ザンスカール帝国のディストピア〜カテジナ・ルースの女王の系譜〜   作:ロドニー

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最凶の二つ次世代

 

 ザンスカール帝国軍のメサイヤ要塞を巡る三つ巴の戦いに乱入した結果により、数々の戦局を覆してきた伝説のコーディネイター、キラ・ヤマトは撤退を判断したオーブ軍の殿となりカテジナが駆るドッゴーラ改との戦いに敗れ捕虜となった。

 

 帝国は地球圏全土の反抗心を挫くため、彼をシンボルとしたギロチンによる公開死刑の執行を大々的に発表。

 

 その執行人に指名されたのは、狂気と情念に身を焦がす帝国の女性将校、カテジナ・ルースであった。

 

 しかし、処刑台の上でキラの持つ生命力とコーディネイターとしての美しさを前にしたカテジナの精神は、歪んだ形で暴走を始める。

 

 彼女はギロチンの刃を落とす代わりに、群衆と全宇宙のモニターが見守る前で、キラを性的に貪る「公開種付け」という狂気の儀式へと凶行をエスカレートさせた。

 

 英雄の尊厳を徹底的に蹂躙し、帝国の完全なる支配と、自身のあくなき所有欲を満たすための、悍ましくも圧倒的な見世物であった。

 

 十年の泥沼と「次世代」の宿命

 

 この前代未聞の暴挙は、反ザンスカール勢力に絶望と、同時に激しい激昂をもたらした。

 

 それが、ザンスカール帝国が支払うハメとなった、プラント制圧の際の民衆のゲリラ化による泥沼の戦場という大きな代償だった。

 

 特に、帝国の次なる標的となったL5のプラント(PLANT)側コロニーの抵抗はゲリラによる反撃に苛烈を極めることとなる。帝国の「制宙権確保」の動きに対し、プラントはザフトのプラント側に残る残存戦力と新型MSを投入してゲリラ戦を用いて徹底抗戦。

 

 戦局は泥沼化し、十年の歳月が流れる長期戦へと突入した。

 

 その長い戦いの裏で、あの公開儀式の翌年、カテジナはキラの血を引く子を妊娠・出産していた。

 

 最高峰のコーディネイターの遺伝子と、帝国の狂気を宿したその子供は、ザンスカールが掲げる新たなる王国の象徴(アイコン)として、歪に育てられていくこととなる。

 

 十年という長い戦いの末、物量と容赦のない戦術で圧倒したザンスカール帝国軍は、ついにプラントの防衛線を突破し、その制圧を完了する。

 

 (地上戦線もオーブが支援する反組織により泥沼化し、十年経った今でも制圧出来ていない。アフリカ大陸のアフリカ戦線はアンドリュー・バルトフェルド元帥が率いる旧エターナル隊と旧連合と旧ザフトの混成部隊であるダカール守備隊により、バイク乗り達率いるザンスカール帝国地上艦隊が敗北して、北アメリカ戦線に撤退していた)

 

 プラントの陥落に伴い、帝国が敷くギロチンによる恐怖政治はその極みを迎えた。

 

 反逆者や抵抗の意志を見せるコーディネイターたちは、次々と断頭台へと送られ、プラントの各コロニーに造られたギロチン用の広場は死刑された死刑囚の血で染まり、広場の片隅には死刑囚の首が晒され、宇宙は完全に血と絶望の色に染まる。

 

 かつて自由を謳歌したコズミック・イラの世界は、カテジナの狂気と、鳴り響くギロチンの刃の音によって完全に支配されたのだった。

 

 その間、カテジナは公開種付けから、目論見通りに妊娠した。

 

 翌年には長女ツクヨミが、そしてその翌年の年明けには年子の次女アマテラスが産声を上げた。

 

 その頃には、キラの澄んだ瞳からは完全に光が消え失せていた。

 

 それでも、キラは心の中で脱出の機会を諦めてはいなかった。

 

 長女の出産以降、彼の扱いは囚人から「カテジナの夫」へと変えられ、強制的に「キラ・ルース」の名を名乗らされることになった。

 

 さらに次女の出産を機に、カテジナは前線のパイロット業から身を引き、帝国の開発局の新型機開発総指揮官へと階級は中将扱いで就任する。

 

