪入れずにボケまくってる翼に対して呆れまくる咲希。しばらく話すと翼は少し真面目な顔をして、咲希に伝えた。
「一歌はさ、星が綺麗な事を知らないんだよ」
「もう良いよ……どういう事なの本当に……」
「海はもう既に綺麗なんだけどな」
「お兄ちゃんの馬鹿! 意味不明だよ!!」
「早く飯食え覚醒するぞ」
「それ違うさめるだよね!?」
「可愛いなぁ咲希は」
咲希は知らない。翼がかなりヒントを出した事を。というか答えを既に伝えているのを彼女は見逃して……いや、完全に聞き逃してしまったのだ。