「あ、おはよう翼ー」
「ん? あぁ、久しぶりだな瑞希」
神山高校で偶々出会ったのは
「最近どう? 僕がいない間に何かあった?」
「兄さんがまた類先輩のせいで爆発したからハリセンでぶっ叩いといた」
「うわぁ……どっちも容赦ない……」
「当たり前だ」
瑞希は若干不登校気味で、単位が危ない時くらいしか学校に来ないので翼も瑞希もあまりなはず機会は無かったのだが……
「聞いてよー、最近絵名がさぁ……」
「絵名……確か彰人のお姉様だっけか?」
「そうなんだよ。絵名が最近僕の手を握ったり、デート誘ってきたり、最近妙に優しいんだよねぇ……」
「そりゃお前……絵名お姉様が瑞希の事好きな事が決まったんじゃねぇの?」
「えっ……あの我儘高飛車ありのままの絵名が……??」
「お前も彰人も言ってたけど、その絵名って人はどれだけやべぇやつなんだよ??」
彰人に聞いたら我儘高飛車だと言うし、前に瑞希本人から聞いたら幽霊みたいな女だと言うし、どれだけ恐ろしいんだと少し怖くなった。
「いや……やばいって訳じゃないけど……我儘高飛車だから扱いづらいんだよねー、まぁ可愛いからいいんだけど」
「お前ら実は許嫁ってオチない?」
「あはは、無い無い!! 僕絵名も好きだけど奏が好きだしね!」
「みずえなじゃないと俺は認めない」
「なんて事言うのさ!?」
時代はみずえな。みずかなも良いが、翼はみずえな派閥である。というか『かな』とは誰だ。
そう言えばと、1つ前置いて翼は瑞希のピンク色の長髪を指先で弄って遊びながら聞こうと思っていた事を……
「いや何で僕の髪弄ってるの?」
「ちょっと緊急でこの髪欲しいんだよ」
「どういう事? 後お願いだから引っ張らないで……」
「瑞希、女装得意な知り合いとかいるか?」
「な……何でそんな事聞くのさ……?」
「一歌と約束しちゃってな」
「え??」
翼の言葉に何だか嫌な予感がした瑞希だが、彼は説明を続ける。
「一歌と初音ミクイベントで謎解きのゲームをしないといけなくてな」
「それで?」
「その条件が女は男装、男は女装という意味わからん条件なんだよ」
「なるほど。デートのためなら仕方ないね」
「んなわけで俺が女装します」
「僕に任せてよ!!」
「お前が本気でいいならお前で良いや」
誰が聞いても意味不明なのだがこの2人はすぐに話をつけた。早速手伝うといってくれた瑞希は翼に対して女装の極意を教える。
「翼、女装をするならゴスロリが良いって知ってる?」
「んな真剣なもんじゃねぇよ……ゴスロリなんて似合わないだろ……」
「似合う似合わないの話じゃなくて男の子が女装するならその方が都合良いんだよ!」
「お前の趣味……じゃ無さそうだな……どういう事か聞かせてくれ。俺は女性用の浴衣とウィッグつければ良いと思ってたんだが……」
「それでも良いけど、ゴスロリならスカートとか帽子とかの生地が厚い分骨格を隠しやすいんだ」
「そういうことか……なるほど」
実は女装したことあるんじゃないのかと疑う程、翼が瑞希の話に納得していた。
ゴスロリ衣装は男には似合わないと思うが、確かに厚い生地のスカートで骨格は隠せるし、足だって黒色の長い靴下で隠したり、顔はウィッグや日傘で隠せるのもあり、女装初心者にはピッタリであるのは理解できた。
ただ一つそのデメリットとして……
「あいにく俺裁縫はからっきしでよ、妹や兄さんのズボンとかスカートを縫ったくらいで、そんなご大層な生地は作れねぇ」
「僕が作ってあげる!」
「良いのか?」
「うん! 僕と……あ……いや……その、僕も衣装関係の事には興味あるからさ!」
「それならば願ったり叶ったりだ。お礼としてはアレだが……んだな……今度なんか奢るわ服でもなんでもよ。とりあえず連絡先よこせ」
「それなんか僕がナンパされてるみたいなんだけど……」
「俺には好きな人がもういるからそんなつもりはねぇよ」
「え!? そうなの? 誰誰??」
「3次元の人間」
「じゃないとやばいよ!?」
「最近自分の部屋で俺の名前大声で叫びながらベッドギシギシ音立ててたって遊びに行った妹から通報があった」
「彼女さん大丈夫? 頭……というかそれもしかして……あの……致してます?」
「まだ彼女じゃねぇし多分いつものこと。頼むから筋トレしながら憎い俺の名前を叫んでると誰か言ってくれ」
そう言いながら翼は瑞希に採寸してもらって、2人で一歌とデートの日まで服を作るのに専念したのであった。
「そういえば、翼って裁縫出来たの?」
「妹が病院通いでな。司兄さんも忙しいから家事は全部出来るぞ」
「へぇ、凄いなぁ。今度僕にも料理教えてよ」
「良いぜ、男同……同じ人間として手伝ってやるさ」
「えっ……翼僕の事……」
「同じオスとして手伝ってやるさ」
「言い直しても変わってないよね!? って……いや……その……」
「そいや俺も兄さんと同じで忘れっぽい所あってな、さっきなんて言ったか覚えてねぇ。お前はお前。そうだろう秋山瑞希」
「えっと……うん……ありがとう……」
「んじゃやるぞ、人の子よ」
「アレ? キャラ変わってない!?」
「兄さんが演劇演劇うるさいんだよ。ほら、貴様の実力見せてみろ」
「なら僕だって遠慮はしないよ!」
「ふん、初手より奥義にて仕る」
☆
「よく来たわね……人の子」
「翼……どうしたのその格好……?」
「私の衣装は人の子と作ったのよ。これで満足?」
「うん……すっごく可愛い……!」
「そう。それじゃあ、行きましょうか。探偵さん」
「翼、私今日……いや、僕すっごく楽しみにしてたんだ!!」
黒い日傘に黒いカチューシャ。黒髪ロングのウィッグをつけて、白黒のモノクローム風ドレスによってゴスロリお嬢様に進化した翼は髪型は変えてなくてもベレー帽などで男探偵チックに変化した一歌がはしゃぐのを見て笑った。
「行こう翼! また僕が新しいベイを作ってあげるよ!!」
「キャラ違うだろ貴様」
「翼の前しかやらないよ、翼翼、翼だけ」
「そういえば咲希から聞いたけどなんでお前俺の名前呼びながらベッドギシギシ音立ててたの? 筋トレ?」
「わぁ……わぁ……」
「顔真っ赤にしてえんがわみたいになるなよ」
「ちいかわだよ!?」
何度このベイやりとりをしないといけないんだとキャラ崩壊した翼だが、一歌に手を握られながら、イベントに向かってる歩いたのであった。
「翼、どうだった? 僕の衣装!」
「一歌がめちゃくちゃ可愛いっていってくれたぞ。ありがとう瑞希」
「本当!? 良かった!」
「一歌の衣装もカッコよかったぞ。探偵チックで」
「ええ……見てみたかったなぁ……」
「嫌だね」
「えっ?」
「ねだるな、勝ち取れ」
「どういう……あ、翼の好きな人ってそういう……」
「お互い大事な秘密を抱えたってことで」