 夫となったキラは大佐扱いでカテジナ中将の側付きとして最新設備と宇宙要塞エンジェルハウロォのデータバンク(リガ・ミリティアや地球連邦、サナリィ、アナハイムなどの研究データや付随するモビルスーツの大量のデータを保管)へのアクセス権が付いた研究室が与えられ、妻のカテジナから与えられたのは、部屋を埋め尽くすほどの膨大な開発作業だった。

 

 かつてメサイヤでカテジナが駆り、自分を撃墜した怨敵たる機体「ドッゴーラ改」のOS改良。

 

 システムのエネルギー効率化による驚異的な省エネ化。

 

 そして、かつての彼の愛機であり、帝国に鹵獲されたストライクフリーダムのドラグーン・システムを、ニュータイプ用のサイコミュへと変貌させる機構の開発。

 

 作業に没頭する間にも、カテジナの肉体はキラとのハイブリッドを産み落とし続けた。

 

 次女の誕生から5年後には三女と四女の双子、さらには翌年には五女と六女の双子。

 

 狂気の子孫が次々と増えていく。

 

 これこそが、カテジナが仕掛けた長期にわたる最悪の罠であることに、心を殺して画面に向かい続けるキラは気づいていなかった。

 

 キラがその卓越した技術で生み出そうとしていたのは、彼の愛した世界を完全に破壊するための、悪夢の化身だったのだ。

 

 十年の歳月が流れたある日、ついにその機体がロールアウトした。ドッゴーラ改の後継機種、「ドッゴーラⅡ」。

 

 全長八百メートルに及ぶその巨躯は二機が生産され、かつてのドッゴーラ改の武装と性能を完全に引き継いでいた。

 

 さらにキラの手によって、全てのシステムのOSは最適化され、サイコミュ化されたドラグーン・システム(ファンネル)を搭載し、エンジェル・ハイロゥのデータバンクからサルベージされたミノフスキードライブによる「光の翼」を展開する。

 

 その防御力は、陽電子砲ローエングリンの直撃すら容易く弾き返す超強力なIフィールドによって担保されていた。

 

 量産され、完成した二機のデータシートを前にしたキラは、パイロット欄に記載された名前を見て、ついに思考と理解を放棄した。

 

 一号機のパイロット。

 

 十歳になる長女、ツクヨミ。

 

 その容姿と冷酷な性格はカテジナと瓜二つでありながら、父親であるキラの卓越したパイロットセンスと空間把握能力、そして強力なニュータイプ能力を受け継いだ、戦場の申し子。

 

 二号機のパイロット。

 

 九歳になる次女、アマテラス。

 

 姉と同等の天賦の才に加え、さらに肥大化したニュータイプ能力を秘めていた。

 

 その内面に底知れない残虐性を抱えながらも、表面上はどこまでも天真爛漫に笑う、歪んだ少女。

 

 かつて平和のために戦った最高の戦士の技術と血は、狂気の女の手によって、世界を滅ぼすための絶対的な力へと昇華されてしまっていた。二機の巨大な影が起動する音を聞きながら、キラはただ、暗転した世界の中で立ち尽くすしかなかった。

 

 ここまでは、まだ心の準備ができていた。

 

 だが、その下に続く不穏な文字列と、隣で勝ち誇ったように高笑いする妻・カテジナの声が、彼の理性を限界まで揺さぶる。

 

 「どうしたの、キラ? そんなに驚くことかしら。その子たちはね、上の二人が可愛く思えるほどのニュータイプ能力を秘めているのよ。この間の視察の時なんて、リグ・リングをただの玩具だと思い込んで、フルスペックを引き出してみせたんだから!」

 

 高笑いするカテジナの言葉を裏付けるように、4歳の三女のハルミと四女のナツキ、3歳の五女アキネと六女ユキが、お姉たちの乗るドッゴーラⅡの巨体を見上げて歓声をあげている。

 

 2ヶ月前にロールアウトしたばかりの、あの超大型試作MAを、10歳と9歳の娘たちはすでに手足のように扱っているという。

 

 (……ああ、これは)

 

 キラの脳裏に、かつての記憶がフラッシュバックした。

 

 ヘリオポリスのモルゲンレーテで、未完成のOSを書き換えながらストライクガンダムを動かした、あの若き日の自分の姿。

 

 それが今の娘たちの異常な天才振りと重なり、眩暈(めまい)すら覚える。

 

 しかし、かつての戦場の恐怖や絶望は湧き上がってこなかった。

 

 

 目の前で

 

 「どう? 私の産んだ娘たちは凄いでしょう?」

 

 とばかりに、尊大に, そして誇らしげに高笑いを続けるカテジナ。

 

 その姿が、今のキラには狂おしいほどに愛しく思えた。

 

 「――カテジナ」

 

 「ひゃあっ!? ……き、キラ……?」

 

 突然、キラはカテジナの身体を強く、優しく抱き締めた。

 

 かつて心を痛め、瞳から光を失っていたキラを、カテジナが一方的に翻弄し支配していた頃とは違った。

 

 今のキラの瞳には、かつての、いや、それ以上の確かな光が戻っている。

 

 優しく、すべてを包み込むような温かい瞳。

 

 あまりにストレートで純粋な愛情の籠もった視線に、そんな甘いシチュエーションに免疫のないカテジナは、一瞬で顔を真っ赤に染め上げた。

 

 「な、何を考えているのよ、子供たちの前で……!」

 

 「いいじゃないか。僕たちの可愛い子供たちだし、何より、こんなに凄い娘たちを産んでくれたカテジナが、愛おしくて堪らないんだ」

 

 完璧なまでの包容力と甲斐性を見せる、いわゆる“スパダリ”と化したキラの甘い囁きに、カテジナは完全に形勢を逆転され、身悶えする。

 

 カテジナの内心では、キラが自分に「完全に心を許した」という確信があったが、まさかこんな形で手も足も出なくなるとは思ってもみなかったのだ。

 

 「ヒューヒュー! パパ、ママをいじめてるー?」

 

 「ママ、お顔がトマトみたいだよ!」

 

 アマテラスとツクヨミがドッゴーラⅡのハッチから顔を出し、ニヤニヤと笑いながら冷やかす。

 

 ハルミたち妹組も、一緒になって手を叩いて大はしゃぎだ。

 

 「うるさいわね、あんたたち! 訓練に戻りなさい!」

 

 真っ赤になって怒鳴るカテジナだったが、キラはその大きな手を、彼女のふっくらと膨んだお腹へとそっと添えた。

 

 そこには、新しく宿った七女が眠っている。

 

 「次はどんな天才が生まれてくるか、今から楽しみだね。……ありがとう、カテジナ。愛してるよ」

 

 「う、うぅ……もう、バカ……」

 

 娘たちのからかいの声と、賑やかなハンガーの駆動音。かつての戦火の記憶を塗りつぶすように、キラとカテジナの新しい、そして少し賑やかで騒がしい日常の光景が、そこには溢れていた。

 

 そんな、ある日のこと。

 

 アマテラスは叔父であるクロノクル中将の執務室にドッゴーラⅡの訓練後に突撃していた。無論、地球にドッゴーラⅡ単機で降りる大気圏突入訓練を監督する母親のカテジナの厳しさから逃げて甘えたかったのもある。

 

 「ねえ、クロノクロおじ様。おじ様はいつになったらお嫁さんをもらうの? アマテラス、いい加減ヤキモキしちゃう!」

 

 カテジナの次女であるアマテラスは、無邪気な笑顔を輝かせながら、一番懐いている叔父のクロノクル・アシャーの腕に抱きついた。

 

 その愛らしい瞳の奥に、底知れない残虐性と容赦のない好奇心を隠し持っているのが、彼女の『天真爛漫』たる所以である。

 

 クロノクルは、姪からの手痛い突っ込みに引きつった笑みを浮かべるしかなかった。

 

 少し前、アマテラスとその姉が、二ヶ月前にロールアウトしたばかりの超大型MAドッゴーラⅡを事も無げに操縦する狂気的な姿を見て以来、クロノクルはカテジナ並みにスペックを引き出すまではいかないが、操縦に苦慮しながらも、十年前にドッゴーラ改を乗っていた時以上のフルスペックを引き出すカテジナの娘の光景に瞳から光を失うほどの衝撃から立ち直りきっていない。

 

 (カテジナとカテジナの娘達とは違い、クロノクルはニュータイプ能力が低い(ウッソ←超えられない壁カテジナ←クロノクル)ための弊害と初期のドッゴーラはニュータイプでなくとも大丈夫だったが、ドッゴーラ改は完全にニュータイプ専用であり、ドッゴーラ改の後継機種のドッゴーラⅡは言うまでもなくニュータイプ専用)

 

 さらに追い打ちをかけるように、まだ幼い妹たちが、リグ・コンティオ系の派生機種のニュータイプ専用機リグ・シャコウの後継機種の開発中のニュータイプ専用試作機『リグ・リング』をただのオモチャと勘違いし、母親の職場を視察がてら勝手にフルスペック性能を引き出してしまったという。

 

 その話を、母であるカテジナが嬉々として周囲に自慢していたのだから、この一家の恐ろしさは計り知れない。

 

 「……アマテラス、その話はもうやめないか。それより、お前の母さんと父さんはどうしたんだ?」

 

 話題を逸らそうとしたクロノクルだったが、それは悪手だった。アマテラスは待ってましたとばかりに、さらに目を輝かせる。

 

 「ふふ、お父様とお母様? 今もすっごく甘々よ! お父様ってば、私達姉妹がドッゴーラⅡのパイロットになった事を知ってね、闇落ちを何周も通り越して、今はすっかり完璧なスパダリになっちゃったじゃない? 今日もね、開発局でお母様が妹達のリグ・リングの調整の話をしてたら、お父様が『カテジナ、頑張ったね』って頭を撫でて……。そしたら、あのお母様が、まるで少女みたいに真っ赤になって初な反応をしちゃって! もう、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい両親の世界に入り浸ってたわ!」

 

 「な、何だと……!? あのカテジナが、初な反応を……?」

 

 クロノクルは驚愕のあまり絶句した。

 

 あの苛烈でプライドの高いカテジナ・ルースが、キラ・ルースの前でそんな顔を見せるなど、彼にとっては天地がひっくり返るほどの衝撃だった。

 

 (そういえば、パイロット時代はよく胸元を開けた格好だったが最近は軍服を正しく着こなしていたような…)

 

 (カテジナが軍服を開けた格好にすると、キラが「僕の前以外では駄目だよ」と甘く囁かれ、キラ自らカテジナの軍服を直す為に部下達の前で初な反応をすると、イメージ崩壊待った無しとなり、部下に示しが付かなくなる為、カテジナは軍服も正しく着るようになっただけだった。カテジナのそんな見せられない乙女な悩みを知らない娘達はある意味幸せかも知れないが、実情を知るマリアには、王宮の私室にて散々弄らている)

 

 「ほら、おじ様! 呆れてないで、おじ様も早く結婚して、あんな風に甘い生活をすればいいじゃない! 早くお嫁さんを貰ってよ。アマテラス、可愛い叔母様が欲しいの!」

 

 逃げ道を塞ぐようなアマテラスの容赦ない追撃に、クロノクルはたじろぎながらも、必死に大人の威厳を保とうと反論した。

 

 「いいか、アマテラス。私にはまだやらねばならないことがある。何より、姉上……マリア女王陛下が正式にご結婚されるまでは、私が先に身を固めるわけにはいかないんだ。……それに、どうしてもと言うなら、そうだな……お前が気に入った娘でも連れてくるがいい。お前が認めた相手なら、結婚してやってもいい」

 

 それは、うるさい姪をからかい、その場を収めるための、クロノクルなりの精一杯の冗談であり、方便だった。

 

 しかし、アマテラスの動きがピタリと止まる。彼女の唇が、肉食獣のような妖しい弧を描いた。

 

 (――あは、言質取っちゃった。おじ様、自分の言葉、忘れないでね?)

 

 アマテラスは内心で、邪悪で無邪気な快哉を叫んでいた。

 

 叔父のこの妥協の言葉を、彼女はずっと待っていたのだ。

 

 自分の張り巡らせた罠に、大好きな叔父が自ら首を突っ込んでくれた。

 

 この瞬間、彼女の頭の中では、クロノクルを翻弄するための、恐ろしくも愉快な歯車が回り始めていた。

 

 もちろん、この時のクロノクルは知る由もない。

 

 自分が口にした軽い約束が、後にどれほど凄惨で、逃げ場のない後悔をもたらすことになるのかを。

 

 (後にクロノクルと妻が居たかつてのとある組織も悪夢の結婚式と認識する)

 

 

 

 メサイヤ要塞戦の終結から、十年の歳月が流れた。

 

 オーブ連合首長国の秘密工廠には、今や二つの時代の技術が融合した奇跡の結晶が鎮座している。

 

 十年前、エターナル隊が鹵獲した大破したゾロアット。

 

 当時のオーブの技術者たちは、その未知の駆動構造を前に頭を抱えるばかりだった。「どうしてこんな構造で動くのかすら理解できない」――それが最初の限界だった。

 

 しかし、流れを変えたのはその翌年、アフリカの砂漠地帯だった。

 

 地球へと侵攻を開始したザンスカール帝国の地上戦力から、無傷の「トムリアット」を鹵獲することに成功したのだ。

 

 宇宙世紀基準の核融合炉――その本物の現物を手に入れたことで、霧は一気に晴れた。

 

 ゾロアットの解析は完了し、オーブはザンスカール帝国に反旗を翻すための独自のモビルスーツ開発へと舵を切る。

 

 そのベースとして白羽の矢が立ったのが、プラントから亡命したザフト技術者たちが携えてきたデータだった。

 

 ザンスカール帝国の侵攻によりプラントはスーパーコーディネーターのキラへの屈辱的な行為で公開種付けとザンスカール帝国への怒りと反抗心によるプラントのコーディネーターの住民によるゲリラ戦により泥沼の戦場化となる。

 

 ザクウォーリアに代わる次期主力機『ゲルググメナース』の開発は中止された。

 

 しかし、ザフト本部の軍属技術者たちは、ミラージュシフトを搭載したシャトルで密かにオーブへと亡命を果たしていたのだ。

 

 「これより、ゲルググメナースの起動実験を開始する。テストパイロット、ルナマリア・ホーク。システムオンライン」

 

 赤を基調としたパイロットスーツに身を包んだルナマリアは、コックピットの中で深く息を吐いた。

 

 かつての記憶が脳裏をよぎる。

 

 ザンスカールが誇る凶鳥、リグ・コンティオ。その圧倒的な性能の前に、彼女のインパルスガンダムは連合のモビルスーツ戦の最中に乱入され、反撃したが、リグ・コンティオの強化人間のパイロットに力及ばず、敗北を喫した。

 

 アスランに説得され生き残るために、戦艦ミネルバと共にオーブ艦隊へと合流し、この地へ撤退するしかなかった屈辱と無力感。

 

 あの日の悔しさが、今も胸の奥で燻っている。

 

 だが、目の前のコンソールに表示される数値は、あの頃とは全く違っていた。

 

 当初、コズミック・イラ本来の核エンジンでは、ゾロアット以上のジェネレーター出力を絞り出すことは不可能とされていた。

 

 しかし、オーブの執念がトムリアットの核融合炉を完全にコピーし、この機体に心臓として組み込むことに成功したのだ。

 

 「驚異的な出力ね……。これなら!」

 

 メインモニターに火が入り、ゲルググメナースの双眸が鋭く輝く。背部には、かつてのストライクガンダムが誇ったエールストライカーの系譜を継ぐ高機動スラスターが標準装備され、圧倒的な推力を約束している。

 

 手にするビームライフルは、ゾロアットを紙切れのように圧倒できる威力を秘め、腰部には近接戦用のビームナギナタと、防御の要であるビームシールドが備えられている。

 

 そして最大の特徴は、背面にマウントされた長大な砲身――ガンナーザクウォーリアのメイン武装を極限までチューンアップした『収束式ロングレンジキャノン』だ。

 

 それは、宇宙世紀側の傑作機として名高いF91の『ヴェスバー』すら凌駕する破壊力を持つ。

 

 ザンスカールMSの堅牢なビームシールドを、正面から容易く撃ち抜くために設計された、対ザンスカール用の決戦兵器。

 

 「リグ・コンティオ……次こそは、絶対に落とす」

 

 十年の歳月は、傷を癒やすための時間ではなかった。

 

 牙を研ぎ澄ますための時間だったのだ。

 

 ルナマリアは操縦桿を握り締め、スロットルを押し込んだ。核融合炉が咆哮を上げ、紅きモビルスーツ、ゲルググメナースが、反撃の光を纏ってカタパルトから大地へと飛び出していく。

 

 オーブの技術と、プラントの意思、そして異世界のテクノロジーが交わったとき、時代を覆す新たな戦神が戦場へと舞い戻った。

 

 但し、彼女達のオーブの技術陣営は知らない。

 

 ゾロアットとトムリアットは既にザンスカール帝国では、8年前の段階で退役した旧式の機体であり、ゾロアットの搭載された核融合炉も旧式であり、ゲルググメナースに搭載された核融合炉もザンスカール帝国側からしたら旧式であり、ただ、核融合炉が開発出来た事で十年前のザンスカール帝国のモビルスーツ群と同じであり、スタートラインにすら立てていなかった事実を身を持って体験する事となる。

 

 

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